衆院法務委 生殖補助医療に関する民法特例法案の質疑・採決
衆院法務委。
生殖補助医療に関する民法特例法案の質疑・採決。
質疑の中で、参考人(生殖補助医療で生まれた当事者と研究者)から、貴重な意見をいただいた。
しかし、法案そのものは、出自を知る権利など大事な課題を全て先送り。
生命倫理に深く関わる法案をわずか2時間半の質疑で通してしまった。
わが党は反対。
立法府のあり方が問われます。
引き続き、この問題に取り組んでいきます。
- 会議録 -
○ 義家委員長 次に、藤野保史君。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
きょうは、生殖補助医療で生まれた当事者である石塚幸子さん、そして研究者である才村眞理先生にもお越しいただいております。御多忙のところ、本当にありがとうございます。
まず、石塚参考人にお聞きしたいんですが、この問題について、あるいは法案についてどのようにお感じなのか、少しまとまってお話しいただければと思います。
○ 石塚参考人 石塚幸子と申します。
本日は、意見を述べる場を与えていただき、ありがとうございます。
私は、匿名の第三者の精子提供、AIDという技術で生まれました。同じく精子提供で生まれた人たちと当事者のグループというものをつくっています。
私が生まれたAIDという技術は、一九四八年に慶応義塾大学で始まり、既に七十年以上の歴史があるものです。提供者は匿名であり、その事実は子供に秘密にすることがよいとされて、ずっと行われ続けてきました。そのため、長い間、問題は起こっていないと思われてきていましたが、最近になって、私のように、生まれた当事者が声を上げ始め、これまで秘密と匿名のもとに行うことがよいとされてきたこうした技術が、実は、そのことによって親子関係を崩し、当事者に大きな喪失や痛みを与えているということが報告され始めています。
本日は、私の体験をもとにしながら、この技術で生まれた当事者が、そしてその家族がどのような問題を抱えているのかということを知ってほしいと思っています。
まず、私が事実を知ったのは二十三歳のときで、父の遺伝性の病気をきっかけに、自分への遺伝について悩み、その結果、母から告知を受けました。
現在私たちのグループにいる当事者のほとんどは、親の病気や離婚などをきっかけに事実を知るケースがほとんどで、子供にとっては、まず家庭内に何か問題が起こった上の告知になるため、二重にショックを与えていると言えます。そうした告知であるからこそ、事実を知る時期が非常に遅く、三十代や四十代になってから知るということも少なくありません。
私が母から告知を受けたときに聞いたことは、父親と血がつながっていないということ、昔、慶応大学でそういうことをやっていたということ、提供者についてはわからないということだけでした。
自分の出自を知り、まずは父の病気が遺伝していないことに安心したものの、その後すぐに、なぜこんなにも大切なことを今まで私に言ってくれなかったという思いが湧き上がってきました。信頼していたからこそ、言ってくれなかったということが非常に悲しく、裏切られたというようにも感じてしまいました。そして、何よりも、自分の二十三年間の人生が母のついたうその上に成り立っていたものであるかのように思えてしまい、何が本当で何がうそなのかがわからなくなり、自分が一体何者なのかということがわからなくなってしまいました。
しかし、母親にとってもこれは想定外の告知でした。技術を実施するときに、私の両親は、子供には言わない方がいいと医師に言われ、それでうまくいくと信じてやってきたからです。
しかし、父の病気もあって言わざるを得なくなった結果の告知であり、結果、親と子の関係は崩れ、その後、母は、この問題に触れたくないとか、公にしたくないというような態度をとり、そうしたことに私は傷つき、親がそんなにも後ろめたく隠したいと思っているような技術で自分が生まれてしまったのかと感じ、それは、親にすら自分のありのままの存在を認められていないと感じてしまうことで、とても悲しいことでした。自分の感情をコントロールできず、体にも不調があらわれ、涙がとまらなかったり、眠れなかったりするような状態になり、私は、結局、告知を受けてから二カ月後には家を出てしまっています。今も、親との関係は完全に修復できたとは言えません。
私が当事者として問題だと感じていることを主に三つにまとめてお話ししたいと思います。
まずは、告知の時期が遅いということです。
私の例がそうであったように、告知を受ける時期が遅くなればなるほど、親に隠されていたと感じる期間が長くなります。そのショックは大きくなります。こんなにも長い間、親にだまされていた、隠されていたと感じ、親に対する信頼が大きく揺らぎます。また、AIDという技術そのものを隠そうとしたり、周囲に打ち明けてはいけないこととして扱うことで、子供は、自分の存在自体が親にとって後ろめたく恥ずべきことであるかのように感じてしまいます。
親子の関係において、子供が親に自分の存在を認めてもらえていないと感じてしまうことは、子供が自分自身を肯定して生きていくことを非常に難しくさせてしまっていると思います。
二つ目は、アイデンティティーが崩れるという体験のつらさやその衝撃です。
私が告知を受けた後、自分の人生は親のついたうその上に成り立っていたと感じてしまったという感覚は、多くの当事者に共通しています。人はさまざまな経験や体験を積み重ねて自分を形成していきます。その土台の部分には自分の出自というものがあります。それが、それまで自分が信じていたものと突然違うと言われてしまうと、その土台が崩れ、その上に積み重ねてきたもの全てが崩れてしまいます。何が本当で何がうそなのかということ、自分が一体何者なのかということもわからず、大きな不安にさらされます。事実を知る時期が遅ければ遅いほど、それまで自分が行ってきた選択というものが多く、それが崩れることは、そうした選択に自信が持てなくなることにもなります。そして、それはとてもつらいことです。
私たちのグループの中には、結婚や出産など、人生の大きな決断をした後に事実を知ったという方も少なくありません。知らなかったとはいえ、自分が新たな世代を生み出してしまったこと、四分の一ルーツがわからない子供をつくってしまったことで、子供やパートナーを自分の問題に巻き込んでしまったことに、皆さん、非常に悩みを持っています。
三つ目が、提供者情報がわからないということです。
一度崩れてしまった自分を再構築するには、さまざまな情報が必要です。AIDという技術自体について、そこにかかわった人の思いや提供者の情報など、人により知りたいことはさまざまに違っていると思います。しかし、自分が知りたい情報を、うそではない真実の情報を一つずつ確認し、自分の人生に改めて組み込んでいくという作業が必要です。そこには、情報だけではなく、その作業を支えてくれる人の存在も必要です。しかし、現在、私たちには提供者を知るすべがありません。崩れてしまったアイデンティティーを再構築したいと思っても、私たちの中には一生埋めることのできない空白があるのです。
提供者情報がわからないということは、自分の遺伝情報がわからず、医療受診の際にも不安を抱いたり、同じ提供者の精子から生まれた別の異母兄弟だったり精子提供者自身の子供だったりと近親婚の可能性があるという問題も実際に生じています。
提供者情報を知るということは、自分を確立し、自分を肯定して生きていくために絶対に必要なことです。過去があることで今の自分があるということを確認し、それによってこれから先の未来について考え、生きていくことができるのだと思っています。
私たちが提供者情報にアクセスするためには、まずは、自分がそうした技術で生まれた子だということを親に告知される必要があります。そして、親から早期に告知される、しかも、それが積極的な告知であることで、少なくとも親子の信頼関係は保つことができますし、それは子供にとって、とても重要なことだと思います。
親からの告知と、知りたいと思ったときに知りたい人が情報にアクセスできる環境というものを、この技術を今後も続けていくのであれば絶対に必要だと思っていますし、それが整えられないのであれば、私はこの技術はやめるべきだと思っています。
今回の法案では、出自を知る権利は、その後の検討課題とされるにとどまっています。しかし、その後の検討期間とされる二年間の間にも、私たちと同様の子供は生まれ、権利が保障されぬまま、情報も、保管も管理もされず、将来的に今の私たちと同じような悩みを抱えてしまうことになりかねないと思っています。一刻も早い出自を知る権利の保障と、そのための提供者情報の保存、管理をぜひお願いしたいと願っています。
○ 藤野委員 本当にありがとうございます。
重ねて石塚参考人にお聞きしますが、情報というお話がありましたけれども、提供者の方についてのどこまでの情報が保障されるべきだとお考えでしょうか。
○石塚参考人 私が提供者を知りたい最も大きな理由としては、自分が、母親と、精子という物から生まれていたという感覚があって、そこに非常に違和感を持っているからです。物ではなくて、きちんと人が介在していたということを実感として感じたいと。だからこそ、提供者については、身長や体重といった断片的な情報ではなく、個人が特定できるまでの情報を、そして、一度でもいいので会いたい、その人が人として本当に実在しているんだということを確認させてほしいと思っています。
当事者の中には、提供者の情報について特に興味がないという人も中にはいます。しかし、海外の例を見ると、初めは知りたくなかったとしても、その人が結婚するときとか、自身が子供を生むときに、そのタイミングで知りたくなるというような例も報告されています。知りたいと思ったときに知ることができる環境を整えるのが重要だと思っています。
また、提供者を知りたいか知りたくないかというのは、それまで育った家庭の親子関係のよしあしには関係しないということも、海外の例からは報告されています。よく、愛情深く育てれば子供に提供者のことを教える必要はないとも言われるんですけれども、愛情のあるかないかと、提供者情報を知りたくなるかならないかということは、全く別物だというふうに考えています。
○ 藤野委員 ありがとうございます。
そして、提供をする側からいいますと、先ほど減少する懸念というのも議論されておりましたけれども、これも石塚参考人にお聞きしたいんですが、出自を知る権利を認めた場合、提供者が減少する懸念がある。これについてはどのようにお考えでしょうか。
○石塚参考人 既に海外で出自を知る権利を認めた国の様子を見ると、確かに、いっときは減るんですけれども、精子提供者となる男性の層が、その後、変わっていくという状況が見られます。それまでは若い大学生などが提供者となっていましたが、法律ができた後には、年齢層が上がって、自身にもう既に子供がいるような男性の層に変わってくるというふうに言われています。
出自を知る権利を議論するときに、それが認められると、あたかもこれまで提供してきた人の情報が勝手に開示されてしまうというような誤解があるように私は感じています。出自を知る権利は、その法律ができた後に生まれた子供にしか認められるものではないということを、私たちはきちんと理解しています。
提供者は、提供者になるかならないかということを選ぶことができます。将来的に自分の情報が子供に開示される可能性があるということを理解した上で、提供者になるのかならないのかということを選べます。それをもし受け入れられないのであれば、提供者にならなければよいのだというふうに私は思っています。
そして、その結果、仮に提供者がいなくなってしまうのであれば、私は、この技術は行われるべきではないというふうに思っています。
○ 藤野委員 ありがとうございます。
才村参考人にもお聞きしたいと思います。
才村参考人が翻訳をされた「大好きなあなただから、真実を話しておきたくて」という、外国のオリビア・モンツチさんの本なんですが、これは、ゼロ歳から七歳の告知、八歳から十一歳、そして十二歳から十六歳、そして十七歳以上と、生殖補助医療によって生まれた子供を持つ親向けのガイドで、大変参考になったんですけれども、才村参考人は、親から子の告知についてはどのようにお考えでしょうか。
○ 才村参考人 才村です。
今の御質問に対して、私は、長年、養子支援もしていました。やはり、告知の仕方というのは、生殖補助医療で生まれた子供たちも、同じように小さいころから、しかも、できたら二、三歳のころから、二、三歳のころよりも、もっと小さい、ゼロ歳、一歳からやった方がいいんじゃないか。
ゼロ歳、一歳の子供は、言葉は理解できませんよね。でも、親が告知をするのに、やはり覚悟も要るし、どうやっていいかわからないと最初思いますよね。だから、そういう意味では、ゼロ、一歳の赤ちゃんで、相手がわからないときにやると、赤ちゃんは全然負担がないわけです。ショックも受けません。でも、告知する側は、告知する言葉の選び方とか、どうやってこの話題にしようかなという練習ができるということですよね。だから、そういう意味では、せめて二、三歳のころから、幼児のころにはスタートする。
告知は一回きりじゃないんですね。何回も、子育ての長い間に、要所要所に入れていく。ある人は、お誕生日ごとに話をする、毎年一回は話をするという方もおられたり、それから、そういう仰々しい日じゃなくて、日常生活の中で、お風呂に入りながら、あなたはね、子供が私たちは生まれなくてね、ある一人の女の人が助けてくれたのよとか、あるいは、親切なというふうな言い方をする人もいるんですけれども、親切かどうかはちょっとわからないので、いろいろな家族の物語というのを、そこの家庭、家庭でつくっていかれたらいいと思うんですけれども。
できれば、絵本とかを使いながら、日本でも、数は少ないんですけれども、精子提供それから卵子提供を告知する絵本ができています。それを、例えばおもちゃ箱に転がしておいて、それで、ふだんからそれを見ながら、そのことが世の中には普通のことなんだ、特殊なことではなくて、この家庭でそういうことをしたことを親御さんが誇りに思っていて、プライドを持っていて、そして、そのことが後ろめたいことではなく、そして偏見を持たれているような、びくびくしているわけじゃなくて、オープンにできるような、そういう姿勢がすごく大事です。
そうすると、子供は、あ、私はいいことで生まれたんだと。何か、悪いことをして、隠すようなことで生まれたというと、子供自身は自分の生命を後ろめたいものと見てしまいますよね。そうではなくて、あ、このことって普通なんだと。
だから、ある程度大きくなって告知された人は、先ほど石塚さんの話にもありましたように、すごくショックが大きいですし、特に、例えば思春期以降ですね、十歳以降、成人して、今皆さん、告知されてすごいショックで、大きなアイデンティティーのクライシスになっておられますけれども、小さいころから家庭の中に、そういった助けてもらえる人がいたんだよということをずっとこう入れながら大きくなっていきながら、この家庭では普通のこととして認識できるということが、私は告知にとって大事かなと思っております。
○ 藤野委員 ありがとうございます。
石塚参考人にも、当事者の立場から、親から子への告知というのはどうあるべきだというふうにお考えでしょうか。
○ 石塚参考人 私も才村先生と同様に、子供が幼いときから、その時々にわかる言葉で、何度も告知してほしいというふうに思っています。
実際、日本でも、特別養子縁組の告知の方法などを参考に、子供に告知をするという取組が、少しずつですが、行われ始めています。海外では、幼いころに告知を受けた人と大人になってから告知を受けた場合で、親や技術そのものに対する意識について調査した報告というのがあります。子供のころに告知をされた当事者は、親にも、そして技術自体にも、肯定的な思いを持つ傾向があります。逆に、大人になってから告知をされた当事者というのは、親に対しても技術に対しても否定的な感情を抱くという報告がされています。
AIDは、これまで一生隠し通せるものとずっと思われてきていました。しかし近年、簡単にDNA検査などができるようにもなっていて、隠し通すことというのはもう難しくなっているというふうに思っています。
事実を知った当事者の多くは、知る前から家庭の中に違和感だったり緊張感を感じることがあったというふうにも言っています。親子の間に何らかの秘密がある場合、それは日常の親子関係にも影響を与えるものだと思います。子供は親が思うよりもずっと敏感です。
多くの親は、この技術を使うことで子供を持って幸せな家庭を築きたいと思って、その結果、技術を選択しているんだと思います。そうであるならば、秘密を持ってうそをつき続けるというのではなく、うそのない真実の親子関係を築くことの方にこそ、目を向けてほしいというふうに思っています。
○ 藤野委員 石塚参考人、最後にお伺いしたいのは、一九四八年に慶応病院でこれが始まった、七十年以上の歴史があるという御発言がありました。
七十年以上もの間、こうした技術が問題ないという形で行われてきたのは、なぜだというふうにお考えでしょうか。
○ 石塚参考人 これまでは、親や医療者が子供のためにというふうに考えてきたことと、実際に生まれた人が思っていることの間に大きなずれというものがあるように思います。
そして、これまでAIDを実施した後の追跡調査のようなものもほとんど行われてこなかったということも問題だと思っています。不妊という状態が問題だとした場合、子供が生まれればその問題は解決したと思われてきていたと思います。だからこそ、子供が生まれた後のことについてこれまでは余り意識が向けられてこなかったのかもしれません。
現在、私たちが抱えている問題というのは、今後、卵子提供など技術が拡大していけば、そうした技術によって生まれた子供にも同様に生じる問題だと思っています。技術の範囲を広げる前に、今既にAIDで起こっている問題についてまずは向き合って、その解決の道を考えてほしいというふうに思っています。そうでなければ、今の私たちのように悩みを抱える子供をふやしてしまうだけだというふうに思ってしまいます。
○ 藤野委員 ありがとうございます。
本当に貴重な御意見をいただきました。しっかり受けとめたいと思います。
そして、その上で提案者の皆様にもお伺いしたいんですが、先ほど優生思想の問題についての御答弁があったんですけれども、そこで挙げられた次世代育成支援対策推進法や母子保健法、あるいは児童福祉法、ありましたけれども、やはりそうした法律は生命倫理に直接かかわる法律ではなくて、生まれた子や母の支援についての法律だと思うんですね。
今回はまさに、もう生命倫理そのものにかかわる問題で、こういう文言、いわゆる心身ともに健やかに生まれという文言が使われる。だから、ほかの法律を出して、こっちにもあるからということではなくて、なぜこの法律に、生命倫理に深くかかわる法律にこの文言が使われたのかというのが問題なわけですから、そこは本当に曖昧にできない問題だというふうに思います。
その点でちょっとお聞きしたいのは、配付資料の一にもあるんですけれども、先ほども出ました障害者権利条約について、十七条では「全ての障害者は、他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する。」という文言があります。
提案者にお聞きしたいのは、この障害者条約十七条と今回の法案の三条四項、この整合性というのは検討されたんでしょうか。
○ 石橋参議院議員 御質問ありがとうございます。
重ねて、御指摘の点を含めまして、先ほど来御答弁をさせていただいておりますが、私ども、この検討過程に当たりましても、障害者権利条約、御指摘の点、十条、先ほども申し上げました十七条も含めて、それを念頭に整理をさせていただいて、そして、先ほど御答弁させていただいたとおりでございまして、この文言について、健やかなる環境、これについては、安全で良好なということを繰り返し述べさせていただいたところでございます。
その関係において、この障害者権利条約十七条とも整合するという整理を発議者の間でしっかり確認をさせていただいて、御説明申し上げているところでございます。
○ 藤野委員 本当に、生命倫理にかかわる問題というのは非常に重いわけですので、これは引き続き、しっかりと追求していきたいと思います。
その上で、衆議院の厚労調査室に来ていただいております。お忙しいところ、ありがとうございます。
ことしの六月から衆参の厚労委員会で旧優生保護法一時金支給法二十一条に基づく調査が始まっていると思いますが、どのような調査であるか、そして、こうした調査の前例が過去あるか、これをお答えいただけますか。
○ 吉川専門員 お答えいたします。
旧優生保護法一時金支給法第二十一条に基づく調査につきましては、本年六月十七日、衆議院及び参議院厚生労働委員長より、衆議院厚生労働調査室及び参議院厚生労働委員会調査室に対して調査命令が、また、国立国会図書館に対して調査への協力要請がございました。
六月十七日に衆参の厚生労働委員会理事会で合意された文書には、調査項目として、旧優生保護法の立法過程、優生手術の実施状況等、その他として、諸外国における施策等が示されております。
また、調査期間はおおむね三年とされ、報告書の原案は衆参の調査室が分担し、国会図書館の協力を得て作成することとされております。
これを受け、現在、衆議院と参議院、また国会図書館とで連携協力しながら調査を実施しているところであります。
なお、今回のように、衆参で協力し、三年にわたって調査を行うような例はなかったものと思われます。
○ 藤野委員 ありがとうございます。
まさに、同じく生命倫理に深くかかわる問題、旧優生保護法について、立法府も含めて、どういう問題があったのか、どういう教訓があったのかと。それを立法府として、まさに今、三年かけて調査しようとしている。
配付資料の二を見ていただきますと、この下の方には、この結果については、「衆参の厚生労働委員長からそれぞれ衆参議長に報告することが考えられる。」とまで書かれておりまして、極めて重い調査なんですね。
提案者にお聞きしたいんですが、まさに同じように倫理がかかわった問題を、立法府が、率直に言って誤りを犯してしまった、痛苦の反省だと思うんです。それについての調査が今まさに始まっている。こういう状態で、本法案もまさに同じように生命倫理に深くかかわる法案であります。
この両者の関係についてといいますか、率直に言いますと、もう時間もないのであれですが、私が調べた範囲では、旧優生保護法のときも参議院先議で、当時は、本会議を含めて三回ぐらいしか議論していないんですね。委員会一回だけで、参議院も三十分ぐらいです、実質。今回は三十分じゃないです、こうやって各党やっていますから違うんですけれども、しかし、非常に共通点があるわけですね。
今まさに前回の旧優生保護法についての反省について議論されている、かつてない調査が行われているというもとで、今回も極めて短時間の審議でこういうことをやっていく、このことについての提案者の御認識をお伺いしたいと思います。
○ 古川参議院議員 ありがとうございます。
きょうの御質問にもさまざまありましたけれども、この問題というのは、実は二〇〇三年からずっと放置をされていたという認識でございます。ですので、一刻も早く、現在の何も定まっていない状況を改善をしたいということが一つございます。
また、今御指摘の問題につきましては、附則三条におきまして、優生思想の濫用を防止するための方策ということの検討も、排除はされていないというふうに考えております。
○ 藤野委員 もう終わりますけれども、こういう生命倫理にかかわる法案というのは拙速にやっちゃだめなんですよ。それが過去の経験であり、教訓であり、それを今、国会挙げて、衆参挙げて検証しているさなかに、今回もまたこういった拙速な形で法案を通そうとする。これは到底許されない、立法府として許されない、このことを述べて、質問を終わります。
○ 義家委員長 これより討論に入ります。
討論の申出がありますので、これを許します。藤野保史君。
○ 藤野委員 私は、日本共産党を代表し、本案に反対の討論を行います。
反対理由の第一は、どのような生殖補助医療を認め、どう規制するかという、いわゆる行為規制のあり方が全て先送りされていることです。
法制審の親子法制部会は、行為規制の立法の見通しが立たないもとで親子関係だけを規定することは慎重な検討を要するとしています。近時の最高裁判例でも、医療法制と親子法制は両面からの検討が必要としており、親子関係のみ先行して規定すべきではありません。親子関係の早期確定といいますが、本法案が要件とする夫の同意については、その有無をめぐって裁判例があるほか、精子提供者と出生した子との間の認知の問題についての規定もなく、早期に確定するとは限りません。
反対理由の第二は、親子関係と不可分一体である出自を知る権利が認められていない点です。
きょうの参考人質疑でも、生殖補助医療で生まれた当事者から、知りたいと思う人が知りたいと思うときに提供者情報にアクセスできる環境が、この技術を続けていくのであれば絶対に必要です、検討期間とされる二年の間にも、私たちと同様の子供が生まれ、権利が保障されぬまま、私たちと同じ悩みを抱えてしまうことになりかねませんという意見が示されました。この声を真摯に受けとめるべきです。
反対理由の第三は、本法案が、商業的な濫用の危険、優生思想の介入を許す危険があることです。
複数の団体から、本法案第三条四項に「心身ともに健やかに生まれ、」という文言が入っていることが旧優生保護法をほうふつとさせるという厳しい意見が寄せられています。本案が、商業的、優生思想的な濫用禁止規定については定義が不明確という理由から明文化しない一方で、当事者から優生思想の介入を許しかねないという批判を招くような文言を盛り込んでいることは、大きな問題です。
最後に、本法案をめぐって、立法府のあり方が問われています。
ことし六月から、衆参両院の厚労委員会で、旧優生保護法の制定、改正時の問題点について大規模な調査が始まっています。立法府が犯した過ちを二度と繰り返してはならないという立場で過去に例のない調査が行われているさなかに、同じ生命倫理に深くかかわる法案をわずか二時間半の審議で押し通すなど、立法府として許されるものではありません。
このことを強く述べて、反対討論といたします。
会議録PDF
20201202_homuiinkai_Fujino_kaigiroku
質疑資料PDF
20201202_homuiinkai_Fujino_shiryo
しんぶん赤旗 2020年12月3日 2面記事 PDF
しんぶん赤旗 2020年12月3日 4面記事 PDF
作成者 : fujinoyasufumi