衆院法務委で入管法の質問
○伊藤(忠)委員長代理 次に、藤野保史君。
○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
先日、理事会メンバーで、今回の死亡事件に関する資料、二度目の閲覧を行いました。今回も手書きを強いられた、このことには改めて強く抗議したいと思います。
その上で、今回の書き写しを通じて、新たな疑問が浮かびました。
まず、一月二十五日の血液検査結果には、TSH、フリーT3、T4など、今回死因とされている甲状腺、これに関する数値が記載されております。ところが、三月の血液検査結果にはこの数値がない。これはなぜなのか。 また、肺のCT画像が真っ白だということが繰り返し報道されております。ところが、中間報告のパルスオキシメーター、これは血中酸素の飽和度ですけれども、この数値は、死亡当日ですら九八%に達している。これは医師もおかしいと指摘しているんですね。
もう一つ、二月二十二日から三月四日まで医師の診察を受けさせなかったのは摂食状況が改善したからだというのが中間報告の説明です。では、二月二十三日、これが最後に分かっている体重です、二月二十三日に六十五・五キロだったウィシュマさんの体重は、死亡時、何キログラムだったのか。これはいまだに分からない。
もう今日は時間がないので、委員長にお諮りします。
司法解剖に関する一連の資料、特に甲状腺に関するデータ、肺のCT画像、死亡時の体重、さらにパルスオキシメーターの数値などが記載されていると思います。そして、今、ビデオが公開されない下で、前日や当日の様子を知ることができる恐らく唯一の資料である看守勤務日誌等、そして面接記録、これらの資料提出を求めます。
○伊藤(忠)委員長代理 理事会で検討させていただきます。
○藤野委員 配付資料の一を見ていただきたいと思います。
これは菅総理が、昨年十月、総理就任直後にベトナムを訪問した際のスピーチです。黄色く塗っている部分。「アセアン各国から日本に来ている、技能実習生などの若さとエネルギー溢れる人材は、いまや、日本人の生活や経済にとって必要不可欠な存在となっています。」、こうおっしゃっているんですね。
これは実は大変な発言でありまして、というのは、技能実習制度というのは、あくまで国際貢献のための制度、外国の若者が日本で技能を習得し、帰国してそれを生かしていただく、そのための制度です。ところが、菅総理は、技能実習生などが日本人の生活や経済にとって必要不可欠な存在と言っているんですね。
私は、総理の認識は間違っていると言いたいんじゃないんです。むしろ、そういう認識なら、それに見合った対応をすべきだと思います。ところが、技能実習生たちはどんな扱いを受けているか。
配付資料の二を御覧いただきたいと思います。
これは信濃毎日新聞の「五色(いつついろ)のメビウス」という連載で、これは非常に綿密な調査に基づいて、四十回以上、連載で、県内のリアルな実態を報じております。
ごく一部ですけれども、初めのものは一月六日、見出しを見て、一番右側の黒いところにある「説明と異なる力仕事の日々」。初めは、一番上の段ですけれども、工場を経営する石川県の建設会社からは、一年前は、機械を使って鉄筋を折り曲げる仕事との説明を受けていた。しかし、六月になるとがらりと変わったと。要するに、折り曲げるんじゃなくて運ぶことに変わっていくんですね。しかも、まともな賃金を払えない。だから、借金も返せないから失踪した、こういう記事なんです。
次の記事は、その借金が何に使われているか。実習生の借金を原資に、日本側企業への接待とかキックバックが行われているということが指摘されている。
例えば、「日本側への接待やキックバックにかかった費用は結局、実習生が多額の借金として背負うことになる。ズンさんの送り出し機関が実習生候補者一人から集める手数料は総額七十万円。このうち十万円が接待やキックバックの原資だ。」、こういう指摘なんですね。
そして、こうした事態が横行する原因の一つ、これは受入れ企業と監理団体に関する構造的な問題です。 入管庁にお聞きします。
全国には約三千の監理団体がありますが、この配付資料にありますように、長野県の場合、実習先企業の役員と監理団体の役員が兼務しているというのは五七%に達しているんです。
入管庁にお聞きしますが、全国の実態は把握していますか。把握していないなら、調査すべきじゃないですか。 〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕
○松本政府参考人 お答えいたします。
現行の技能実習法令上、監理団体役員と実習実施者役員の兼務は禁止されておらず、当庁におきましては、兼務に関する統計は把握しておりません。
○藤野委員 ですから、この配付資料にあるように、長野県で見れば、本来監督すべき監理団体あるいは相談に乗るべき監理団体が受入先企業の役員を兼務しているのが六割に達しているんですよ。相談できない、監督もできないわけです。まさにそうした実態が放置されている下で何が起きているか、次の配付資料三を見ていただきたいと思います。
これは在ベトナム日本大使館が作成した資料で、そこの見出しにありますように、「送出機関による手数料等の過大徴収が技能実習生の失踪の原因ともなり得る」、そして、黄色く塗っているところですけれども、「高額の訪日費用負担が、ベトナム人技能実習生の失踪リスクを高めている可能性がある」、こういう指摘なんです。 大臣にお聞きします。
失踪すれば在留資格は失われるわけですね。そうすれば収容される、送還される。しかし、この在ベトナム日本大使館ですよ、これは。その大使館が指摘しているように、失踪の大きな原因として、過大な借金、訪日費用負担、しかも、その一部は日本側へのキックバック、接待に使われているんです。まさに外国人労働者、技能実習生が食い物にされている構造がある。この構造こそ、やはり失踪とか、ひいては在留資格を失う大きな要因なんです。この構造にこそメスを入れる必要がある。
ところが、ここにはメスを入れていないわけですね。政府は、移民政策は取らないという建前を取りながら、実際には安価な労働力として外国人を受け入れてきた。つまり、入口における受入れは拡大しているんです。入口はどんどん拡大しながら、いざ何らかの事情で在留資格を失ったら、もう活用できないとなれば、さっさと帰国してもらおう、出口に当たる退去強制手続で入管に更なる裁量と権限を与える、これがこの法案の本質なんじゃないですか、大臣。
○上川国務大臣 今委員御指摘いただきました、我が国への技能実習生の送り出しに関して、多額の費用を負担したまま来日するケース、これが一部に存在するものと承知をしております。
手数料の許容範囲でございますが、送り出し国の法令に基づくものではございますが、不当に高額な手数料を徴収するなどの不適正な行為を行う送り出し機関等につきましては、我が国といたしましても、確実に制度から排除すること、これが必要と考えているところでございます。
このことにつきまして、問題の本質をしっかりと踏まえた上で、外国人の技能実習機構におきましては、この技能実習計画の審査におきましては、不当に高額な手数料等の徴収がないかということについても確認をしておりまして、またさらに、現在、ベトナムも含めまして、十四か国との間で、二国間の取決めを実施しているところでございます。不適正な事例を把握した場合には、相手国への通報、さらに、当該政府からの調査、指導、送り出し機関の認定取消し等の対応を求めておりまして、既に八十機関、これを通報しているところでございます。 何といっても、この制度、やはり大事なことは、技能実習の方々がしっかりと技能を身につけて母国で活躍をしていただくということでございますので、失踪率、この高い送り出し機関、こちらの社会から排除していく、制度から排除していく、このために、PDCAサイクルをしっかりと回しながら、不断に検証を重ねながら、適正化を図ってまいりたいというふうに考えております。
○藤野委員 もう終わりますけれども、菅総理が、技能実習生が日本人の生活と経済に必要不可欠とまで言っているんです。必要不可欠だから、どんどん来てくれ、どんどん来てくれと言いながら、一旦資格を失えば、もうさっさと帰国してもらう。この入管法というのは、日本はこういう国ですよというのを国際的に公言するようなものなんです。
断固廃案にすべきだ、このことを主張して、質問を終わります。
作成者 : fujinoyasufumi