福井県の老朽原発の再稼働問題について質問
○渡辺委員長 次に、藤野保史君。
○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
私は、福井県の老朽原発についてお聞きをします。
関電の高浜一、二号、美浜三号、いずれも四十年を超える原発であります。四十年ルールがある下で、本来であればやはり廃炉にすべき原発なんですね。しかも、これまでこれらの原発は十年以上動いていなかったという特徴もあります。つまり、四十年以上を超える老朽原発であり、十年以上休眠していた原発である。これまで日本の原発が経験したことのない、ある意味未知の危険を抱えた原発が来月下旬に再稼働しようとしている。私たちは再稼働すべきでないと思っております。
問題は、政府が来月下旬の再稼働に向けて重大な地ならしを何個もやってきたということであります。 配付資料一を見ていただければと思うんですが、前回も紹介しましたけれども、二〇一九年四月一日から二〇二一年二月二十六日までのエネ庁幹部による福井県の原発立地自治体への出張についての資料です。計百十回に達しているんですね。エネ庁は新潟などにも入っているんですけれども、新潟に次いで多いのが福井県なんです。その中で、まず、裏の黄色い部分、二〇二〇年の十月十六日に着目していただきたいんですが、保坂長官始め幹部五人がこの日に福井入りをしまして、県知事、美浜町長、高浜町長と面談しております。
この面談について各紙が報じているんですが、配付資料の二は東京新聞、いろいろ書いてありますが、十月十六日、この日を境に関電が四十年超運転を目指す美浜三号、高浜一、二号の再稼働をめぐる議論が一気に動いたというところを紹介しております。
配付資料の三は地元の福井新聞で、いろいろ書いていますけれども、両町長がというところですね、両町長が再稼働の議論が今日から始動したと口をそろえたということなんです。十月十六日というのは、福井県の四十年を超える原発の議論がこの日から一気に動いたとか、そういう日だということであります。
その上で、今日質問したいのは、配付資料の一の薄く青く塗っている部分であります。今年の一月三日、まだ三が日も明けないうちに小沢典明エネルギー庁首席エネルギー・地域政策統括調整官が福井入りしたことを皮切りに、一月三日から数えますと十六回ですか、これだけ集中的にエネ庁幹部が福井に入っております。保坂長官にお聞きしますが、なぜこの時期に集中的に福井入りしたんでしょうか。
○保坂政府参考人 お答え申し上げます。
原子力発電につきましては、事業者自らがしっかりと地域に向き合うだけでなく、国も前面に立ちまして、地元や国民の理解が深まるよう、丁寧に取り組むことが重要でございます。そのため、立地地域の関係者と原子力を始めエネルギー政策をめぐる課題につきまして様々な形で常日頃から意見交換を行っておりまして、その中で立地自治体にもお伺いをしております。
御指摘の福井県につきましては、関西電力の美浜三号機及び高浜一、二号機に関しまして、昨年十月、福井県や美浜町、高浜町に対しまして再稼働に関する政府の考え方やエネルギーミックスの実現に向けた四十年超運転の必要性を御説明し、その後、昨年十二月までに、美浜町及び高浜町での住民説明会などを経て、両町の議会から再稼働に関する了解の判断が示されたところでございます。こうした中で、二〇二一年春以降順次安全対策工事が完了していく見通しであったことなども踏まえつつ、地元への丁寧な説明を更に進めていくため、立地自治体と様々な意見交換を行っていたものでございます。
○藤野委員 一般論ばかりなんですが、ちょっとこちらで紹介したいんですね。今、十二月までに説明会が終わったと言いましたけれども、十二月に何が起きたか。
実は、福井県知事というのは従来、使用済核燃料、福井で生まれた核のごみは県外に出せ、その候補地を提示しろということを再稼働の前提として要求してきたんです。つまり、県外候補地、再稼働、これはセットであって、ある意味再稼働に向けたほかの立地県にはないハードルだったんです。このハードルを越えるために、実は電事連が昨年十二月に、まさに十二月にですね、青森県むつ市の中間貯蔵施設を各社で共同利用するという案を公表しました。ところが、この電事連の共同利用案に対して、当のむつ市から市長を始め強い反対の声が上がったんですね。県外候補地というハードルが越えられない可能性が出てきたんです。そこで、政府が動いた。
ちょっと飛びますけれども、配付資料の六を見ていただきたいんですが、朝日新聞、二〇二一年四月二十九日付ですけれども、黄色く塗っている部分が、まさに、年明けに政府が動いたとあるわけです。経産省資源エネルギー庁の担当者らが正月三が日から何度か福井入りした、県関係者は国は必死になっていると感じたというふうにあるんです。まさにこうやって再稼働に向けてスイッチを押した、十月十六日に議論が一気に加速し始めた、しかし、十二月にむつ市から強烈な反対を受けるわけですね。何とかせなあかんということで、三が日が明ける前から十六回も二月十二日までに入っているんです。
この地ならしの仕上げが二月十二日なんですね。この日、関電の森本社長が、梶山大臣はリモートで参加されて、保坂長官は現地に行かれて関電の社長と一緒に知事に相対するわけですね、知事に対して、二〇二三年までに県外候補地を確定させる方針だということで、要するに太鼓判といいますか、お墨つきといいますか、社長だけじゃ心もとないからエネ庁長官、そしてリモートで梶山大臣も、二〇二三年までにやりますよと。
配付資料の六は、そのときの様子をこう報じております。保坂長官はむつ市長に説明すると語った、梶山経産相も関電とともにしっかり取り組むと話した、杉本知事は一定の回答と評価、この後、知事は県外候補地と再稼働の議論を切り離していったというんです。ここなんですね。今まではセットだったんです。県外候補地を示すことと再稼働の議論はセットだよ、前提だよと言っていたのが、この二月十二日の大臣とエネ庁長官の同席した方針、二〇二三年までに示すという方針を受けて切り離すということに変わったんですね。大きく局面が変わりました。
今日問題にしたいのは、この二月十二日の方針なるものが実は現実の見通しがないということなんですね。配付資料の七を御覧いただきたいんですが。 むつ市長の宮下宗一郎市長が、受け入れないと。黄色く塗っているところですけれども、可能性はゼロだと明言して、協議の余地はないとの姿勢を強調したとあるんですね。私、なるほどなと思ったのは、下の方の黄色く塗っているところなんですが、私たち自身で誘致したのとは決定的に違う、市の未来を自分たちで決める権利をないがしろにするやり方はあり得ないとおっしゃっているんです。これは私は当然だと思うんです。
電事連が、今まで単独利用だったものを、共同利用という案を勝手に出して、そこに関電も乗っかってくる、というか関電への助け船なんですけれども、むつ市の頭越しにやられた。自分たちの未来を自分たちで決める権利をないがしろにされているという市長のお言葉は、私はそのとおりだと思います。
長官にお聞きしますが、可能性はゼロとおっしゃっているんですね。二月十二日に福井県知事に示した方針は空手形なんじゃないか。空手形を切って福井県を強引に説得したということになるんじゃないですか。
○保坂政府参考人 お答え申し上げます。
関西電力につきましては、使用済燃料の県外搬出に向けて、ほかの地点も含めてあらゆる可能性を追求する旨を表明しているものと承知してございます。
今後の具体的な見通しや方針についての具体的なコメントは差し控えますが、国として、事業者と連携しながら、関係者の理解確保等に主体的に対応してまいりたいと考えているところでございます。
○藤野委員 全く答えていないんですね。
要するに、再稼働に賛成かどうかは関係ないんです。推進の方も、反対の方も。県知事が説明しているわけですね、知事選があって、こうこうこういうふうにしますと。議会でも答弁されている。まさにセットで、ずっと前の知事から来ているわけです。もっと言えば、前の前の知事から来ているわけです。それがまさに、全く相手の自治体の同意もないまま、二〇二三年なんという勝手な話をして、むつ市の市長も怒っている。これは県民全体との約束をほごにするものであって、推進、反対を超えて許される話ではないと思います。
ですから、当然、福井県民の代表である県議会でも問題になりました。知事が勝手にエネ庁長官や大臣と合意をしたということについての異論が出たんですね、三月議会で。配付資料の六にもう一回戻っていただきたいんですけれども、黄色いのでいえば下の段になるんですが、県外候補地提示を再稼働議論の前提としていた知事が切り離しに態度を変えたことを議会側は疑問視、三月、同意は得られないまま議会は終わったとあるんですね。 率直に言いまして、県議会の与党議員の皆さんがどのような思惑だったのかというのは本当は分かりません。分かりませんけれども、少なくとも県議会で知事の姿勢が問題視されたことは事実であります。ですから、知事も困るんですね。大臣も困ります、当事者ですから。
ここで、再び国が助け船を出すんです。続くところを読んでいただきたいんですが、四月六日、杉本知事は畑孝幸議長と面談した、そこで知事が説明したのが国からの新たな交付金だった、老朽原発が再稼働する際に立地県に一原発当たり二十五億円を支払う内容だった、県の担当者はマックスでつけてきたと言った、議論は加速した、こうあるんですね。
配付資料の八は、実際に私たちが求めたら出てきた資料であります。保坂長官、お聞きしますけれども、一発電所につき最大で二十五億円を交付するという方針があるんですけれども、一体いつ、どこで、どういう検討を経て決定されたんでしょうか。
○保坂政府参考人 お答え申し上げます。
エネルギー基本計画の中でも、政府としては再稼働の原発を取り巻く環境変化が立地地域に与える影響の緩和に対応することとしておりまして、これまでも再稼働等に対して交付金を措置してきたところでございます。運転延長による四十年超運転は我が国においてこれまで例がないものでございまして、立地地域に対して通常の再稼働とは異なる対応が必要であるということでございます。
こうしたことを踏まえまして内部で検討し、四十年超運転という新たな稼働状況の変化が立地地域に与える影響を踏まえまして、予算の範囲内で一発電所当たり最大二十五億円の交付金を措置するとの方針を四月六日までに資源エネルギー庁において決定し、福井県に対してお伝えをしたところでございます。
○藤野委員 内部でとか、四月六日までにとか、そういうことは聞いていないんですね。要するに、二十五億ものお金がどういう過程で決まったのか。
配付資料の九を見ていただきますと、そもそも公文書管理法というのは、第一条で、公文書が健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源である、こういうふうにしまして、第四条、下のところで、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程に関する文書を作成しなければならない、こう規定しております。二十五億円に関わる意思決定、これに関わる過程に関する文書というのはあると思うんですけれども、そういうのはあるんですね。
○保坂政府参考人 お答え申し上げます。
予算の範囲内で一発電所当たり最大二十五億円の交付金を措置するとの方針は、資源エネルギー庁としての資料で決定いたしまして福井県に対してお伝えをしたものでありまして、これについては、先ほど議員が御紹介された、議員に提出させていただいているものでございます。
その上で、交付金の具体的な内容につきましては、予算事業でありますことから最終的には交付金の交付規則において詳細を決定する予定でございまして、この交付規則については省内の文書決裁を今後経ることになるということでございます。
○藤野委員 今後経るということなんですが、私はこの質問に先立って、例えば稟議書とかあるいは決裁書とか、そういうのがあるんでしょうと聞いたんですよ。じゃ、それはあるんですか、今後手続に入るということは。
○保坂政府参考人 大臣に対しまして随時、資源エネルギー庁から状況の御報告を行ってはおりますが、こうした中で、交付金の対応に関する庁内での検討状況についても大臣に対して御報告をしましたが、資料につきましては、四月六日までに資源エネルギー庁において決定した方針を福井県に対して資料を提出してお伝えしたものでございます。
○藤野委員 結局ないということなんです。事前の私たちへの説明も、稟議書もない、決裁文書もない。要するに、四月六日までに内部で決めたというところにとどまっているんですね。
先ほど、一月三日、正月三が日から二月十二日まで十六回出張したと言いましたけれども、じゃ、この出張に関する復命書なり報告書、これはあるんでしょうか。
○保坂政府参考人 現在資料を精査中でございまして、まだ資料の整理ができておりません。
○藤野委員 これもふざけた話なんですよ。私はこの質問に先立って、復命書はあるはずだと。
というのは、配付資料を御覧いただきたいんですけれども、なかなか歴史がある話で、配付資料の四に「官庁綱紀の粛正について」という文書がありまして、一九七九年に空出張とかがいろいろ問題になって、何とかしなきゃいけないというので当時の大平首相が指示を出して、全省庁に対してこの文書が出されたんです。そこの中に、黄色く塗っているところにありますけれども、職員の出張に関し、出張報告についても原則として文書による復命を励行すると。こう決まっているわけです。ですから、当然作るべきなんです。長官御自身が行っているわけだし、幹部が集中的に行っている。何のために行ったのか、そして成果は何なのか。
もう一つ紹介しますと、次の配付資料の五は文科省の例です。文科省は、例えば三番目に、当該出張によりどのような成果を得たかを端的に記載することと書いてあるんですよ。ですから、これだけ出張されている皆さんがどんな成果を得たのかを書かなきゃいけない。
ところが、今回、この四十年超の老朽原発を動かすに当たって様々なハードルがあった、むつ市からの反発とか議会の反発とか。そのたびに国が出ていって助け船を出すわけですよ、出張という形とかいろいろありますけれども。しかし、その記録は私たちが求めても全く出てこない。復命報告書も出てこないし、二十五億円の検討の過程の文書も出てこないんです。
長官にお聞きしますけれども、今年、エネルギー基本計画が改定されます。我々は原発ゼロの立場ですけれども、仮に原発が必要だというのであれば堂々と議論したらいいと思うんです。それなのに、その議論の根底になるような資料は我々が求めても出てこない。
相手方の自治体が可能性はゼロと言っているのに、その自治体を核のごみの候補地にするような空手形を切る。国民の税金を二十五億円使うのに、その経過もひた隠しにする。率直に言って、こういうやり方でしか推進できないのが原発だということなんです。私はこういうエネルギー源に未来はないと思いますよ。四十年ルールの形骸化や四十年ルールの例外の既成事実化にここまでして、過程まで隠して経産省が先頭に立って行う。私はおかしいと思うんですけれども、長官、どうですか。
○保坂政府参考人 お答え申し上げます。
繰り返しになって恐縮でございますが、原子力発電につきましては、事業者自らがしっかりと地域に向き合うだけでなく、国も前面に立ち、地元や国民の理解が深まるよう、丁寧に取り組むことが重要ということで私どもも回っているところでございます。
御指摘の資料につきましては担当部局において確認を進めておりまして、該当する資料の特定や個人情報の有無など確認すべき事項の整理など、作業及び関係部局との調整に時間を要しているところでございます。
○藤野委員 昨日今日に要求した資料ではありません。私はこの問題をずっと、アドバイザリーのときから同じ資料でやっていまして、ずっと要求しているんです。それでも出してこないんです、要するに。調整とか言いますけれども。
やはりこういうやり方でしか動かせないようなエネルギー源に日本は頼っちゃ駄目なんですよ。そういう意味で、核燃サイクルも破綻していると今日は言っていませんけれども、核燃サイクルも破綻しています。ですから、仮にこういう無理押しが通っても未来がない、こういうエネルギーではなく、やはり再生可能エネルギーを始めとして未来ある方向に国の知恵と力を使うべきだ、このことを主張して、質問を終わります。
タグ : 原発・自然エネルギー 作成者 : fujinoyasufumi