検察官定年延長問題 新文書をもとに質問
法務委。
検察官の定年延長問題で法務省が提出した新文書をもとに質問。
この文書は、検察官に定年延長を導入するための法務省なりの「理論武装」用文書。
しかし、矛盾は隠せず、その文書を読むだけの大臣の答弁にも「検察の特殊性」が何度も出てきました。
- 会議録 -
○ 松島委員長 次に、藤野保史さん。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
今の質疑を聞いておりまして、我が党は二〇一二年にこの特措法そのものに反対をしたわけですが、この法律が内包する危険性というのが浮き彫りになったなというふうに感じております。ましてや、今の政権で、定年延長の問題でも、その社会情勢の変化という言葉がまさに出されているわけで、本当にいろいろな意味でちょっと考えさせられる質疑だったと思っております。
私も放送法三条のことをお伺いしようと思っていまして、副大臣にお聞きしたいんですが、三条に、「法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」とあるんですが、ここで言う「法律に定める権限に基づく場合」に当たるものとして、どういうものがあるんでしょうか。
○ 宮下副大臣 本来、放送法は総務省所管の法律でございますので、私が解釈を申し上げる立場にはございませんけれども、その上で申し上げれば、昨日の衆議院総務委員会で高市総務大臣が答弁されております、放送法第三条に規定する「法律に定める権限に基づく場合」とは、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第五十条に定める警報の放送のように、個別の条文において放送事業者に関する特別の措置が明文上規定されている場合を指すと認識しているということであります。
なお、新型インフルエンザ等対策特別措置法は、「法律に定める権限に基づく場合」に該当する規定はないと認識しております。
○ 藤野委員 今御答弁があった、例えば武力攻撃事態法の場合などでは、より強い制限がかかるわけですね。NHKだけじゃなく民放にも及んでいくということになっております。
そもそもこのインフル等特措法がどのような発想というか考え方に基づいて制定されたのかということについて、宮下副大臣が私どもに十六日に配付していただいた資料があります。これは、委員長、理事、オブザーバー各位というふうになっていまして、私のところにもお届けいただいたんですが、この中に二〇一二年の国会審議が紹介されておりまして、その中で我が党の塩川議員の質疑も紹介していただいているんですね。二〇一二年三月二十八日であります。
この中で、当時の政府委員がこう答弁しております。「指定公共機関に関してのお尋ねでございますが、この法案、」当時のインフル特措法ですが、「この法案、災害対策基本法と国民保護法、その両方のよいところをなるべく取り入れるような形でつくったつもりでございます。」こう答弁されております。副大臣、間違いありませんね。
○ 宮下副大臣 該当の議論は確認をさせていただいております。
○ 藤野委員 これは、要するに、地方との関係では災害対策基本法、そして国との関係では国民保護法を参考に、ベースにしている、そういうやりとりがずっとあるんですね。よいところを取り入れてつくったのが特措法だ、こういうことであります。時間の関係でこちらで言いますが、国民保護法では、指定公共機関にNHKだけでなく民放も入っているんですね、入っております。国民保護法の場合は、それこそ可能性の話ではなくて、もう指定されていますから、いろいろなことをやらなきゃいけなくなるんですね。
私がお聞きしたいのは、特措法というのは、今のコロナも入っているやつは、地方との関係では災害対策基本法、国との関係では国民保護法の両方のよいところをなるべく取り入れてつくったんだという解釈というか立法説明なんですね、提案理由説明。となると、今後、時の政権が、国民保護法のよいところはほかにもあるね、例えばNHK以外にもやらないといけないねとか、そういう、国民保護法のよいところを基礎にしてつくったこの法律に、その解釈によって、国民保護法のよいところ、つまり指定公共機関に民放を含めていくことということも、これは可能になるんじゃないですか。
○ 松島委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○ 松島委員長 速記を起こしてください。
宮下副大臣。
○ 宮下副大臣 国民保護法は所管の法律ではないため、私が解釈を申し上げる立場にはございませんけれども、同法五十条におきまして、放送事業者である指定公共機関等は、警報の通知を受けた場合、速やかにその放送を行うこととなっていると承知しております。
新型インフルエンザ等特別措置法におきましては、緊急を要する警報の放送の措置等はないため、この観点からは、放送事業者を指定公共機関として指定する必要はないというふうに考えております。
○ 藤野委員 それではお答えになっていないんですね。そもそもこの法律自体が、国との関係では国民保護法がベースなんです。国民保護法にはもう既に民放が入っている。
今後、国民保護法のよいところをベースにつくったんだから、今の情勢のもとで、国民保護法のよいところを今の法案にもやるべきじゃないか、こういう解釈が行われて、民放も含めていく可能性が当然あるんじゃないですか、こういう質問なんです。
○ 宮下副大臣 今回は、平成二十四年の国会での議論を踏まえて答弁を申し上げております。
そうした意味では、民放に関して、平成二十四年の立法時に、衆議院内閣委員会におきまして、当時の中川国務大臣が、民放各社においては災害対策基本法では指定されておりませんので、本法案についても現段階においては政令で指定することは想定をしていませんというような答弁をされております。
基本的に、国民保護法とか災害対策基本法のような緊急の放送というのはそもそも想定をされておりませんので、そうした指定をするということはないというのが解釈でございます。
○ 藤野委員 今、中川当時の大臣のをお引きになりましたけれども、それは災害対策基本法なんですね。確かに、災害対策基本法では指定されておりません、民放は。当然だと思います。
私が聞いたのは、国との関係では国民保護法なんです、国との関係では。そちらでもう指定されているわけですね。ですから、そういう可能性があるではないかという質問なんです。だから、中川当時の大臣の答弁を引かれても、それはお答えにならないわけです。
もう何度聞いても同じなので、ちょっとあれですけれども。要するに、副大臣が撤回された部分が、本当にそれだけでいいのかというのを私はちょっと率直に思っていまして。
というのは、撤回されたのは、後半の部分、後半といいますか、山尾さんに対する答弁でいいますと、今この情報を流してもらわないと困るということで指示を出す、そして放送内容について変更、差しかえをしてもらうということは、本来の趣旨に合うという、ここの部分を撤回されているんですが、その前の答弁も、私は同じ趣旨じゃないかと。
といいますのは、ちょっと読み上げますけれども、一方で、なぜ指定公共機関を指定するかといえば、その正確な情報、やはり、緊急事態宣言が出される前後のような状態はいろんな情報が飛び交いますので、正しい情報をきちんと適時適切に伝えていただく、それは、本来、指定をして、計画を立てていただく、本来の目的だと思います、こうあるんですね。
計画をつくる本来の目的は、適時適切に正しい情報を伝えていただくことだということでありまして、私はこれを読んで、同じ趣旨じゃないのかなと思うんですが、こっちは撤回されなくていい、そういう御判断になった理由をちょっと教えていただけますか。
○ 宮下副大臣 先ほどの冒頭の発言でも申し上げましたように、放送の自由は確保されるという発言もしておりますし、現状、NHK並びに民間放送機関において適時適切に情報を放送していただいているという認識でございますので、その点は修正の必要がないと思っております。
○ 藤野委員 いや、撤回された方では、今この情報を流してもらわないと困るから指示をするんだと言うんですね。その前に言ったのは、いろんな情報が飛び交いますので正しい情報を適時適切に伝えていただく、それが本来のあれだと。本来というのは実は前の方は二回も出てくるんです、本来、本来と。後ろの方は一回しか出てきませんけれども。ですから、なぜこちらを撤回されないままにしているのか。趣旨が残っちゃう。
私どもはもともと反対しておりますし、ある意味こういうものが正直にというか、語弊がありますけれども、そういう趣旨だということがわかるのであれなんですけれども、これは残される、そういう判断をされたということはちょっと確認しておきたいと思います。
この問題は、私どもも引き続きしっかりと追及していきたいと思っております。
その上で、きょうはちょっと別の問題もお聞きしたいと思っております。
今の国公法等改正案とともに検察庁法の改正案が国会に提出されております。その中に検察庁法があるわけですね。もともと法務省が用意されていた二十二条、二十二条に飛びますけれども、二十二条は二項を追加するというシンプルな法案だったんですが、提出されたものを見ますと、その後、三、四、五、六、七、八と膨大な条文が二十二条につけ加えられております。何でふえたかというと、検察官の勤務延長に関する規定がふえたわけであります。
内閣法制局は、三月十六日の参院予算委員会で二十二条がこういうふうに多い条文になったのは一月の解釈変更後ということでございますと答弁しているんですね。他方、森大臣は、十三日の当委員会で川内委員の質問に対して、本年一月二十三日に内閣人事局と協議をしたというふうに答弁をされております。
大臣にお答えいただきたいんですが、時期だけで結構ですけれども、一月二十三日に内閣人事局と協議した後に、この検察庁法二十二条二項以下の条文案が追加された、こういうことでよろしいですか。
○ 森国務大臣 法務省においては、検察官の定年引上げに関する法律案の策定の過程で、昨年十二月ごろから現行の国家公務員法と検察庁法との関係について必要な検討を行っていたところ、その結果、本年一月十七日までには法務省内において検察官の勤務延長については一般法である国家公務員法の規定が適用されるとの解釈に至ったため、直ちに関係省庁と協議を行い、一月二十四日までに各省庁から異論はない旨の回答を得て、最終的に結論を得たものであります。
そして、検察庁法の改正案についてその解釈を前提として必要な見直しを行い、条文を追加したものでございます。
○ 藤野委員 二十四日以降ということだというふうにお聞きをしました。まさに、極めて急ごしらえにこれが行われたということであります。
この資料をきょうちょっとお聞きしたいんですけれども、これは三月十六日の参議院の予算委員会の理事会に法務省が提出した文書、お持ちのようですけれども、これにはさまざまな興味深い、今おっしゃられた一月後半の前の解釈と、そしてその後半の後の解釈、それぞれ載っているというふうに読ませていただきました。それもちょっと今からお聞きしたいんですが、その後半の部分、その一月後半に検察庁法二十二条についてつけ加えたその理由がるる書かれております。
例えば、きょうは時間の関係で三つだけお聞きしたいんですが、今回、いわゆる役職をおりなければならないという国家公務員法全般の議論とあわせて、検察官にも役職をおりる規定をつくりたいということのようですが、それに伴って読みかえ規定をたくさんつけられたわけですよね、今回、そのふえた分。
大臣、三つお聞きします。
この読みかえ規定を、読みかえるのは改正国家公務員法八十一条の七ですけれども、八十一条の七の読みかえ規定を置く必要性についてどのように説明されているのか。そして二つ目に、人事院の承認等を読みかえる理由について。そして三つ目に、その人事院の承認等の読みかえで内閣が定めるとしている理由。それぞれ教えてください。
○ 森国務大臣 まず一つ目の御質問が読みかえ規定についてでございますけれども、現行の国家公務員法上は、検察官への勤務延長の規定の適用に当たり、読みかえ規定は必要ではございませんでした。しかし、今般の改正により、国家公務員法の勤務延長の規定が、検察官に観念できない管理監督職などを含むものに改められました。それが新設をされました。そのため、検察官については、読みかえ規定がなければ国家公務員法上の勤務延長の規定を適用することが困難になったことから、所要の規定の整備が必要となったものでございます。
そして、後段の御質問でございますけれども、現行の勤務延長制度は、検察官への適用に当たって、あくまで国家公務員法上の制度として、退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由が引き続き認められるかどうかという再延長の要件の該当性の判断等について、人事院による判断にもなじむものでございました。しかし、このたびの改正により、国家公務員法上の勤務延長制度は、検察官には適用がない役職定年制を前提とした規定が加えられることになりました。他方で、検察官については、他の一般職の国家公務員とは異なり、役職定年制の趣旨を踏まえた独自の制度を検察庁法に設けました。そのため、改正後の国家公務員法の勤務延長の規定を検察官に適用するに当たっては、検察庁法で読みかえ規定を設けた上、検察庁法独自の制度を前提として適用することになったものでございます。
このような検察庁法独自の制度を前提とした勤務延長の再延長の要件の判断は、検察官の任命権者である内閣又は法務大臣によることがより適当であると考えたものでございます。
もっとも、勤務延長の再延長の要件の判断についてより慎重に実施するものとするために、その判断による手続等について準則等で事前に明らかにすることで濫用を防止でき、適切に再延長がなされるものと考えております。
○ 藤野委員 準則じゃないと思うんです。
内閣が定めるとしている理由について、ちょっとお答えください。
○ 森国務大臣 失礼いたしました。
内閣が定めることとなった理由としては、国家公務員法上の制度と異なる検察官独自の制度をつくったため、それについては内閣が判断することとしたものでございます。
○ 藤野委員 今、検察官独自という言葉を何度もおっしゃいましたけれども、要するに、今回いかに無理筋の解釈を、直前になって、一月末になって行ったがゆえに、法文上もむちゃくちゃなことになっているということが、この法務省の資料で非常によくわかるんです。
きょうはちょっと時間の関係で紹介できないんですが、この前の方は、その前なんですね、一月に、まだ二十二条について二項しかないところでは、要するに今おっしゃったややこしい説明は全くないんですね。非常にシンプルに、むしろ逆に、検察官というのは一般公務員と違って職制上の段階がなくて降任等が観念し得ない、だから同時期に一斉に退官することもないし、同時期に一斉に異動することもないんだ、ですから、今回考えられているようなややこしい問題がないから、公務の運営に著しい支障が生じることは考えがたいと書いてあるんですね。しかし、それがこの後半の資料では全く違って、今おっしゃったような何かよくわからない議論になっているということで、やはり私は、今回のこの資料自体が、いかに無理筋かということを示しているし、出せば出すほど、資料を積み重ねれば積み重ねるほど、今回のいわゆる定年延長がいかにおかしいかということがわかると思います。
委員長にちょっとお諮りしたいんですが、この資料は、検察庁法案を審議する上で、この委員会ではないにしても、この委員会も極めて密接にかかわる問題でありますので、ぜひ当委員会にも提出をお願いしたい。既に参議院には提出されておりますので。お願いします。
○ 松島委員長 後ほど理事会で議論いたします。
○ 藤野委員 終わりますけれども、要するに、今回の黒川氏の定年延長を認める閣議決定が、まさに法文上も非常に大きな矛盾を生んでいる。ですから、これはもう、この法案そのものの撤回、閣議決定も撤回、これしかないということを強く主張して、質問を終わります。
会議録PDF
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しんぶん赤旗 2020年3月19日2面記事 PDF
作成者 : fujinoyasufumi