検察庁法改正案について内閣委員会で質問
内閣委で質問。
「なぜ現行法は検察官の退官について年齢以外の要素を一切考慮しないのか?」と質問したが、森、武田両大臣とも答えず。
準司法官である検察官の中立性を担保するため現行法は出口要件を年齢だけに絞っている。
ここに例外を持ち込むこと自体が裁量の余地を生む。
法案撤回しかありません!
立国社の皆さんと共同で、武田大臣(写真右)の不信任決議案を提出しました。
私の質問に対して、1回ならまだしも枕詞のように「本来なら法務省…」と答弁。
所管大臣としての自覚も資質もありません。
法案も撤回せよ!
- 会議録 -
○ 松本委員長 次に、藤野保史君。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
おとといからの後藤委員の質疑は極めて重要でありまして、まさに法案の中心部分にかかわる問題です。
今回の法改正は、大きく言って二つの内容があります。
第一に、六十三歳の検察官の定年年齢を六十五歳に引き上げる。これは、全ての検察官に適用されます。この部分は、我が党を含め、異論はないわけですね。
ところが、本法案はこれだけではありません。第二に、ある特定の検察官については、定年年齢を超えて勤務延長を行うことができるようにする。つまり、ある検察官は定年年齢を超えられるけれども、別の検察官は定年年齢を超えられない可能性が出てくる。
例えば、ある検察官は、在任中、政治家や大企業の疑惑を厳しく追及してきた、こういう検察官は定年延長をさせないということが可能になる。片や、別の検察官は、政治家や大企業の疑惑を次々と不起訴にしてきた、問わなかった、こういう検察官は定年を延長することが可能になる。
しかも、法案を見ますと、その判断基準を内閣が定めるというふうになっているわけですね。内閣が恒常的に検察官の人事に介入できるようになるわけです。昨年十月までは、この第二の部分というのは法案に入っていなかったんです。ところが、ことしになって突如この第二の部分が法案に盛り込まれた。だから大問題になっているわけです。
検察庁法改正案に抗議します、そういったハッシュタグをつけたツイッターは、既に一千万を超えております。その後も抗議は広がっている。与党議員の中からも異論が相次いでいるわけですね。そして、とうとうきょうは、検事総長経験者を始め元検察官が、本法案に反対の意見書を法務省に提出すると。当事者からも反対の声が上がっております。つまり、新型コロナで国民が我慢に我慢を重ねているときにこんなことをやるのか、こういう怒りの声であります。
私は、法務委員会や予算委員会でこの問題を取り上げてきました。改めて、大臣に根本問題についてお聞きしたいと思うんです。
現行法は、検察官が六十三歳に達したときと二十二条に規定して、退官する場合、延長を一切認めておりません。つまり、キャリアの最後で年齢以外の要素は一切考慮しないよというのが現行法であります。
大臣にお聞きしますが、なぜ現行法は年齢以外の要素を考慮しない制度にしているのか、定年の延長を一切認めていないのか、お答えください。
○ 武田国務大臣 御指摘の点は、検察庁法の解釈の話であり、本来ならば法務省が答弁するところでありますけれども、残念なことに通告をしていただけなかったので、やむを得ず私の方から答弁をさせていただくことになると思うんですけれども、現行の国家公務員法に勤務延長制度が導入された当時は、同制度は検察官に適用されないと解釈をしておりました。しかし、その検討の過程や理由等については、現時点では必ずしもつまびらかにはなっておりません。
検察法上、検察官について勤務延長を認めない旨の特例は定められていないということでありまして、検察庁法で定められている検察官の定年による退職の特例は定年年齢と退職時期の二点であり、国家公務員が定年により退職するという規範そのものは、検察官であっても、一般法たる国家公務員法によっていると言うべきところであります。
御指摘の、特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に、定年制度の趣旨を損なわない範囲で、定年を超えて勤務の延長を認めるとの勤務延長制度の趣旨は、検察官にもひとしく及ぶべきであることなどから、検察官の勤務延長につきましては、一般法である国家公務員法の規定が適用されると解釈できると考えられるため、一月にその解釈というものを変更したところであります。
したがって、現行の検察庁法は、検察官の勤務延長を一切認めない制度とはなっていないと解されるものと理解をいたしております。
○ 藤野委員 今答弁したのは、十月末以降の新しい解釈なんです。そんなことは法務委員会や予算委員でもさんざんやってきた。
私がお聞きした根本問題、やはりお答えにならない。なぜ現行法は年齢以外の一切の要素を出口で認めていないのか。これは、やはり、年齢以外の一切の要素を出口で考慮すると、ここに恣意的介入の余地が入るからであります。
検察官というのは、唯一の公訴提起機関になっております。これは、人を罪に問うかどうかということを決める特別の権限です。こういう権限を持っている唯一の機関、これが検察官です。過去には、総理経験者すら訴追し政権を揺るがすなど、検察と政治というのは常に緊張関係にありました。つまり、検察官というのは単なる行政官ではなくて、準司法機関なんです。ここがポイントなんです。
ロッキード事件を指揮しミスター検察と呼ばれた伊藤栄樹氏は、検事総長時代に部下にこう訓示していました。巨悪を眠らせるな、被害者とともに泣け、国民にうそをつくな。つまり、巨悪を眠らせないという重い使命を持っている準司法官。だからこそ、どんな巨悪にも屈しない、厳格な政治的中立性が求められるわけですね。これをあらゆる段階で担保している。
そして、この定年というのは、キャリアの最後、出口でもこうした政治的中立性を確保するために、年齢以外の一切の要素を考慮しない。考慮しないから誰も介入できないんですね。そのことで、この分野でも独立性を担保してきた。
大臣、もう一回お聞きします。要するに、定年というキャリアの最後で年齢以外の要素を考慮しない、これが現行法です。ですから、年齢以外の要素を考慮すること自体が介入の余地をつくり出すんだ、こういう認識はありますか。
○ 武田国務大臣 年齢以外の要素を考慮しないとは書いてはおりません。
○ 藤野委員 私が聞いたのは、今は書いているんです、二十二条に。検察庁法二十二条で、六十三歳に達したときと書いてあるんです。それ以外の要素はないんです。この理由は今申し述べたとおりです。
ここに年齢以外の要素をつけ加えたら、そこに裁量の余地が入るじゃないかというのが私の質問です。もう一回答えてください。
○ 武田国務大臣 先ほどの答弁で申しましたけれども、検察庁法上、検察官について勤務延長を認めない旨の特例は定めていないんです。定めていません。御理解ください。
○ 藤野委員 私の質問に答えていただきたい。
今回、年齢以外の要素をつけ加えたら、そこに裁量の余地が入りますか、入りませんか。これだけお答えください。
○ 武田国務大臣 いや、勤務延長を認めない旨の特例は定められていないんですから。
○ 藤野委員 そこはまたお聞きしますけれども、先ほど、人事院の規則がどうとか、そういう新たな要素をつけ加えると、その解釈が問題になるわけです。今、そこは全然出口ではないんです。年齢だけなんです。そこに新たな要素をつけ加えるのが今回の法案になっているということなんです。
検察官の任命あるいは活動、そして退官。いろいろなフェーズがあります。そして、任命については内閣が行う。しかし、今問題になっているのは出口なんです。定年の、こういう出口の、キャリアの最後の段階で内閣の介入を許す制度をつくるのかどうかということが問われているんです。
他の一般職の公務員であれば、人事の入り口や途中や出口でそうしたことがある制度はあります。しかし、検察官は厳格なんです。単なる行政官じゃないからです。準司法官という側面があるから、厳格な政治的中立性を出口でも担保する。
大臣、これはお答えください。要するに、現行法は、検察官の出口でも内閣に介入できないように、わざわざ年齢だけを考慮しています。そこに本法案は特例をつくろうとしているんです。これは、検察官の独立性を害する、ひいては三権分立を脅かす、そうなるんじゃないですか。
○ 武田国務大臣 前とは違うんだろうということをおっしゃりたいんですか。(藤野委員「何を言っているんだ」と呼ぶ)いや、そうでしょう。
前とは違うということをおっしゃりたいんでしょうけれども、やはり時代の変遷とともに犯罪の形態も社会情勢も変わってきているんですよ。それに的確に対処できる柔軟な対応をとっていくことも、これまた重要なことだと思いますよ。
○ 藤野委員 要するに、新しい要素が入ってくる、年齢以外の。時代の要請とかおっしゃいましたけれども、どんな理由をつけるにしろ、こういう新しい要素を持ち込んでくる。このことは、やはり、現行法が厳格に担保しようとしている検察官の政治的中立性を出口の場面で脅かすものなんです。
先ほど、要件を定めることということでありますが、私たちは、要件があればいいという問題じゃないと思うんです。先ほど言ったように、検察官についてはそもそも例外がない。年齢以外、出口では考慮しないというのが極めて重大なポイントなんですね。だから、例外を認めた上で、その例外要件をどうするか。これは、議論としてはあり得ても、検察官については中心的な問題ではない。逆に、どんな詳細な要件をつくっても、その要件に当てはまるかどうかを、じゃ、今度は誰が判断するようになるのか。
本法案では、人事院の承認等の規定を、内閣が定めるというふうに読みかえます。つまり、これは定年延長等、判断権者が人事院から内閣にかわる場面が出てくるということなんですね。
大臣にお聞きしますが、どんな詳細な要件を定めたとしても、法案が人事院の承認等を外す以上、この要件に該当するかどうかは人事院ではなくて内閣が判断する。結局、これは内閣の恣意的な判断を許すんじゃないですか。
○ 武田国務大臣 総理の答弁でもあったと思うんですけれども、要件は明確化するわけですから。(藤野委員「だから、その当てはめを聞いているんです」と呼ぶ)明確化します。(藤野委員「当てはめを誰がやるかというのを聞いているんです」と呼ぶ)
○ 松本委員長 藤野保史君、もう一度。
○ 藤野委員 厳格な要件を幾らつくっても、今、人事院の承認、要するに、今もあるんです、先ほど言ったように、人事院規則というのは、一号から三号まで。その当てはめを今人事院がやっているから、内閣から独立した客観性が一定程度担保される。しかし、今回はそれを、内閣の定めるところに変えるわけですよね。ここに恣意的裁量の余地が内閣に生まれるじゃないかというのが私の質問です。
○ 武田国務大臣 そもそも検察官も一般職の国家公務員であり、検事総長、次長検事、検事長の任命は内閣が、その他の検察官の任命は法務大臣がやってきたわけですよ。
勤務延長制度については、特定の職員が、定年後も引き続きその職務を担当させることが公務上必要な場合に、定年制度の趣旨を損なわない範囲で、定年を超えて勤務の延長を認めるものなんです。
これらの制度というのは、検察権の行使に圧力を加えるものではないんですよ。また、いずれの制度についても、その判断というものは、ほかの国家公務員と同様に、その任命権者が行うんです。
○ 藤野委員 では、大臣が担当されている部分についてお聞きしますが、現行法は、一般職の国家公務員の定年延長の再延長です、二回目。これについては人事院の承認を必要としております。これはなぜなんですか。
○ 武田国務大臣 定年制の趣旨をしっかりと踏まえるためだと思います。
○ 藤野委員 いや、答えになっていない。
私の質問は、なぜ任命権者とは別に人事院の承認を再延長の場合は必要とするのか、そのことです。
○ 武田国務大臣 趣旨にしっかりとのっとるためにするためだと思います。
○ 藤野委員 今回の法案は、その人事院の承認を外して、内閣がまたやるわけです。任命権者がもう一回やるわけです。これは、全く、要するに、結局、内閣が好き勝手できるということなんですよ。内閣から独立した人事院がわざわざ承認を求めていたものを読みかえて、内閣の定めるところにしちゃう。だから、幾ら内閣の定めるところの準則を使っても、精緻に精緻につくり上げても、これは結局、恣意的裁量の余地が入ります。恣意的判断の余地が入ります。
もともと、現行法がなぜ検察官に特別の定年制度を定めているのか。これは、戦前の人権侵害の反省に基づく現行憲法の要請であります。
配付資料の一を見ていただきますと、刑事訴訟法の提案理由。刑事訴訟法、まさに今問題になっている検察官、これが何でつくられたかというその説明の中で、ここにありますように、新憲法は、各種の基本的人権の保障において、格別の注意を払っているのでありますが、なかんずく刑事手続におきましては、我が国における従来の運用に鑑み、特に三十一条以下数条を割いて、極めて詳細な規定を設けている。
つまり、このなかんずく刑事手続に関して我が国における従来の運用というのは、戦前の治安維持法を始めとするさまざまな人権侵害が刑事手続の中で行われた、だから法律だけでなく憲法に、わずか百三条の憲法の中、三十一条から四十条まで、十条も刑事手続だけに特化した憲法の規定を置いているのは、法律では動かしちゃだめだと、戦前の重い教訓なんです。
これに基づいて、配付資料の二にありますけれども、まさに検察庁法の提案理由でも、「新憲法が司法権の独立につき深甚の考慮をいたしておりますことに鑑みますれば、」ということで検察庁法がつくられているわけですね。ですから、大臣、この検察庁法をどういうふうに捉えるかということも問われております。まさに憲法に由来するわけです。検察官の地位の特殊性あるいは検察官の特別の定年制度というのは憲法に由来する。
配付資料の三を見ていただきますと、日弁連が四月六日に会長声明を出しました。異例なことですが、五月十一日にも二度目の反対声明を出しております。いずれでも強調しているのは、今回の法案が憲法に反するということなんです。その配付資料の三の四月六日のを見ていただきますと、「憲法の基本原理である権力分立に反する。」という指摘がされております。
大臣にお聞きしますが、今回の法案が憲法の基本原理である権力分立に反する、こういう認識はありますか。
○ 武田国務大臣 何度も申しますけれども、これは検察官の話であって、法務省にお聞きになってもらうべきところでありますけれども。今回、残念なことにその通告がなされなかったことで、いたし方なく私の方からお答えをさせていただきたいと思います。
憲法に由来するかどうかということをおっしゃられましたけれども、検察官の権限すなわち検察権、憲法第六十五条が内閣に属すると定める行政権の一部をなすものとされております。そして、検察官には、刑事訴訟法上、唯一の公訴提起機関とされているように、憲法七十六条が定める司法権の発動を促し、その適正、円滑な運営を図る上で極めて重大な職責を有する準司法官的性格を持つという職務の特性が認められる、このように承知をいたしております。
○ 藤野委員 いや、だから、後半はそのとおりなんです。大臣おっしゃったように、準司法官という側面があるわけですね。誰を訴追するのか、誰を裁判にかけるのか、こういうところがほかの一般職国家公務員とは全く違う。しかも、ほかの省庁でいえば、大臣がいて、そのもとで仕事を分担しますが、検察官は一人一官庁、一人が全ての権限を持っているわけです。権限の中身も権限の行使の仕方も全く違うのが検察官であり、今大臣おっしゃったように、準司法官だからそういう権限が与えられているわけであります。
大臣、そういう意味で、何でこういうことをやるのかということもちょっと見ていきたいんですが、結局これは、大臣が十三日の審議でおっしゃったように、当てはまる事案というのは黒川氏の件以外にないとおっしゃいました。まさにこの法案が、黒川氏のケースを後づけで正当化するための法案だということを如実に示したと思うんですね。
配付資料の四を見ていただきますと、これは法務省が提出した資料です。これは法務委員会でもたびたび議論した資料なんですけれども、これは実は非常に大きな資料の一部なんですが、前半は法務省が昨年十月末までに検討した部分がるる書いてあって、後半はことしになってから提出した部分がるる書いてある。この後半のことしに入ってからのやつの冒頭に、この配付資料の四が一枚あるんですね。これは後半全体を貫くものなんですが、見ていただきますと、そこにありますように、今回、検察官についても勤務延長制度が適用されるものと整理したことから、新たな修正を行うこととなったと言っているんですね。極めて簡単なんです。整理したから検察庁法に新たな修正をしましょうと。
大臣にお聞きしますが、法務省自身が、大臣の言う何か職務の遂行上の特別の事情が、時間があったから思いついたとかそういうことではなくて、まさに整理した、黒川氏に適用しようと整理した、このことが新たな修正につながった、こういうことじゃないんですか。
○ 武田国務大臣 もう何度も申しますように、検察庁法改正案のお話であって、本来ならば法務省が答えるべきところでありますけれども、本当に残念なところで、今般もまた通告をしていただけなかったということで、いたし方なく私の方からお答えをさせていただきたいと思っておりますけれども、まず、現行国家公務員法上は、一月の解釈変更以降、検察官への勤務延長の規定の適用に当たり、読みかえ規定は必要でなかったものと承知をいたしております。
しかし、今般の改正により、国家公務員法の勤務延長の規定が、検察官に観念できない管理監督職などを含むものに改められたものと理解をいたしております。そのため、検察官については、読みかえ規定がなければ国家公務員法上の勤務延長の規定を適用することが困難になったため、所要の規定の整備が必要となったものであります。
したがって、検察庁法改正案において勤務延長の規定が設けられたのは、黒川検事長の勤務延長を追認するためではないと理解しております。
○ 藤野委員 いや、大臣、関係ないとおっしゃるのなら、閣議決定が行われた経過、そして、法案提出が行われてこういう変更が行われた経過の会議録を出してくれ、あるいは電子的記録を出してくれ、こういうことを私たちは要求しております。しかし、全く出てこないんです。あげくの果てに、決裁は口頭でやったと。
ここで、こんなことを言われて、いやいや、これは黒川氏とは関係ありません、信じろという方が無理じゃないですか。大臣自身が、これしかない、このケースしかないとおっしゃっているわけで、その後、がたがたがたと動いていったわけです。法案ができてきた。そういう経過から見ても、これはまさに黒川氏の定年延長、そして、その解釈の破綻、その破綻を繕うための法案ということになっているというふうに思います。
そして、この法案を許してしまうと何が起こるか。先ほど言ったように、検察官というのは人を罪に問うことができる、逆に言えば問わないこともできる。問うか問わないかを決定できる唯一の公訴提起機関であります。その幹部の人事が時の政権に握られたらどうなるか。
一つは、巨悪を眠らせないという検察の使命が果たせなくなる可能性があるわけですね。行政権力に対するメスを入れられなくなる。巨悪を眠らせない、ロッキードとかリクルートとか、そうやって頑張ってきた検察官は、キャリアの終わりになってきたら、もうこいつは延長させないでおこう、そういうことが可能になるわけです。
こういう制度をつくってしまったら、今後、検察全体の萎縮を招いて、萎縮して、巨悪を追及できなくなる。検察は萎縮する、巨悪は逆に安心して眠れるようになってしまう、これがこういう法案じゃないんですか。
森友問題でも関係者は不起訴になりました。安倍政権のもとで、官僚、霞が関は物が言えないようになっております。それが検察にまで広がれば、どうなるのか。これは本当に恐ろしいから、多くの国民の皆さんが今声を上げているんじゃないですか。
もう一つは、行政権と検察が一体化した場合、今度は不当な国策捜査が行われる危険性も出てきます。あらゆる面でブレーキがきかなくなってくる。
大臣、お聞きしますが、本法案は、そうした検察の公正さ、公正らしさ、こういう検察全体のあり方を変えてしまう危険性がある、こういう認識はおありですか。
○ 武田国務大臣 何度も申し上げるように、これもまた検察庁法改正案の話でありまして、本来ならば法務省に答えていただかなくちゃならないところでありますけれども、本当に残念なことに、本日また通告をいただけなかったということで、私の方から、いたし方なくお答えをさせていただきたい、このように思いますけれども、検察官は、権限の行使に際し、いかなる誘引や圧力にも左右されないよう、どのようなときにも、厳正公平、不偏不党を旨とし、法と証拠に基づいて適切な事件処理に努めているものと承知しており、全く御指摘は当たらないものと考えております。
なお、今般の検察庁法改正法案は、国家公務員法が適用される一般職の定年の引上げに合わせて、検察官についても定年を六十五歳まで段階的に引き上げるとともに、国家公務員法に新たに導入する役職定年制及びその特例と同様の制度の導入を行うものであります。
勤務延長や特例の判断につきましては、他の一般職の国家公務員と同様に、検察官についてもその任命権者が行うものとするにすぎず、今回の改正によって内閣が検察官人事に介入するものではなく、もともとある任命権者の人事権行使の延長の範囲内にすぎないわけであります。
○ 藤野委員 いや、それは全く違います。今、任命のことをおっしゃったけれども、任命の話じゃないんです。任命は確かに内閣です。しかし、今回問題になっているのは出口なんです。任命があって活動していて、そして定年が近づいてくるこの出口で、今は一切任命権者の介入を許していない。ここに、出口に任命権者の介入を許すというのが今回の法案なんです。全く違うというのは私が言いたい。
そして、このパネルを見ていただきたいんですけれども、結局何が変わったのか。昨年十月末までは、こういうこの二つ目の制度はないんですね。六十三から六十五に上げるだけで、そこから更に延長というのはなかったんです。
じゃ、十月末以降、何が起きたのか。十一月八日には桜を見る会が大問題になる。十二月七日には、東京地検特捜部が、あきもと司議員、カジノですね。そして、今も大問題になっております、十二月二十七日には、河井あんり議員の捜査も着手したと報道されている。そして十四日、これは私、大事だと思うんですが、安倍総理自身が桜を見る会で刑事告発をされる。こういう状況でまさに三十一日を迎えたということであります。
告発されるとどうなるかといいますと、刑事訴訟法上規定がありまして、警察は、証拠書類などを検察に送らないといけないんです。ですから、ホテルニューオータニの明細など、これは私たちが求めても、強制権限はありませんから出せませんが、検察が出してくれと言えば、入手するのは極めて容易なんですね。こういう局面に今入っている。そういうもとで、こういう定年延長の閣議決定が行われたということであります。
まさに出口の問題をわざわざこういうどたばたの中で手をつけてきたというところに、そしてこの経過に、なぜこんな法案を今、コロナのときにやろうとしているのかということが、私は透けて見えていると思います。国民の多くが、新型コロナ、耐えに耐えております。そういうときに、まさに火事場泥棒のようにこの法案をごり押しすることは絶対に許されない、このことを指摘して、質問を終わります。
―――――
○ 松本委員長 次に、藤野保史君。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
今も、国会の内外、そして全国で多くの方がこの審議を見守っていらっしゃいます。この委員会室にもその声が届いている。こういう状況で、今この審議が行われている。私たちは、立法府にある者として、この声を本当に真摯に受けとめないといけないと思います。
そして、こうした声の広がりの中で、検事総長の経験者、そうした方々からも、この法案に反対の声、意見書が上がるという状況になりました。
やはりこの法案というのは、法務委員会や予算委員会でも私は森大臣と議論してまいりましたが、改めて、森大臣、根本の問題が問われていると思うんです。現行法は二十二条で、六十三歳になったときに退官すると定めておりまして、延長を一切認めておりません。キャリアの最後で、年齢以外の要素は一切考慮されないというのが現行法なんです。
大臣にお聞きしますが、なぜ現行法は年齢以外の要素を考慮していないのか、この一点だけ。なぜ年齢以外にないのか、これだけお答えください。
○ 森国務大臣 藤野委員の御指摘のとおり、現行法上、検察官について勤務延長を認めるという規定はありませんし、認めないという規定もないんです。規定がないんです。
その規定のない理由をということでございますが、規定がないものの理由についても、当時の国会議事録を見ても、それを直接に答弁をした内容が見当たりませんでした。ですので、その規定についての理由や経過については、現時点では必ずしも明らかではございません。
ただ、規定がないときにそれをどう解釈するかということで、これまでは勤務延長制度が当たらないというふうに解釈をされてきたということでございます。
○ 藤野委員 法の支配をつかさどる法務大臣の答弁とは思えない。
要するに、検察というのは、唯一の公訴提起機関として重い職責を負っているわけです。人を罪に問うかどうかを決める唯一の権限を持つ準司法機関なんですね。巨悪を眠らせないという重い使命を持っているのが検察官。だからこそ、どんな巨悪にも屈しない、厳格な政治的中立性が必要です。だから、任命の段階、活動の段階、そして定年退職の段階、あらゆる段階でそれを担保しようということで検察庁法は定められているんです。
今回問題になっているのは、その出口、退職のキャリアの終わりの段階で、この人をもう年齢だけでやめさせるというのが現行法のそういう制度になっているわけですね。これは、年齢以外の要素をつくってしまうと、その年齢以外の要素にいろいろな恣意的解釈の余地が入ってくる、だから出口の段階では年齢以外は一切考慮しない、こういう制度になっているわけです。
大臣にお聞きしますが、ここに特例を設けること自体が出口における恣意的解釈の余地をつくる、こういう認識はありますか。
○ 森国務大臣 今藤野委員が御指摘なさった検察官の準司法官的性格、検察官の独立性、これについては、検察官が意に反して罷免されない、やめさせられることがないという、一般の国家公務員よりも強い身分保障を得ていることによって担保されております。
諸外国においても、行政権に属する者が検察官の任命を行っている例がありますし、勤務延長を行っている例もあると承知しております。
○ 藤野委員 今大臣がおっしゃった、意に反してやめさせられることがないというのは二十五条に確かにあります。それは職務執行中の話であって、その二十五条自体が、前三条以外の場合と書いてあるわけです。その前三条の中に、まさに今回の二十二条、定年が入っているわけですね。ですから、もちろんそうですよ、大事です。意に反してやめさせられない、大事です。しかし、前三条以外の場面でそういうことも当然担保しながらも、今回問題になっているのは、それ以外の場合のまさに定年という、この出口の部分なんです。
一般の公務員の方々は、任命とそして出口でも内閣が関与することはあり得ると思います。そういう制度もある。しかし、検察は、出口では一切の年齢以外の介入の余地を残していないんです。
ですから、大臣、今回、この出口のところで特例を設けるということ自体が恣意的介入の余地をつくり出す、そういう認識はありますか。もう一回お答えください。
○ 森国務大臣 二十二条のことでございますけれども、その二十二条、前三条の中の二十二条については、勤務延長については規定がございません。ですので、私どもは、その二十二条の特例というのは、定年の年齢と退職時期の二点であるというふうに考えました。そして、定年により退職するという規範そのものは国家公務員である検察も一般の国家公務員と変わらない、そして、勤務延長をする趣旨というのも検察官にひとしく及ぶというふうに考えました。
今述べたように、海外でも検察官の勤務延長をしている例がございます。
○ 藤野委員 私の質問に答えないわけですね。海外はどうとかではなくて、日本は、日本の戦前の人権侵害を踏まえて検察官の独立性というのを高めているわけです。
なぜ高めているか。それは、戦前、治安維持法などの運用は、特高警察だけでなく検察も担ったからであります。車の両輪として、そうした役割を刑事司法に携わる人が果たしてしまった。これに対する反省から、戦後の憲法は司法の独立に極めて重い役割を果たし、そして、検察官に準司法官としての、裁判官に準ずる身分保障を与えたわけであります。
ですから、外国がどうとかおっしゃいましたけれども、全く違う。日本の場合は、入り口の任命のところも、そして職務執行中のところも、そして……(発言する者あり)委員長、ちょっと、委員長、注意してください。
○ 松本委員長 静粛にしてください。
○ 藤野委員 ですから、大臣は今外国のことをおっしゃいましたけれども、私は、なぜ日本の現行法が出口の退職のときに、退官のときに年齢以外の要素をつくっていないのか。これは非常に重い意味があるんです。準司法官という立場を、厳格な政治的中立性をこの場面でも貫こうという、ここに今回特例をつくっている、こういうことなんですね。
大臣、お聞きしますけれども、何か、人事院規則に準じて、人事院規則に準じてとおっしゃるんですが、要件をつければいいという問題じゃないと思うんですね。今言ったように、例外があること自体が問題であって、その例外の要件をどうこうするかというのはまた別の問題であるし、これをつくったらつくったで、じゃ、その要件に当てはまるかどうかを誰が判断するのか。この点、改正案は、人事院の承認というのを、内閣が定めるというふうに読みかえるわけです。つまり、定年延長の判断権者が人事院から内閣にかわる。
大臣、お聞きしますが、どんな詳細な要件を定めても、この法案で人事院の承認が外れる以上、その要件に該当するかどうかというのは人事院ではなくて内閣が判断する。結局、内閣の恣意的な判断の余地が生まれるんじゃないですか。
○ 森国務大臣 そもそも、申し上げますと、検察官については、人事権者が内閣又は法務大臣なんです。そもそも、検察官について、法律上、その人事権者が内閣、法務大臣なので、改正前後で、今、かわっているとおっしゃいましたが、かわることはありません。これは、検察官の準司法官的性格、検察官の独立性を保持しつつも、検察が行政に属しておりまして、国民主権の見地から、公務員である検察官に民主的な統制を及ぼすために、行政権が検察官の人事を行うというふうにされたものでございます。
そして、内閣で定める事由については、人事院の新しい規則に準じて行ってまいります。内閣で定める事由の準則に基づいて勤務延長をするということにしても、検察官は意に反してやめさせることはないということは変わりありませんので、身分上の不利益処分を行うものではなく、検察官の独立性は害しませんし、三権分立にも反しません。
○ 藤野委員 いや、もう全く私の質問に答えていないわけです。言いたいことだけ言っている。これじゃ、国会の質疑にならないですよ。
私は、今回の問題というのがなぜそもそも起きたのかということを改めて考える必要があると思うんです。なぜこんな解釈変更を行い、その解釈が破綻したら、今度は法案でそれを合法化しようとしているということでありますが、黒川弘務東京高検検事長の定年延長閣議決定が一月三十一日であります。この十月末の段階までは、この延長、定年を六十三から六十五にするというのはありました、六十五に引き上げるというのは。これは別に私たちも反対しておりません。ところが、この十月末以降、まさにその六十五以上を更に延長できる、特別の検察官に、これは十月末以降の話なんです。
十月末以降、何が起きたかということで、この表を出させていただいております。桜を見る会が問題になり、カジノの問題で衆議院議員が逮捕され、そして今、河井議員の問題もどんどんと起こってくる、安倍総理自身が桜を見る会で刑事告発される、そういう状況の中で、今回、黒川弘務東京高検検事長の誕生日のわずか一週間前にこの閣議決定が行われた。
先ほどの後藤委員への答弁で、森大臣自身の認識としても、十月末以降はこの法案に関するような事例はなかったし、十月末以降は黒川氏の件だけだというふうに答弁されました。
結局、大臣、この黒川氏の件が全ての始まりである、そういうことなんじゃないですか。
○ 森国務大臣 検察庁においても、優秀な人材の継続的確保、人材育成、さらに知識経験の伝承といった長期的な人事政策は重要であります。特に少子高齢化に対応するため、高齢期の職員を最大限に活用する必要がありますので、検察官の定年制度及びこれに伴う諸制度の取扱いは近年の課題でありました。
そして、十月末に内閣法制局第二部長の審査は終了しましたが、法律案の提出には至っておりませんでしたので、通常国会の提出に向けて時間がある中で、定年制度やこれに伴う諸制度というその近年の課題について、検察官への適用等を改めて検討したわけでございます。特に勤務延長制度と再任用の制度について検討を行ってまいりました。
○ 藤野委員 今、若手の育成とかおっしゃいましたけれども、そういうことはもう十月末の段階で議論が済んでいるんです。
検察の場合は一斉に退官することもない、検察は一斉に異動することもない、そもそも降任というものが概念できないということで、そういう、誕生日でやめることはわかっていますから、ある意味それを見越して、誕生日でこうなるなということがわかるわけです。
ですから、こういう、いわゆる勤務延長制度、一般の公務員制度とは違うね、要らないねということが十月末の段階で結論が出ていたわけですね。それが、急にことしになってこういう経過の中で出てきたということであります。
これが今後このままになったらどうなるかということなんですが、大臣、検察官というのは人を罪に問うかどうかを決定できる、問うこともできる、問わないこともできる唯一の権限を持っております。これがもし、時の政権の、いわゆる幹部人事が支配下に置かれれば、まずは、巨悪を眠らせるなという検察の使命が果たせなくなる。そうやって頑張ってきた、巨悪に対して立ち向かってきた検察官は、出口のキャリアが近づいたら、もうその人は延長させませんよ、そういうことができる制度になってしまうんですね。それを見た検察官はどうなるか。検察官全体が萎縮をしていく。逆に、巨悪は安心して眠るようになる。大臣、こういう制度になるんじゃないですか。
○ 森国務大臣 そもそも、藤野委員がおっしゃったとおり、検察は起訴権を独占しております。そのため強大な権力があり、そこに民主的統制を及ぼすため、行政権が人事権を持っているわけでございます。
しかし、私は、検察の人事については、時の政権に都合のいい者を選ぶということがあってはならないと思っています。検察の人事は、国民にとって検察権を適正に行使をできるかどうかという観点を持って選ばれるものであると思います。
その上で、検察は、権限の行使に際し、いかなる誘引や圧力にも左右されないよう、これまでも、今も、厳正公平、不偏不党を旨として、法と証拠にのみ基づいて適切な事件処理に努めているものと承知をしております。
○ 藤野委員 幾らそういうことをおっしゃっても、今回の法案で内閣の介入の余地を出口の段階で新たにつくり出す、このことは、検察全体をゆがめ、司法の独立、ひいては三権分立、これを侵すものだ、法の支配を人の支配にしてしまうものだというふうに思います。
今、コロナに集中すべきこういう局面で、火事場泥棒的にこの法案をごり押しするというのは絶対に許されない、このことを指摘して、質問を終わります。
会議録 PDF
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質疑資料 PDF
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しんぶん赤旗 2020年5月16日 1面記事 PDF
作成者 : fujinoyasufumi