衆院法務委員会で緊急事態条項について質問
法務委員会で質問しました。
新型コロナ対策で、通常の委員会室ではなく、予算委員会が行われる第一委員室で行われました。
テーマは、憲法改悪、とくに緊急事態条項。
そもそもなぜ現行憲法に「緊急事態条項」がないのか?それは戦前の人権侵害の根拠に緊急事態条項が濫用されたからです。
現行憲法は、戦前のような人権侵害を繰り返さないため、むしろ積極的に緊急事態条項を「置かない」選択をしたのです。この歴史は重い!
新型コロナへの不安を逆手にとった緊急事態条項は絶対に許されません!
また、安倍総理などから、新型コロナを口実に警察を活用する旨の発言が出ている問題も看過できません。
飲み屋など店を開けなくていいように、あるいはそうした店で働くために外出しなくていいように、政府が休業補償をちゃんとすれば夜の外出は自然と減ります。
それをやらずに警察で取り締まるなど本末転倒も甚だしい!
自粛と補償はセットで!
この声を広げることは安倍政権に緊急事態条項や警察活動強化等の策動を許さないためにも重要です。
- 会議録 -
○ 松島委員長 次に、藤野保史さん。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
私は、先日出されました緊急事態宣言にかかわって、まずお聞きしたいと思います。
今、新型コロナウイルスの感染拡大防止等、あるいは治療などのために日夜奮闘されている多くの関係者の皆様に心からの敬意を表したいと思います。
他方、政府や与党の一部からは、この新型コロナウイルス感染拡大という状況を、改憲、憲法を変えるという議論に結びつけようという動きがあります。いろいろな発言がありますけれども、中でも、何といっても、先日、安倍総理自身が、六日の衆議院議運委員会、参議院議運委員会で、かなり、最も強い発言をされていると私は思います。
衆議院では、自民党が示した、これは改憲草案のことですけれども、自民党が示した四項目の中にも緊急事態対応が含まれており、緊急事態において国家や国民がどのような役割を果たすか、憲法にどのように位置づけるか、極めて重く大切な課題と述べましたし、参議院の議運でも、新型コロナウイルス感染症への対応も踏まえつつ、国会の憲法審査会の場で与野党の枠を超えた活発な議論を期待したい、こういうふうに答弁されております。この間の一連のさまざまな発言の中では、最もこれは踏み込んだ発言だというふうに思います。
総理は、この衆参の議運での質疑は、新型コロナ特措法に基づく、法律に基づく緊急事態宣言を国会と国民に説明する場であるということを百も承知の上で、あえて自民党が示した四項目ということも挙げて、憲法上の、特措法上ではなくて、憲法上の緊急事態条項が極めて重く大切な課題であると力を込めたわけであります。
今はまさに、新型コロナの対応に対して、党派の違いを超えて、立場の違いを超えて力を尽くさなければならない、まさにそのときに、国民の不安を逆手にとるように、憲法改定に結びつけていく。これは党利党略のきわみというふうに言わざるを得ません。絶対に許されないと思います。
きょうは、要するに、そうやって政府、総理を先頭に、緊急事態宣言と緊急事態条項、これを意図的に混同させるといいますか、地続きのものであるかのように描いているという状況が一方である。他方で、やはり新型コロナに対する国民の不安というのは、私の事務所にも連日、本当にさまざまな要請もいただいております。何とかしてほしいという不安がある。だから、その両方のもとで、やはり今、冷静に、落ちついて、両者の関係あるいは内容、そして現行憲法の立場について整理しておく必要があるんじゃないかというふうに思います。
そこで、以下、質問したいと思います。
前提として、内閣府にお聞きしたいんですが、もう基本中の基本ですけれども、要するに、憲法上の緊急事態条項を置くかどうかという話と、今回の特措法上の緊急事態宣言とは全く別物である、間違いありませんか。
○ 奈尾政府参考人 お答え申し上げます。
緊急事態宣言につきましては、新型インフルエンザ等特別措置法に基づきまして、例えば、都道府県知事が同法四十五条に基づく外出自粛の要請ができる、そういった、法の第四章といったところがございますけれども、そこの各条に規定された新型インフルエンザ等緊急対策の特例を講じることができるというものでございまして、御指摘の緊急事態条項とは別のものと考えてございます。
○ 藤野委員 全く違うわけですね。
要は、非常事態、災害とか感染症、戦争、内乱、さまざまな非常事態に対してどういうアプローチをとるかという場合に、二つのアプローチがあって、一つは個別法ですね、今回問題になっているインフル特措法とか、あるいは災害対策基本法、原子力災害対策特別措置法、これらは、そうした非常事態に対して個別法でアプローチしよう、そういうやり方であります。もう一つは、憲法を改正して国家緊急権などを創設するという、緊急事態条項というアプローチがあるわけでありますが、この二つは全く違うわけであります。
そして、現行憲法にはこの緊急事態条項は存在せず、個別法で対応するというアプローチがとられているわけであります。
そこで、なぜ日本国憲法に緊急事態条項がないのか。配付資料の一を見ていただきたいんですが、これは有名な国会質疑でありまして、御存じの方も多いと思うんですが、一九四六年、昭和二十一年の七月二日、衆議院帝国憲法改正案委員会というところの質疑であります。
当時の金森徳次郎大臣が議員の質問、これは、なぜこの憲法改正草案は緊急勅令などの規定を持たないのかという質問に対して、黄色の部分でこう答えております。
緊急勅令及ビ財政上ノ緊急処分ハ、行政当局者ニ取リマシテハ実ニ調法ナモノデアリマス、併シナガラ調法ト云フ裏面ニ於キマシテハ、国民ノ意思ヲ或ル期間有力ニ無視シ得ル制度デアルト云フコトガ言ヘルノデアリマス、ダカラ便利ヲ尊ブカ或ハ民主政治ノ根本ノ原則ヲ尊重スルカ、斯ウ云フ分レ目ニナルノデアリマス、
こういう答弁が七月二日なんですね。
私は、緊急事態条項をめぐる論点といいますか、焦点といいますか、それを説明する上で、これはなかなか簡潔な名答弁だなというふうに思っております。まさにここが分かれ目なんですね、便利を選ぶのか、民主政治の根本原則を選ぶのか。
これに対して、同じ金森大臣は、七月十五日、配付資料の二なんですが、答弁をしております。答えを出しております。黄色の部分ですけれども、
民主政治ヲ徹底サセテ国民ノ権利ヲ十分擁護致シマス為ニハ、左様ナ場合ノ政府一存ニ於テ行ヒマスル処置ハ、極力之ヲ防止シナケレバナラヌノデアリマス、言葉ヲ非常ト云フコトニ藉リテ、其ノ大イナル途ヲ残シテ置キマスナラ、ドンナニ精緻ナル憲法ヲ定メマシテモ、口実ヲ其処ニ入レテ又破壊セラレル虞絶無トハ断言シ難イト思ヒマス、随テ此ノ憲法ハ左様ナ非常ナル特例ヲ以テ――謂ハバ行政権ノ自由判断ノ余地ヲ出来ルダケ少クスルヤウニ考ヘタ訳デアリマス、
ということなんです。
内閣法制局にお聞きしたいんですが、現行憲法は、先ほどの論点でいえば、行政側の便利な事情というよりも、民主政治の根本原理、国民の権利を十分擁護するために民主政治の根本原理を尊重した、だから、緊急事態条項を憲法上むしろ積極的に設けなかった、そういうことでよろしいですか。
○ 北川政府参考人 お答えいたします。
委員が御指摘されました、昭和二十一年七月二日それから同月十五日の衆議院帝国憲法改正案委員会におきまして、当時の担当大臣でありました金森大臣が、先生が述べられたような、緊急勅令等の規定をなぜ設けなかったかということを尋ねられました際に、その理由として、先生が引用されました部分を含めて答弁をしたものでございます。
○ 藤野委員 これは、論点設定もわかりやすいし、なぜ緊急事態条項を置かなかったのかというのも非常にわかりやすいんですね。
もう一つ、今のは国会向けの説明なんですが、それだけじゃなくて、国民向けにも、当時の政府は、よりわかりやすく説明するためにいろいろなものをやっているんですね。そのうちの一つ、「新憲法の解説」というものを紹介しております。これは、表紙に、法制局閲というのがありまして、内閣発行というのもあります。
さらに、これを見ていただきますと、当時の内閣総理大臣の吉田茂さん、担当大臣の金森徳次郎大臣、そして内閣書記官長の林譲治さんが序というものを寄せているんですね。ちなみに、この林さんというのは、その後、内閣官房長官に就任されております。まさに当時のトップが序文を書いているわけで、事実上、当時の内閣が作成したという位置づけであります。
そこの第四章をちょっと御紹介しているんですが、こういう指摘があります。
明治憲法においては、緊急勅令、緊急財政処分、また、いはゆる非常大権制度等緊急の場合に処する途が広くひらけてゐたのである。これ等の制度は行政当局者にとつては極めて便利に出来てをり、それだけ、濫用され易く、議会及び国民の意志を無視して国政が行はれる危険が多分にあつた。すなはち、法律案として議会に提出すれば否決されると予想された場合に、緊急勅令として、政府の独断で事を運ぶやうな事例も、しばしば見受けられたのである。
新憲法はあくまでも民主政治の本義に徹し、国会中心主義の建前から、臨時の必要が起れば必ずその都度国会の臨時会を召集し、又は参議院の緊急集会を求めて、立憲的に、万事を措置するの方針をとつてゐるのである。
こういう説明であります。
内閣法制局にお聞きしますが、現在の内閣法制局も、これは同じ認識ということでよろしいでしょうか。
○ 北川政府参考人 先生の御引用されました、法制局閲となっております「新憲法の解説」に記載されております緊急勅令等に係る見解でございますが、この見解それ自体が当時の内閣法制局の見解そのものであったかどうかはちょっと別といたしまして、御指摘の記載内容につきましては、その趣旨を理解できるものであります。その旨、平成二十八年の五月二十七日の衆議院東日本大震災復興特別委員会におきまして、当時の横畠内閣法制局長官も答弁いたしております。
○ 藤野委員 そうなんですね。これは、階委員がまさに質問されたときに、横畠内閣法制局長官が、この今私が読み上げさせていただいた部分は、今日においても十分理解できるものでございますというふうに答弁されております。ですから、これはそういう中身だということであります。
大臣にも確認したいんですが、大臣も同じ立場だということでよろしいでしょうか。
○ 森国務大臣 お尋ねは憲法の一般的解釈に関するものであり、法務大臣として、所管を離れ、憲法の解釈について所感を申し上げることは差し控えさせていただきます。
○ 藤野委員 これは、例えば経済の問題とか、あるいは安保の問題でお答えにならないというのは、所管外というのであれば、わからなくもないですが、先ほどるる申し上げてきたのは、国民の権利を保障する、それを最大限尊重するのが民主主義の根本原則だ、だから、緊急事態条項を置かないという、こういう論立てなんです。ですから、人権をつかさどる法務大臣が、これは所掌じゃありませんなんて、私は言えないと思うんですけれども、いかがですか。
○ 森国務大臣 政府部内において、憲法に関する一般的解釈について全面的に責任を負うべき立場にありますのは内閣とされておりまして、法務大臣は内閣を代表してお答えする立場にないことを御理解いただきたいと思います。
○ 藤野委員 いや、理解できないですね。
二〇一六年のときは、河野太郎議員が当時、内閣府防災担当大臣で、その際は、階委員の質問に対してお答えになっているんです。現時点においても憲法の解釈として十分理解できるものだと。
だから、やはりそれぞれのお立場はあると思います。ただ、問題は、人権にかかわる問題でこういう憲法の立場があるわけですから、これについて法務大臣が何も言わないというのは、これはおかしいと思うんですが、いかがですか。
○ 森国務大臣 河野大臣が答弁した事情については私から御答弁することはできないんですけれども、いずれにしても、御指摘の法制局長官の答弁、また、憲法の一般的な解釈に関するものについて、法務大臣として、所管を離れて、憲法の解釈について御答弁申し上げることは差し控えさせていただきます。
○ 藤野委員 本当に、政治家として、こういう方が法務大臣をやられているということが非常に残念でなりません。
「新憲法の解説」というものを先ほど読み上げさせていただいた中に、要するに、法律案として議会に提出されれば否決されると予想された場合に、緊急勅令として、政府の独断で事を運ぶような事例もしばしば見受けられたというのがあるんですね。単なる懸念とかじゃなくて、戦前しばしば見受けられたから、それを繰り返さないために緊急事態条項は置かないという、まさにそういう経験に基づく日本の憲法の判断なんです。
実際、大日本帝国憲法には、四つも緊急勅令に関する条例がありまして、一つは八条、緊急勅令。十四条の戒厳。三十一条の非常大権。そして、七十条の緊急財政処分。今いわゆる緊急事態条項と言われるものが四つも形を変えて措置されていて、そのもとで百本以上、緊急勅令が戦前には出されております。
その中には、例えば治安維持法の最高刑を死刑にするというものも、これは議会で廃案になったんです、戦前の議会でさえ廃案になったんですが、緊急勅令で、死刑が最高刑にされてしまった。
まさに、そういう、しばしば、戦前、人権侵害が見受けられた、行政による暴走が見受けられたという痛苦の反省から、新憲法はあくまで民主政治の本義に徹して、国会中心主義に立つんだと。これがやはり緊急事態条項をあえて規定していない、積極的に規定していない一番の理由なわけであります。ここをやはり踏まえていくということが、法務大臣としてもどうしても必要になると思うんですね。
その上でですけれども、ここからは、緊急事態条項というより、宣言のもとでの話をちょっとお聞きしたいんですが、緊急事態宣言のもとで私権制限ということが行われております。行きたいところに行けないとか、行きたい集会に行けないとか、声を上げられないとか、さまざまな制限を伴うわけですけれども、これはやはり必要最小限といいますか、不当な、こういう自由の侵害はあってはならない、これをまず確認したいんですが、そういう御認識でよろしいですね、大臣。国民の人権制限。
○ 奈尾政府参考人 お答え申し上げます。
新型インフルエンザ等対策特別措置法ということで申し上げますと、法律第五条に基本的人権の尊重といったものがございまして、例えば、法四十五条に基づく外出自粛の要請等におきましても、国民の権利と自由に制限を加える場合には、当然ながら、必要最小限にしなければならないという原則のもと、やってございます。
○ 藤野委員 これもお答えにならないというのは、ちょっと驚きました。通告もしておりましたし。
一般論で私は聞いたんですね。この宣言のもとで私権制限がある場合であっても、それは必要最小限のものでなければなりませんね、法務大臣としてそのようにお考えですか、こういう質問なんです。
○ 森国務大臣 お尋ねの新型インフルエンザ等対策特別措置法は、法務省の所管ではございませんので、法務大臣としてその解釈に関する所見を述べることは適切ではないと考えております。
○ 藤野委員 ちょっと、本当に心配になってきました。
ちょっと具体的に聞きたいんですけれども、安倍総理は七日の衆議院議運の質疑で、警察に要請して職務質問を活発化させることがあるのかという質問に対して、罰則がないので警察が取り締まることはない、ただ、御協力はさせていただくことはあるかもしれない、こう言いました、答弁されました。
先日は、神奈川県の知事が、これはもう相当、何か踏み込んで、警察に頼むんだ、そういうことをやってもらうんだと明言するような例も出てきているんですね。
新聞報道でも、毎日新聞の四月三日はこう報じております。外出自粛をめぐっては一歩踏み込んだ方策の検討も進む、その一つが、警察官がいわゆる職務質問と同じような形で外出の理由を尋ねるというようなことも報道されているんですが。
内閣官房にお聞きますが、政府内で、一歩踏み込んだ検討なるものがなされているんでしょうか。
○ 奈尾政府参考人 お答え申し上げます。
都道府県知事が外出自粛要請を行うに当たりまして、当該都道府県警察に協力を求めた場合には、外出自粛要請に伴う繁華街等でのトラブルの発生を防止するために、制服によるパトロールを強化し、警戒活動等の所要の措置を講じている。また、そうした活動を通じて、状況に応じて、国民に対し、外出自粛要請が出されている旨の一般的な声かけを行うなどの協力を行っていると警察庁から聞いてございます。
○ 藤野委員 いや、私が聞いたのは、それはもう読んで知っているんですが、要するに、職務質問と同じような形というのがわからないんですね。職務質問というのは、あくまで、警察官職務執行法第二条に基づいて、犯罪のおそれがあるとき、思料されるときに限定して行われるものであります。他方、緊急事態宣言というのは、特措法に基づいて行われておりまして、犯罪というのは関係ない。
要するに、官房にもう一回お聞きしますが、この特措法のたてつけ上、一歩踏み込んだ方策として警察官に職務質問と同じような形で行動させるということが可能なんですか。
○ 奈尾政府参考人 お答え申し上げます。
特措法は、あくまで、例えば外出自粛の要請につきましては、市民への協力ベースという話でございます。例えば警察官職務執行法第二条第一項で、いわゆる職務質問でございますけれども、いわゆる職務質問ではなく、一般的な声かけをされるというふうに警察庁からは聞いてございます。
○ 藤野委員 だから、できないということですね、法律上。
ただ、何か一般的な声かけとおっしゃるんですが、それなら、ほかの、県の職員とか、別に警察官がやる必要はないわけですね。
何のために特措法はそもそも罰則を設けていないのかというと、もともと、私権制限という、憲法上の権利を制約するからなんですね。だから、それを最小限にしようということで、罰則も設けず、協力ベースというたてつけにしているわけです、法律を。
だったら、今、この宣言を出されたもとでやるべきことは、そもそも外に出なくていいように、先ほども野党の委員から指摘がありましたけれども、しっかり補償を行って、仕事へ行かなくていいようにするということをまず根本に置きながら、あとはしっかり別のやり方で対応していくということが、この法律の世界というか、予定されている状況だと私は思うんですね。
それを何か飛び越えて、もう全く飛び越えて、いきなり警察に行くというのは、本当に私は危険な動きだというふうに思います。厳しく今後も見ていきたいというふうに思います。
そして最後に、検察官の定年延長についてお聞きをします。
配付資料の三を見ていただきたいんですが、これは四月六日に日弁連が会長声明を出されまして、それそのものなんです。
これは通告させていただいているんですが、この日弁連の声明は、解釈変更についても、そもそも検察官の独立性というのは、あるいは特殊な定年制度というのは、憲法の基本原則である権力分立に基礎を置くものである、だから、それを変えることは、それこそ先ほど御指摘もありましたけれども、範囲を大きく逸脱するものであって、法の支配と権力分立を揺るがすものと言っておりますし、法律につきましても、憲法の基本原理である権力分立に反するという、こういう指摘がされております。
大臣にお聞きしますが、このような日弁連会長声明の指摘、どのように受けとめられますか。
○ 森国務大臣 御指摘の会長声明が出されたことは承知をしております。
検察官は、刑事訴訟法上、唯一の公訴提起機関であり、その職務執行の公正が直接刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすという職責の特殊性があり、準司法的性格を持っているとされます。そのため、検察官には一般行政官と異なる身分の保障及び待遇が与えられております。
もっとも、検察官に勤務延長の規定が適用されるものとしても、内閣ないし法務大臣が自由に検察官を罷免したり、検察官に対して身分上の不利益処分を行ったりするものではないため、その身分保障を害するものではないと考えております。
したがって、今般の解釈変更及び検察庁法の改正案は、検察官が準司法的性格を有するとされていることとは矛盾するものではないと考えます。
○ 藤野委員 いや、私は、大きく矛盾していると思うんですね。大臣の答弁の前半と後半自体が矛盾している。
配付資料の四を見ていただきたいんですが、これは先日も御紹介したんですけれども、法務省が出してきた資料でありまして、検察官に今回の国公法と同じような規定を設ける必要があるかということについて検討した結果を書かれているものであります。
ここにありますように、例えばアのところに、「検察官については、管理監督職勤務上限年齢制を導入し得ない」云々かんぬんと言った後に、しかしながらということなんですが、「検察官については、職制上の段階がなく、降任等が概念し得ないことから、他の一般職の国家公務員に比してより柔軟な人事運用が可能である。また、検察官は、定年に達した時に退官することとされているため、同時期に一斉に退官することとはされていない。さらに、管理監督職勤務上限年齢制の趣旨を踏まえて導入する仕組みにおける異動時期は誕生日を基準としていることから、一斉に異動することにもならない。」と。
つまり、三つのないと先日言いましたけれども、降任等が概念し得ないということ、同時期に一斉に退官しないということ、同時期に一斉に異動もしない、だから柔軟な人事が可能で、一番下にありますけれども、それにより公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることは考えがたいと言っているんですね。考えがたい。
もともとこういう検察の特殊性があるから、現在も国家公務員法の八十一条の三の第一項は検察官には適用されていないし、今後も必要ないというふうに結論づけているわけであります。
大臣にお聞きしたいんですが、私が三月三十一日に法務委員会で、この特殊性ですね、降任がないとか、一斉にやめないとか、一斉に異動しないとか、この状況は昨年十月末から今までに変わったのかと質問したら、大臣は、現在も同様だと答弁をされました。
ちょっと確認したいんですが、大臣が現在も同様だとおっしゃったのは、検察官がさまざまな特殊性を持っている、一斉に退官しないとか、そういう特殊性は現在も同じだが、別の観点から今回新たな法律をつくったんだ、そういう理解でよろしいですか。
○ 森国務大臣 はい。法務省においては、御指摘の検討は、昨年十月末ごろの時点でございますが、退官や異動により補充すべきポストが一斉に生じるおそれがあるか否かという視点のみから検討をしたものでございますけれども、この法案が提出に至らず、通常国会までの提出までに時間ができたので、昨年十二月ごろから担当者において改めて検討作業等を行い、この従前の解釈を維持するのが妥当か否かという観点に立ち戻って検討をしたものでございます。
○ 藤野委員 そういうことなんです。要するに、現在も同じだけれども、別の視点からやられた。
これは日弁連が指摘しておりますように、検察官の地位の特殊性というのは憲法の基本原理である権力分立に基礎を置くものであるというふうに、憲法の基本原理というのがこの日弁連の声明には何回か出てくるんですね。
大臣にお聞きしますが、現在も同様だと言った検察官の特殊性というのは、大臣も、この特殊性は憲法の基本原理に基礎を置くものである、これは、大臣、同じ認識なんでしょうか。
○ 森国務大臣 憲法の理念に基礎を置くとおっしゃった特殊性というのは、準司法官的性格のことだというふうに思われますので、それについては、先ほど御説明したとおり、唯一の公訴提起機関であるというところから出ている性格で、それは現在も特殊性があるというふうに考えております。
○ 藤野委員 余り細かいことはいいんですが、要するに、検察官の地位の特殊性というのは、大臣も、憲法の基本原理に基礎があるということでよろしいんですね。
○ 森国務大臣 憲法によって定められている、法の、裁判官による、裁判官と行政機関、立法機関の中で、その裁判官が行っている刑事裁判に唯一の公訴提起機関である検察官が重大な影響を及ぼすという、そういう意味で、その職責の特殊性があり、準司法的性格を持っているとされていると理解しております。
○ 藤野委員 じゃ、ちょっと聞き方を変えますけれども、要するに、この問題、今回問われているのは、憲法の基本原理に基づく現行制度、これを変えていこうという話なんですね。大臣は、社会経済情勢が大きく変化し、多様化し、複雑化し、犯罪の性質も複雑困難化していると言うんですが、そういう漠然としたものが権力分立などの憲法の基本原理よりも優位するというふうに大臣はお考えになって、別の視点から今回の法案を提出されたということなんですか。
○ 森国務大臣 検察官が準司法官的性格を持っていることはそのとおりでございますが、今回の勤務延長の規定が適用されるものとしての検察官の準司法官的性格を害するというふうには考えておりません。
○ 藤野委員 私が聞いているのは、大臣も一部であれ、憲法の基本原理が検察官の地位の特殊性の土台にあって、基礎にあって、それが、先ほど言った、大臣が現在も同様と言った、例えば一斉に退官しないとか、一斉に異動しないとか、そういう身分保障につながっているわけですね。検察独自の身分保障なんです、これは。だから、法務省自身が、一般の国家公務員法八十一条の三は適用されないし、今後も必要ないと一旦は結論づけたんです。それを大臣は一部ではあれお認めになって、ただ、それを、特殊性として、経済情勢などとかいう、そういう一般的なというか漠然としたもので憲法の基本原理に基づく部分まで変えようとしているんですか、そういう質問なんです。
○ 森国務大臣 先ほどの繰り返しになりますけれども、勤務延長制度を適用されるとしても、検察官に対して身分上の不利益処分を行ったりするものではないため、その身分保障を害するものではございません。
したがって、今般の解釈変更が検察官が準司法的性格を有するとされていることと矛盾するものではないと考えております。
○ 藤野委員 いや、矛盾するんですよ。検察の準司法的性質が、一斉に退官しないとか一斉に異動しないところに、定年とかそういう身分保障でいえば、反映されているわけです。
じゃ、また、別の聞き方をしますけれども、要するに、十月末までは、二十二条については改正する必要はないとおっしゃっていたわけですね。ところが、それを変えていくわけです。しかも、二十二条が必要ないと言っていた理由について、大臣は現在も同様だとおっしゃっている。だったら、これは分けるべきじゃないですか。切り分けて、九条とか六十三を六十五にするというのは十月末にも入っていましたから、これは当時も検討済みであり、現在と同様という範疇だと思います。
けれども、大臣、今でも現在と同様とおっしゃっているのであれば、十月末のときになかったものはやはり別にすべきだと思うんです。大臣自身おっしゃっているように、別の観点から入れ込んだ条文なんだから、これは国家公務員法そのものと切り分けて、やはり法務委員会で堂々と、これこれこういう理由だから、検察官の問題は特別に議論をする、これが法務省として当然とるべき態度じゃないですか。
○ 森国務大臣 昨年十月末ごろ時点では、退官や異動により補充すべきポストが一斉に生じるおそれがあるか否かという視点のみから検討していたわけでございます。
ところが、法律案の提出に至らなかったので、本年の通常国会までの提出までに時間ができたので、昨年十二月ごろから担当者において改めて検討作業を行いました。そのときに、先ほどから申し上げておりますけれども、また別の視点での解釈を、検討を行ったわけでございます。
○ 藤野委員 今、別の視点とおっしゃいましたように、要するに別の視点なんです。別の法律と考えた方がいいんです。
国家公務員法という束ねでやろうとしているのであれば同じ理念でやるべきであって、国家公務員法の役割制度などの理念は当てはまらないというふうに法務省自身が結論づけたわけですから、国家公務員法の束ねを解いて、検察庁法は検察庁法として、別の視点とおっしゃっているのだから、別の法律として提出すべきじゃないですか。
○ 川原政府参考人 お答えを申し上げます。
今般の国家公務員法等の改正の束ね法案でございますが、一般の国家公務員に適用される国家公務員法、それから検察官に適用される検察庁法、それから自衛隊員に適用される自衛隊法ということで、いずれもその趣旨、目的は、知識、経験が豊富な高齢期の職員を最大限に活用する点などあるところ、この共通の目的に基づいた国の政策を整合的に行うべきということで、束ねて審議をお願いするところでございます。
○ 藤野委員 そういうやり方は二重三重に権力分立を破壊するものだということを指摘して、質問を終わります。
会議録PDF
20200410_homuiinkai_Fujino_kaigiroku
質疑資料 PDF
20200410_homuiinkai_Fujino_shiryo
しんぶん赤旗 2020年4月12日 4面記事 PDF
しんぶん赤旗 2020年4月16日 5面記事 PDF
作成者 : fujinoyasufumi