法務委員会 危険運転致死傷罪改正についての質疑、黒川氏の処分を追及
あおり運転への罰則を強化する改正案について参考人質疑。
和氣みち子全国被害者支援ネットワーク理事、久保有希子弁護士、橋爪隆東大教授から貴重なご意見をいただきました。
参考人質疑を踏まえて、あおり運転への罰則を追加する改正法案が全会一致で成立。
ただ、参考人から「捜査機関の裁量に左右される懸念がある」との指摘も。処罰範囲が不当に広がらないように注視が必要です!
黒川氏の処分問題も追及。
森法務大臣は「処分内容について内閣と一切議論していない」と重ねて答弁。
黒川氏に対する唯一の懲戒処分権者である内閣と協議したのに処分内容について一切議論せず?
ありえない話を必死で維持。
安倍総理の発言に合わせて嘘に嘘が積み重なる。
森友の時と同じです。
こんな政治は終わりにしよう!!
- 会議録 -
参考人質疑
○ 松島委員長 次に、藤野保史さん。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
三人の参考人の皆様には、大変御多忙の中、きょうは御出席をいただきまして、貴重な御意見を本当にありがとうございます。
和氣参考人から、犯罪の被害者遺族としての思い、そして、最大の被害者支援は被害者を生まないことである、加害者をなくすことであるというこの御指摘は、本当に重く受けとめたいと思っております。
その上で、まずは久保参考人にお聞きをしたいんですが、非常に骨太な、条文化の必要性は、法的安定性の観点から一定の意義がある、ただ、罪刑法定主義の観点、そして実際の運用での検察官の裁量に左右されるという点、非常に太い視点で、論点といいますか、御指摘をいただいたと思っております。
私は、ちょっとお聞きしたいのは、条文化の意義はある、しかし、今回、表現が難しいというお話をされました。なぜ、今回、表現が難しくなったかといいますと、やはり、実際に起きたものに対して、それに対応するといいますか、停止なり今回の事案がもとにあって、それを法案にどう落とし込むかという組立てでやったがゆえに、立法事実として、どのように法務省内で法案が、条文が検討されたのかという点で、これは午後の政府質疑でも聞いていきたいというふうに思っているんですが。
ちょっと具体的に聞きたいんですけれども、二条五号で、法務省は、加害者が自車の後方を走行している車の存在を認識していない場合であっても、要するに自分の後ろに車がいないという場合であっても、そのような車があれば嫌がらせをしようと考えて急停止をする場合には、いわゆる先ほど問題になっています通行妨害目的の要件を満たすというふうに説明を法制審でしております。ですから、積極的にあの車の通行を妨害しようという意図でなくても、あるいは、自分の後ろに通行中の車がいなくても、形式的には構成要件に該当するという説明なんです。これはやはり適用範囲がかなり広範になる可能性があると思うんですけれども、その可能性と、これはどうやって限定をかけるのか、法制審ではどのような議論がなされたんでしょうか。
○ 久保参考人 御指摘のとおりで、今回のその条文というのは、形式的に当てはまるものはかなり広くなるのではないかなということを懸念しております。私としては、最終的には賛成の意見を申し上げたんですけれども、ただ、限定的に解釈をされるということが前提での賛成ということにはなります。
やはり、そのまま形式的に条文に当てはめると広くなるという一方で、法制審の部会の方で御説明いただきましたのは、形式的に当てはまるもの全てを処罰する趣旨ではないと。
先ほども申し上げましたように、これから、運用についてどういうふうにしていくか、法曹三者はもちろん、多方面の関係各機関で検討されていくことになると思います。こういった行為は対象となり、こういった行為は対象とならないということを広く共有して適切な運用をしていただく、その上で何か問題があれば、やはりそれはまた改めて改正をしていただくということで対応していくしかないのかなというふうには考えております。
以上です。
○ 藤野委員 同じ論点で橋爪参考人にもお伺いしたいんですが、やはりどうしても、こういう条文ですと、形式的に当てはまる、処罰範囲が広がってしまうという懸念に対して、橋爪参考人としましては、こういうやり方があるんじゃないか、そういうものがもしあれば、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
○ 橋爪参考人 お答え申し上げます。
二点申し上げます。
まずは、改正法五号の条文でございますけれども、これは、走行中の車の前方で停止と書いてありますので、前方要件があるんですね。ですから、車が全くいないところで徐行運転を行いましても、前方に停止の要件を欠きますので、空間的に車が存在する状況で停止をしなければならないという観点からは、処罰範囲の限定は図り得るというふうに考えております。
もちろん、改正法五号、六号はかなり広範な規定ぶりになっておりますので、場合によっては処罰価値が低いものが形式的には該当する場合はあると思うんですね。ただ、刑法の解釈におきましては、専ら形式的な文言だけで勝負がつくわけではなく、実質的な観点から限定を図る可能性はあると思うんです。
つまり、実行行為と申しますのは結果発生の具体的な危険性を有する行為でございますので、例えば、個別の状況におきまして、危険性が低い場合については実行行為に該当しないという解釈があり得ますし、また、刑法の因果関係と申しますのは実行行為の危険が現実化する過程と言えますから、そういった実行行為に危険性が乏しく非典型的な因果経過の場合については因果関係を欠くという解釈もあり得ます。
そのように、個別の実質的な観点から、実行行為性あるいは因果関係を否定するという観点で処罰範囲の限定が図り得るというふうに考えております。
○ 藤野委員 私もそうあってほしいなと思うんですが。
ただ、例えば六号で先ほど議論になりましたけれども、高速道路で渋滞中という局面ですと、そこにおける実行行為性というのは何なのか。
結果発生の危険性が高いというのが、渋滞の場合、のろのろのろのろ行くわけですね、その時点での行為は何なのかという話も、審議会を読みますと議論になっておりまして。これは部会長の言葉なんですけれども、正面から行為の時点で具体的な危険性を要求すると、それは故意の要件にもなってしまって、そういうたてつけに条文をしてしまうと故意の要件にもなってしまうので、そうすると六号の罪の適用が困難になる事態も生じてしまい、この規定の持つ意味が減殺されかねない、こういう井田部会長の指摘がありまして、私は、なるほどなというふうに思ったんです。
非常に難しい規定というか、刑法の考え方、基本からすると、やはり、実行行為性があって、それに対応する行為があって、因果関係があってというふうに私も考えていたんですが、この六号の渋滞という局面では、それを余り厳密にやるとなあみたいな議論がされていたのが大変印象的なんですね。
やはりそういう意味でのこの法律の運用のあり方というのが非常に重大だというふうに思っておりまして、引き続き、この問題については午後の質疑でも問いたいと思います。
そして最後に、三名の皆様全員にお聞きしたいんですが、和氣参考人もおっしゃっていましたけれども、やはり本当に加害者自身をなくしていくという点で、厳罰化という対応はあると思うんです。ただ、厳罰化で、今回のように起きた事態に対して法律を当てはめていくというようなやり方ですと矛盾が生じてくるのもありますし、何よりも、やはり、法律以外で皆様がお考えの、こうしたあおり運転をなくしていく上で、もっとこういうやり方があるんじゃないかという点ですね。
例えば、警察庁も通達を出しておりまして、例えば教育の問題、講習時における教育、あるいは安全運転管理者に対する啓発、さらには行政処分、こういう、法律ではなく、刑事罰というか、行政処分の実施というものも言われております。そういうことを考えられておると思うんですが、皆様の観点から、こういうことが必要ではないかというのがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
○ 久保参考人 究極的に言えば、私としては、法教育の必要性ということに尽きるのではないかなと考えております。
私、弁護士会の方では、法教育に関する委員会にも所属しておりまして、例えば、小学校ですとか中学校ですとか高校で、依頼があれば出張の講義をして、いろいろ議論をしたりするという場がございます。やはり、あおり運転に限らず、法律について正しい知識を身につけて、将来、自分がそういった間違ったことをしないようにするためには、早いうちから法教育をしていくということこそが一番重要なのではないかなと思っております。
○ 和氣参考人 被害者の立場と、それから一般の方から申し上げますと、やはり、警察ですとか学校ですとかそういうところの教育も必要ではないかというふうに思いますし、これは常に細かく伝えていかなければいけない問題かなと思います。
また、あおりとか、罪を犯した者が刑務所に入っているわけですけれども、私も刑務所で矯正教育をさせていただいている中で、自分が犯した罪に対して余り自分自身反省もせず、理解もせずという受刑者が非常に多くて、再犯の原因になっているのではないかということを常々思っていますので、刑務所で服役している中で、きっちりと、受刑者たちの矯正教育も絶対に必要ではないかと。それから、出てきてからも、仮釈放の時点での教育、こういうこともしっかりと行っていただきたいなと思っています。
以上です。
○ 橋爪参考人 お二人の意見にもう尽きておりますけれども、あえて一点つけ加えて申し上げますならば、危険運転が生じにくいような環境づくりと申しますか、交通整備を含めまして、そのような環境整備というものも課題になると考えております。
○ 藤野委員 ちょっと、最後の橋爪参考人で、もう少し教えていただけますか。環境整備というのは具体的にはどのようなことなんでしょうか。
○ 橋爪参考人 なかなかちょっと、私も専門外でございますけれども、恐らく、やはり運転していますと、お互い精神状態が特殊になりますので、ある種、常に危険運転というのは生じやすいと思うんですね。そういった意味で、ドライバーの方のストレスが少ないような道路整備や道路環境といったものをつくっていきながら、何とかストレスなく運転できるような環境といったものが、結果的には危険運転の抑止という観点からも意味があると考えておりました。
○ 藤野委員 終わりますけれども、今、ドライブレコーダーの普及が進んでいて、これによって裁判等の認定でもかなり客観的な認定が行われる環境が広がってきているというふうに伺っております。
他方、この間、二〇一八年に、警察庁が「いわゆる「あおり運転」等の悪質・危険な運転に対する厳正な対処について」という通達を出しまして、この通達が出たら、二〇一七年には七千百三十三件だった車間距離義務違反などの摘発件数が、一万三千二十五件に増加しているんですね。ですから、倍近くになっているんですけれども。
要するに、そういう現状のもとでこういう新たな、適用できる法律がふえるということの問題点も十分踏まえて、午後は審議をしていきたいと思います。
参考人の皆さん、本当にありがとうございました。
―――――
○ 松島委員長 次に、藤野保史さん。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
黒川検事長の問題につきましては、後ほど質問をさせていただきます。
まず法案についてですけれども、悪質なあおり運転を取り締まって事故を未然に防止していくというのは当然必要なことであります。しかし、午前中の参考人質疑でも参考人から指摘があったように、本法案というのは罪刑法定主義の観点から、参考人の表現をかりれば、表現が難しい、つまり、規定がかなり曖昧になっていて、検察官の裁量に左右されるという指摘もありました。つまり、処罰範囲が広がり過ぎるのではないか、こういう懸念が持たれているわけであります。ましてや、車の運転という国民の誰もがかかわる行為に関する刑罰規定の新設であり、裁判員裁判の対象にもなります。やはり慎重な検討が必要だと思いますし、これからの答弁で、そういう処罰範囲が拡大し過ぎるのではないかという懸念をしっかりと払拭していく必要があると思っております。
その点、大臣に、基本的な考え方ですけれども、法制審でも、実際に裁判所の方が、適用される方がかなり懸念を表明されて、解釈上疑義が生じないようにしてほしいということも言われております。やはり、大臣としても、立法者意思としてはっきりとさせていく必要があるという御認識でしょうか。
○ 森国務大臣 法文に、処罰対象とすべきではないような場合も明記すべきではないか等の議論がされたことは承知をしております。
こういったことについて、さまざまな議論を踏まえて、これを条文化しようとしても当罰性のある場合を過不足なく捕捉できる要件を設けることが困難であることから、解釈上疑義が生じないようにすることにより対処することが相当であるというような議論がされたものと承知をしておりますので、この場、国会での審議や、また法制審での議論を踏まえて、本法律案の趣旨や意義等について国民の皆様に適切な周知に努めてまいりたいと思います。
○ 藤野委員 現行法は、二条の四号で、「通行中の人又は車に著しく接近し、」という能動的に規定をしているんですけれども、改正案といいますか追加される規定は「著しく接近することとなる」という書きぶりでありますし、現行法が「重大な交通の危険を生じさせる速度」、生じさせる、ここも能動的な規定なんですけれども、改正案というのは「重大な交通の危険が生じることとなる」という規定ぶりであります。ですから、危険が生じることとなるという規定ですと、重大な危険が実際に発生してしまうと、能動的な行為は不要になって認定されてしまうおそれが、やはりどうしてもこの規定からは出てくると思います。
ちょっと具体的に聞きたいんですけれども、五号の要件によりますと、もう細かい要件は言いませんが、一般道での一時停車とか徐行とか、あるいは右折するので待っていて、信号待ちの状態で動き出したときとか、あるいは駐車場での駐停車、あるいはタクシーが、客がぱっと手を挙げたのでそれのためにとまるというような一時的な停止、こういうものも外形上は構成要件に当てはまる可能性があると思うんですが、こういうものを処罰範囲として限定していくというのはどのようにされるんでしょうか。
○ 川原政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の五号の罪は、被害者車両が重大な交通の危険が生ずることとなる速度で走行している場合に、加害者車両が通行妨害目的で被害者車両の前方で停止するなど、両方の車両が著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為を危険運転致死傷罪の対象とするものでございます。
この通行妨害目的というものは、再三申し上げておりますように、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することをいうものでありまして、これらについての未必的な認識、認容があるだけでは足りないものでございます。
お尋ねの行為がこの五号による処罰の対象となるか否かにつきましては、個別の事案ごとに具体的な事実関係に基づいて判断されるべき事柄であるため、一概にお答えすることは困難でございますが、今申し上げたように、五号の罪は、単に停止することだけではなく、今申し上げたような意味内容を持った通行を妨害する目的との要件を満たす必要がございますので、この目的の要件を満たさない事案においてはこの五号の罪は成立しないと考えるところでございます。
○ 藤野委員 今、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図するという要件があるからこれで限定されるんだという御答弁でしたけれども、しかし、現行法の四号、現行法は、先ほど言ったように、著しく接近するという要件がありますので、ですから、そこはまず担保されるというのと、四号は、専ら通行を妨害する目的というのは規定しておりません。していないんです。今回もしていないんです。先ほどおっしゃったように、積極的に意図するで足りるとされているんですね。逆に、接近するという能動的行為は今回の要件から外れているわけで、審議会での議論でも、客観的要件がある意味広がるわけで、主観的要件で限定したらどうだ、例えば、専ら通行を妨害する目的、こういうものを入れたらどうだという議論もあったと思うんですね。しかし、結局、これが入っていないわけでありまして、本当に今答弁された積極的に意図するというこの要件で限定がされるのかというのは、やはり非常に私たちは懸念がまだあると思うんですね。
やはり、そういう意味で、五号の一般道でのさまざまな、正当なといいますか、普通の運転行為、停止行為、徐行行為、こういったものが本当に外形上、構成要件に当てはまって処罰対象になりかねないという部分をしっかりと限定をしていく必要があると思っております。
六号についてもお聞きしますけれども、高速道路上であっても渋滞中というのは、渋滞ですから停止とか徐行が繰り返されるわけですね。それが渋滞であります。この渋滞中に後続車両が追突して死傷事故が起こったという場合、それが、今言ったような積極的な意図を持って行われたものなのか、過失なのか、これは法文上、区別は難しいと思うんですけれども、過失事故と今回の法案による犯罪との事故をどのように区別するんでしょうか。
○ 川原政府参考人 お答え申し上げます。
お尋ねは、高速道路上で渋滞、すなわち車が徐行や停止を繰り返している中で事故が起きた、こういった事案において、通行妨害目的を持った運転行為によるものなのか、それとも過失行為なのか、そこがわからないので、本来、通行妨害目的がない過失行為であってもこの危険運転致死傷罪の対象となることがあるのではないか、そういう御趣旨の質問と捉えて、お答えを申し上げます。
高速自動車道等でございましても、渋滞によって他の走行車両が徐行や停止を繰り返しているような場合には、通行妨害目的で自己の運転する自動車を被害車両の前方で停止させるなど、被害者車両に著しく接近することとなる方法で運転し、これにより被害者車両を停止又は徐行させ、そのような行為によって人に死傷結果が生じたといたしましても、改正後の自動車運転死傷処罰法二条六号の罪の実行行為が予定している危険性が現実化したものとは言いがたいと考えますので、当該行為と死傷結果との間の因果関係は認められず、同罪の処罰対象にはならないと考えております。
すなわち、目的の問題というよりは、今委員が指摘しているようなシチュエーションですと、もともと六号というのはとまっている車がないという前提の状況での危険性に着眼していますので、徐行、停止を繰り返している中ですと、そもそもが、仮に事故が起きて死傷の結果が生じたとしても、その六号の実行行為が予定している、繰り返しですが、危険性が現実化したものではないというところで、委員が御指摘のような事案につきましては、六号の危険運転致死傷罪の成立が認められないと考えております。
○ 藤野委員 法制審の議論の中で、法務省の方はこう言っているんですね。今おっしゃられたような徐行と停止を繰り返しているような状況であれば、やはり因果関係が認めがたいと。今おっしゃったとおりです。しかし、続けてこうおっしゃっているんです。渋滞が解消しつつあって、だんだん速度が上がっていく状態であれば適用があり得ると。だから、要するに、その区別というか境というか、今おっしゃったように、渋滞でとまっている、スタックしている、動かないというのであればわかるんですが、法制審自身で、だんだん速度が上がっていく状態であれば適用があり得るという話がされているわけで、そこはやはり懸念がまだ残っているというふうに思うんですね。
ですから、やはり、そういう意味で、法制審も実は二回しか議論されておりません。合わせて三時間三十分で、これだけの刑を新設するという議論が終わっているわけですね。先ほど紹介した島田東京地裁の判事の発言というのは、その二回目の最後の最後のところで、もう矢も盾もたまらずという感じだったのか、ちょっと議事録からは読み取れませんが、二回発言されております、続けて。立法上明確にしてほしいという話と、そして、解釈上疑義のないようにしてほしいというような発言がまさに適用する側から出ているという、その法案の特殊性をやはり踏まえて議論する必要があるというふうに思っております。
最後に、これはもう大臣にお聞きしませんけれども、先ほどの参考人質疑の中では、要するに、厳罰化厳罰化で対応していくという今のアプローチといいますか、一定その立法の必要性があるとしても、やはり本筋としては、被害者も加害者も生まないというふうに和氣参考人もおっしゃっておりましたけれども、そういう被害者も加害者も生まないための例えば公教育の徹底だとか、あるいは、一旦罪を犯した方でも、再犯防止の教育、再犯防止のプロセスの中でこうした認識を持っていただくようなことも必要じゃないかとか、あるいは、あおりはいらいらから起きるので、ちょっと私、具体的にはあれですけれども、運転の環境づくり、そういう状況に陥らないようなことも参考人から提起がされました。そうしたさまざまなイニシアチブを法務大臣に求めておきたいと思います。
その上で、黒川元検事長の問題についてお聞きをしたいと思います。
まず確認ですけれども、昨日の当委員会で後藤委員が質問されました。そのときに、黒川元検事長の処分内容について内閣と協議していないのかという後藤委員の質問に対して、大臣は、はい、協議しておりませんと答弁されました。これは間違いないですね。
○ 松島委員長 一度とめてください。
〔速記中止〕
○ 松島委員長 速記を起こしてください。
大臣。
○ 森国務大臣 今、速記録を確認いたしました。
後藤委員の御質問において、「そうしますと、法務省と内閣側との協議においては、訓告だとか、あるいは懲戒処分だとか、処分の内容については具体的には一切議論にならなかったということですか。」という質問に対して、「はい、そうでございます。」と答えています。
これは、協議がなかったという意味ではございません。
○ 藤野委員 それではもう一点確認しますが、検事長については、検察庁法十五条により任命権者は内閣、そして国公法八十四条により懲戒権者も内閣、これは間違いないですね。
○ 森国務大臣 はい、そうです。
○ 藤野委員 懲戒権者でない者が懲戒処分をするかどうかを決定するというようなことになりますと、これは、人事行政上、大変な問題になります。ですから、懲戒権者は現行法で定められております。任命権者です。検事長の任命権者は内閣であり、処分権者も内閣。
大臣は、協議をしたと今おっしゃいました。処分権者である内閣と協議をしたのに、処分内容について話し合っていない、こういうことですか。
○ 森国務大臣 先ほど御説明いたしましたとおり、法務省から内閣に対し、事務的に、調査の経過の報告、先例の説明、処分を考える上で参考となる事情の報告等を行っております。
私の、内閣と協議した旨の答弁は、その法務省から内閣に対しそういった報告等を行ったことを申し上げたものでございます。
○ 藤野委員 経過や先例、いろいろな協議をされるのはいいんですが、内容について全く議論をしていないと。ということは、処分権者を差しおいて、処分権者、任命権者である内閣とは協議の中で全く処分内容については議論せずに、処分権者でない法務大臣と検事総長でお決めになった、こういうことですか。
○ 森国務大臣 内閣の一員である私、法務大臣において調査等を行い、さまざまな先例等の分析も行いました。その上で、懲戒処分ではない訓告が相当であるのではないかという意見に至りました。それについて内閣に報告したところ、その決定に異論がない旨の回答を得たものでございます。
○ 藤野委員 ごまかさないでいただきたいんですが、内閣の一員であろうと、内閣ではないんです。内閣というのは合議体であって、先ほど西村副長官も答弁されたように、内閣で意思決定する場合には、内閣に請議があって、それを閣議で決める、これは当たり前です。幾ら一員であっても、勝手に決められないんですよ。
大臣、もう一回お聞きしますけれども、懲戒処分にするかどうかという中身については全く協議されていないんですね。そうだとすると、処分権者を差しおいて勝手に、懲戒処分しないという判断を大臣がされたということですか。
○ 森国務大臣 内閣が任命権を有する者について国家公務員法に基づく懲戒処分を行う場合においては、通常、所属府省の長として行政事務を分担する国務大臣が処分案の閣議請議を行い、閣議において懲戒処分を決定することとされているものと承知をしております。
すなわち、仮に検事長について懲戒処分を行う場合には、法務大臣から閣議請議を行うこととなります。したがって、まず法務省において検事長について懲戒処分を行うかどうかというのを検討するのは何ら不適切ではないと考えます。
○ 藤野委員 今のはちょっと新しい答弁なんですね。今の根拠はどこにあるんですか。行う場合は閣議請議するけれども、行わない場合は閣議請議しない、これは根拠は何なんですか。
○ 森国務大臣 今御答弁したとおりでございまして、通常そのようにされております。
そして、私の方で、懲戒処分ではない訓告が相当と決定した後、内閣に報告したところ、その決定に異論がない旨の回答を得ました。
○ 藤野委員 処分をするかどうか、ここがポイントなんです。するかどうか、ここを内閣が決めるわけですよ。しないと別の人が決めて、それを了とするなんという制度になっていないんです。するかどうかという重大な判断について任命権者ができるわけです。任命権者しかできないわけですね。これを、いわゆる処分権者である内閣が懲戒処分をしないと決めたのではなくて、任命権者とは別のところでしないと決めて、後で了とする。しかも、内閣ではなく総理が了とする、個人が。二重にそういう仕組みになっていないんですよ。
大臣のおっしゃるとおりなら現行法に反するんですけれども、そういうことが行われたということなんですか。
○ 川原政府参考人 お答え申し上げます。
国家公務員法八十四条、御指摘の条文は、「懲戒処分は、任命権者が、これを行う。」ということですので、懲戒処分を行う場合には、内閣の意思決定、すなわち閣議決定が必要でございますが、懲戒処分を行わないという閣議決定まで必要としているものではないと解されます。
したがいまして、大臣が先ほど答弁されましたように、懲戒処分を行う必要があるということ、この場合は検事長でございますから、検察を所管する法務省の主任の国務大臣であり、また主務大臣である法務大臣が、内閣の一員として、内閣による意思決定が必要な場合、すなわち懲戒処分を行う場合は、閣議請議をして、内閣による閣議決定を、内閣の決定をいただくものでございます。
しかしながら、懲戒処分を行わない場合には、これは内閣による決定という行為にはなりませんので、内閣による職権の発動がない状態になります。この内閣による職権の発動をしないということについて一次的に検討するのが、検察を所管する法務省であり、法務大臣であるということを大臣が答弁されているものでございます。
○ 藤野委員 一見、何か論理が通っているように見えますが、私は、逆に法の支配が崩れていくのをこの目で今見ているような気がしますよ。
要するに、処分権、今、冒頭確認しましたけれども、懲戒権者とは処分内容については協議していないというわけですよ。処分権者と協議していないもとで、懲戒にしないという判断をしたと。懲戒しないということだから閣議にかけなくていいんだと。全部、結果から後づけして、勝手に法の解釈を変えている。私は本当に、こういうやり方を与党の皆さんまでが是とするというのは、私は信じがたい。本当に信じがたい。
もともとこの定年延長自体が違法ですけれども、最後の処分のときでさえ、こうした処分の内容を処分権者とも全く協議しないで、任命権者とは別の人が処分をしないと決めて、処分をしないと決めたから閣議にかけなくていいんだと。そして、それを、内閣でもない総理大臣に報告して、異論がない旨を得たと。全くむちゃくちゃですよ。これが法治国家かということを本当に痛感というか、もう本当に許しがたいと思いますね。
内容について協議したのならまだわからなくもないけれども、任命権者と内容について協議していないと大臣は答弁した。そして、自分たちで決めたということでしょう、処分しないということを。こんなことは絶対許されない。後づけで何か理屈づけて、それを正当化しようなどということは絶対に許されません。
結局、最も自然なのは、先ほど、二十二日の指摘もありました、黒岩委員から。私も本当にそう思います。あの時点では、プロセスについて限って言えば、大臣の発言は、私はもっともだという部分が多かったですよ。結局、内閣で判断したと、それをなぜ認めないのか。それを認めて、その中身を議論すればいいと思うんです。今私が言っているのは、プロセスを皆さんがごまかしていらっしゃるから、プロセスをしっかりと認めた上で、中身の、処分の適否についても、これは当然問題になります。しかし、今は、まさに手続の部分であり得ないことが起こっているということであります。
それで、ちょっともう一点聞きたいんですけれども、大臣、要するに、この内閣がやっているというのは、私は、確かに行政権には一定の解釈権はあります。しかし、その解釈というのは、ある法律の規定について百八十度、これまで一貫して維持されてきた法解釈を百八十度変えるような、そんな解釈権までは内閣にはありません。それは事実上のその規定の法改正であって、それは法改正を経るべきなんです。しかし、今行われているのは、まさに、今までずっと検察官には定年延長できないと言ってきた解釈を、できると百八十度変えるんですね。白を黒と言いかえるような話であります。これはもう解釈の範囲を超えていると思うんですね。
大臣、お聞きしますが、憲法上、行政権というのは法律に基づいて行わなければならない。やはり、百八十度異なる結論を出すことは、もはや解釈の範囲を超えていると思うんですね。そういう権限は、憲法上、内閣にはないんじゃないですか、大臣。
○ 森国務大臣 法令の解釈あるいはその変更というものについて、決まった手続や方式があるわけではないものと承知をしております。
その上で、法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮するなどして論理的に確定されるべきものであり、検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないと理解しております。
○ 藤野委員 至当ならば許されるとおっしゃいましたけれども、百八十度変えるような、白を黒というような解釈は、それはもう解釈ではないんですよ。
しかも、それがどういう説明で行われているかというと、安倍総理は二十二日の厚労委員会で、いわゆる閣議請議により閣議決定されるといった適正なプロセスを経たから、今回、この閣議決定は脱法的なものではないという答弁をされております。
しかし、逆に、閣議請議と閣議決定という行政府の中だけのプロセスで行われているからこそ問題なんですね。事実上の解釈変更というよりは、事実上の法改正に当たるようなことを閣議請議と閣議決定という行政内部のプロセスだけでやってしまった。これを放置しますと、政府が閣議決定で、法律の文言や制定、改正の経緯を全く無視して、それまでの解釈をどんどん変えていく、こういうことが許されかねない、許されてしまう。だから、国会で決めた法律がどのように運用されるかは全て政府次第ということになって、法の支配、法治国家としてのあり方の根幹が揺らぐわけですね、こういうやり方を許すと。
ですから、こういう解釈、そしてその解釈のもとになった閣議決定、これはもう絶対に撤回をしなければならないというふうに思うんですね。大臣、これは撤回が必要じゃないですか。
○ 森国務大臣 勤務延長についての解釈変更についてでございますが、検察庁法上、検察官について勤務延長を認めない旨の規定はございません。その上で、検察庁法で定められる検察官の定年による退職の特例は定年年齢と退職時期の二点であり、国家公務員が定年により退職するという規範そのものは、検察官であっても一般法たる国家公務員法によっているというべきであること、そして、勤務延長の趣旨は検察官にもひとしく及ぶことなどから、検察官の勤務延長について、一般法である国家公務員法の規定が適用されると解釈したわけでございます。
有権解釈として、検察庁法を所管する法務省において適正なプロセスを経て解釈をしたものでございます。
○ 藤野委員 ですから、今のが、法解釈の範囲を超えた百八十度真逆の結論を導き出すための事実上の法改正だと言っているんです。
しかも、私は、規定がない理由などというのは聞いていないんですね。規定がない、勤務延長を認めるという規定はありませんと言いますけれども、そんなことは聞いておりません。現行法にちゃんと、六十三歳そして六十五歳になったらやめると、年齢だけで規定した規定はあるわけですね。この規定の趣旨は答えずに、いや、その規定がない、認めないという規定はないと、またこれも読みかえて、勝手にすりかえて答弁をする。それで、認めない規定がない理由は見当たらないと。二重に、自分たちでつくり出して、認めない理由、規定がない、その理由が見当たらないと。当然ですよ。ですから、こういう解釈を超えたやり方で事実上の立法権の侵害を行う、そして検察官の独立性、ひいては司法権を脅かすということが行われているわけです。
先ほど、一般職の公務員とおっしゃいました、大臣。しかし、裁判官も検察官もいずれも国家公務員ですけれども、もちろん裁判官は特別職ですけれども、しかし、現行法は特別職の裁判官に準じて検察官には厚い身分保障を与えているわけですね。憲法七十六条に基づいて、裁判所法四十八条と検察庁法二十五条によって活動中の身分保障、そしてその出口として定年の部分については、裁判所法は五十条で、検察庁法は二十二条で、いずれについても年齢で。一切の延長や再任用が認められておりません。これが現行法なんです。ですから、検察官の特殊性からいっても、今言った一般職だからという理由は現行法に反するんですね。現行法が既に違う扱いをしているんです、一般職である検察官に。裁判官に準じているんです。
ですから、大臣、そうした解釈を超えた事実上の立法行為でこうした違憲、違法の定年延長を行った。ですから、大臣、これは撤回していただかないといけない。閣議決定と法案の特例部分、これを撤回しなければ、第二、第三の黒川氏が生まれるというふうに思います。
検事長経験者やあるいは特捜部という政治や巨悪と向き合い続けてきた皆さんがなぜ今回の法案そして閣議決定に反対しているかというのは、今申し上げたような重大な問題があるからですね。
ですから、この閣議決定の撤回、大臣、先ほど言った理由以外にこれを撤回しない理由というのはあるんですか。
○ 森国務大臣 まず閣議決定は、黒川前検事長の勤務延長についての閣議決定でございますが、この理由は、東京高等検察庁管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査、公判に対応するためには、同高等検察庁検事長黒川弘務の検察官としての豊富な経験、知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監督が必要不可欠であり、同人には、当分の間、引き続き同検事長の職務を遂行させる必要があると閣議請議に理由を書いて閣議決定したものであり、検察業務上の必要性に基づき勤務延長したものであり、適正であると考えております。
○ 藤野委員 どうしても定年延長が必要なら、法改正をすればよかったんです。私が言っているのは、それをせずに閣内だけで決定してしまった、これを許すと、今後、国会がどんな法律をつくっても閣議決定でその解釈が変えられて、百八十度違う結論が導き出されてしまう。どんな法律をつくってもそうなりかねないんです。ですから、今おっしゃったように、黒川さんがどうしても云々というのであれば、法改正をすべきであった。
しかも、この閣議決定に至る過程も、これまでの審議で、もうむちゃくちゃです。我々が、法務省内における解釈変更の検討を行ったことについての裏づけ根拠、裏づけ資料、これを求めましたが、今に至るまでまともなものは出てきておりません。内部メモ程度のものであります。
公文書管理法四条というのは、行政機関の意思決定過程の合理的な検証を可能にする文書の作成を義務づけている。にもかかわらず、これを出してこないんです。毎日新聞が情報開示を求めましたが、議事録などはつくっていないということが明らかになりました。野党側が、当該文書の作成日時だけでも明らかにしてほしいということで、その日時の電子プロパティー、この開示を求めましたけれども、これも拒否し続けております。あげくの果てには、口頭決裁だとおっしゃっている、この解釈変更は、省内で。口頭決裁で議事録なし、これで信用しろという方がよっぽど無理なんです。
○ 松島委員長 済みません。質疑時間が終了しましたので、短くお願いします。
○ 藤野委員 結局、法治国家を壊すようなこの法解釈と、その大もとにある閣議決定、そして法案の特例部分の撤回、これを求めて、質問を終わります。
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20200527_homuiinkai_Fujino_kaigiroku
作成者 : fujinoyasufumi