法務委で外国人弁護士法改定案について質問
2019年11月29日 国会論戦
法務委で外国人弁護士法改定案について質問しました。
米国では、法律事務所の売上高は2831億ドル超。石油業(1653億ドル)、鉄鋼業(2209億ドル)を上回る超重要「産業」なのです。まさに巨大ビジネス。
これに対して、日本の弁護士は「社会正義の実現」(弁護士法1条)を使命とするなど、米国とは弁護士業務の位置付けが全く異なります。
- 会議録 -
○ 松島委員長 藤野保史さん。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
早速質疑に入らせていただきます。
今回、外国弁護士制度をまた改正するということですが、我が党は必ずしもこの制度自体を否定しているわけではありません、当然ながら。ただ、これは、歴史的にも、そして今現在の問題から見ても、やはりしっかり考える必要があるというふうに思っております。
歴史的に見ますと、日本における外国人弁護士制度というのは非常に複雑な歩みをしてきたと思うんですね。
第二次世界大戦に敗戦した後、一九四九年に弁護士法が制定されるわけですが、そこには、七条で外国人弁護士受入れ制度というのが設置をされておりました。この七条というのは、もう極めて緩く外国人の弁護士の方を受け入れるということを認めておりまして、他国に例を見ないと。当時の議事録を読みますと、極めて一方的に受け入れる寛大な制度であるというふうに言われておりまして、これは独立国にふさわしくないということで、一九五五年に弁護士法七条は削除されております。この七条というのは、いわゆる日本に法曹資格を持たない者が、日本人に関することで、事案で、日本法に関することも全部できるようになっていたんですね。それは独立国にふさわしくないということで廃止をされたわけであります。もともと、こういう歴史から日本の弁護士制度というのは始まっているということなんです。
その上で、戦後、そういうものを廃止した上で、やはり日本の弁護士制度というのは何なんだろうということが議論され、制度的にも内容的にも特徴と伝統を持つ制度がつくられてきたと思っております。法曹一元という考え方から出発して、弁護士自治という制度もこれは持っておりますし、在野法曹として、弁護士法には第一条で、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」こういうことがしっかり在野法曹についても位置づけられている。これはやはり日本の弁護士制度の私はすぐれた点だというふうに思っております。
大臣にちょっと確認したいんですけれども、一九九六年五月三十一日の当委員会で、正森成二委員の質問に対してこういう答弁があるんです。外国弁護士問題等につきましては、弁護士法七十二条の趣旨、あるいは、弁護士法第一条に定められております弁護士の使命等と密接な関連を持つものであることを踏まえまして、内外の諸情勢に応じた適正、妥当な解決を図っていくべきものである、このように考えております、こういう法制調査部長の答弁があるんですが、大臣、基本的な考えは今も同じである、こういう理解でよろしいでしょうか。
○ 森国務大臣 外国弁護士制度については、弁護士法第七十二条の趣旨や、弁護士法第一条に定められた弁護士の使命等と密接な関連を持つものであり、内外の諸情勢を踏まえて適切に対応していくべき事柄であると考えておりますので、御紹介いただいた答弁と基本的な考え方は同じであります。
○ 藤野委員 やはり弁護士法一条、社会正義の実現にとって、今回この法改正がどういう意味を持つのかというのをちょっと見ていきたいと思うんです。
その前提としまして、この七十二条の趣旨というのは、いわゆる無資格者、資格を持たない者が法律事務を提供することを禁止しておりますが、それは、国民の法律生活の公正かつ円滑な営みと法律秩序を維持しようという点にあるというふうに思います。その点から今回の改正を見ていきますと、やはり問題があるというふうに思うんですね。
前提として、法務省にお聞きしますが、この間、いわゆる外国人弁護士に関する法律、累次改正されてきていると思うんですけれども、この改正によって、現時点で、現時点といいますか、この間、外国法弁護士数、そして外国法事務弁護士数、そして外国弁護士法人数はそれぞれどのようになってきたでしょうか。
○ 金子政府参考人 お答えいたします。
外国弁護士数につきましては、そのものの数字が必ずしも把握できておりませんので、弁護士及び弁護士法人により雇用されている外国弁護士数については把握できていますので、それについて御紹介します。平成十七年が三十五人、平成二十年百人、平成二十三年五十三人、平成二十六年五十一人、平成二十九年五十六人でございます。
それから、外国法事務弁護士の登録者数の推移ですが、日本弁護士連合会の外国法事務弁護士名簿登録者数で見ますと、平成十年が八十七人、平成十五年百八十九人、平成二十年二百六十七人、平成二十五年三百六十人、平成三十年四百十二人となっており、本年四月一日現在では四百二十一人となっております。
それから、外国法事務弁護士法人の数ですが、これは平成二十八年三月に施行されたもので、推移というほどのデータがないんですが、平成三十一年四月一日現在で八となっております。
○ 藤野委員 この間、この外弁法というのは何度も改正されまして、それこそ要件も緩和されてきて、法人についても、A法人と言われるものについてはもうできるようになっているということなんですが、今答弁があったように、率直に言って、期待されているほどふえていないと言わざるを得ないというふうに思うんですね。
これは大臣にお聞きしたいんですが、この間の規制緩和が私は行われてきたと思っているんです。にもかかわらず、なぜこうした現状にとどまっているのか。その原因についてはどのように認識されているんでしょうか。
○ 森国務大臣 外国法事務弁護士の登録者数でございますが、委員の御指摘では思うようにふえていないということでございましたが、制度発足以降、基本的には増加傾向であるというふうに承知をしております。
この外国法事務弁護士の人数規模については、その時々での経済状況や社会情勢、さらには法律サービスをめぐるニーズの動向など、さまざまな要因によって左右されるものでございますので、現状の人数規模についての原因というお尋ねでございましたが、一概にお答えすることは困難であると考えます。
○ 藤野委員 やはり、この間の規制緩和というのが一体何だったのかというのを分析した上で、今回の法案がしっかりと立法事実に基づいて出されているというふうにちょっと思えないところがあるわけであります。
具体的にちょっと幾つか見たいと思うんですが、今回、共同法人について新たな規制緩和が行われるということであります。これは、いわゆるB法人と言われる、ちょっと時間の関係であれしますが、法務省に確認しますけれども、二〇一四年の改正では、いわゆるB法人を設立可能とする規定は盛り込まれなかったということなんですが、なぜ盛り込まれなかったんでしょうか。
○ 金子政府参考人 いわゆるB法人、ここで共同法人と呼んでいますが、この共同法人制度については、平成二十一年当時、外国弁護士制度研究会においてその創設が提言されたところですが、共同法人制度は、一つの法人において、業務執行の範囲が異なる弁護士と外国法事務弁護士がともに社員となる制度であることから、外国法事務弁護士が権限外の業務を行うことを容易にするのではないかという、いわゆる不当関与の懸念があるとの指摘があったところでございます。
共同法人に対してこのような懸念が出されたことを踏まえまして、平成二十六年外弁法改正においては、特段異論がなかった外国法事務弁護士法人制度についてまずは法制化を進めることとし、共同法人制度については、引き続き法制化に向けた検討を進めることとされたものでございます。
○ 藤野委員 不当関与というお話がありました。
二〇一四年の当委員会での質疑等を見ておりますと、谷垣当時の法務大臣はこうおっしゃっているんですね、答弁で。
要するに、B法人もやれ、いいじゃないかというのに対して、当時の谷垣大臣はこうおっしゃっております。「このいわゆる共同法人については、御指摘のような弊害防止措置を講じても、外国法事務弁護士が法人制度を利用してというか、悪用してというか、権限外の業務を行うことを容易にしてしまうのではないかという懸念がまだまだ強かったと、完全にそれを払拭させるには至らなかったというのが今までの議論の実情でございます。」こう答弁されまして、その当時も、二〇一四年も、不当関与の弊害、これをこうやって防止しますとか、ああやって防止しますとか、いろいろ言うんですけれども、しかし、そうした措置を講じても懸念が払拭できないということで、これは見送られたわけであります。
今回、その懸念が払拭されたというような何か変化が、大臣、あるんでしょうか。
○ 金子政府参考人 平成二十六年改正当時、見送られて以降、例えば、日本人と外国法事務弁護士が共同で事業をやるという形態は許容されているにもかかわらず、この間、特段の問題が生じてこなかったというような事実関係のもとで、不当関与に関するきちんとした手当てをするということで対応できるのではないかと考えて、今回はこの創設を法案に盛り込んでいるというところでございます。
○ 藤野委員 いや、A法人をやってみて弊害が見当たらなかったからB法人をやるなんというのは、それは全く理由にならないというふうに思います。
日本弁理士会が要望書を発表されているんですけれども、そこで、こうおっしゃっているんですね。いわゆる不当関与に関する懸念、そして意図せぬ情報流出に関する懸念を払拭することはできないと日本弁理士会は言っております。
それはなぜかというと、B法人になると、より外部から見えにくくなるという点と、もう一つは、B法人の導入と、もう一つ職務経験、これも緩和されます、職務経験要件の緩和によって、海外の職務経験の浅い外国法事務弁護士の日本への大量参入が可能になると。だから、まず、共同法人ですから、よりその意思決定が見えにくいという問題と、あと、職務要件を緩めることによって経験の浅い弁護士が大量に入ってくる、だから、不当関与の懸念とか情報流出の懸念がこれまでとは桁違いに増加すると言っているんですね。これまでとは桁違いに懸念がふえるというふうに指摘をされております、日本弁理士会。
ですから、今回、そういう点では、非常にその懸念はむしろ強まっているというふうに思うんですね。
職務要件緩和につきましても、これは今申し上げたように、更に緩和していくということになっておりまして、やはり法曹資格というのは、私は本質的なものだと思うんです。先ほど言ったように、在野法曹に対しても社会正義の実現ということを法律で求めている国なんというのはなかなかないわけで、これはやはり戦前の歴史や、その後の占領時の、実際に占領時に外国人をほぼノーチェックで受け入れていた時代を経験した後に、今の弁護士法がそうしたルールをつくってきたわけでありまして、こうした重みを考えますと、この職務要件の安易な緩和というのは私は合理性がない、立法事実がないと思うんですね。ですから、そういう点でこの法案は大きな問題がある。
なぜそういう合理性のない規制緩和が行われるのかという点についてもちょっとお伺いしたいんですね。
私は、ちょっといろいろ調べてみましたら、アメリカの産業というのはなかなか興味深くて、二〇一七年のアメリカのエコノミックセンサス、経済統計ですね、これを見てみますと、各業界の企業数、売上数が出ております。
こちらをちょっと紹介させていただきますと、アメリカでは、鉄鋼産業に従事する企業は三千三百九十二社ありまして、売上げが二千二百九億五千七百八十六万ドルなんですね。石油業界、これは企業が四千七百八社ありまして、売上げが千六百五十三億五千八百六十四万ドル。そして自動車、これが一番大きいんですけれども、自動車が五千九百二十一社ありまして、売上高が六千四百六十億三百十九万ドルなんですね。
これに対して、法律事務所、これは弁護士だけじゃなくて検察とかも入ると思うんですけれども、検察というか、いろいろなものが入るんですが、アメリカの場合。法律事務所というのが十六万三千五百二十九社あるんですね。鉄鋼が三千三百九十二で、石油が四千七百八、自動車が五千九百二十一に対して、法律事務所は十六万三千五百二十九もある。そして売上げが、これがすごいんです、二千八百三十一億四千六百六十五万ドル。つまり、鉄鋼の二千二百九億ドルとか石油の千六百五十三億ドルよりも、法律事務所の売上げ、二千八百三十一億ドルの方が大きいんです。
つまり、アメリカにおける法律ビジネスというのは、まさに鉄鋼や石油を上回る最重要産業の一つなんですね、アメリカにとって。物すごいビジネスなわけです。物すごい利益を生んでいるわけですね。
ですから、率直に言って、社会正義の実現を使命としている日本の弁護士業界、弁護士の皆さんのビジネスとは、なりわいとは、全く位置づけも違うし、全く目指すところが違います。
そういう意味では、この法案で、そうしたことを検証するといいますか、そうした全く違う方向性を向いているものを共同法人として認めて、そして弊害防止の措置も不十分なままこれを認めていくというのは、私はこれは本当に問題が大きいというふうに思います。
法務省に聞きたいんですが、米国通商代表、USTRは日本政府に対してどのような要求をしているでしょうか。
○ 金子政府参考人 必ずしも詳細は調べ切れていないのですが、直近のものとしては、二〇一九年の米国通商代表外国貿易障壁報告書というものに接しております。
これについてちょっと御説明しますと、外国法事務弁護士の職務経験要件について、原資格法の資格取得後二年間の日本国外における職務経験要件を撤廃することとの要望が掲げられているものと承知しております。
○ 藤野委員 これは調査室がつくってくれた資料もなかなかおもしろくて、アメリカは、今回の法案がもっと早く出るはずだったと思っていたんですね。こう書いているんです。二〇一八年十月、法務省は、特定の懸念に対処する外国弁護士法の改正案を起草した、ただ、この改正案は国会に提出されていないと。そして、こう書いているんですね。米国は改正に関する進展を注視すると。
つまり、去年の段階でこの法案は提出されなかった、起草されていたけれども提出されていなかった。それをしっかりマーキングして、米国は改正に関する進展を注視する、こう言っているわけで、そういうもとで今こういう議論がされているんだというふうに思うんですね。
そして、ヨーロッパの方もちょっと見ておきたいんですけれども、欧州ビジネス協会、この報告書では、今回の法案についてどのような指摘、記載をしているでしょうか。
○ 金子政府参考人 御指摘のEBC報告書におきましては、我が国の外国法事務弁護士に関し、外国弁護士資格取得後の一定の経験年数を義務づけている規定を廃止すべきである、外国法事務弁護士登録の申請手続をできる限り迅速化することに引き続き重点を置くべきである、外国法事務弁護士と弁護士が共同で法人を設立することを認めるよう法改正をする、有限責任制度を導入する等の記載が盛り込まれているものと承知しております。
○ 藤野委員 このECB報告書というのもなかなか興味深くて、読んでみますと、年次現状報告というのを毎回やるわけですね。
この現状報告の中で、例えば、こういう法人化については、若干の進展はあったが、適用は限られている、外弁事務所の法人化を認めることによって複数の支店を開設できるようにする法律がようやく可決されたと。これはA法人のことですね。しかしながら、新しい法律は、外弁と日本の弁護士が共同で法人を設立することを認めない、その結果、新しい法律の有用性は深刻に制限される、こうやってECBが分析をしているわけです。
そして、ちゃんとその後に、外弁と日本の弁護士が共同で法人を設立することを認めるよう法律を改正する、それよりも更によいのは、時代おくれで、国内外いずれの法律事務所のニーズにも適合しない支店の設置に関する制限をただ単に廃止することである、ここまで言っている。これはもう更に先の話ですけれども。
いずれにしろ、要するに、そういう非常に外圧といいますか、そうしたもとで、日本の今までの規制緩和が一体どうだったのかとか、今、実際どういうA法人が業務をして、それが国民の法律生活などにどういう影響を与えているのかというような分析とかがないもとで、むしろ外国から、こうやって、こうやってと言われて、注視をされて、今のこの法律が出されているということだと思うんです。
法務省にもう一点確認したいんですけれども、いわゆる外国共同事業、これの提携関係というのも既に行われていると思うんですが、現時点でのトップスリーの提携関係というのはどのようになっているでしょうか。
○ 金子政府参考人 外国法共同事業における提携関係について御質問でございますが、弁護士数のトップスリーでいいますと、名称を申し上げさせていただきますと、ベーカー&マッケンジー法律事務所外国法共同事業、それから、シモンズ・アンド・シモンズ外国法事務弁護士事務所、次が、北浜法律事務所・外国法共同事業となっているものと承知しています。(藤野委員「利益金額」と呼ぶ)ちょっと今、手元に表がございません、済みません。
○ 藤野委員 手元にない。時間の関係で、事実ですから、こちらで紹介しますと、ベーカー・マッケンジーは一年で二十九億ドルの利益を上げております。DLAパイパーは二十六億ドル、そして、キング・アンド・ウッド・マレソン、チャイナは十億ドルというような感じで、いずれにしろ、物すごく利益を上げている。
先ほど、全体として、アメリカでも上げているんですが、共同事業というのは、やはりこれだけ、一社で二十九億ドルとか、そういう世界なわけですね。そこに今回道を開いていくということになっているわけであります。
ですから、これが日本の弁護士法あるいは日本の国民の法律生活にどのような影響を与えていくのかというのは、本当に慎重に検討しないと、これはやはり全く私は違う世界だというふうに思うんです。
大臣にお聞きしますけれども、やはり今回の共同法人化あるいは職務要件の緩和、これは立法事実がないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
○ 森国務大臣 外国法事務弁護士制度に関しては、昭和六十一年の外弁法の制定以降、その職務範囲等について、社会状況や国際動向、関係各方面の御意見も踏まえた上で、相当と認められる範囲において段階的に見直してきたものと認識をしております。これは、ユーザーを始めとしたさまざまな関係者からの御意見を踏まえて検討した結果であり、必ずしも規制緩和を進めるという観点のみから制度見直しを図ってきたものではないと理解しております。
今般の改正についても、関係各方面のさまざまな多角的な意見を十分考慮した上で、外弁制度のあり方を改正するものであるというふうに理解をしております。
○ 藤野委員 終わりますけれども、私たちも、国際仲裁制度の拡大については、これはやはり必要だというふうに思いますし、そういう国際仲裁などについては、今回入っている部分についてはいいと思うんですが、やはり法人化とか職務要件の緩和というのは問題だということを指摘して、質問を終わります。
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○ 松島委員長 これより討論に入ります。
討論の申出がありますので、これを許します。藤野保史さん。
○ 藤野委員 私は、日本共産党を代表して、外弁法改正案に反対の討論を行います。
反対する理由の第一は、本法案の共同法人制度の導入により、弁護士と外国法事務弁護士の共同事業関係、雇用関係に本質的な変化が生まれ、外国法事務弁護士である社員が、社員又は使用人である弁護士を指揮監督して、日本法に関する法律事務を扱うおそれを払拭できない点にあります。
さらに、外国法共同事業と比較して、個々の法律事務の処理に関する意思決定を誰が行っているか外部から見えにくいため、外国法事務弁護士による権限外の法律事務の取扱いを外部から確認することが困難となる点です。
本法案は、不当関与禁止規定があったとしても、日本弁護士のみに権限がある法律事務に関して、事実上、外国弁護士に日本法を扱う道を開くことになりかねません。
第二に、本法案が、外国法事務弁護士の職務経験要件の緩和を更に広げることに合理性がない点です。
外国法事務弁護士の職務要件を緩和することは、司法制度のあり方、主権と司法権、法曹のあり方、弁護士の職責と倫理に深くかかわる問題であって、規制緩和の面から安易に扱われてはなりません。
原資格国における法曹資格に基づく職務と、日本における資格に基づかない労務提供の違いは本質的なものです。職務経験要件の枠組みの中で、例外的に労務提供期間の算入を認めている制度趣旨に照らせば、職務経験期間の半分を超えて労務提供期間の算入を認めることはやるべきではありません。
最後に、外弁法は、日本に対し、最終目的達成まで改正を繰り返していく規制緩和の手法をとっております。本法案も、数次にわたる外弁法改正の延長線上にあります。米国通商代表など、外国弁護士の自由化を要求する欧米の外圧による規制緩和の一環として提出された本法案は、日本弁護士の自立を脅かし、弁護士法の理念に影響を及ぼすものであります。
なお、国際仲裁制度の拡大については、国際紛争の解決手段の主流になりつつある今日、日本の国際仲裁制度を充実する必要性はある、このことを指摘して、反対討論を終わります。
作成者 : fujinoyasufumi