法務委 民法・相続土地国庫帰属法案を質問
今日の法務委。
所有者不明土地問題に関係する民法・相続土地国庫帰属法案。
久しぶりに法案の理論的な側面も質問しました。
- 会議録 -
○義家委員長 次に、藤野保史君。
○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
本法案、確かに全国で所有者不明土地が多数存在していると。私は比例ブロックで、新潟、長野、石川、富山、福井とあるわけですが、やはり地元でもいろいろな声をお聞きします。
ただ、この法案、なぜ所有者不明土地が生まれるのかという点に対応しているのかという点で、幾つかお聞きしたいと思います。
前提として、法務省にお聞きしますが、なぜ所有者不明土地が発生していると考えているのか、ちょっと改めて御答弁ください。
○小出政府参考人 お答えいたします。
平成二十九年度に地方公共団体が実施した地籍調査事業における土地の所有者等の状況に関する調査結果によりますと、所有者不明土地の発生原因としては、所有権の登記名義人が死亡して相続が発生しているが登記記録上は登記名義人がそのままになっている、いわゆる相続登記の未了、これが全体の約三分の二でございます。また、所有権の登記名義人の住所が変更されているが登記記録には反映されていない、いわゆる住所変更の未登記が全体の三分の一をそれぞれ占めており、この二つが発生原因のほぼ全てを占めている、そういった状況にございます。
相続登記の未了の理由としては、次のような指摘がございます。
相続登記の申請が義務とされておらず、かつ、その申請をしなくても相続人が不利益を被ることが少ないこと。また、相続をした土地の価値が乏しく、売却も困難である場合には、費用や手間をかけてまで登記の申請をするインセンティブが働きにくいこと。
また、住所変更の登記の未了の理由としては、現行法では住所等の変更登記の申請が任意とされており、かつ、変更しなくても大きな不利益がないこと、また、転居のたびにその所有する不動産についてそれぞれ変更登記をするのが負担であるということが挙げられているところでございます。
○藤野委員 国交省にお聞きしますが、平成二十九年度の地籍調査における土地所有者等の調査では、登記がなくても別途地籍調査をすれば所有者が判明した場合も多かったんじゃなかったでしょうか。
○吉田政府参考人 お答え申し上げます。
平成二十九年度の地籍調査におきまして、不動産登記簿から直ちに所有者の所在が判明しなかった土地の割合は、筆数ベースで二二%ということでございます。
この中には、市町村による更なる探索活動、例えば、除かれた住民票を追ったり戸籍の付票等で追っていくわけなんですが、そういった探索活動によりまして所有者が判明したものも含まれておりまして、同年度の地籍調査におきまして、このような市町村の取組の結果、最終的に所有者の存在が判明しなかった土地の割合は、筆数ベースで約〇・四%でございます。
この二二%から〇・四%まで絞り込むまでの探索活動に当たりまして、膨大な時間と費用と労力がかかってしまっていることが非常に深刻な問題であると認識しておるところでございまして、何よりも、適正な土地の利用及び管理を確保し、所有者不明土地の発生の予防や解消を図ることが大変重要であると考えているところでございます。
○藤野委員 確かに、お聞きすると、長野県上田市で、先行事例ということで、所有者不明土地をどうやって解決していくのかという事例も、私も勉強させていただいたんですが、確かに大変な労力、地元の方の協力もないとできないというお話でもありました。
ただ、一方で、登記簿だけの問題ではないということも事実だと思うんですね。
全国青年司法書士協議会の会長声明、先日の参考人質疑でも紹介させていただきましたが、今年の二月二十五日に、こういう会長声明を出しているんですね。いわゆる所有者不明土地の問題は、多数当事者の共有状態を解消するための合意形成の困難性にこそ、その原因があると指摘しております。
法務省にお聞きしますが、法務省もこの認識はお持ちですか。
○小出政府参考人 所有者不明土地が発生いたしますと、所有者の探索に時間と労力を要することになり、それが公共事業や民間の事業等の実施に障害となるといった弊害を生じます。このような問題につきましては、相続登記がされることで、問題の解決に向けて大きく進展することになります。
他方で、このように所有者が判明したとしても、相続による共有が進むことになれば、将来における財産処分について意思形成も困難になるが、これを避けるためには、できるだけ遺産分割を促進し、財産が集約されることが望ましいということになります。
所有者不明土地の引き起こす問題は多面的でございまして、特定の観点のみを強調することは適切ではないのかなというふうに考えているところでございます。
○藤野委員 多面的というお言葉がありました。
十九日の参考人質疑で、石田参考人は、たがが相続、されど相続と。相続は一つ一つ全部ドラマが違いますというふうにおっしゃっておりまして、だから、遺産分割をいつまでにしてくれという制度を取っている国は、世界で、私が調べたところでは一つもないとおっしゃっておりました。
今川参考人、これは日本司法書士会連合会の会長でいらっしゃいますが、そのときに、何年以内で登記をせよということになりますと、何年以内に遺産分割協議をしなさいということになりまして、意思表示を強制するのは余りよろしくないというふうにもおっしゃっていました。
私もやはりその側面というのが大事なのではないかなというふうに思っております。
他方、法務省にお聞きしますが、本法案で相続登記が義務化をされます。義務化されますと、その義務の履行のために、法定相続分の所有権移転登記をやろうというケースが増えると思うんですが、そういう認識でよろしいですか。
○小出政府参考人 お答えいたします。
現行の不動産登記法上、所有権の登記名義人について相続の開始があった場合に申請することが可能な登記の一つとして、委員御指摘の法定相続分での相続登記がございます。この登記は、保存行為として、相続人の一人が単独で相続人全員のために申請することができるもので、全ての法定相続人がそれぞれの法定相続分の割合で共有持分を取得したことが所有権の移転の登記として公示されることになるわけでございます。
この法定相続分での相続登記の申請に当たりましては、法定相続人の範囲及び法定相続人の割合を確定する必要がございまして、被相続人の出生から死亡までの戸除籍の謄本及び相続人であることが分かる戸籍謄抄本等の書類を収集しなければならないという負担がございまして、所有権の移転の登記としての登録免許税も要することとなります。
他方で、今般、不動産登記法の見直しでは、申請人の手続的な負担を軽減する観点から、申請義務の簡易な履行手段として、相続人申告登記という新たな登記を創設しておりまして、法定相続分での相続登記に代えて、これにより相続登記の申請義務を履行することが期待されております。
そのため、本法律案の下では、相続登記の申請義務の履行方法として、法定相続分による相続登記の利用が増えるといった事態はそれほど想定されないのではないかと考えているところでございます。
○藤野委員 ちょっと、二つお聞きするんですけれども。
申請を義務化しますね、この法定相続分についての。これは今、余り増えないとおっしゃったんですが、それは、確かに、申告の方があります、それはまた後で聞こうと思うんですけれども、まず前段の、私が聞いたのは、義務化されるわけですから、その義務の履行とみなされる方はちょっとおいておいて、義務化される方について、ああ、義務化されるなと思って、真面目な人もいますから、その義務化されたことによって増えるのではないか。というか、増えることを求めて法案化されるわけですよね。違うんですか。
○小出政府参考人 相続登記の義務化によりまして、それを履行する登記の形態というのは、法定相続分の登記もございますし、遺産分割の結果の移転登記もございますし、手続が軽減された相続人申告登記というものもございます。
義務化されたということで、法定相続分による相続登記が増えるのではないかという御意見に関しては、増える可能性はもちろんあると思いますが、それより簡易なものを用意しておりますので、そちらの方の利用が期待されているということで申し上げました。
○藤野委員 先ほどから小出民事局長は、できれば任意とか、何というか、そういう法案を目指していらっしゃるんだなというのは伝わるんですけれども、しかし、義務化をされますと、過料もついておりますから、これはやはり、義務を果たそうというインセンティブの非常に強い法案だというふうに認識をしております。
十九日の参考人質疑で、石田参考人からは、そういう法定相続分が取りあえず登記がされるわけですね、義務化ですから。それは実は協議もされていないし、実はその後、ひっくり返るかもしれない可能性がある。しかし、法定相続分だからということで、義務化の下で登記がされるケースが増える。石田参考人の言葉によると、意思のない、所有者になる意思のない結果の登記というのは危険だという指摘がされておりまして、やはり一つ一つ、相続というのはドラマがあって、背景が非常に複雑でありますから、そういうものを反映しない登記ができることについての警鐘を鳴らされたと思うんですね。
同じ参考人質疑で、山野目参考人からも、その指摘については、先ほど言った全国青年司法書士協議会の問題意識ですけれども、誠にごもっともという指摘もありましたし、今川参考人からも、最終的には遺産分割協議を経て、その結果を踏まえた登記をするというのが本来の在り方という御指摘がありました。
大臣にお聞きしますけれども、法定相続分、要するに、法律的にはそうですよねという登記が、義務化される下で増える可能性があるわけです。しかし、それが実体を伴っているのか。遺産分割されていない可能性もあるわけですから。
そうなると、例えば、遺産分割とかいうのに関わっていない、けれども相続人であるという当事者からすると、合意形成というのに、逆に、登記を先にされてしまったということが阻害要因になるんじゃないか。
全国青年司法書士協議会が、合意形成の困難性こそが問題なんだと言っている、その合意形成について、この法案がむしろマイナスになるのじゃないかという指摘だと思うんですが、これをどのようにお考えになりますか。
○上川国務大臣 共同相続人の一人の申請によって法定相続分での相続登記がされた場合に、登記上は共同相続人全員が法定相続分に応じて不動産を共有している状態が公示されることになるわけでございます。
この状態が公示されたとしても遺産分割協議は可能でございまして、かつ、これが調えば、その内容に応じた登記をするということもできるわけでございますので、御指摘は、合意形成ということについて阻害要因になるのではないかという御懸念でございますけれども、直ちにはそういうことには当たらないものと考えております。
○藤野委員 そうありたいとは思うんですが、しかし、やはり、自分の知らないところで登記されているという事態を心配されている参考人の声だったと思います。
もう一点、ちょっと法務省に簡単に確認しますが、今、困難にならないとおっしゃいましたけれども、例えば、法定相続分の法定の分だけが形式的に登記されました、その後、そのうちお一人が亡くなられたとなりますと、そこでまた相続が発生するわけですね。新たな当事者が増えてしまうということになるんですが、法務省、そういうことが考えられますよね。
○小出政府参考人 お答えいたします。
法定相続分での登記がされて所有権の登記名義人となった者のうち、更に一人に相続が開始した場合の事案を想定したものと理解いたします。
御指摘のとおり、まずは、死亡した法定相続人の持分が遺産分割の対象になるものと考えます。
○藤野委員 もちろん、持分について、なるんですが、要するに、元々からしますと、更に当事者は増えるわけですね。新しい第二次相続の相続人にしてみますと、全く関与していないところで既にもう登記がされちゃっているということになって、これは先ほど、単に一旦法定相続されたとしてもその後の合意形成には直ちには影響はないというふうに大臣は答弁されましたけれども、仮に、亡くなるといったような、新たな二次相続ということが起きますと、これはやはり、その後の協議に何らかの影響を及ぼす可能性というのは、一次相続の場合よりも増えてくる可能性は否定できないというふうに思います。
法務省にお聞きしますが、その場合、二次相続が起きた場合に仮に協議が調わなかったという場合は、元々の、一番初めの法定相続分の登記が固定化してしまう、こういう可能性が出てくるということは、それはそういう理解でいいですか。
○小出政府参考人 お答えいたします。
二次相続の相続人同士での遺産分割の協議が調わずに協議がされない場合、その場合は、従前の、その一つ前の法定相続分での相続状態が続くことになります。
ただ、これは、法定相続分での相続登記がされたこと自体の効果ではなくて、法定相続分での相続登記をしていない場合であっても同様の帰結となるというふうに考えております。
○藤野委員 私が懸念するのは、登記というのは、やはり権利関係の公示機能というのがあると思うんですね。 当事者間で実体的な権利関係を話し合っていない下で法定相続分だけが公示される。あるいは、それが、更に相続がもう一個発生してしまって、更に当事者が増えてしまうと、その新しい当事者も権利者なんですね。しかし、その権利関係が反映されない可能性がある、固定化してしまう。それでますます何かもう複雑化、こじれてしまって、この公示義務化によって遺産分割協議そのものが進まないのではないかという懸念があると思うんですが、大臣、この懸念についてはどのようにお考えですか。
○上川国務大臣 今委員御指摘いただきましたけれども、法定相続分での相続登記がなされれば、一応、相続登記はされたことになるということになります。それで満足してしまいまして、更に遺産分割協議をするという意欲を失うこともあり得ないわけではございません。
このような認識を前提といたしますと、その後、法定相続人が死亡して更に相続が発生するなどして、不動産についての権利関係が複雑化していくという懸念もあり得るものと考えられるところでございます。
もっとも、法定相続分での相続登記につきましては、その申請のための資料収集の負担が大きい上に、権利関係を公示する手法として問題もあるとの指摘もされております。
そこで、今般の不動産登記法の見直しにおきましては、相続登記の申請を義務づけるとともに、その申請義務の実効性を確保するべく、相続人が申請義務を簡易に履行することができるようにする観点から、新たに相続人申告登記を創設することとしたところでございます。
このような本法案の内容に照らして考えますと、相続登記の申請を義務化したとしても、直ちに権利関係の複雑化を助長するものではないと考えられるところでございます。
○藤野委員 そういう御答弁なんですが、じゃ、実際、この法案の、実効性と先ほどもありましたけれども、私からしますと、過料まで科して、相続登記という、登記の中でも最も手続的負担の重い登記の義務化をするわけですね。これは非常に重い。片や、名前とかそういうのだけで登録すれば、その義務を履行したこととみなす。これは確かに簡便かもしれない。だが、この二つのバランスは、私はかなり、ちょっとバランスが取れていないんじゃないかなと。
義務化をするというその義務化の狙いというか、一方で、過料、要するにこれが最もアナウンスされると思うんですね、今後。他方、それを非常に軽い手続で履行したものとみなすという、このたてつけそのものがどういうことなのかなというのは、ちょっといまだに理解できないところであります。
やはり、登記ありきではなくて、遺産分割協議をどういうふうに進めるのか、合意に基づく権利の確定をどういうふうに促進していくのかという、ここにこそ様々な施策を設けるべきじゃないかな。登記ありきでそれを履行したこととみなす、何か軽いあれをつくったことによって進む問題ではなくて、やはり様々な、多面的というふうに先ほど民事局長もありましたけれども、その多面性にやはり正面から応えていく、法務省はやるべきことをやるというのが本来の在り方ではないかというふうに思います。
続いて、ちょっと別の論点なんですが、法務省は、今回の問題もそうですけれども、土地制度、土地所有権の在り方に関する研究会というのを設けられて、昨年の二月に報告書を発表されております。
この中で、十三ページで、法務省にお聞きしますが、こう書いているんですね。「現在の不動産登記制度において、権利に関する登記の申請は、契約の相手方等に対する私法上の義務とされることはあるものの、国に対する公法上の義務とはされていない。」、こういうふうに指摘しているんですね。
法務省にお聞きしますが、その理由について報告書は何と説明していますか。
○小出政府参考人 お答えいたします。
この研究会の報告書、三十一年二月に取りまとめられたものでございますが、権利に関する登記の申請が国に対する公法上の義務とはされていない理由につきまして、「権利に関する登記は、不動産に関する権利変動について第三者に対する対抗要件を備えるためにされるものであるため、私的自治の原則に従ってその利益を享受しようとする者が必要に応じてその登記を申請すればよいからであるなどと説明されている。」と記載されております。
○藤野委員 そのとおりなんですね。
つまり、民法第百七十七条が、要するに、権利に対する登記というのは第三者に対する対抗要件を備えるためであるから、私的自治の原則に従ってその利益を享受しようとする者が必要に応じてその登記をすればいいからだ、こういう理由で公法上の義務とされていないということなんです。
法務省にお聞きしますが、もし何か例外をつくるとすれば、これを義務とするという、この民法百七十七条とか八百九十九条の二とかが問題なんですから、例えばですけれども、民法第百七十七条の二とか、民法で例外を規定する、そういうことをしなかったのはなぜなんでしょうか。
○小出政府参考人 お答え申し上げます。
一般に、不動産登記法は、登記手続を定める法律でございまして、手続法と言われておりますが、現行法においても、表示登記の申請義務に係る規定が設けられております。
また、不動産登記は、権利を取得した者がその権利を保全する対抗要件としての機能を有するものでございますが、対抗要件制度のためのみに存在するものでもございません。特に、近時におきましては、国土の管理や有効活用という側面から、土地の所有者情報を始めとして、土地の基本的な情報を公示する台帳としての役割を有する点が指摘されております。
したがいまして、今回、相続登記の申請義務の規定を不動産登記法に設けることが、民法との関係で原則が違うじゃないか、原則に違反があるのではないかというふうには考えていないところでございます。
○藤野委員 それはちょっと、後でまたいろいろ聞いた上で、もう一回大臣にもお聞きしたいと思うんですが、今申し上げた研究会では、要するに、この相続による物権変動について登記の位置づけを改めることを検討しております。登記を、相続による物権変動の効力要件にする、つまり、もう、相続の権利移転は登記をしないと発生しませんよ、発生要件、効力要件にしますかという検討とか、あるいは相続による物権変動の第三者対抗要件にすることも検討されております。
法務省にお聞きしますが、この研究会の報告書では、それぞれどのような結果になったと記述しているか、端的にお願いいたします。
○小出政府参考人 御指摘の報告書によれば、まず、相続登記を相続による物権変動の効力発生要件とすることにつきましては、こういった考え方に従いますと、被相続人が死亡してから所有権の移転の登記がされるまでの間は不動産の所有権の帰属が定まらず、管理不全の土地を増加させるおそれがある上、登記をしない限り所有権が移転しないこととなるため、価値が低いなどのために相続することが望まれない不動産については、かえって登記申請しない方向に相続人を誘導するおそれがあるということから、積極的に導入すべきとする意見はなかったとされております。
また、相続による物権変動と対抗要件との関係の見直しにつきましては、現行法では登記をしなくても第三者に対抗可能とされている場面につきましても、登記をしなければ相続による物権変動を第三者に対抗することができないとするといった見直しを行うことも検討されましたが、共同相続人に、他の共同相続人の法定相続分に相当する権利を当然に処分することができる権限を与えることになることなどから、採用しないといったことについて、おおむね異論はなかったこととされております。
この報告書では、真の権利者を登記に反映させることが重要であるということについては異論はなく、これを実現するために、相続人に相続登記の申請について公法上の義務を課すなどの方策を引き続き検討すべきであるとされたものと承知しております。
○藤野委員 結局、検討はされているんですね、民法との関係で。例えば、百七十七じゃないけれども、相続に限って効力発生要件にするとか、あるいは相続に限って対抗要件にするとか検討をしているんですが、それはやはり無理だねということになって、私もその部分、そのとおりだなと思うんです。
大臣にお聞きしますけれども、これはやはり手続法なんですね、今度、不動産登記法で公法上の義務にするというのは。この手続法である不動産登記法において、相続に限って申請義務を課すというのは、民法の原則との関係で、これはやはり民法の原則には反するんじゃないですか。そういう結論が出ているんじゃないですか。
○上川国務大臣 先ほども民事局長が答弁をしたところでございますけれども、今委員御指摘の不動産登記法につきましては、登記手続を定める法律でございまして、手続法と言われるところでございます。
現行法におきましても、表示登記の申請義務に係る規定が設けられているということでございまして、この不動産登記につきましても、権利を取得した者がその権利を保全する対抗要件としての機能を有するものであるが、対抗要件制度のためのみに存在するものではないということでございまして、近時におきましては、国土管理とか有効活用という側面から、土地の所有者情報を始めとして、土地の基本的な情報を公示する台帳としての役割を有する点がつとに指摘されているところでございます。
したがいまして、今般の相続登記の申請義務の規定を不動産登記法に設けることにつきましては、民法との関係で、原則、違反があるとは考えておりません。
○藤野委員 では、ちょっとお聞きしていきますけれども、法務省にお聞きしますが、この報告書では、新たな申請義務を課す場合の根拠について、この申請義務の根拠についてどのように指摘していますか。
○小出政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の報告書によりますと、登記申請義務の根拠については、複数の考え方があり得るとの意見があったとされております。
具体的には、土地所有者の責務に淵源を求める考え方、相続登記の特質に求める考え方、また、相続登記等がされないことにより公共事業の円滑な実施等に現に支障が生じていることに鑑み、登記申請の義務づけはこれへの政策的な対策としてするものであるという考え方が紹介されているものと承知しております。
○藤野委員 つまり、登記申請義務を今度新たに設けるんだけれども、その根拠というのが民法との関係では整理できませんから。先ほど言ったように、対抗要件でもない、権利発生要件でもないと。
この報告書では、一つは土地所有者の責務、つまり、これはもうちょっと正確に言いますと、「土地が基本的に有限で新たに生み出すことができないものであり、また、他の所有者の土地と境界を接しているため他人の権利に影響を及ぼし得るものであることから、土地所有者は所有者の地位にあることを公示する社会的責務を負う」、こういう理由ですね。もう一つは相続登記の特殊性、もう一つは公共事業などの政策的な要請という三つなんですね。
法務省にお聞きしますが、法務省はこの三つのうち、どれかに立たれているんでしょうか。
○小出政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど来話が出ておりますが、所有者不明土地の発生原因として相続登記の未了が挙げられておりまして、どうして相続登記が未了になってしまうのかということにつきましては、義務とされておらず、申請をしなくても相続人が不利益を被ることが少ない、あるいは、相続をした土地の価値が乏しく売却も困難である場合には、手間暇をかけて登記の申請をするインセンティブが働きにくいといったことが指摘されていることを踏まえまして、所有者不明土地の発生を予防する観点から、相続登記の申請を義務づけることとしたものでございます。 お尋ねの報告書の三つの考え方、どの立場であるかという点につきましては、様々な見方があり得るものと思われますが、土地基本法に基づいて所有者が登記手続等の措置を適切に講ずる責務を負っていることを踏まえつつ、相続登記の特質や所有者不明土地対策という政策的な観点等を総合的に考慮したものということができると考えております。
○義家委員長 済みません、一度速記を止めてください。
〔速記中止〕
○義家委員長 速記を起こしてください。 藤野保史君。
○藤野委員 今三つの考え方をお聞きしたのは、やはりそれぞれの考え方によっていろいろ変化が出てくるからだと思うんですね。
というのは、社会的責務とおっしゃいました。確かに、土地基本法が成立されていますので、やはり土地を所有していることの責務というのは土地基本法にはなじみます。仮にこれを突き詰めていくと、土地を持っているんだから、相続に限らず、売買を経過しようが取得時効を経過しようが、土地を持っている人の責務として登記しなければならない、相続に限らないというふうに、親和性があるんですね。
ですから、これは今後どうなっていくのか。要するに、今回は相続をめぐる所有権だけに限られているんですけれども、土地基本法ができていることを考えたり、いろいろしますと、法務省にお聞きしますけれども、今後、相続以外の原因で土地の所有権移転が生じたりした場合に、今回のような義務が拡大されていくという可能性はあるんでしょうか。
○小出政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘がございました相続以外、例えば、売買を始めとする複数当事者間で契約に基づく所有権の移転が生じた場合でございますが、これは、自らが締結した契約に基づき所有権の移転登記をする私法上の義務が発生しておりまして、対抗要件主義の下で、特段、登記申請を義務づけなくても、当事者において必要な登記申請をするのが通常でございます。インセンティブがあるということでございます。
これに加えまして、相続登記の未了及び住所変更登記の未了の二つが所有者不明土地の発生原因のほぼ全てを占めている状況にあることを踏まえ、相続以外の原因による所有権の移転の登記につきましては、その申請を義務化し、その懈怠に過料の制裁を科すこととはしていないわけでございます。 こういった検討の経緯に基づくものでございますので、法務省といたしましては、現段階では、相続以外の原因による所有権の移転登記の申請を義務化すること、これについては想定していないところでございます。
○藤野委員 重ねて法務省に聞きますが、不動産登記法第三条は、登記することができる権利というのを何種類定めていて、それぞれどういう権利でしょうか。
○小出政府参考人 お答えいたします。
御指摘の不動産登記法第三条におきましては、所有権、地上権、永小作権等を始めとして、合計十の権利について登記することができることを規定しております。
○藤野委員 不動産の権利関係を登記に的確に反映させるという要請は、所有権に限らないと思うんですね。不動産登記法三条には様々な権利が、登記することができますよといって挙げられているわけです。
法務省にお聞きしますけれども、今回出されている法案のうち、相続土地国庫帰属法案の第二条三項第二号では、担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地は国庫帰属の承認申請ができないとされております。これはちょっと通告が届いていないかもしれないですけれども、この国庫土地帰属法の第二条三項第二号、ここで、担保権及び使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地は申請できませんよとなっているわけですね。この理由は何でしょうか。
○義家委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○義家委員長 速記を起こしてください。 小出民事局長。
○小出政府参考人 お答えいたします。
御指摘の、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第二条第三項第二号は、担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地、これは国庫帰属のための承認対象にはならないものとしております。
これは、国庫に帰属した土地について、通常の管理に過分の費用を要さないものを国庫帰属の対象とするという法律の趣旨からして、担保権あるいは他人の利用権あるいは他人の収益権を目的とする権利が設定されている土地については、それぞれの権利者との間で調整が必要になったり、紛争が生じたりということがございますので、国庫帰属の対象としなかったものでございます。
○藤野委員 ここで終わりますけれども、いいですか。
○義家委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○義家委員長 速記を起こしてください。
参議院から大臣への通告がありますので、大臣は退席いただいて結構でございます。 藤野保史君。
○藤野委員 じゃ、一言だけ言って終わります。
要するに、不動産登記法の改正案では、所有権のみが対象なんですね。ほかの権利は省かれている。相続土地国庫帰属法案では、担保権などの権利がかなり重要な位置づけをされているということで、こうした問題を含めて、ちょっと後半、またお聞きしたいと思います。
一旦、終わります。
作成者 : fujinoyasufumi