衆院原子力特別委で参考人質疑
2019年12月5日 国会論戦
衆院原子力特別委で参考人質疑が行われました。
東電・福島第一原発の国会事故調査委員会のメンバーだった黒川清元委員長などアドバイザリーボード3名から意見を聞きました。
私は、電事連がメンバーを増やして改組された原子力エネルギー協会(ATENA)について紹介。この新組織づくりのレールを引いたのは経産省だと指摘しました。
- 会議録 -
○ 江渡委員長 次に、藤野保史君。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
きょうは、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
アドバイザリーの皆さん方からまさに一様に、今までも指摘はありましたけれども、七つの提言の実施計画とその進捗状況の国民への公表という御指摘がありました。私自身も本当に改めてやらなければならないなというふうに思いましたし、私からも委員長に改めて御尽力のほどを心からお願いをしたいと思います。
その上でちょっとお聞きしたいんですが、国会法の附則第十一項には、先ほど来御指摘あるように、政府が国会事故調の報告書を受けて講じた措置について、当分の間、国会に報告書を提出しなければならないと規定をされております。
私もこれは二〇一二年度から七年分のその報告をちょっと読ませていただきました。いろいろ感じるところはあったんですが、一部分はやっていることもあるし、先ほど、この報告書以外にも国会による継続監視が必要な事項というものもありますが、ところどころ取り上げている問題もございます。
ただ、やはり皆さんがおっしゃっているような計画に基づいた、期限を切った、そうした進捗の継続監視というものとは全くやはり違うなと、この報告書を読んで。各省庁がやったものをそれぞれ当てはめていったというか、そういうものが毎年報告されている、そういうものを我々がチェックをして正していかなければならないというふうに感じております。
その上でなんですが、ちょっと幾つか具体的にお聞きしたいんですけれども、国会事故調の提言の四番目には、「電気事業者の監視」というものがございまして、こう書かれております。「東電は、電気事業者として経産省との密接な関係を基に、電事連を介して、保安院等の規制当局の意思決定過程に干渉してきた。国会は、提言一に示した規制機関の監視・監督に加えて、事業者が規制当局に不当な圧力をかけることのないように厳しく監視する必要がある。」と。
だから、国会がいわゆる規制機関に対して監視、監督するのは、これは当委員会としても当然なんですが、それに加えて、提言の四では、「事業者が規制当局に不当な圧力をかけることのないように厳しく監視する必要がある。」というふうに指摘をされております。
これとの関係で、二〇一八年度のこの政府の報告書を読みますと、こういう部分があるんですね。「平成三十年七月一日に、原子力産業界の連携を強化しながら、」ちょっと飛ばしますけれども、「原子力事業者に加え、メーカー及び関係団体も含めた原子力産業界の組織として、」原子力エネルギー協議会(ATENA)を設立したというのが二〇一八年の報告書に出てまいります。
このATENAという組織は電事連の枠を超えて、原発を持つ電力会社だけじゃなくて、もともとの電事連、そしてメーカー、日本電機工業会、そして原子力産業協会、電力中央研究所から構成されておりまして、まさにこの組織が電事連のやっていた規制当局との対話を行うというふうに位置づけられているんですね。
二〇一九年四月十七日に原子力規制委員会と主要な原子力設置者との意見交換会というのがありまして、これは規制委員会のホームページで見れるんですが、そこに配付されている資料にはこうあるんです。「今後、全ての共通的な規制課題に的確に対応していくため、これまで電事連が担ってきた規制課題の検討機能をATENAに移管する。」そして、「事業者としては、ATENAの独自のガバナンスの下、ATENAが持つ専門性を活かしながら、規制当局との対話を進めたい。」と。専門性とか対話とか、聞こえはいいんですけれども、本音は違うんですね。
エネルギー政策研究会の旬刊EPレポートというものがあるんですが、これを見ますと、要するに、つくられた背景として、原発などの審査が長期化し、その煩雑さに事業者の不満が高まっていた、電力会社には規制行政に不満がたまっていた、そのため、業界横断的な組織が必要であるとの認識が出ていたということが紹介されております。まさに不満に応える組織なわけであります。
もう一点紹介したいのは、このATENAというのは、アメリカの原子力エネルギー協会、これはニュークリア・エナジー・インスティテュートでNEIという組織ですが、これをモデルにつくられております。
配付資料の一を見ていただければと思うんですが、これは総合資源エネルギー調査会に配付された資料でありますが、実は、ことしの夏、当委員会が視察を行いまして、アメリカに、私も参加させていただいて、このNEIからもお話を聞き、NRCからもお話を聞いてまいりました。
いろいろおもしろいといいますか興味深いお話を聞いたんですけれども、例えば、NEIの年間予算が五十億円あって、それには六人のロビイストの活動費を含むとか、あるいは、さまざまな宣伝費が四〇%を占めるとか、なるほどなというお話でありましたが、印象に残っていますのは、規制当局にコモンボイスを伝えるんですというんですね。配付資料にはワンボイスと書いているんですけれども、コモンボイスを伝えると。このNEIを参考にしてATENAがつくられたということなんです。
先ほど、石橋参考人は、規制のとりこが再び生じないようにすることが大事だということで、透明性と対話の重要性も、まあ、透明性ということをおっしゃったんですけれども、これは電事連時代のデータなんですけれども、先ほど言いました二〇一九年四月十七日の意見交換会で主要原子力施設設置者が配付した資料によりますと、二〇一七年度は、これは電事連時代ですけれども、電事連と規制庁の公開会合というのは三十七件で、非公開の面談というのが二百七十四件行われております。二〇一八年度は、公開会合は二十二件で、面談が二百三十二件ということなんですね。いずれの年も非公開の面談の方が圧倒的に多いわけであります。
しかも、二〇一七年と二〇一八年を比べますと、全体の非公開の面談数は、二〇一七年は二百七十四件から、二〇一八年は二百三十二件に減っているんです。減っているんですけれども、その面談で何を話したんですかというテーマ、これも公表しておりまして、テーマを見ますと、検査制度見直し対応の面談というのが、二〇一七年度の六十三件から、二〇一八年度は九十四件に大幅に増加をしております。つまり、電事連自身が検査制度見直し対応に非常に力を入れていたということがわかるんですね。
これは三人の参考人にお伺いしたいんですが、いわゆる提言四では、ここの委員会が規制機関をもちろん監督するんだけれども、事業者が不当な圧力を規制委員会に加えないようにすべきだとも提案されておりまして、それとの関係で、このATENAというのは電事連よりもはるかにスケールが大きくなっており、そして、電事連が、この間、検査制度の見直しに力を入れてきたことを、更に専門性というものを生かして強化しようとしている。これは、私は、事故調の提言四で述べられているいわゆる委員会の意思決定過程に対する干渉、これの度合いが強まる懸念があると思うんですが、この点について、三人それぞれ、どのようにお考えでしょうか。
○ 黒川参考人 おっしゃるとおりだと思います。
やはり数を入れると力が強くなるというのはそうですが、実を言うと、この調査のときにもアメリカに行きましたけれども、あっちは電事連みたいなのがありますよね。チェルノブイリからじゃなくて、あそこの……(藤野委員「スリーマイル」と呼ぶ)からつくりまして、あれは何をしているかというと、聞いたんですけれども、あれは公開はしていないけれども、保険会社には公開しているんですね。それは何をやっているかというと、どこかで事故が起こるぞとか、どこかで何かがちゃんとやっていないということがわかっちゃうと保険料が変わっちゃうんですよ。だから、みんな、それで、一番いいプラクティスをやろうという話でやっているんですね。
日本はそれをまねしているんだけれども、趣旨が全然違うんですね。
一発どこかで起きたらば、俺たちの信用ががた落ちになるから、みんないいことをやっているというのをシェアしようということをやっているんですね。しかも、それにいるのは、公開はしていないけれども、保険会社を入れているから、それで一発食らっちゃうという話でやっています。つまり、保険会社が、やっていることをみんな知っていれば、全部がいいことをしようという話のインセンティブをつけておりますね。全然発想が違うなと。日本は、何か逃げまくろうという話ですから。
そこが、お国にオーソライズされて何か悪いことをしようと思っているので、それが、実を言うと、あの後、東電の人たちに、あなたたち、入っているのと言ったら、入っていますよと言うから、それじゃ、やり方を知っているんでしょうと言ったんですけれども、やらないですね。それがロスト・イン・トランスレーションだと思いますけれども。
国情の違いもあって、向こうの場合、やはり業界の信頼が落ちるということが一番のガバナンスの基本だということがわかっているので、保険会社と一緒にやるという話が知恵でした。その辺が、都合のいいときだけとるんですよ、こういう話は。そこのところが一番の問題で、そういうのは法律をつくるのか規制をするのか、ちょっとわかりませんけれども。
一番大事なことは、原子力というのはグローバルなエナジーで、CO2を出さないということでやっていますから、この失敗をいかに、これからつくっているところとも共有しようというのが日本の責任として非常に大事で、特に中国は百つくろうなんて言っていますけれども、一発起きたらまた同じことが起こるので、日本は、ぜひ、そういうのは公開の場でいろいろな人とやるのが一番いいんじゃないかな。
MITでもそのことはしゃべったんですけれども、そのときは、ナイジェリアとか、いろいろな人が来ていたので、アフリカでもいずれ原子力をつくろうと思っているんだなということはわかりましたので、やはりなるべく日本のやり方を共有して、お互いにいいところ、悪いところがわかった上で、平準化というか、セーフティーをしなくちゃいけなくて。
先日も、キャストさんというのが時々来ていますけれども、東電のコンサルで来ているんですけれども。彼が最初に日本に来てくれましたよね、あのときすぐに来て、セーフティーの先生ですから。でも、彼も本当にセーフティーのことは、セーフティーとずっと言っていますけれども、やはりそういうところでは、彼は本当に日本のことをあのとき救ってくれた人ですけれども、今でも年に何回も来てやっているよとおっしゃっていたので、そういうところの話も聞いてみるのが大事で。
やはり日本の場合は、すごく問題は、日本語の壁というのがあるんですよ。やはり、みんな英語で全部同じリポートも出していると何をしているかもっとわかっちゃうんですけれども、意図的に英語を出していないところもあるのかもしれないけれども、そういう意味では、ぜひ、そういうコンソーシアムを守るんじゃなくて、世界と共有するというのが、財界でもないんじゃないのかなというのが私の懸念です。
○ 石橋参考人 ありがとうございます。
先ほど藤野先生御指摘の国会事故調の提言ですけれども、お手元にありますダイジェスト版の二ページ目に、提言四、「電気事業者の監視」というところがございます。御引用いただいた太字の二行目です。「国会は、提言一に示した」以下、「厳しく監視する必要がある。」とあります。この文章の主語は国会です。「事業者が規制当局に不当な圧力をかけることのないように厳しく監視する必要がある。」のは国会です。
その具体的な内容として、提言四の4)というところがございます。「以上の施策の実効性を確保するため、電気事業者のガバナンスの健全性、安全基準、安全対策の遵守状態等を監視するために、立ち入り調査権を伴う監査体制を国会主導で構築する。」というふうに御提言をさせていただいております。ぜひ御検討いただければと思います。
また、御質問にありました、公開の御検討と、非公開の御検討なのか意見交換なのかわかりませんが、がございましたということがございます。
提言五に、「新しい規制組織の要件」の「2)透明性」の3というところがございます。「推進組織、事業者、政治との間の交渉折衝等に関しては、議事録を残し、原則公開する。」ということを書いております。
これら先ほど申し上げた提言四、提言五の実施状況を監視するのは、提言一の「4)この委員会はこの事故調査報告について、今後の政府による履行状況を監視し、定期的に報告を求める。」これを監視するのはこの委員会の先生方です。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
○ 藤野委員 これ、もう一点指摘したいのは、これを推進しているのは実は経済産業省だということなんですね。
時系列で見ていきますと、「新たな組織の設立などメーカー等も含めた」、電事連に加えてですね、「メーカー等も含めた産業大での連携を強化」ということがエネルギー基本計画に載っている。
その上で、世耕前経済産業大臣は、昨年五月二十三日の衆議院経産委員会などでこう言っているんですね。「産業大で」、産業全体で「信頼性向上につながる共通の課題を設定して、効果的な対策を検討、普及させていく新たな組織づくり」と。組織づくりを明確に政府が旗を振っているわけです。
そのもとで、経済産業省の審議会の一つである総合資源エネルギー調査会の自主的安全性向上・技術・人材ワーキンググループというのがありまして、ここで、いわゆる原子力の継続的な安全性向上のための自律的システムの確立を目指す、こういう方針が出されました。
ですから、まさに政府の方針のもとで検討が重ねられ、自主的という名のもとに、自律的、ATENAというものが設立されたというのが時系列でそうなっております。
自主的と言うと聞こえはいいんですけれども、結局、自主的という名のもとに規制すべき当局が規制のとりこになっていったというのが、我々が最大の教訓にすべき問題だというふうに思うんです。
そういう意味で、今度は益田参考人からお聞きしたいんですが、今回、政府主導で、こうした自主的とか、いろいろ、言葉はあれなんですけれども、そういう構造が復活させられている。石橋参考人御指摘あったようなことをもちろん我々もやらないといけないんですけれども、それを大きく乗り越えるような動きも一方で起きているという、この動きについてどのようにお感じでしょうか。
○ 益田参考人 御質問ありがとうございます。
政府主導でそれを乗り越えるというのは、ATENAの組織の話かというふうに理解しておりますけれども、乗り越えているのかどうかわかりませんけれども、同じ、ともに歩んでいると、ちょっと言葉が済みません、いて、なので、お話を伺っていたときに、原子力規制委員会対そのほか原子力関係の方々というような構図ができ上がっているところが、福島の事故の前と後での大きな違いなのかな、変化なのかなというふうには感じました。
原子力の話の参考になる話として、評価の世界での話、中立的な組織がいかに独立を保ちながら有効であるか、あり続けられるのかというところからGAOの話をしたいと思いますけれども、GAOがやはり今ある影響力を持っているのは、有効な組織として理解されているのは、何も法律や制度で支えられているからというそれだけではなくて、同じ評価、専門家又はその内部監査をするような人間たちがともにガイドラインをつくって、それも定期的に更新をしているんですけれども、そのような形で、共通の倫理意識や共通規範というものをシェアして、それに基づいて私たちは一緒に仕事をしていますというような仕組みづくりをGAOが率先して行っています。
なので、そのようなともに倫理や規範を共有するような仕組みというものを独立機関が主導してつくっていくということは、仕掛けとしては必要なのではないかなと。そういう工夫をGAOはとっているということであろうかと思います。
まだ申し上げられるのは、あと、アメリカの場合は、ちょっと日本のケースは、もし本当に国、経済産業省と同調するような形で民間が動いているというのであれば、なかなかアメリカとの動きとも違いがあるのかもしれませんけれども。
先ほど、評価政策と評価文化の相互作用、文化の成熟度についての表をお見せした、その論文の後半は何が書かれているかといいますと、まさに政府の方針にいろいろなロビー活動が行われていくんですけれども、その評価手法に関するロビー活動に対して学会が、それまでは巨大な学会ですのでそれほど重視してこなかったんですけれども、評価手法が、ある一つのものが、単一のものがいいという方になってはいけないということで、学会側が新たにロビー活動的なものをつくって、きちんとアカデミックなバックグラウンドから、こういうことが正しいんですというふうに政府の方に訴えていく。
つまり、民間で新たな動きが出てくるかどうかというのが日本の民主主義と成熟度とも関係してくるんですけれども、そうしたことに期待をせざるを得ないのかなというふうに思います。
済みません、長くなりました。
○ 藤野委員 済みません、ちょっと時間があれですが、ちょっと黒川委員長に。
今言った自主的な規制に干渉していく、要するに規制機関の意思決定に業界が干渉していく懸念というのが私は強まっていると思うんですが、それが政府が実は旗を振っているという点についてはどのようにお感じになるんでしょうか。
○ 江渡委員長 黒川参考人、お時間ですので、手短にお願いします。
○ 黒川参考人 今、世界の全体を見てみるとそうですけれども、福島が起きてからというのもそうですし、CO2、グローバルウオーミングがあるにもかかわらず、やはり脱原発へ全体が動いていますね。日本だけですよ、まだやろうやろうと言っているのは。そういうのが世界の見方なので、むしろリニューアブルにどんどんしていますから、ヨーロッパも。何で日本だけそうなのかなというのは、そこに金目のものが大分あるということですよね。だから、それをどういうふうにしてひっくり返すかというのは、政府は責任とりませんから、だからやはり国会がしっかり見ていないとまずいんじゃないですかね。世界とは全く日本は変わっている。広島、長崎、福島、それでまたやっているわけという話で、ちょっとミステリアスですね。
○ 藤野委員 ありがとうございました。質問を終わります。
作成者 : fujinoyasufumi