少年法改正案の採決、入管法改正案の審議入り
- 会議録 -
○藤野委員 私は、日本共産党を代表して、少年法一部改正案に反対の討論を行います。
本案の最大の問題は、立法事実を欠くことです。少年事件は大幅に減少し、再犯率も抑えられています。政府・与党も少年法が有効に機能していることを認めています。今求められているのは、少年法を更に有効に機能させるために、少年処遇に関わる人や現場への支援を抜本的に強化することです。
ところが、本案は、十八歳、十九歳の少年を特定少年と位置づけ、成人と同様に刑事法の応報原理の対象とするものです。これは、少年の健全育成という保護原理に基づく基本理念を後退させる重大な改悪です。
与党推薦の参考人から、言葉は同じ保護処分だが、刑罰に近づくとの説明があり、元家裁調査官の参考人からも、刑事法の概念が持ち込まれることで保護機能が後退することは明らかと指摘されました。少年法の理念と相入れない応報原理を持ち込むことは、特定少年はもとより、少年法の在り方全体をゆがめるものであり、断じて認めるわけにはいきません。
本案は、原則逆送の範囲を強盗など短期一年以上の罪に拡大しますが、現行の運用では不起訴や執行猶予になる可能性が高く、多くの特定少年から、真摯に反省する機会が奪われます。
ネット上の誹謗中傷が原因で自殺する例も相次いでおり、実名推知報道を解禁するリスクは極めて大きいものです。少年自身、さらには家族や学校現場などに及ぼす影響は甚大です。絶対に解禁すべきではありません。
資格制限は、少年の立ち直りに重大な影響を与えます。ところが、法務省は、自ら法案を提出しておきながら、制限される資格の全体像を把握しておらず、無責任の極みです。
コロナ禍の下、虞犯の原因となる虐待や性暴力などが増加しています。有効な対策を整備しないまま、最後のセーフティーネットとなっている虞犯規定をなくす政府の姿勢は許されません。
日本の未来を支える少年に関わる重大な法案を不十分な審議のまま採決することは認められない、このことを強く指摘して、討論を終わります。
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- 会議録 -
○藤野保史君 私は、日本共産党を代表して、入管法等一部改正案について質問します。(拍手)
政府は、外国人政策について、移民政策は取らないという建前を取りながら、実際には、経済界が求める安価な労働力、雇用の調整弁として外国人の受入れを拡大するという、極めて欺瞞的な姿勢を取り続けてきました。この下で、外国人の基本的人権を尊重した雇用、教育、社会保障などの総合的な支援制度は整備されず、不当な労働条件の押しつけなど、人権侵害が横行しています。
入管法についても、退去強制手続について、制定以来、抜本的な改正は一度も行われず、在留資格を失った外国人を全て収容する全件収容主義の下、まともな医療すら受けられない長期収容が常態化し、死亡事件も相次いでいます。今年三月にも、名古屋入管で、三十代のスリランカ人女性が死亡する痛ましい事件が起きています。 今求められているのは、この現状を根本的に改め、外国人の基本的人権の尊重と国際人権基準に基づいた入管制度に転換することです。
ところが、本案は、退去強制手続全体において、入管庁の裁量拡大と厳罰化を進めるものです。これは、外国人の人権侵害を更に深刻化し、国際基準から逆行するものであり、断じて認めることはできません。
本案は、長期収容など一定の要件を満たす外国人について、入管施設外での生活を認める監理措置制度を設けるとしています。
政府は収容の代替措置と位置づけていますが、あくまでも入管庁が相当と認めるときにしか認められず、現行の仮放免や在留特別許可の極めて限定的な運用を見ても、長期収容の改善が進む保証はどこにもありません。 また、監理人には、外国人への監督義務、政府への届出義務が課され、違反すれば罰則の対象となります。これは、支援団体や弁護人の立場とは到底両立し難いものです。
今やるべきことは、日弁連などが繰り返し求めている、収容の要否などへの裁判所の関与、収容期間の上限設定など、抜本的な改革を行うことではありませんか。
本案は、難民認定申請中は強制送還しないというルールを改悪し、三回目の申請以降は強制送還できるとしています。
しかし、そもそも、日本の難民認定率が〇・四%と先進国の中でも極めて低いことこそ、複数申請の根本原因ではありませんか。
二〇一一年から一八年に難民認定を受けた二百十二人のうち、約一割に当たる十九人が、三回目の申請中に訴訟で勝利して難民認定を受けています。この事実の重みをどう考えているのですか。
本案は、難民に準じる外国人を補完的保護対象者と認定するとしていますが、その範囲も極めて限定的です。 極端に狭い日本の難民の定義を国際水準に改める、独立した第三者機関が難民認定の審査をする、こうした抜本的な改革こそ求められているのではありませんか。
本案が国外退去を拒んだ場合の罰則を設けていることは、極めて重大です。
実際には、退去強制令書を受けた者のうち、九割を超える外国人が国外退去に応じています。残っているのは、家族がいる人や、母国で迫害を受けている人など、そもそも帰すべきではない人たちなのです。親の事情で在留資格がないまま日本で生まれ育った子供に対しても、退去強制令書が出されているのが現実です。こうした子供にも罰則を適用するのですか。
また、非人道的な弾圧が続いているミャンマーやクルドなどから避難し、日本で難民申請している人たちもいます。本案は、本来保護されるべき外国人の強制送還を増加させるものですか。
本案について、国連人権理事会特別報告者らは、今年三月、ノン・ルフールマン原則違反の懸念など、国際的な人権水準に達しておらず、再検討を強く求めるという共同書簡を日本政府に提出しています。この国連人権理事会の懸念に真摯に向き合うべきではありませんか。
外国人との真の共生社会の実現に向けて、入管制度の根本的改革を強く求めて、質問を終わります。(拍手) 〔国務大臣上川陽子君登壇〕
○国務大臣(上川陽子君) 藤野保史議員にお答え申し上げます。
まず、入管制度における外国人の基本的人権の尊重についてお尋ねがありました。
出入国在留管理行政上、送還忌避や長期収容の解消は重大な課題であり、本法律案は、現行の退去強制手続を一層適切かつ実効的なものとし、これらの課題に対応するためのものです。
本法律案は、外国人の人権にも十分に配慮した適正なものであると考えています。
次に、監理措置制度の導入についてお尋ねがありました。
監理措置に付するか否かの判断については、対象者の収容等を執行する立場の者ではなく、上級の入国審査官である主任審査官において審査することとしています。
また、主任審査官は、監理措置決定をしないときは、当該外国人に書面でその理由を通知することとし、判断の透明性を高めています。
さらに、監理措置に付されなかった場合に、その判断に不服があれば、行政訴訟を提起し、事後の司法審査を受けることも可能です。
これらの仕組みにより、監理措置の適正な運用が担保され、長期収容の改善が進むものと考えます。
次に、監理人の義務と支援団体等の立場との関係についてお尋ねがありました。
監理措置に付された者による逃亡等の条件違反行為を未然に適切に防止するため、監理人は、外国人の生活状況を把握しつつ、指導監督するとともに、必要な事項を届け出なければならないとしています。
支援団体や弁護士としての立場の重要性は認識していますが、監理措置制度を円滑に運用するため、こうした監理人の役割を十分に御理解いただいた上で監理人になっていただけるよう、丁寧に説明を尽くしてまいります。
次に、収容の要否等への裁判所の関与や、収容期間の上限についてお尋ねがありました。
収容するか、監理措置に付すかの判断については、対象者の収容等を執行する立場の者ではなく、上級の入国審査官である主任審査官において審査することとしています。
その判断に不服があれば、行政訴訟を提起し、事後の司法審査を受けることができます。
こうした事前事後の仕組みにより、収容の要否の判断について、十分に適正性が確保されており、これらとは別に裁判所の関与は必要はないと判断しました。
また、収容期間に上限を設けた場合、その上限まで送還を忌避し続ければ、逃亡のおそれが大きい者も含め全員の収容を解かざるを得ず、確実、迅速な送還の実現が不可能となります。
そのため、収容期間の上限は設けず、収容の長期化の解消、防止については、収容に代わる選択肢としての監理措置の創設とともに、在留が認められない者の迅速な送還等により、図ることとしました。
次に、我が国の難民認定率についてお尋ねがありました。
大量の難民、避難民を生じさせる国との地理的要因や難民申請がなされる状況などは各国それぞれ異なっており、難民認定数や認定率により単純に我が国と他国とを比較することは相当ではありません。
我が国では、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を適切に認定しています。
また、現行法上、難民認定申請中は一律に送還が停止されることから、送還忌避者の中には、送還の回避を目的として難民認定申請を繰り返す者が相当数存在します。
このような状況は、在留管理、送還業務を適切に遂行する上で大きな障害となっていることから、本法律案により、送還停止効に一定の例外を設けることとしています。
次に、難民不認定処分を受けた後、訴訟を経て認定される事案があることについてお尋ねがありました。
本法律案では、二度の難民不認定処分又は補完的保護対象者の不認定処分を受け、いずれの処分についても行政上確定した者については、送還停止効の例外とすることとしています。
議員御指摘の数値については、にわかに確認することができませんが、三回目以降の申請者であっても、難民又は補完的保護対象者の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した場合は、送還が停止されることとしています。
次に、補完的保護対象者の範囲についてお尋ねがありました。
本法律案では、補完的保護対象者は、難民条約における難民の要件のうち、迫害の理由が人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見であること以外の全ての要件を満たす者をいいます。
このような定義とすることで、理由を限定することなく、帰国した場合に難民条約上の迫害を受けるおそれのある者は補完的保護対象者と認定され得ることとなり、対象範囲が限定的との御指摘は当たらないと考えます。 補完的保護対象者と認定できない場合であっても、人道的な配慮を理由に在留を認めることが相当と判断される場合には、在留特別許可をすることなどにより、適切に保護することとなります。
次に、難民の定義と難民認定の審査についてお尋ねがありました。
我が国では、難民条約の定義に基づき、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民と認定すべき者を認定しています。
難民認定の審査に関しては、難民不認定処分に対する不服申立て手続において、外部の有識者を審理員とする難民審査参与員制度を導入しています。
また、UNHCR、国際連合難民高等弁務官事務所等の協力を得て、研修等を通じて難民調査官の専門性や調査能力の向上を図るなどしており、難民認定の判断における客観性、公平性、中立性を確保しています。
次に、子供に対する退去命令の罰則の適用についてお尋ねがありました。
犯罪の成否については、捜査機関において収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であると考えています。
本法律案では、子供であっても在留特別許可を申請し、許可がされれば、適法に本邦に在留することができ、その判断に当たっては、日本で生まれ育ったという事情も適切に考慮されることとなります。
また、退去の命令の対象者は限定されています。
御指摘のような子供に対し、退去の命令が発出されることは基本的には想定されないと考えています。
次に、保護すべき外国人についてお尋ねがありました。
難民認定申請がなされた場合、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民に該当するときには難民と認定し、難民とは認定できない場合であっても、人道上の配慮が必要と認められる場合には、我が国への在留を許可しているところです。
本法律案では、難民条約上の五つの理由によらずとも迫害を受けるおそれがあり、かつそれ以外の難民の要件を全て満たすときは、難民に準じて補完的保護対象者と認定することとしています。
難民認定制度及び補完的保護対象者認定制度を適切に運用し、今後とも真に庇護を要する者を確実に保護してまいります。
最後に、特別報告者らが共同書簡で示した懸念についてお尋ねがありました。
出入国在留管理行政上、送還忌避や長期収容の解消は重要な課題であり、本法律案は、現行の退去強制手続を一層適切かつ実効的なものとし、これらの課題に対応するためのものです。
本法律案は、外国人の人権にも十分に配慮した適正なもので、我が国が締結している人権諸条約に抵触するものではないと考えます。
御指摘の共同書簡については、事前に説明をする機会をいただいていれば、法案の内容やその適正性について正確に理解いただけたものと考えております。
今後、改正法案の内容やその適正性について、十分に理解していただけるよう、丁寧に説明を尽くしてまいります。(拍手)
○国務大臣(茂木敏充君) 国連人権理事会の特別報告者等からの書簡についてお尋ねがありました。
我が国としては、国際人権諸条約の締結国として、条約が定める義務を誠実に履行しており、我が国の制度がそれに違反しているとは考えておりません。今国会に提出された入管法の改正案は、現行法の退去強制手続を一層適切かつ実効的なものにすることなどを目的とするものと認識をいたしております。(拍手)
作成者 : fujinoyasufumi