名古屋入管スリランカ人女性死亡事件を追及
- 会議録 -
○義家委員長 次に、藤野保史君。
○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
私も、名古屋入管、スリランカ人女性の死亡事件についてお聞きしたいと思います。
そして、先ほど来お話が出ておりますが、山花委員から大変貴重な指摘をいただきました。私も議事録を読ませていただきましたけれども、やはりこれは、今、階委員から法務大臣への姿勢を問う質問がありました。同時に、私もこの議事録を読んで思ったんですが、やはりこれは立法府の矜持が問われているというふうに思います。午前中、伊藤委員からもこの問題で質問がありました。委員長からも、度々、この問題の重要性が指摘をされております。
まさに、立法府として、与野党を超えて、これは必要なんだということの判断をやはりすべきだと思うんですね。なぜそれができないのか。当時の質問者、これは与野党を問わないわけでありますし、もっと言えば、このときは矯正局長とか、局長さんも御覧になっているんです。法案審議とおっしゃるんですけれども、法案審議をするというのであれば、それに関わる者はすべからくこれを見るべきだし、それほど大事な問題だというふうに指摘をしたいと思います。引き続き、この問題は与野党協議になっておりますので、私も強く開示を求めていきたいと思います。
その上で、今日は、この女性ですね、この方は、同居していたスリランカ人男性から暴力を受けていたということが明らかになっております。DV被害者なんですね。このことは中間報告からもうかがえます。
配付資料の一を見ていただければ、中間報告の三ページ、左側では、恋人に家を追い出されてということを、警察に出頭した経緯として入国警備官に話しているということが紹介されていますし、右側の二十ページには、仮放免申請の際に、その理由書の中に、暴力を受けている旨、そして、スリランカに帰ったらあなたに罰を与えるなどと書かれた手紙が届いたためスリランカに帰国したくない旨などが書かれている。暴力という言葉が出てくるわけであります。
配付資料の二を見ていただきますと、これは報道ではよりリアルに報じられております。毎日新聞のオンラインの四月二十二日、これは、Aさんが先ほど言った仮放免申請の下書きに書いたものが報道されているんですね。 黄色く塗っているところですが、私、彼氏から長い間殴られた、犬みたいに家の中で怖くて待っていました。ビザがなく、怖くて仕事を辞めていました。彼に家賃と食べ物のお金半分上げる、できなかったから、私も要らないと言われたと。
もう一つは、入管まで私に手紙来ました。彼氏すごい怒るとき厳しいになります。私がスリランカで探して罰やることと、あと、スリランカにいる彼氏のファミリーのみんな、私帰るまで復讐やるために待っていること書いてあった。
こういうことなんですね。つまり、この方がDV被害者であることはもう明らかだと思います。 そして、DV被害者に対して法務省、入管庁はどう対応するかというのは、これは二〇二〇年度版の白書、出入国在留管理白書を読ませていただいたんですが、ここの六十九ページにこう書いてあるんですね。
二〇〇八年一月に、ちょっと略しますけれども、DV防止法の一部改正が施行され、これに合わせて法務省を含む関係府省で作成した配偶者からの防止及び被害者の保護等のための施策に関する基本方針を踏まえ、出入国在留管理庁は、〇八年七月、独自に措置要領を制定しており、DV被害者を認知した場合の適切な対応を求めてきたとあります。 入管庁、確認しますが、こうした措置要領を出されて対応してきたわけですね。
○松本政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のDV措置要領というものを入管庁として作成をし、それに基づく運用をしておるところでございます。
○藤野委員 実績をお聞きしたいんですが、入管庁にお聞きしますが、名古屋局において、二〇一七年、一八年、一九年の間、こうやってこの措置要領の下で把握された外国人DV被害者の数を答弁ください。
○松本政府参考人 お答えいたします。
名古屋出入国在留管理局におけるDV事案の認知被害者は、二〇一七年で二十二人、二〇一八年が二十五人、二〇一九年が二十二人でございます。
○藤野委員 今答弁していただいたのは、配付資料の三の、これは白書の数字であります。
続いて、配付資料四を御覧いただきたいんですが、これが、今答弁ありました、当時ですけれども、二〇〇八年七月、法務省入管局が策定した、いわゆるDV被害、DV事案に係る措置要領というものであります。
これは、「基本方針」というのが2のところにあると思うんですが、「基本方針」には、「配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であり、人道的観点からも迅速・的確な対応が求められていることにかんがみ、DV被害者の保護を旨とし、在留審査又は」、ここが大事なんです、「退去強制手続において、DV被害者本人の意思及び立場に十分配慮しながら、個々の事情を勘案して、人道上適切に対応しなければならない。」、こう書いてある。退去強制手続なんです。まさに今回の手続なんですね。
一枚めくっていただいて、「共通事項」というのがあります。ここの一のところに、「在留審査又は退去強制手続においてDV被害者又は」、ここも重要なんです、「DV被害者と思料される外国人を認知したときは、DV事案の内容等について事情聴取を行うなどし、その事実関係を可能な限り明確にする。」、そして、その下のところには、「事情聴取は、DV被害者等の母国語を解する職員が行い、又はDV被害者等の母国語の通訳を介して行うとともに、柔和な態度で不安感を払拭するよう留意するものとする。」とあります。
入管庁にお聞きしますが、AさんはDV被害者又はDV被害者と思料される外国人なんですね。この措置要領にあるとおり、入管庁として、事情聴取、これは行ったのか。例えば、違反調査等の際に、母国語の通訳、これはついていたんですか。
○松本政府参考人 お答えいたします。
これまでの調査で把握している限りでございますが、まず、亡くなられた方が警察から入管に引き渡された直後に行いました入国警備官による違反調査におきましては、シンハラ語の通訳がついておりました。
その後、御本人から一月四日に仮放免許可申請がなされまして、その中に御指摘の、スリランカ人の彼氏から暴力を受けた旨の内容が記載されておりましたが、その頃以降に入国警備官から御本人と面接するなどした際には、通訳という意味におきましては、通訳人をつけて話を聞くということはなかった状況でございます。
さらに、御質問の、亡くなるまでの一連の経過を通じて、御本人について、入管当局として、DV被害者に当たるものとして特別な対応を取ったという事実は認められていない状況でございます。
○藤野委員 通訳がついたのは一番初めのときだけということでありまして、それ以降は特段の対応を取ったという事実は認められていない。これは四月二十日の池田議員の質問にもそう答弁されているんですけれども、法務省、そして名古屋局でも、実際にこの措置要領に基づいて毎年二十人以上の方をDV被害者として対応してきているわけであります。この通達の中にも、様々な形でそういう手続が準備されている。
紹介したいんですが、この措置要領の四ページのところにあるんですけれども、退去強制手続、まさに今回の手続であります。ここの「身柄の措置」というところに、「DV被害者である容疑者に対して退去強制手続を進める場合は、当該容疑者が逃亡又は証拠の隠滅を図るおそれがある等、仮放免することが適当でないとき、又はその他の理由で仮放免により難い場合を除き、仮放免(即日仮放免を含む。)した上で所定の手続を進めるものとする。」とあるんです。まさに、退去強制手続を進める場合でも、仮放免した上で当該手続を進めろという、措置要領にそう書いてあるわけですね。何でこういう手続がされなかったんですか。
○松本政府参考人 委員御指摘の視点から、あるいは亡くなられた方の健康状態を踏まえて、なぜ仮放免をしなかったのか、その判断が適切であったのか否かというところを現在調査しているところでございます。
○藤野委員 いや、今、答弁、その前にしましたけれども、要するに、DV被害者としては対応していない、特段の対応をしていないと。これが私はそもそもおかしいと思うんです。自分たちが決めたルールで、仮放免して退去強制手続をやりなさいと言っているわけですね。実際、そういう実績もある。ところが、この事案ではそういう運用をしていないわけです。なぜなんですか。
○松本政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の視点で仮放免をしなかったという評価につきましては、まさに今調査をしているところでございます。
ただ、我々の現時点で把握をしている限りでは、委員御指摘の、DV被害者という認識で何らかの対応を取っていたという事実は現時点では認められないというところでございます。
○藤野委員 それ自身がこの要綱に反しているんですよ。だって、ちゃんと調べろと書いてある。例えば三ページ、まあ一ページでもいいですが、幾つもあるんです、これ。あらゆる段階できめ細かい対応を求めているんですね。
例えば、一ページの真ん中あたりですけれども、「その手続においては、DV被害者が心身共に過酷な状況に置かれていたことに十分配慮し、DV被害者の心身の状況等に応じてきめ細かい対応を行うものとする」と。そして、地方局等は、警察、婦人相談所、NGO団体等と連携を図り、そして通訳人の確保とかについて相互に協力するよう努めるものとするとかですね。要するに、やはりDV被害というのは大変深刻だ、こういう認識の下に、きめ細かい対応というのを自分たちで書いているんですね。
ほかにも、例えば三ページの下のところには、立証資料等の提出が不十分なまま許可申請等があったときはその旨を付記した上で本省に請訓する、これもあります。つまり、DVというのは加害者が協力しないとなかなか明らかにならないケースもあるわけですね、ほとんどと言ってもいい。だから、そういう立証資料の提出が不十分な場合であっても本省と連携しろということが書かれているわけですよ。
ですから、DV被害者との認識がなかったということそのものが、この事案で問題になるんですよ。そういう認識はあるんですか。
○松本政府参考人 お答えいたします。
最初の仮放免申請で、亡くなられた方が先ほども申し上げましたような被害を訴えられていたという事実を前提として、委員御指摘の指針、あるいは、繰り返し申しておりますが、亡くなられた方の健康状態等を踏まえて、なぜ仮放免をしなかったのか、収容を継続したのかというところにつきましては、しっかりと検証しないといけないと思っているところでございます。
○藤野委員 検証というより、理事会でもいろいろ、容体が悪くなられてからのことは仮放免について問題になっていますが、これは要するに、法務省自身が定めているルールとの関係で、私は聞いているんです。それについては、先ほど特段の対応をしていないという答弁、もう結論が出ているみたいなことを言うわけですよ。それは違うだろうと。
中間報告によると、二〇二〇年の八月十九日には逮捕して、翌二十日には収容令書を発付して、翌二十一日には退去強制令書で収容しているんですよ。ほとんど、DV被害者であるということをきめ細かな対応という形でやっている形跡が、中間報告から全く見られない。
元々、私は、この段階でこの人は、退去強制手続に乗せるにしろ、乗せるべきじゃないとは思うけれども、乗せるにしろ、仮放免すべきだったと。あなたたちが決めたルールに書いているじゃないですか。なぜそうしなかったんですか。
○松本政府参考人 お答えいたします。
名古屋入管局が、彼氏から暴力的な行為を受けているという点を認識したタイミング、さらには、それを認識した上で、委員御指摘のようなDV案件という形で対応を取っていないその理由、あるいは、繰り返しになりますが、健康状態等を踏まえて、あるいはコロナ禍での対応という状況の中で、仮放免をしなかった理由、相当性というところについて、今調査をしているところでございます。
○藤野委員 全く答えていないです。
じゃ、大臣にお聞きします。
要するに、法務省自身が出したこの措置要領が実践されていないわけですよ。この措置要領からすれば、私は、仮に退去強制手続に乗ったとしても、仮放免されるべきだったと思うんです。大臣、そう思いませんか。
○上川国務大臣 今のような、状況がどうだったのかも含めて調査を更に継続しているということでございますので、第三者の目線もしっかりと踏まえて、この点につきましても、先ほど来の答弁のとおり、しっかりと対応すべきというふうに考えます。
○藤野委員 いやもう、本当に人ごとというか、自分たちが作って、かつ運用もしているわけです。毎年二十人以上の方がこうやって保護されている、白書に出ているわけです。これは私、評価したいと思うんです。それがなぜこの事案で適用されなかったのか、幾ら聞いても分からない。その結果として命が失われているわけです。この重みが大臣の答弁から出てこないというのは極めて残念です。
これは大臣、今後明らかになると思いますが、この自ら定めたルールが守られなかった、その結果、人一人の命が失われた。少なくとも、この責任について、大臣はどのようにお考えですか。
○上川国務大臣 今まさに調査チームがこの点につきましても調査をしているということでございます。今の委員の御指摘については、これは、この委員会の中での御審議も含めて、重く受け止めさせていただくところでございます。
今まさに調査をしているということでありますので、その調査結果、最終的な調査結果、しっかりとまとめ上げる、このミッションをしっかりと達成してまいりたいというふうに思っております。
○藤野委員 配付資料の五を御覧いただきたいと思うんです。
これは、Aさんと面会を重ねていた真野明美さんから御提供いただいた、亡くなられたウィシュマさん御自身が書いた手紙やイラストであります。中間報告でも紹介しているのが一月二十七日の手紙でありまして、これが配付資料の五であります。
黄色く塗っているところを紹介しますと、「まのさん。わたしの びょうき ぜんぶ おわりに して ちゃんと テストも やって くすりも もらって ここで びょうき おわりに するように がんばって げんきに まのさんの うちに きます。まのさんに もんだ」、問題だと思いますが、「もんだ あげたくない から」、こういうものなんですね。
一枚めくっていただきまして、配付資料の六は、これは中間報告では紹介していないんですが、同じ年の一月二十日の手紙であります。
左の上の方に、「あなた かいた の てがみ みた。わたし うれしい なりました。シンハラご がんばって かいて あった。きれいです。」。
これは、支援者の真野さんが、この亡くなられた方の母国語であるシンハラ語で、収容されている彼女に手紙を出された、そのことへのお礼なんです。その下にはシンハラ語でいろいろ書かれている。
右の方には、「まのさん きものう」とあります。「きものう」と日本語で書いてあって、ローマ字で「(kimono)」と書いてある、そして英語で「Japanese Traditional dress」。「きものう すき ですか。わたし 一かい も きものう を dress して ない。いっしょうに きものう を dressing して 二人 で しゃしん(photo) を やりたい です。」
ちょっと下の方に行きますけれども、「まのさんの おたんじょうび の とき 十一がつ二十三にち(on your birthday) きものう を いっしょうに して いる みたい です。できればね…」、こういう手紙なんです。
そして、配付資料の七ですけれども、これがその手紙に添えられていた、彼女自身が描いたイラストであります。恐らく彼女が着物を着ている。
本当に、こういう方だったんだということがよく分かります。
配付資料六に戻っていただいて、下の方のやつですけれども、こう書いてあるんですね。
「ほんとう に まのさんと いっしょう に いろいろ やる と おもって いる ときも ここる いたい おわり に なります。」、多分、心が痛いのが終わりになりますと言いたかったんだと思うんですね。「まのさん ありがとうございます。」と書いてあります。
そして、その下に、「わたしの paintings すてないでね… まのさん… わたし きたら みる できるね…」、こう書いてあります。一緒に着物を着て、このイラストを一緒に見ることを願っていたけれども、その願いはかなわなかった。 大臣、こういう方が仮放免されずに死に至ったと。入管庁が自ら作ったルールを守っていたら、私は、こういう結果にならなかったと。 大臣、遺憾というふうにこの間、答弁されております。私は遺憾では済まないと思うんですね。私は心からおわびすべきじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 私は、この方の死亡が私どもの施設であったということについて、命を預かる施設でございますので、大変重く受け止めさせていただきまして、この事案につきましては特に早い段階から調査をするよう指示をし、そして、第三者の目線もしっかりと入れながら、特に体調が極めて厳しい状況まで至ってしまったということ、その間、医療ということ、また、外の病院も含めまして、どういう状況なのかということを調査をしっかりとするということに力を入れるようにと指示をしてきたところでございます。
私、遺憾という言葉を発したつもりはございません。大変重く受け止めて、命に関わること、そして、亡くなられたということについては大変重く受け止めさせていただいていると申し上げてきたところでございます。 亡くなられた方、そしてまた、遺族の方に対しましても、日本の中でこうした状況になったということについて、どんなに切ない苦しい思いをしていらっしゃるのかということを考えると、私自身も胸がいっぱいになります。心からのお悔やみとともに、二度とこうした事態にならないようにしていくためのしっかりとした調査を踏まえ、改善に向けて尽くしていくということが極めて大事であるということであると同時に、真相を究明して、御遺族の方にもお伝えするということ、このことは極めて大事なことだというふうに思っておりますので、その点につきましてもしっかりと調査を尽くしていくということが大切というふうに考えております。
○藤野委員 時間が来ましたけれども、要するに、自らが作ったDV事案に関するルール、これも守れていなかったのではないか。
今日、ちょっとできませんでしたけれども、配付資料でつけていたのは、仮放免の運用方針もいまだに黒塗りを外さないんですね。どんな仮放免のルールを作っていたのかは徹底的に秘匿する、こういう入管庁に更なる裁量権限と罰則というものを与える、こういう改正案、これは絶対認められない、このことを強く述べて、質問を終わります。
作成者 : fujinoyasufumi