法務委員会 性暴力をなくすための刑法改正について質問
- 会議録 -
○ 松島委員長 次に、藤野保史さん。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
私は、性暴力をなくすための刑法改正について質問いたします。
ことし四月から、毎月十一日にフラワーデモというものが行われております。十一月は、東京駅前の広場で三百人が参加をいたしまして、私も参加をしてまいりました。これは、デモという名前がついていますけれども、実際には、何か行進したりするわけでもなく、性暴力の被害者の方あるいは支援者の方が静かにお話をされる、そういう場でございます。
今月の十一日、ある女性は、兄弟がたくさん寝ているその場所で、子供のころ、父親に性暴力を受けたと。私が家族を守らないといけないという思いで、母親にも相談できなかった。家族を守るために黙っていたはずなのに、あるときからその家族に殺意を抱いてしまって、自分も自殺しようというふうにずっと思っていた。しかし、この場で、そのフラワーデモの場で話すことで、初めて死にたいという気持ちが消えていきました、こういうお話でした。
男性もいらっしゃっているんですね。ある男性は、男が来ると嫌がられるかもしれないと思ったけれども、結構来ていて安心した、自分のほかにも。初めは自分も関心がなかったけれども、いろいろ知るにつれて、これは女性や被害者だけの問題ではない、社会全体の問題だし、自分自身の問題だと思うようになった。だから、きょう初めて参加しました、こういう若い男性でありました。
大臣、今このフラワーデモというのは、全国二十七都市、海外にも広がっているんですね。
ちょっとお聞きしたいんですが、なぜこのフラワーデモがこの短期間にこれだけ広がっているのか、大臣はどのようにお感じでしょうか。
○ 森国務大臣 藤野委員にお答えいたします。
フラワーデモについては、性被害を経験した方やそれを支援する方がみずからの経験を語るなどし、その思いを共有するとともに、性犯罪、性暴力を許さないという声を上げる場として、毎月十一日に全国各地で開催されるようになったものと認識しております。
それぞれの皆様の体験や人生の中でさまざまな思いがあると思いますが、私なりの理解を申し上げますと、性犯罪や性暴力は、被害に遭った方の心身に大きな苦痛を与え、その方の人格や尊厳に取り返しがつかない傷を負わせるものであり、そうであるがゆえ、みずからの性被害経験を語るということは、多くの場合、大きな心理的抵抗を伴うものであるところ、性犯罪や性暴力を絶対に許さないという強い思いに基づいてみずから声を上げた皆様が集まることによって、多くの人がその思いに共感して行動をともにし、また、それに後押しされる形で、これまで声を上げることができなかった人も声を上げるようになっているなどの意義があるものと考えております。
○ 藤野委員 ありがとうございます。
このフラワーデモを主催している団体のフェイスブックを拝見しますと、やはり一つの大きなきっかけとして、ことしの三月に四つの地裁判決が連続したということが紹介されているんですね。
三月十二日の福岡地裁、これは、女性が抵抗できなかったという状況を認定しながらも、男性が、加害者が、女性が合意していたと勘違いしていたという理由で無罪になっている。
三月十九日の静岡地裁は、女性が暴力を振るわれて反抗が困難だったということを認めた上で、被告から見て明らかにそれとわかる形での抵抗はなかったという理由で、これは無罪になっている。
三月二十六日の名古屋地裁は、娘が中学二年生のときから性虐待をしていた父親が、その性虐待を認めながらも、抵抗しようと思えばできたという理由で無罪になっている。
三月二十八日の静岡地裁は、当時十二歳の長女を二年にわたって性暴力をしていた父親に対して、少女の、被害者の証言が信用できないというのを主な理由として、無罪になっているわけですね。
そのフェイスブックを拝見しますと、こういう言葉があるんです。もう黙るのは嫌だ、黙ることでなかったことにされるのはもう嫌だ、合意のない性交が罪にならない社会は嫌だ、そのために何ができるか、まずは話し合おう、考えよう、痛みを分かち合いながら、こういう言葉でございます。こういう思いで始まったものが今全国に広がっている。
そして、やはりこの刑法改正を求める声が一体となって広がっていると思うんです。あったことをなかったことにされる、そういう社会を変えていくんだけれども、その変えていく上で、やはりこの刑法改正というのが不可欠だということだと思うんです。
大臣、今、ワーキンググループ、取り組まれていると思うんですが、これは来年春ということですけれども、しかし、実際、間に合うのか。もう施行から三年たつわけですね、来年。それとの関係で、私は、この声の広がりに応えるためにもしっかりと間に合わせていくべきだと思うんですが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
○ 森国務大臣 平成二十九年七月に施行された刑法の一部を改正する法律の附則第九条は、政府に対し、施行後三年を目途として、性犯罪における被害の実情、同法による改正後の規定の施行状況等を勘案して、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策のあり方について検討を加えることを求めるものでありまして、法務省では、その検討に資するため、御指摘の性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループを平成三十年四月に設置して、性犯罪被害者を含めたさまざまな立場の方からヒアリングを実施しているほか、改正後の規定の施行状況の調査、無罪判決等の収集、分析、諸外国の法制及びその運用の調査研究等を進めているところでございます。
御指摘のとおり、その結果については来年春ごろを目途に取りまとめ、三年目途というところに間に合うように鋭意行っているところでございますが、性犯罪の実態に即した対処を行うための法整備については、それらの各種調査研究の結果やさまざまな御指摘を踏まえ、十分に慎重な検討を行う必要もありますので、引き続き、着実に、かつ適切に対応してまいりたいと思います。
○ 藤野委員 これは、大臣の先ほど答弁があったように、性暴力というのは人格に取り返しのつかない傷を与えると大臣はおっしゃいました。そのとおりだと思うんです。こうしたことをやはり先延ばしにすれば、またさらなる被害者が生まれるわけですから、これは三月に向けてその取組を加速していただきたいというふうに思います。
そして、法務省にお聞きしたいんですが、刑法の百七十六条、百七十七条は、改正された後でも十三歳というものが残っております。
この十三歳という年齢で暴行、脅迫要件を必要とするかどうかが分かれるわけですが、なぜ十三歳未満の者はこれが不要になるのか、これはどういう理由からでしょうか。
○ 小山政府参考人 お答えを申し上げます。
現行刑法は、十三歳未満の者につきましては、一律に、性的行為に関して同意、不同意を決する十分な判断能力がないものといたしまして、暴行、脅迫がなくても強制性交等罪が成立することとしているところでございます。
この年齢についてのお尋ねですが、これは、経緯を申しますと、明治十三年太政官布告であります旧刑法におきましては、十二歳未満と規定されておりました。これが、現行刑法が制定された明治四十年に十三歳未満に引き上げられたものと承知をしております。
また、この年齢が十三歳未満とされた理由でございますが、これは、過去の文書を見ますと、現行刑法の制定当時であります明治四十年の刑法改正案理由書におきましては、女子発育の程度を探求したる結果改正を加えたるものなりなどとされているところでございます。
○ 藤野委員 私が聞いたのは、例えば、コメンタールに載っている解説によりますと、十三歳未満の者は、わいせつの意味を十分に理解できず、同意能力にも欠けるため、暴行又は脅迫によらない場合であっても本罪を構成する、こういうふうに説明されておりますが、こういう理解でよろしいですか。簡潔に。
○ 小山政府参考人 御指摘のとおりと思いますが、性的自己決定をする能力が欠けていると申しますか、不十分ということが前提になっているかと考えております。
○ 藤野委員 その前にもおっしゃったんですけれども、現行刑法の十三歳という要件は、これは明治四十年ですから一九〇七年なんですね。実に百十二年前の法律でありますし、この刑法がモデルにしたのはフランスの刑法典ですけれども、これは一八一〇年なんです。ということはもう二百九年前でして、いわゆる性交同意年齢というのを、二世紀以上前、二百年以上前の発想に合わせていまだに十三歳にしているというのは、これもやはりちょっと時代に合わないし。
この考え方の発想というのは、私は今の刑法典の構成にも残っていると思っていまして、刑法は、御存じのように、保護法益ごとに条文がまとめられているんですが、性犯罪というのは第二十二章なんですね。その前後に何があるかというと、二十一章は虚偽告訴罪、二十章は偽証罪であります。二十二章の後ろに何があるかというと、賭博罪があったり、二十四章は礼拝所及び墳墓に関する罪があったり、二十五章は汚職なんですね。つまり、社会的法益なんです。社会的道徳を守ろうという、いわゆる姦淫とかですね、そういうものを守ろうという発想の中で刑法が組み立てられて、二十二章に性犯罪が入っていて、これを乗り越えようと二〇一七年に議論があったというのは私も承知しておりますけれども、いまだにここの章にあるというのは、やはりそうした残滓が残っているんだというふうに思います。
二〇一四年七月には国連人権規約委員会、そして二〇一六年三月には女性差別撤廃委員会から、それぞれこの年齢についても懸念が示されております。
今検討されているのは承知しているんですけれども、その上で、一般論なんですけれども、法務省にお聞きしますが、一般論として、性的自己決定権とおっしゃいましたが、能力とおっしゃいましたが、そうした能力にいろいろな理由で欠けてしまう、理解能力とか同意能力とか、そういうものが欠けてしまう者はやはり法的には保護しないといけないというのが一般的な理解である、そういうことでよろしいですか。
○ 小山政府参考人 お答えを申し上げます。
刑法は、強制わいせつ罪、強制性交等罪等の規定によりまして、性的自由又は性的自己決定権を侵害する行為を処罰しておりますが、委員御指摘のように、性的自己決定をする能力が欠けている者に対する性的行為につきましては、御指摘のような、十三歳未満の者について、暴行又は脅迫がなくても強制性交等罪が成立するものとし、あるいは、その者が障害等のため、障害も含めまして、心神喪失、抗拒不能の状態にあるようなときは準強制性交等罪が成立するものとし、保護の対象としているところでございます。
○ 藤野委員 ちょっと答えがずれているんですね。
私は、年齢というのは、あくまで一つの線は引かれるとは思いますが、趣旨というのがそこにはあって、やはりその趣旨からすれば、例えば二十歳になっていてもそういう能力が欠ける場合、今からやりますけれども、障害児者のような場合は、本来であれば保護の対象にしないといけない。しかし、実際の裁判例を見ますと、二十歳だからという理由で形式的に判断したりする、そういう実務があるわけですね。ですから、それはやはりおかしいというふうに思うんです。
今からちょっと障害児者への性暴力に対する話も伺っていきたいと思うんですが、まず、先ほどちょっと小山刑事局長の答弁であったので確認したいんですけれども、今いろいろ検討されているのは私も知っているんですが、裁判例というところで、先ほど、平成三十年度までの一審事件について、いろいろ判決書の送付を受けているというような答弁があったと思うんですが、三十年度までということでよろしいですか。
○ 小山政府参考人 裁判例の調査でございますが、これは平成三十年度に、平成三十年度の一年度に第一審判決が言い渡された事件を対象としております。
○ 藤野委員 三十一年度は含まないんですね。
○ 小山政府参考人 はい、現時点では含んでおりません。
○ 藤野委員 先ほど言いましたように、フラワーデモが始まったきっかけというのは、三十一年度です、二〇一九年度に起きた地裁判決なんです。これを、なぜ無罪になったのかという分析なくして、今度の刑法改正をやろうというんでしょうか。私は、それはちょっと違うんじゃないかと思うんですね。
平成三十一年度もぜひ加えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○ 小山政府参考人 お答えをいたします。
先ほど申しましたのは裁判例の調査でございますが、この調査のほかに、改正後の規定の施行状況の調査がございます。
これは、全国の検察庁から、平成二十九年七月十三日以降に起訴した事件のうち、強制性交等罪及び準強制性交等罪を適用した事件で肛門性交等の実行行為があるもの、強制性交等罪等で被害者が男性である事件、監護者わいせつ、監護者性交等を適用した事件、これは、要は新法によって新たな規定ができた事件につきまして、その裁判結果等について報告を受けているほか、監護者わいせつ、監護者性交等を適用した事件については、不起訴とした事件についても、その事案の概要等について報告を受けているところでございます。
○ 藤野委員 いや、答えていないんですね。三十一年、実際にもう地裁判決がおりているんです、起訴云々じゃなくて。
この三十一年の三月以降の四つの判決は分析対象なんですか、結局。
○ 小山政府参考人 そのほか、いろいろ……(藤野委員「四つがどうかだけ答えてください」と呼ぶ)はい。それは、社会の耳目を集めた性犯罪事件につきましても、判決書の収集、分析は行われることとされております。
○ 藤野委員 耳目を集めていますので、これは含まれるというふうに明言してください。
○ 松島委員長 小山局長、はっきり答えてください。
○ 小山政府参考人 現時点で、少なくともその事案自体の判決書は収集はしてございます。
○ 松島委員長 四つが含まれるということですか。
○ 小山政府参考人 事案自体の判決書は収集しております。それをどのように分析することになるかにつきましては、現時点では確たることは申し上げられません。
○ 藤野委員 この四つを分析せずに今度の刑法改正というのは、私はあり得ないと思うんです。
一つだけ紹介しますけれども、例えば、静岡の事案でいえば、被害者の少女が児童相談所の職員に、前日には、また家に帰らないといけないというので、もう告白したというんですね、こういうことを受けていると。そのときに、毛布にくるまって顔面蒼白であるなどということが認定されているんです、判決の中で。にもかかわらず、判決で何と言っているか。
しかし、実際には姦淫被害がなかったにもかかわらず、本件被害者が姦淫被害があるかのように振る舞った可能性を否定することができないと。十二歳の少女がね。
あるいは、PTSDテスト、このテストが数値が高いと、要するに信憑性が高いということなんですけれども、被害を誇張して申告することで容易に高い得点を得られるものであることは明らかであってと、こういう認定もある。
さらには、この被害者は知的障害があるんですけれども、知的障害だから性的知識がどうかという点についても、知的障害はあるけれども、架空の性被害を訴える程度の性的知識を獲得していた可能性は否定できない、ここまで言うんです。
こういう認定がなぜ行われたのかということも含めて、ちょっとやはり、分析をしているとおっしゃるわけですから、分析していただきたいと思うんですね。
その上で、お聞きしたいと思うんです。
NPOしあわせなみだの中野宏美さんからもお話をお聞きしました。そういう意味で、こうした現状、裁判実務が生まれてくる大きな理由として、被害者が障害児者であることをやはりしっかり法律で構成要件化すべきだという指摘があるんですね。これは山川委員からも御指摘がありました。
これは、二〇一四年の十月、当時の松島法務大臣、委員長の御指示で法務省に性犯罪の罰則に関する検討会が設置され、二〇一五年八月に取りまとめ報告書が提出されております。
これは、私は、松島委員長、当時大臣の指示は大きいと思いますし、やはり与野党を超えてこの問題は取り組んでこられたということに敬意を表したいと思うんです。同時に、やはり与野党を超えて国会を動かしてきた被害者の方、そして関係団体の方に、本当に心から敬意を表したいと思います。
そういう取りまとめられた報告書の中に、そういう一文もあるんです。ちょっと十八ページ、もうこちらで紹介させていただきたいと思うんですが、この取りまとめの報告書の十八ページにこうあるんです。
「基本的には、強姦罪における暴行・脅迫要件を撤廃することが望ましい。もっとも、撤廃までは難しいということであれば、強姦罪の本質は不同意性交の罪であることを前提に、現行法で強姦罪及び準強姦罪の要件とされている暴行、脅迫、心神喪失、抗拒不能に加え、」この後です、「不同意の性交を類型化する要件として、例えば、不意打ち、偽計、威力、薬物の使用、被害者の知的障害などを要件化することを検討するべきである。」こうあるんですね。知的障害などを含めて要件化することを検討すべきだとあるんです。
大臣、この指摘は私は重いと思います。今後の検討に当たっても、この知的障害を含む要件化を検討すべきではありませんか。
○ 森国務大臣 御指摘の、松島みどり元大臣時代に御指示があって行われた性犯罪の罰則に関する検討会では、不同意の性交を類型化する要件として、委員御指摘のような、不意打ち、偽計、威力、薬物の使用、被害者の知的障害などを要件化することを検討すべきであるという意見が述べられております。
また、先ほど申し上げた実態調査ワーキンググループにおいては、障害者への性暴力に関する啓発活動を行う団体からのヒアリングで、障害に乗じた性犯罪を規定すべき、被害者が障害者であった場合、抗拒不能状態として認定すべきといった意見が述べられております。
平成二十九年の刑法一部改正法の附則第九条に基づく検討の具体的な対象事項については、各種調査研究やヒアリングの結果等を踏まえて決めていくこととなりますので、現時点でお示しする段階にはございませんが、委員の御指摘もございますので、充実した検討を行うことができるよう、私も適切に対応してまいりたいと思います。
○ 藤野委員 その際、外国の法令も分析していると大臣もおっしゃいました。
法務省に簡潔にお聞きしますが、検討会の段階で、どの国及び州で障害者の構成要件化、障害者の規定というのが具体化されているでしょうか。
○ 小山政府参考人 まず、障害のある者に対する性犯罪処罰規定でございますが、概要でございます。
まず、アメリカですと州法になりますが、ミシガン州、ニューヨーク州、カリフォルニア州がございます。それから、イギリス、イングランド及びウェールズにございます。それから、フランス、ドイツ、韓国、我々の承知しているところはそういうところでございます。
○ 藤野委員 ですから、そうした実践も行われて、運用も行われております。そういう点で、定義等の検討というのは確かにあると思うんです、難しさもあると思いますが、しかし、やはりそこに向けて、いずれ避けられない課題ですから、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
もう一点、法律をつくるだけではなくて、いわゆる司法面接の問題があります。先ほど山川委員からも指摘がありましたが、子供の場合は既にもう取組も進んでいて、警察庁も通達を出して、厚労省及び児相と警察が三者で面接を、やはり知的障害があるとか発達障害があるということを前提にして、じゃ、どう聞き取りをするのかという、その聞き取りのスキルを、スキルと言うとあれですが、非常に、率直に言って、やられているんですね。
障害者の場合はどうかというと、これが、意識はされているんだけれども、まだ進んでいない。
警察庁の附属機関である科学警察研究所犯罪行動科学部捜査支援研究室というところが、知的障害者のコミュニケーション特性と面接スキル、そういうものをまとめていらっしゃいます。これは、まさに今言いました、子供ではなくて、障害者における聞き取りの方法など、こういうことを気をつけようということでまとめられているんですね。私、これは大変大事だなというふうに中身を読ませていただきました。
ちょっと時間がないのであれですけれども、例えば、面接における知的障害者の特徴というのは六つ挙げていまして、まず、認知能力だけで六つ。長期記憶が弱い、細部の記憶が曖昧な可能性もある、基本的な知識を獲得していない、面接官の言葉がわからないこともある、衝動性をコントロールできない、注意力維持が難しい、ストレス対処能力が低いとかですね。
あるいは、コミュニケーションについても、失敗体験を繰り返してきたため他人に頼る傾向が強いとか、あるいは偏った答え方、例えば、はいと答える傾向が強いとか、あるいは権威者を喜ばせたいという願望があるとか、あるいはいわゆる被誘導性、誘導されてしまう、こういう性質が高いとか、いろいろあるんです。
こういうことを踏まえて、知的障害者に対する質問の十のガイドラインとかがつくられている。
そういう意味では、警察庁もこういう認識はお持ちだというふうには思います。ただ、これが実際に取組まで広がっているかというと、なかなかなっていないというふうに思うんです。
ですから、これはちょっと聞きたいんですけれども、今後、こうした取組、これは確かに省庁を超えておりますが、やはり法務省がしっかりとイニシアチブを発揮していく、この決意をちょっと簡潔にお願いいたします。
○ 小山政府参考人 お答えいたします。
被害に遭われた障害者の方が意思疎通等を円滑に行うことができるような配慮というのは極めて重要だと思います。
司法面接に限らず、検察におきましても、心理、福祉関係者から知的障害者等の供述特性、発問方法に対する助言を受けるなどの取組をしているところではございますけれども、今後も、関係、警察等々も含めまして、連携を強化してまいりたいと考えております。
○ 藤野委員 先ほど言った静岡の三月二十八日のものは、少女の証言が信用できないということなんです。こういう聞き取りをやっていたら、そういう認定になったのかというふうに本当に私は思います。
ですから、これは確かに省庁を超えますけれども、しっかり法務省がイニシアチブを発揮していただきたいと思います。
最後になりますけれども、大臣にお聞きしたいんですが、伊藤和子弁護士が本を出されていまして、「なぜ、それが無罪なのか!?」という本なんですね。国際人権NGOのヒューマンライツ・ナウの理事でもいらっしゃる、事務局長でもいらっしゃるんですが、この方、伊藤先生は、ミー・トゥー運動がアメリカで広がったときにちょうどアメリカにいらっしゃって、リアルタイムでその広がっていく様子も体験されたというんです。
しかし、日本に帰ってくると違っていたと。日本では、ミー・トゥー運動を積極的に取り上げるメディアはほとんどなくて、むしろ、取り上げた場合は、日本は何で盛り上がらないんですかとか、日本は何でこういう状況なんですかという、そういう言質をとろうとするような、水を差すような役割を、そういう取材を伊藤さん自身が受けられたということが紹介されております。
やはりそれを通じて感じられたのは、日本は性暴力被害者に対して厳しくて声を上げられない、そういう状況であるわけですね。
しかし、そんな中で諦めずに、女性たち中心に声を上げ続けているということで、フラワーデモも始まって、広がってきているわけで、スプリングとかヒューマンライツなどは、集められた署名は四万五千筆を超えて、前大臣の山下大臣にも提出をされているということであります。
やはり法務省の役割は私は大きいと思うんですね。法務省が行っているワーキンググループの第七回には、専門家から、実態を踏まえた研修の充実、研修、これは個人差を解消するために重要だという提案、あるいは、潜在化している被害をなくすために、広報の重要性、法務省が発信していくということが重要だという提案もされております。
大臣は、先ほども正義を実現していくということをおっしゃいました。刑法改正がこれは非常に重要なんですけれども、それと同時に、あわせて、やはりそうした研修や広報、あるいは法務省としてできることは全てやる、こういう認識でよろしいか、そういう決意でよろしいかということを、最後、お聞かせください。
○ 森国務大臣 藤野委員御指摘のとおりでございまして、性犯罪被害の防止に当たっては、被害実態の広報啓発や、関係職員等に対する研修の充実が重要であると思っております。
法務省においては、これまでにも、検察官に対し、経験年数等に応じた研修等の機会において、性犯罪被害者の実態に関する講義等を実施してまいりました。
今後も、性犯罪ワーキンググループでの御意見も踏まえまして、関係府省や関係機関と必要な連携を深めるとともに、関係職員に対し、被害実態の内容を踏まえた研修等を充実してまいりたいと思います。
○ 藤野委員 研修と、あと、やはり裁判官へのさまざまな取組や広報ですね、こういうものにも取り組んでいただきたいと思います。
この問題はことしから来年にかけて最大の問題になりますので、引き続き取り組むことを述べて、質問を終わります。
作成者 : fujinoyasufumi