衆院原子力特委 原発「40年ルール」を骨抜きにしようとする動きについて質問
今日の原子力特委で質問。
原発の運転期間を定めた「40年ルール」を骨抜きにしようという原発業界や自民党の動き。
それに屈服して40年は「寿命」ではなく「身体検査のタイミング」だという『見解』(7月29日)を出した原子力規制委員会。
まさに福島第一原発事故を調べた国会事故調査委員会が「規制の虜」と指摘した関係を彷彿とさせる。
自民党からのヤジが一番多かったかも。
それだけ図星を突いたということだと思います。
- 会議録 -
○ 渡辺委員長 次に、藤野保史君。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
きょうは、原発の運転期間である四十年ルールについてお聞きをします。
配付資料の一を見ていただきますと、これは、いわゆる原子炉等規制法の四十年ルールにかかわる条文であります。四十三条の三の三十二、ここに、原子炉を運転することができる期間は、第四十三条の三の十一の三項、すなわち最初に使用前事業者検査の確認を受けた日から起算して四十年であるというふうに規定をしております。
これは、あの三・一一東電福島第一原発事故を受けて、原発の運転期間、すなわち寿命を日本で初めて法定化したものであります。実際、この法律、規定に基づいて、先ほど更田委員長からの報告にあったように、東海第二、美浜三号、高浜一、二号について、いわゆる延長申請が、この起点を、寿命を前提にして行われてまいりました。
規制庁に確認したいんですが、この条項に関する見解を、七月二十九日、規制委員会が発表されているんですが、この見解は何を発端として、何をきっかけとして行われたのか、端的にお願いします。
○ 市村政府参考人 お答え申し上げます。
まず、先生御指摘の七月二十九日の見解の文書でございますけれども、これは、原子力規制委員会としてかねてから表明してきていた考えを改めて整理したものでございます。
お尋ねのきっかけそのものについては、平成二十九年一月に、規制委員会と主要原子力設置者の原子力部門の責任者、CNOとの意見交換というものでございますけれども、そういう場において、事業者側から、運転停止期間における安全上重要な設備の劣化については技術的に問題ないと考えられることから、バックフィットを適切に実施するための審査、工事等に関する停止期間は運転期間から除外してはどうかという提案がなされました。
こういう経緯もありまして、原子力規制庁が、経年劣化管理に関しまして、原子力エネルギー協議会、これはATENAという団体ですけれども、ここと技術的意見交換を行いまして、その結果を規制委員会に七月二十二日に報告をいたしました。その際に、規制委員会から従来の見解を改めてまとめるように指示がありまして、これを取りまとめたものでございます。
○ 藤野委員 今、事業者側からこうした意見交換が求められた、それをATENAと協議をしてまとめたというお話がありました。
この意見交換を行ったATENA、原子力エネルギー協議会というのはどんな組織であって、電事連との関係はどうなっているんでしょうか。端的にお願いします。
○ 市村政府参考人 お答え申し上げます。
お尋ねの原子力エネルギー協議会、いわゆるATENAでございますけれども、これは、昨年七月に、先ほど申し上げました原子力規制委員会とCNOとの意見交換というのがございまして、その場において事業者側から説明がございました。そこでは、ATENAというものは、原子力事業者、メーカー、関係団体が、自律的かつ継続的な安全性向上の取組を定着させていくことを目的に、原子力産業界全体の知見、リソースを効果的に活用し、規制当局等とも対話を行いながら、効果ある安全対策を立案して、原子力事業者の現場への導入を促す新たな組織として設立をしたという説明がございました。
○ 藤野委員 つまり、このATENAというのは、昔の電事連、いわゆる電気事業者だけではなくて、三菱重工や東芝、日立といった原子炉メーカーあるいは関係団体が加わった組織であります。電事連よりも強力にロビー活動を行っているわけであります。そして、そのATENA側との意見交換を通じて、七月二十九日の見解なるものが発表された。
配付資料の二を見ていただきますと、この見解が出ております。黄色の部分、ほかにもいろいろありますが、ポイントだと思います。三ポツのところは、「運転期間を四十年とする定めは、このような原子力規制委員会の立場から見ると、かかる評価を行うタイミング(運転開始から一定期間経過した時点)を特定するという意味を持つものである。」そして、六ポツは、「このように、現行制度における運転開始から四十年という期間そのものは、上記3.の評価を行う時期として唯一の選択肢というものではなく、発電用原子炉施設の運転期間についての立法政策として定められたものである。」
ちょっとわかりにくいと思うんですね。なので、ちょっと配付資料三を用意させていただきました。これは、電気新聞、ことしの七月三十一日付でして、二十九日に規制委員会が見解を発表して、三十日に自民党の原子力規制に関する特別委員会が規制庁から説明を受けております。その説明を受けて、この自民党の特別委員会の委員長である井上委員長が記事で出てくるわけですね。紹介しますと、「井上委員長は「四十年」の運転期間は「寿命」ではなく、運転期間延長認可のための「身体検査」を行うタイミングとの認識を強調。規制委の文書でも同様の見解が明確化されたことを高く評価した。」
更田委員長にお聞きしたいんですが、四十年、法律上明記されている。これは、運転期間と法律上書いてあるわけですね、運転期間、運転できる期間は四十年と。これは、しかし、寿命ではなくて身体検査を行うタイミングだ、こういう見解を規制委員会が発表したことを高く評価されているんですが、更田委員長もこの井上委員長と同じ認識ということでよろしいですか。
○ 更田政府特別補佐人 お答えをいたします。
これまで、繰り返し、四十年をどう考えるかとか、あるいは停止期間中は時計の針をとめるべきではないかとか、そういったことを盛んに原子力規制委員会は問われてきています。しかし、それは私たちが考えることでも決めることでもないんだよというのを繰り返しお答えをしておりますけれども、それがどうしても文書化しないとなかなか伝わっていかない。
そのこともあって、またさらに、さんざんそういった見解を明らかにしていたにもかかわらず、またCNO会議、事業者との会議で、停止期間中には時計の針がとめられませんかと。それは、我々、あずかり知る話ではなくて、立法政策の場において決められるべきだということがあの見解の最大のメッセージであります。
四十年という数字は、私たちが高経年化の評価を行うタイミングを示すもの、私たちにとってはそういうものであって、寿命であるとか期間と呼ばれているものというのは、これは政策側の議論であるということを明確にしたのがあの文書であります。
○ 藤野委員 いや、これは本当に重大な答弁だと思います。
法律をどう読んでも、期間と書いてあるんです、ピリオドと書いてあるんです。タイミングなんて書いてない。この四十三条の三の三十二の文言は、運転できる期間は、そして起点も示して、検査、確認した日から、起点も示して、そして四十年という期間も示しているんです。これが条文なんですよ。これを何かタイミングだとかと言うこと自体が、これはもう重大な解釈変更。当時の議事録を読みましても、まさにこの四十年は大問題になって、何で四十年なんだ、何で四十年しか運転できないんだという議論がるるされているわけです。
だから、これは寿命であることはもう動かしようがない。これを、意見交換なのか知りませんが、タイミングだ、評価を行うピンポイントのタイミングだ、期間だったものをタイミングだと勝手に読みかえる。
これは、本当に規制委員会が、初めおっしゃったように、ずっと述べる立場にないとおっしゃっているんですよ。配付資料でも、私はあえて青く塗らせていただいたんです。「かねてから、運転期間の在り方について意見を述べる立場にない旨を表明してきたところであるが、」と前文でおっしゃい、一ポツでも、こうした運転期間について「原子力規制委員会が関わるべき事柄ではない。」とおっしゃっている。最後の六ポツでも、最後に、「原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない。」とおっしゃっている。だから、述べなきゃいいんです。述べなきゃいいのに、三ポツとか六ポツで新たな解釈を勝手に持ち込んできているわけですよ。タイミングだと。
自民党の特別委員長が高く評価する、ここにこの見解の一番のポイントがある。四十年というものから検査期間を除いてほしい、先ほどお話もありました。東京電力の柏崎刈羽も七年たっている。この七年を四十年に入れないでほしい。それを可能にするのはこのタイミングという言葉なんですよ。
こういうことをもしやりたいんだったら、私は法律を変えるべきだと思う。国会で審議をして、規制委員会にこんなことを押しつけて、こういう意見を述べる立場がない組織にこんなことを言わせるのではなくて、ちゃんと法律を変える、堂々と正面から議論すべきである。そんなこともせずに、こういう見解なるものを出させてねじ曲げるというのは、私は、原子力行政、本当にゆがめると思いますよ。
そして、これはこの間、日本学術会議とか検察庁法のところでも、現行法の解釈、確定しているものを、条文上動かしようがないものを政府内部で勝手に解釈したと問題になっています。ああいう組織、学術会議なんというのは戦前との関係で、戦前、科学者が戦争に協力させられた、それをやらないということで独立性があるわけですね。原子力規制委員会は、あの三・一一の原発事故が最大の教訓になって独立性が強化された。その組織が、事もあろうに、条文の動かしようがないこの文言を、タイミングだ、期間だったものをタイミングだと言うのは本当に許しがたいと思う。
私、この問題を考える中で、そういった規制委員会そのものの成り立ちというのを改めて振り返ってみました。国会事故調査報告書、きょうも持ってきておりますけれども、配付資料の五をごらんいただきますと、こういう指摘があるんです。黄色く塗らせていただきましたけれども、「規制及び指針類の検討過程の実態は、」とありまして、「安全確保に必要な規制を策定するための健全なプロセスとは懸け離れたものであり、規制側も事業者側も、「既設の炉を停止しない」という条件を大前提に、体裁が整うような形で規制の落としどころを探り合うというものであった。」
今回の四十年ルールに関する見解も、まさに規制の検討過程の話なんですね。おっしゃったように、いろいろな検討が求められた、自分がずっと言ってきたけれども、委員会として言ってきたけれども、それを何か納得しないということなんですね。それは正直におっしゃったと思うんです。
この事故調報告、こうも続けております。「当委員会では、事業者と規制当局の関係を確認するに当たり、事業者のロビー活動に大きな役割を果たしてきた電事連を中心に調査を行った。その結果、日本の原子力業界における電気事業者と規制当局との関係は、必要な独立性及び透明性が確保されることなく、まさに「虜(とりこ)」の構造といえる状態であり、安全文化とは相いれない実態が明らかとなった。」とあるわけですね。ここで言われる「事業者のロビー活動に大きな役割を果たしてきた電事連」、これが今もっとモデルチェンジというかバージョンアップされて、電事連も含むATENAという組織になっているわけですね。
このATENAというのは、すごいんですよ、規制委員会との会合といいますか意見交換、ヒアリングも含めて、二〇一九年四月三日以降、規制委員会からいただいた資料では、ことしの十一月二十六日までに三百四十回、意見交換を行っております。この四十年ルールについても十回以上既に行っている。
もちろん、私たちは意見交換自体を否定するものではありません。意見交換は否定しません。しかし、意見を述べる立場にないと言い続けていた組織に対して意見交換を強いる、こんなものは意見交換と言わないと思うんです。本来であれば自由に意見を述べる、そして一定の知見を共有する、これが意見交換であって、意見を述べる立場にないんだ、意見を述べるべきでないとまで言っている、そういうところに、こういう、このテーマだけでも十回以上行っているわけですね。
ATENA側の一番の要求は、先ほど言ったように、審査、工事等にかかった停止期間は四十年の運転期間から外してほしい、この一点です。しかし、これはやはり法律、原子炉等規制法四十三条の三の三十二には、原子炉を運転できる期間は四十年だと書いているわけです。ここをいじらない以上、どうしたって無理な議論なんです。実際、だからこそ、今まで三原発四基で、そこを起点にして延長申請もされているわけです。
更田委員長、お聞きしますけれども、規制委員会自身が、寿命だという立場で現行法の解釈、運用を行ってきたと思うんです。それをどうしても変えたい、寿命じゃなくて身体検査のタイミングにしたいというのであれば、国会で審議をする、それが筋じゃないか。委員長の立場からおっしゃってください。
○ 更田政府特別補佐人 まさに私たち原子力規制委員会が申し上げていることであります。四十年を変えるのは国会で御議論いただくこと、また、時計の進め方を決めるのは国会でお決めいただくことで、繰り返し、運転停止期間は時計の針をとめるべきではないかと問われてきたことに対して、それはできないと一貫して答弁をしてまいりました。まさに立法の御議論であろうというふうに認識をしております。
○ 藤野委員 委員長、そうおっしゃるのであれば、こんな見解を出さなきゃよかったんですよ。委員長、これ、私、何回も読みました。もう委員会としての悩みが出てくるような、述べる立場にないんだと三回も出てくるんですね。にもかかわらず、運転期間については、四十年という運転期間ではなくて、タイミングだと。
やはり、一番独立性が事業者や政府から求められている原子力規制委員会が、意見を述べるべきでない事柄について意見を述べている。この文書自身が、逃れられない、もうあれなんですよ。幾ら強弁されても、国会でやることだとおっしゃる、そのとおりだと思います、にもかかわらず、じゃ、こんな見解を何で出されるんですか。
○ 更田政府特別補佐人 運転期間並びに時計の進み方は国会でお決めになるべきことであるというのをより明確に示すために見解を差し上げました。それが誤解を招くとすると、運転期間は私たちの知ったことではないという意味で、私たちが四十年目に評価を行っているのは、そこで高経年化の申請が出てくるからそのタイミングになった、身体検査のタイミングというのもそれに合わせて行っているという意味で、期間そのものは私たちの知ったことではないという意味でその見解は申し上げております。
○ 藤野委員 いや、知ったことではないと言われるけれども、自民党の特別委員会の委員長からは高く評価されるわけですよ。
その委員会は何を言っているか。(発言する者あり)いや、皆さんがそうやってやじられること自身が本当にわかりやすい反応だなと思いますよ。
この国会事故調は何を言ったか。先ほど安全神話ともおっしゃいましたが、その安全神話を生み出した規制のとりこの構造を強調されているんです。規制のとりこ。今回のように、本来述べるべきでない分野についてまで、繰り返しATENAという電事連以上に強力な組織との意見交換なるものを通じて、こういう見解が出てきた。しかも、規制に関する中心的な問題ですね。
これは、配付資料の六も見ていただきたいんですけれども、同じ事故調の報告書ですが、こうあるんですね。「本事故の原因が適切に対処されず、長期間放置された背景には、」「電気事業者と規制側の不健全な関係(「虜の構造」)があったことは明らかであろう。」そして、ここが大事だと思います。「こうした原子力業界の病巣の根底には、原子力業界の存続が既設炉の稼働に依存しているという問題がある。」飛びますけれども、「既設炉の停止は、「原子力業界」に関わりを持つすべての者にとって、その存在意義を脅かす事象である。」
先ほど出た柏崎刈羽というのはもう七年たっておりまして、これは七年間、ある意味でいうと既設炉の稼働が短くなるわけですね。既設炉の停止が早まっちゃうわけです。逆に、ほかの原発でもそういう関係にある。今回の解釈変更というか、この見解というのは、少しでも長く既設炉を動かす、こういうことにつながっていく。まさに、国会事故調が言う既設炉を停止しないため、そういう動きにつながっていくと、委員長、思いませんか。
○ 更田政府特別補佐人 停止期間中は時計の針の進行に含まれますので、停止している分だけ運転する期間は短くなります。そして、それを変える変えないは立法府の御議論であるというのが私どもの見解です。
○ 藤野委員 いや、何でそのラインを、防衛ラインを維持されなかったのかなと、ATENAとの関係で、私は思いますよ。
そういう意味で、この停止期間中が例えば柏崎刈羽に適用されることがあるかどうかは、これはまた別論点です。しかし、この見解が出たということは動かないんですよ。これはもう絶対動かない。何で立場上こういうものをやるべきでないと言ってきたことを動かしたのかということは、もう動かしようのない事実であります。
これは、私は、国会事故調が懸念しているとりこの関係、とりこの構造、これに規制委員会が戻る、こういう大きな危険がある、いや、もう戻っているかもしれない、このことを指摘して、質問を終わります。
会議録PDF
20201203_genshiryoku_Fujino_kaigiroku
質疑資料PDF
20201203_genshiryoku_Fujino_shiryo
作成者 : fujinoyasufumi