法務委員会 大臣所信質疑
今日の法務委は大臣所信質疑。
私も多くのテーマで質問しました。
刑法改正案(性暴力)について、法案を審議する法制審議会の委員として、被害者の方々に入ってもらうべきと主張。
森大臣は言葉を選びながらも、意欲を込めた前向きな答弁。ぜひ実現を!
また、加計学園による韓国人留学生の入試差別疑惑も質問。
文科省が「韓国人留学生7人が受験したA方式では、7人全員が面接ゼロ点で、全員合格できなかった」と答弁しました。
許しがたい差別です!引き続き追及します!
- 会議録 -
○ 松島委員長 次に、藤野保史さん。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
まず、私、クー・トゥー運動についてお聞きをしたいと思っております。
クー・トゥーというのは、靴を履くことに伴う苦痛、そして性暴力を告発するミー・トゥー運動に合わせてつくられた言葉でありまして、昨年の一月に女優の石川優実さんがツイッターで投稿されて一気に共感の声が広がって、署名も三万筆を超えまして、昨年六月には厚生労働省にも提出をされました。
これは、同じ職種あるいは同じ仕事内容なのに女性だけにパンプスやヒールが強要される、まさに性差別の問題であるということで、同じ職種であれば、同じ仕事であれば、女性にも男性と同じくヒールのない靴の選択肢を与えてほしいという当然の声であり、運動だというふうに思います。
パンプスやヒールを履くことで、人によっては、靴ずれとかまめができたり、外反母趾になる、腰が痛くなる、さまざまな健康被害にもつながるわけですし、仕事をする上でも動きづらいとか走れないとか、いろいろな問題になってくる。ですから、性差別の問題が中心ではありますけれども、健康問題、労働問題でもあるということだと思います。
大臣にお聞きしたいんですが、大臣はこのクー・トゥー運動についてどのように評価されているでしょうか。
○ 森国務大臣 三月三日の参議院予算委員会で小池晃委員から御質問がございまして、安倍総理大臣もおっしゃっておられましたけれども、職場の服装について、男性と女性が同じ仕事をしているにもかかわらず、苦痛を強いるような合理性を欠くルールを女性に対して強いることはあってはならない、私も全く同じ考えでございます。
法務省においては、女性に関する問題を含め、さまざまな人権問題について人権擁護活動を実施しておりますので、これらの人権問題も含めて取り組んでまいりたいと思います。
○ 藤野委員 ぜひ法務省としても、この問題でもイニシアチブを発揮していただきたいと思います。
石川さんが声を上げて、一年という短い間に、これが全国に広がって、国会にも届いて、総理大臣や、今、森大臣からも前向きな答弁を引き出したということで、これは、皆さんの運動といいますか、もっと言えばジェンダー平等社会の実現に向けても、今回のクー・トゥー運動というのは非常に大きな動きだというふうに思っております。このクー・トゥーだけでなく、ジェンダー平等なくしてまさに二十一世紀の未来を切り開くことができないというのは、これは多くの皆さんの思いだ、国連のSDGsもこういう発想で今進められているというふうに思います。
このジェンダー平等社会をつくっていく上で、私、法務大臣の果たされる役割というのは極めて大きいというふうにも感じております。大臣も、所信演説の中でフラワーデモについて触れていらっしゃいました。思いが伝わるなと思って私も伺っていたわけでありますけれども、まさに今法務省の焦眉の課題の一つが刑法の性暴力に関する改正問題であると思います。
大臣は今、大臣直轄の勉強会をつくって、性暴力の被害者や支援団体の方々に入っていただいて、二月末からその勉強会を行っているというふうに伺っているんですが、大臣にお聞きしますけれども、なぜ今この時期にこうした大臣直轄の勉強会を設けられたんでしょうか。
○ 森国務大臣 性暴力の問題を所信表明の一番最初に掲げさせていただきました。全ての問題が重要なんですけれども、迅速に取り組まなければいけないという意味で、一番最初に掲げさせていただきました。
直轄の勉強会についてお尋ねをいただきましたけれども、私は就任してからさまざまな直轄の勉強会をやっておりまして、一つが保釈中のGPSに関する問題もやっておりましたが、これは法制審の方に諮問をいたしました。
その間に、性暴力の被害者団体の方が大臣室に来られたんです。そして、被害者の方の思いを直接にお聞きする機会をいただきました。そこで、私は、もっとこの問題を私みずからが理解を深めなければいけないという思いから、被害者団体の方にメンバーになっていただいて、私的な勉強会を開催しているところでございます。
○ 藤野委員 今、大臣自身が理解を深めなければいけないという思いということでありました。私自身も実はそれは同じ考えでありまして、やはりこの問題は本当に、当事者の方から、あるいは支援されている方、関係者の方からお話を聞くというのは非常に大きな力になるといいますか、中身になってくるなというのを私自身も感じております。
それに係ってなんですが、大臣は、二月二十五日の予算委員会の第三分科会で、我が党の本村議員の質問に対してこう答弁されているんですね。法制審のメンバーについての答弁なんですが、被害者の立場の方、また被害者支援にかかわる研究者、専門家などの御意見を幅広く聞くことができるような体制で議論を進めてまいりたいと答弁されているんですけれども、この、幅広く聞くことができるような体制というのはどういう意味なのか。私自身はちょっとよくわからないんですが、これは、いわゆる法制審のメンバーにもそういう被害者の方などに入っていただく、そういうことなんでしょうか。
○ 森国務大臣 私は、被害者の皆様の声が法制審のメンバーにより直接に届く体制にしたいと思っています。
今般の保釈中の逃亡の問題についても法制審の部会をつくったんですが、そこにも被害者関係の方を入れるのに大変な苦労がございました。ですが、やはり被害者の声を聞かなければ、特にこの性犯罪に関するさまざまな残された課題について前に進めていくことが難しいと思っておりますので、私自身が全力をかけてよりよい体制づくりに向けて努力をしていきたいと思っています。
○ 藤野委員 ぜひその方向で進めていただきたいですし、今、保釈中の逃亡者の法制審というお話がありましたけれども、それ以外もあると思うんですね。
法務省にお聞きしますが、これまでの法制審でも、被害者の方々、被害者支援団体の方が参加した実例があると思うんですが、どのようなものがあるでしょうか。
○ 川原政府参考人 お答え申し上げます。
ただいまお尋ねの点でございますが、例えば、現在調査審議を行っております法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会でございますが、ここにおきまして、少年犯罪の被害者の御遺族であり、被害当事者団体の代表を務める方が委員になっておるものと承知しております。
○ 藤野委員 今、まさにそういう被害者の方、少年犯罪被害当事者の会代表の方も法制審のメンバーになっていらっしゃるわけであります。
私は、やはり法制審のメンバーがどういう方々になるのかというのは極めて重要だというふうに思っておりまして、それは、やはり国会に提出してくる法案の中身に直接かかわってくるからであります。ぜひ、当事者の方をメンバーに加えていただいて、より充実した法案の中身になるようにイニシアチブを発揮していただきたい。
更に加えて言いますと、法制審というのは議事録が作成されまして、もちろん私どもも読みますけれども、広く国民に公開されるということになります。性暴力に関する刑法改正というのは、どうしてもやはり国民的な議論が必要な課題であるというふうに思いますので、そうした議事録を通じて直接国民に被害者の声がより多く届いていく、そのためにも、やはり大臣がイニシアチブを発揮していただいて、被害者の方に法制審のメンバーになっていただく。
法制審議会令という省令があるんですが、これを見させていただきますと、この審議会令の第二条にはこう書いてあるんですね。「委員は、学識経験のある者のうちから、法務大臣が任命する。」と。法務大臣が任命するということでありますから、最後に重ねてですけれども、大臣、被害者の方をメンバーにするということで御発言いただければと思います。
○ 森国務大臣 私は、よくあることとして、被害者の方の声を一回ヒアリングしましたみたいなことがあるんですけれども、それでは性犯罪における諸問題の解決には結びつかないと思っています。
今回、フラワーデモで性犯罪の被害者の方が声を上げた。それが全国を巻き込んで、十二回続いたということは非常に大きな意味があります。そのような勇気に報いるためにも、そして、国民の皆様の関心も非常に大きいわけでございますので、ここで明言はできませんけれども、私自身のリーダーシップを発揮して、何とかよい方向に持っていきたいと思います。
○ 藤野委員 ぜひ大臣のイニシアチブの発揮を求めたいと思います。
次に、いわゆる学校法人加計学園が運営する岡山理科大獣医学部の入試をめぐって、韓国人受験生が不当な扱いを受けたという報道についてお聞きをいたします。
まず、前提として、文科省にお聞きしたいんですが、入学者選抜実施要項というのがあると思うんですけれども、これについて、入試における差別についてどのように規定しているでしょうか。
○ 玉上政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの令和二年度の大学入学者選抜実施要項におきましては、合理的理由なく、出身地域、居住地域の属性を理由として一律の取扱いの差異を設けることは不適切であると明記しております。
○ 藤野委員 そのとおりなんですね。
配付資料の一を見ていただきたいんですけれども、今回問題になっている大学の推薦入試A方式というのがあるんですが、それの概要なんですね。二になりますか。済みません、配付資料の二になるかもしれません。
これによりますと、そのA方式の中には併願制と専願制というのがあって、そのうち専願制について、これまでは、出身高等学校の調査書五十点と、基礎的な試問、八十分二科目、各五十点、この二つしかなかったんですが、昨年から面接というのが試験科目に加わって、これは五十点なんですね。この去年から加わった面接というものの点数が、報道によれば、韓国人留学生は全てゼロ点だったというふうに言われている。
面接を試験科目に加えること一般がだめだと言っているわけじゃ全然ないんですが、今回はそれが悪用されたのではないかという問題なんですね。
文科省に確認しますけれども、今回、韓国人留学生は何人受験して、A方式ではそれぞれ何人合格したのか、それ以外の方式では、何人受験して、何人合格したんでしょうか。通告してあります。
○ 玉上政府参考人 お答えいたします。
今回、この入試の方式におきまして、推薦入試におきましては、韓国の受験生につきまして、七名が受験をし、全員が面接ゼロ点であり、合格者はゼロであったということでございます。
○ 藤野委員 ですから、今回問題になっている方式では、七名が受験したんだけれども、七名は面接ゼロ点で、合格者ゼロと。まさにそういう状況になっているわけですね。
二〇一八年には、東京医科大などで入試における女性差別が大変な問題になりました。この東京医科大学が設けた調査委員会でさえ、その報告書の中で、重大な女性差別的な思考に基づくもので、強く非難されるべきだ、こう指摘をしているんです。
ちょっともう一回、今のところを言いますと、要は、今はまだ文科省は調査中だというんですね。今お答えいただいた部分はわかったけれども、それ以外の、現時点においては入試の適否を判断する段階ではなくてということなんですけれども、その部分についてちょっと答弁いただけますか。
○ 玉上政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの件の、三月六日、先週に、岡山理科大学担当者の方が文科省に来省をして、直接確認を行いました。
これらによりますと、まず、大学の説明によりますと、今お答え申し上げましたように、韓国の受験生について、推薦入試では、七名受験し、全員が面接ゼロ点であり、合格者はゼロ名であったということ、それから、面接での点数がゼロ点の受験生は日本人でも複数名存在するということ、それから、面接の評価に当たりましては、責任ある者が複層的な確認を実施しているということ、それから、これらの受験生を含めて、一般入試の前期や私費外国人留学生入試におきましては合計四名の韓国の方が合格しているということでございました。
そういった説明がございまして、こういった点は明らかになりましたが、今先生お尋ねのように、現時点におきましては、文部科学省として、まだ当該大学の入試の適否を判断できる段階ではなく、さらなる事実関係の把握に向けて、引き続き、今回の問題に対して大学として説明することを求めていきたいと考えております。
○ 藤野委員 まだ事実関係は明らかでないというんですけれども、少なくとも、A方式による受験者七名は、面接全員ゼロ点で、合格者ゼロということなんですね。これはもうはっきりしているんです。面接がその七人全員ゼロ点、韓国人留学生だけがですね。
先ほども言いましたけれども、二〇一八年には、東京医科大で入試における女性差別が大問題になって、大学が設置した調査委員会でさえ、重大な女性差別的な思考に基づくもので、強く非難されるべきだと報告書に書いてあります。
大臣にお聞きしますが、事実とすればこれは許されない差別じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○ 森国務大臣 お尋ねのような報道は承知しております。
そして、事実関係については今文科省の方で確認中ということでございますので、個別の事件についてのコメントはできないんですけれども、一般論として申し上げれば、外国人に対する不当な差別はあってはならないというふうに思います。
法務省は、人権擁護を所管をする省庁でございます。そしてまた、ホームページで、「外国人の人権を尊重しよう」というふうに強調事項の一つとしてしっかり掲げているところでございます。各種人権啓発活動も実施しておりますし、人権相談、人権侵犯事件の調査、救済等に努めておりますので、差別のない社会の実現に向けて、しっかりと法務省としては取り組んでまいりたいと思います。
○ 藤野委員 これは報じられてからかなり時間がたっておりまして、私が事実関係の確認を求めても求めても、法務省は小出しに、小出しに、小出しにしてくるんですよ。ですから、そういう姿勢ではなくて、事実関係は調べればわかるわけですから、今も、初めて今答弁したこともありますし、きのう幾ら聞いても言わなかったことを言ったこともあります。だから、やはり法務大臣としても、内閣としてこういうことは許さないんだという立場でぜひ臨んでいただきたいと思います。
次に、日本原水爆被害者団体協議会がいわゆる核拡散防止条約の再検討会議、NPTに合わせてことし四月からアメリカのニューヨーク国連本部で開く原爆展をめぐって、外務省が被団協のパネルについて難色を示して、いわゆる後援を見送る、バックアップを見送るということが、被団協に伝えていたということが報じられております。
過去三回この原爆展というのは行われておりまして、そのうち、三・一一以降は原発事故のパネルも展示しているというふうに認識しているんですが、これは間違いないですか。簡単な確認。
○ 加野政府参考人 お答え申し上げます。
先般、外務省に対しまして、四月末から行われますNPT運用検討会議の際に国連本部で開催予定の原爆展につきまして、後援名義の使用許可申請があったところでございます。
現在、外務省について、本件については審査中でございまして、審査団体とのやりとりについてコメントすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
既往の経緯でございますけれども、二〇〇五年、二〇一〇年及び二〇一五年に実施した原爆展につきましては、外務省として、しかるべく審査を行った上で、それぞれ後援名義の使用を許可させていただいているところでございます。
○ 藤野委員 二〇一五年のやつについては、チェルノブイリとスリーマイルとそして福島と、四枚のパネルにわたって、写真はもっとあるんですが、展示されているんです。今回はなぜか、二〇一五年には認められたのに、認めていないわけですね。
茂木外務大臣は、三月五日の参議院の予算委員会でこうおっしゃっています。被爆者の方々は、核兵器のない世界の実現に向けて、長年にわたって被爆の悲愴な実相や核兵器の非人道性を世界に伝える活動に取り組まれてきておりまして、その大変な御尽力に対して、改めて心より敬意を表したいと思います。そして、こうもおっしゃっています。被爆の実相に関する正確な知識を持つことは核軍縮に向けたあらゆる取組のスタートとなると認識をいたしておりまして、引き続き積極的に取り組んでまいりたいとおっしゃっているんですね。
これは、言っているときは本当にそのとおりだと思うんです。ただ、やっていることが逆なんですね。
私は福島にもチェルノブイリにも行かせていただきましたけれども、福島でいえば、あしたはまさに三・一一なわけです。九年がたとうとしている。我が党の国会議員団の福島チームは定期的に福島を訪れているんですけれども、今でも、ふるさとに帰りたいけれども帰れない、帰りたくても帰れない、そして、たとえ帰ったとしても、口にできない、声にできない、いろいろな苦しみを抱えながら生きていらっしゃるわけですね。チェルノブイリに行きましたけれども、そのときは、三十年たっていますけれども、私が草むらにガイガーカウンターを近づけますと、ピピピピッと急激に上がるわけですね。
一たび原発事故が起きるとどうなるのかというのは、これはやはり核の問題を考える上で避けて通れない話でありますし、この福島やチェルノブイリというのは、核と人間社会についての問題を極めて雄弁に、事実の問題として語りかけている場所だと思います。
先ほど茂木大臣がおっしゃったように、NPTの基本理念というのは核軍縮なんですね。ですから、核の危険性をアピールすることはもう全く矛盾しないと思います。
文科省に確認したいんですが、あいちトリエンナーレの問題がありました。このとき、文科大臣は、表現の自由の侵害に当たるのかという質問に対してどのように答弁していたでしょうか。
○ 杉浦政府参考人 お答え申し上げます。
今回の補助金の不交付決定は、補助事業の申請手続におきまして、補助金申請者である愛知県が、会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、文化庁に申告しなかったことを踏まえて判断したものでございまして、展示物の表現内容自体の適否について評価したものではございません。
○ 藤野委員 つまり、文科大臣は、安全とか円滑な運営を脅かすようなことを認識していたのに報告しなかったのが問題で、表現内容じゃないんだ、表現内容自体の適否について評価したのではないですよというふうにトリエンナーレのときは言っていたんですね。だから表現の自由の侵害に当たらない。
しかし、今回、外務省はまさに原発という展示内容そのものを問題にしているわけですね。法務大臣、これは表現の自由の侵害に当たるんじゃないでしょうか。
○ 森国務大臣 もちろん、一般的に、表現の自由は民主主義の根幹をなすものですから、最大限尊重されるべきでございます。
お尋ねの事案につきましては、先ほどの外務省の御答弁で審査中であるというふうにおっしゃっておられたと承知しておりますので、所管の外務省において適切に判断されるものと思います。
○ 藤野委員 まさに憲法、人権保障をつかさどる法務大臣が、先ほどの文科省の態度とか外務省の態度について、やはり法務省として、法務大臣として、なかなか物を出してこないとか、審査中審査中と言って延ばしていくことについて、はっきり物を言うべきだというふうに思うんですね。そういう姿勢が大臣に問われているというふうに思います。
最後に、検事長の定年延長問題についてお聞きします。
この問題をめぐっては、まさに検察内部からも、与党からも異論が出ている。
二月十九日の検察長官会同では、静岡地検の神村昌通検事正から、今回のことで政権と検察の関係に疑いの目が持たれている、国民からの検察に対する信頼が失われる、そして、この人事について、検察庁、国民に丁寧な説明をすべきという意見を述べたというふうに伝えられております。
二月十五日には、中谷元元防衛大臣が国政報告会という公の場で、私が心配するのは、三権分立、特に司法は、正義とか中立とか公正とか、そういうもので成り立っているんですね、行政の長が私的に司法の権限のある人をですね、選んで本当によいのかな、権力の上に立つ者はしっかりとその使い方を考えていかなくてはならない、こうおっしゃっている。
ですから、そういう声がいろいろなところから出ているわけですね、野党だけではなくて。とりわけ、現職の検察官幹部から、国民に丁寧な説明をすべきとまで言われているわけです、大臣。ところが、大臣は所信で一言もこの問題、触れなかった。私、正直言って驚いたんです。なぜ一言も触れなかったんでしょうか。
○ 森国務大臣 国民に対して丁寧な御説明をしてまいりたいと思います。
所信表明については、法務行政の課題について述べたものであり、個別の人事については述べておりません。
○ 藤野委員 そういう姿勢が、今、現職の検事にもこれではだめだという声になって広がっているわけですね。
私は、この問題を考える上で、なぜ検察官には一般公務員と異なる特別の定年制度が定められていたのか、ここを考える必要があると思うんですね。それは、戦前の治安維持法などによる人権侵害を二度と繰り返さないという反省に立った日本国憲法に由来するものだと思います。三権分立、そして基本的人権の尊重というものに深くかかわる検察官の地位の特殊性に結びついているからだと思うんです。
日本国憲法は、先ほど委員からもありましたけれども、極めて詳細な刑事手続による人権保障があるわけですね。それに基づいて、この憲法に基づいて刑事訴訟法がつくられ、その刑事訴訟法を実践する部隊として検察庁法もつくられていく、裁判所法もつくられていくということになっております。
大臣にお聞きしますけれども、ちょっと時間の関係で、これはもう配付資料でちょっとかえさせていただきますけれども、配付資料の三は刑事訴訟法の提案理由なんです。これは当時の鈴木国務大臣が答弁されているんです。
こういう答弁なんですね。新憲法は、各種の基本的人権の保障について、格別の注意を払っているのでありますが、なかんずく刑事手続に関しましては、我が国における従来の運用に鑑み、特に三十一条以下数条を割いて、極めて詳細な規定を設けているのであります。そして、ちょっと飛びますけれども、さらにまた新憲法は、第六章におきまして、司法権の独立を強化し、最高裁判所に違憲立法審査権や、規則制定権を与えるとともに、その構成にも、格別の配慮をいたしているのであります。そのため新たに裁判所法や検察庁法の制定が必要とされたのであります。こういう組立てなんですね。
要するに、新憲法があって、刑事訴訟法があって、そしてそれを実践するものとして裁判所法、当時は裁判所構成法の中に検事のことも書いてありましたけれども、司法の独立、三権分立を徹底する観点から検察庁法というのを別途規定する、これがスタートなんです。
その大もとは、戦前の人権侵害に、検事も、思想検事として特高警察と車の両輪として治安維持法を運用していった、運用を拡大していった、そういう歴史があるからであります。戦前の弾圧によって、拷問で、時に私たちの党の先輩も命を落としました。こういう痛苦の経験を二度と繰り返しちゃいけない、だから、最高法規である憲法に、法律でも侵せないものとして詳細な刑事手続における人権保障規定が置かれた、そしてその精神を具体化する、その最後にあるのは検察庁法なんですよ。
身分保障なんですね。定年というのは身分保障の根幹であります。だから、検察については一般公務員とは異なる定年制度がもとからあったんですね。もとからあったんです。
ところが、先日法務省から、三月五日の当委員会の理事会にも提出されましたけれども、「検察官の勤務延長について」という、二〇〇一一六メモというのが理事会にも提出されました。これはちょっときょうは配付していないんですけれども、私が驚いたといいますか、この中にこういうくだりがあるんですね。戦後の検察庁法のいわば前身である裁判所構成法(明治二十三年法律第六号)、こういうのが出てきて、この並びで、この戦前の裁判所構成法の定年制度の趣旨と戦後の国家公務員法の定年制度の趣旨に差異はない、だから今回も適用するんだ、こういう論立てなんです。
裁判所構成法というのは明治二十三年ですから、西暦一八九〇年で、百三十年前の法律です。定年制度がこの裁判所法改正で導入されたのが大正十年ですから、一九二〇年、約百年前、もちろん大日本帝国憲法下です。
大臣、ちょっとお聞きしたいんですけれども、大日本帝国憲法下というのは、司法権は天皇に属しているんですね。裁判所は天皇の名において司法権を行使する。裁判官や判事の人事権、俸給などの身分保障というのは、司法大臣、今でいう法務大臣の監督下にありました。三権分立が極めて不十分な法体系なんですね。
こういう法律が、戦後の、今議論されている、全く身分保障も異なる検察官の趣旨が同じだと持ってくるというのは私は許されないと思うんですけれども、大臣、何でこれを持ってきたんですか。
○ 森国務大臣 御指摘の文書はあくまで検討過程のものでございますけれども、御指摘の該当部分は、検察官に定年による退職の制度が設けられた趣旨を検討するに当たり、該当法の審議における政府委員の発言に言及しているにすぎないものでございまして、この趣旨、退職の制度が設けられた趣旨について発言に言及をしているものでございますので、これをもって検察官に勤務延長制度が適用される理由としているものではございませんし、この趣旨というのは、伊藤元検事総長の検察庁法の解説本に書いてあるものとも同様でございます。
○ 藤野委員 きょうは時間もあれなので、次回やりたいと思うんですけれども、全然違うんですね、三権分立の考え方が。いわゆる天皇のもとで、天皇に司法権が属しているわけです。司法行政権というのは、司法大臣、当時の法務大臣に全部あるわけですね。そのもとでつくられているのが裁判所構成法であります。
それが今ここで復活してきたというのは、私は本当に恐ろしい。逆に言うと、安倍政権の一貫した姿勢じゃないかなというふうに私は思うんですね。戦前回帰という、その一環ではないかというふうに思います。
最後にちょっと御紹介したいのは、「新しい憲法 明るい生活」という、ちょっときょうは資料をつけていませんけれども、「あたらしい憲法のはなし」という、戦後直後に出された有名な冊子があると思うんですね。あれはほぼ一世帯当たり一冊配られた非常に権威のあるものなんですけれども、そこでこういう項目があるんですね。
十六ページに、役人は公僕である、こう指摘しているんです。
憲法に定めがあったにもかかわらず、実際には最近まで警察や検事局が国民を手続なしに捕えて幾日も留置場へ入れておいたり、むごい方法で取調べを行い、無理やりに自白させたりすることも少なくなかった。新憲法では全てこうした不法なひどいことをかたく禁じた。
そして、最後、こうあるんですね。これからは悪いことをしない限り、いたずらに警察や検事局を怖がる必要はなくなった。そればかりかこれからの役人は国民の生活を守ってくれる私たちの公僕となった。
戦前は、検事というのは天皇の官吏であります。それが新憲法によって私たちの公僕になったというんですね。
今回大臣がやろうとしていることは、この私たちの公僕を一内閣の官吏にまた返そうとしている、こういうことじゃないですか、大臣。
○ 森国務大臣 全く違います。
先ほどの三権分立についての御指摘も踏まえまして、三権分立によって、三つの権力が抑制と均衡を保たなければならない。その中で、司法権と密接不可分な関係にある検察でございますが、行政機関の一機関であるという特殊な関係にございますので、人事権は法務大臣又は内閣にあるわけでございますが、その中で適切な人事を行うということが重要なことであるというふうに心得ております。
○ 藤野委員 もう終わりますけれども、要するに、一行政官ではなくて、公訴を担うわけですね。司法の独立といった場合、公判だけを保障すればいいんじゃなくて、公判に行くかどうかという公訴提起が政治的権力に左右されないかというのは、これは極めて重要なんです。だから、裁判官に準じた身分保障が検察に与えられている。その身分保障の根幹が定年制度なんです。ですから、今の答弁は全く成り立たない。
この問題についてはあしたも質問するということを述べて、質問を終わります。
会議録PDF
20200310_homuiinkai_Fujino_kaigiroku
質疑資料 PDF
20200310_homuiinkai_Fujino_shiryo
しんぶん赤旗 2020年3月20日5面記事 PDF
作成者 : fujinoyasufumi