原子力特別委員会 原発構内での新型コロナ対策ついて質問
原子力特別委員会が行われました。
3000人以上が働く原発構内(3密)が新型コロナのクラスター化した場合の対応について質問しました。
経産省の答弁によると、いま福井県の原発では、美浜原発:約3000名、高浜原発:約4500名、大飯原発:約1800名(仮に今後定期検査が再開したら、約1800名増員)が働いています。
このうち、本年3月末時点での福井県外の居住者の割合について、政府は、美浜原発:約4割、高浜原発:約4割、大飯原発:約5割だということです。
福井県における新型コロナに対応可能な病床数は、5月8日時点で131床。
福井県内の宿泊療養、5月8日時点で115室を確保しているといいますが、「具体的にクラスターが発生したらどうするのか?」と聞いても地元自治体任せ。
あまりにも無責任です。
仮にいま、どこかの原発で事故が起きたら、避難所で新型コロナ感染が広がる「複合災害」になりかねません。
ところが、原発周辺の自治体が策定している「広域避難計画」に感染症(新型コロナに限らない)と原発事故との「複合」という視点はなく、政府の防災基本計画や原子力規制委員会の原子力災害対策指針にも、こうした「複合災害」を想定した内容はありません。
私は、更田原子力規制委員長に、「複合災害を想定した指針をつくるべきではないか?」と質問。
更田原子力規制委員長は「複合災害への対応方針は必要」と認めつつ、それがなくても原発の稼働を容認する姿勢でした。
新型コロナは原発の危険性も新たな角度で明らかにしました。
やはり原発ゼロしかありません!
- 会議録 -
○ 江渡委員長 次に、藤野保史君。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
私、北陸信越ブロックというところから選んでいただいておりまして、新潟の柏崎刈羽原発、石川の志賀原発、そして福井の若狭の原発群というものが地元にあります。原子炉の数でいえば、日本の原子炉の約半分が集中するのが私の地域になります。
今、ここの、関電高浜原発、そして大飯原発の工事が、あるいは定期検査が行われておりまして、これが新型コロナとの関係で地元で大きな不安を呼んでおります。限られた地域に非常に多くの作業員が集中するからであります。
まず、経産省に確認したいんですが、高浜、大飯、美浜、それぞれの原発で平均何人が働いていらっしゃるでしょうか。
○ 村瀬政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の各原子力発電所への入構者数につきましては、関西電力から聞いているところ、本年四月の平均値でお答えさせていただきますと、美浜発電所が約三千名、高浜発電所が約四千五百名、大飯発電所が約一千八百名となってございます。
○ 藤野委員 大飯原発は、今後、定期検査が再開したら更に千八百人ふえて合計三千六百人になると聞いております。極めて多数になるわけですね。
現地の方々からお話を聞いてまいりました。そうしますと、今のチェック体制というのは、入構する、発電所に入る二週間前にチェックシートにいろんなことを記入されるんですが、これは全部自己申告だということであります。第三者がチェックできるのは、この書かれたチェック表と、あと、放射線管理区域に入る際のサーモグラフィー、温度ですね、あれだけと。
原発構内の作業は、御存じのように三密そのものである。しかも、原発に行くときの、皆さんも御存じだと思うんですけれども、バスも三密ですし、車で行かれる作業員の方もたくさんいらっしゃいます。そういう意味では、そういう問題が内在されているわけですね、原発というのは。実際、新潟では、柏崎刈羽原発で働いている、勤務する社員四人の方が新型コロナ陽性ということで、うち一名の方は御家族にも陽性の方が出られたということが実際に起こっている。
経産省にお聞きします。これも確認ですが、福井の県外から来ている作業員については、いつ、どこから、何人来ているというふうに、これは詳細に把握されているんでしょうか。
○ 村瀬政府参考人 お答え申し上げます。
福井県外から来ている作業員の比率でございますけれども、御指摘の点につきまして、関西電力から、各原子力発電所への事前の入構登録について、登録者の居住地及び入構予定期間を確認しているか、あわせて伺っておりますけれども、県外者の割合は、本年三月末の入構登録者ベースで、美浜発電所が約四割、それから、高浜発電所が約四割、大飯発電所が約五割と聞いているところでございます。
先ほど御指摘のあった作業員の健康状態は、必ずしも自己申告だけではなくて、健康状態の把握を徹底するために、毎朝、作業責任者が聞き取りを行うといったこと、それから、バスも、運用者の専用バスというものを用意して、専用バスは三密にならない状態で運用者を移動させるとか、又は、入構者に対しては全て検温を実施をして、把握された体調不良者が出てくれば、これは自宅待機を徹底するですとか、ハンドマイクでコミュニケーションをとるといったような形で、三密を最大限下げながらやっているというように報告は受けてございます。
○ 藤野委員 いろんな御努力をされているというのは私も認識しているんですが、やはりそれが追いついていないというのが地元の皆さんの不安の大もとにあるわけですね。
事前にお聞きしたら、美浜で四割、高浜で四割、大飯で五割の、つまり数千人単位で県外から作業員の方がいらっしゃっているわけですね。この方々が地元で買物をしたり食事をされたりしている姿をもう見ているわけですよね。実際どうなるんだということで、今おっしゃったようなこともあるんですけれども、それ以上に今いろんな問題が地元では心配されている。
厚労省にお聞きしたいのは、嶺南地域の感染病床数というのは何床あるのか、そして、ホテルのような軽病者対策の施設というのは何床確保されているんでしょうか。
○ 吉永政府参考人 お答え申し上げます。
福井県では、風評被害等の観点から、新型コロナウイルス感染症に対応可能な個別の医療機関名及び病床数、また地域ごとの病床数について公表していないため、お尋ねの点につきましてはお答えは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、福井県全体で申し上げますと、新型コロナウイルス感染症による入院患者の受入れのために確保している病床数として、五月八日現在で百三十一床、また、宿泊療養施設につきまして、これも五月八日現在でありますが、百十五床と承知してございます。
○ 藤野委員 県全体も必要ですけれども、私がお聞きしたのは、何か今、個別のを公表していないとおっしゃいましたが、例えば嶺南地域、小浜市とか敦賀市が市としては大きいんですけれども、それぞれの個別自治体ごとで幾つなのかというのを教えていただけますか。
○ 吉永政府参考人 お答え申し上げます。
繰り返しで恐縮でございますが、地域ごとの数字につきまして福井県が公表してございませんので、お答えにつきましては、先ほど申し上げたとおり、県全体の数字で御容赦いただければと考えてございます。
○ 藤野委員 私には、事前のレクでは、個別名は挙げませんけれども、十床とか二床とか、そういうレベルなんですね。何千人も作業員はいらっしゃるんだけれども、例えば、そういう大きな市でも、小浜市とか敦賀市とか大きなところでも、十とか二とか、そういう状況ですし、伺ったのは、ある病院では、もともと原発があるところですから、原発の事故が起きた場合の放射線防護、この施設はあるというお話を伺ったんですが、そういうところもあるわけですね。一般論で結構です。
○ 吉永政府参考人 お答え申し上げます。
嶺南地域におきましては、感染症の医療施設が三施設ございます。それで、最低限の数としては、委員御指摘のような数字になるかと思いますが、現時点でコロナに対応する病床として県が確保しているものはそれだけではございませんので、先ほど申し上げたとおり、県全体の数字で、その中で福井県の方で調整を行っていくということで承知しているところでございます。
○ 藤野委員 地元の方が一番心配されているのは、ほかの県でも起きているわけですけれども、複数陽性者が出た場合に、一体どこに、医療機関に入るのか、どういう段取りになっているのかということなんです。
例えば、原発で作業されていた方で、そこがクラスターになってしまった場合、そういう場合の対応というのは何か方針はお持ちなんですか。
○ 吉永政府参考人 お答え申し上げます。
原子力発電所の作業員の方で入院を要するような陽性の方が出た場合というお尋ねでございますが、これは、その他の感染者、普通の、原発の作業員以外の方と同様でございますけれども、その感染者の状況に応じまして、都道府県などが入院の調整を行うという形になってございます。
そういう意味で、もちろん、その近くにあいている病床があればそちらにということになるかもしれませんけれども、一義的には、福井県内におきまして病床を調整するということを福井県が行うということと考えてございます。
○ 藤野委員 ですから、全く人ごとなんですね。
いわゆる原発は経産省が進めているわけですけれども、その進めているもとで、非常に三密の状態で働かざるを得ないことについて、この新型のコロナの対応については何も省としては方針を持っていない、全て自治体にお任せ、これでは、本当に自治体の不安というのは解消されないと思います。
九州電力の川内原発というのは、次回の定期検査が実はあしたからなんですね。
東京電力は、先ほど言ったように四名の陽性者が出たこともあり、原発の再稼働に向けた工事を劇的に減らしました。六百件工事件数があったのが百二十件に減らし、作業員も四千名から千三百名まで減らしたということであります。
関西電力も、初めは延期しなかったんですけれども、いろんな私どももレクとかをして、地元の方も申入れをして、そういう中で大飯原発三号機の定期検査を延期するという決断をされたんですね。これは一つの決断だと私は思います。
東海第二原発についても、オンライン署名というのが今広がっておりまして、三密の作業をやめろということで。本当に、やはり地元のどこでもそういう声が広がっているというのが実態であります。
ところが、この間、九州電力に、本当にやるんですか、やるんですかと何度聞いてもやると言うんですね。東電も関電もやめているのに、九電はあしたから始めると。伺ったところでは、三千名の方が今回の定期検査に携わり、うち県外が約千人に上ると伺っております。
これは本当にやるんですか。これは規制委員長にお聞きしたいんですけれども、東電とか関電は、コロナ感染拡大防止、これ以上感染拡大させないということで停止とか延期とかしているわけですね、工事数を減らすとか。九電は全くこのままやろうとしているんですけれども、これは何も言わなくていいんでしょうか。
○ 更田政府特別補佐人 お答えいたします。
川内原子力発電所二号機の定期事業者検査の開始時期やその後の検査の工程ですけれども、これはあくまでやはり事業者である九州電力が、作業要員の確保も含めて判断すべきものであろうと考えております。
ちなみに、九州電力からは、現時点までに、川内原子力発電所二号機の定期事業者検査について延期するとの報告は受けておりませんので、五月二十日、明日に開始するものと承知をしております。
○ 藤野委員 いや、だから、そこが問題なんじゃないかと言っているわけです。東電や関電、もうやめている。
この間、地元で、関電では、死亡労災事故を始め、労災が相次いでおります。高浜では実に四件、死亡や重傷事故が起きている。この背景には、私は、やはり通常の原発の運転でも三密などで大変なのに、今、再稼働に向けたテロ対策などの工事、そして定期検査、あるいは廃炉作業など、複数の作業が複合的に進行している。これは今まで電力事業者が経験したことのない事情であります。
つまり、こういういろんな作業や工程が同時並行で進んでいく、こういうオペレーションを今まで電力事業者はやったことがない。そのもとでコロナが起きているということで、やはり本当に大変なもとで、そういう死亡事故を始めとした労災がこの二年間ふえてきているわけですね。
ですから、こういう新しい新型コロナという知見を得たわけですから、この原発という最も三密な組織における作業、あるいはオペレーション、あるいはチェック体制、こういうものも総合的に見直していく、そういうことが求められているというふうに思います。
ちょっと時間の関係で先に行きますけれども、これは定期検査だけの問題ではなくて、避難計画の問題も全くこの新型コロナを想定していないといいますか、もともと複合災害という観点は弱いわけですけれども、感染症という部分については、全く今の広域避難計画にも原子力災害対策指針にも書かれておりません。
ですから、新型コロナに限らず、今後、集団感染というものの予防や発生した場合の対応というものも前もって検討して、前もって避難計画やこういう原子力災害対策指針にも盛り込んでいかなければならないというふうに思うんですが、委員長、この点はどのような御認識でしょうか。
○ 更田政府特別補佐人 お答えをいたします。
もとより原子力災害を考える場合には、一般の、地震であるとか津波であるとかといった自然災害と重なり合うということを十分に意識をしておかなきゃならない。今回、未曽有の事態でありますけれども、新型コロナの感染症という事態に至って、原子力災害、自然災害、それから感染症の蔓延、重なったときの対処を考えておく必要がある。
それには、それぞれの特性がありますので、原子力災害に対しては原子力災害対策指針、自然災害に対しては防災基本計画、それから感染症の蔓延に対しては新型コロナウイルス感染症の基本的な対処方針等があります。それぞれがそれぞれの特性に応じた対応についてきちんと検討して定めておくことの重要性と、それから、先生御指摘のように、その間の連携を、重なり合ったときの連携をどうとるかというのは、これは基本的な考え方として重要なことであろうと思います。
今般、原子力災害対策指針の以前に、地域防災計画の中で、それぞれの、蔓延の状況がどういうインパクトを与えるのか、さらに、どういう考慮を重ねなければならないかということに関しては、確かに、御指摘のように、必要なことであろうと思います。
現在私が承知しておりますのは、内閣府の原子力防災担当において、避難計画等のさらなる具体化、充実化を念頭に、基本的な方向性について検討を進めているものというふうに聞いているところであります。
○ 藤野委員 複合的な災害を想定したものは必要だということですので、ぜひつくっていただきたいと思います。
今答弁あったように、内閣府は現在、そうした住民避難などをめぐる新型ウイルス感染症の検討を始めたということを私も認識をしております。そして、なるべく早く検討を進めると言っているそうなんですが、これはもう既に起こっているわけですから急いでいただきたいのと、あと、私は実効性が何よりも大事だと思うんですね。現在の避難計画の実効性、これも本当にあるのかという話があるわけで、それに加えた複合的な災害に対する実効性をどのように確保するかということを今後もしっかりと見ていきたいというふうに思います。
そして、最後になりますけれども、先ほど荒井委員も、そして逢坂委員も玄葉委員も指摘されましたが、十三日に原子力規制委員会が、六ケ所村の再処理工場について、事業変更許可申請書に関する審査書案を了承した。つまり、基本的な部分はオーケーを出したということであります。
しかし、もう相次いで指摘もされましたけれども、プルトニウムを再利用するという核燃料政策は行き詰まっているわけですね。ですから、それを再処理しようというこの工場の必要性そのものが問われている状況です。立地から三十五年たって、着工から二十七年たっても未完成。建設費は当初の四倍の約三兆円に達しております。それなのに、肝心かなめの、現在、必要性そのものが大きく揺らいでいるわけです。
先ほど指摘もありましたが、高速増殖炉「もんじゅ」が、もう政府もやめると、廃炉に取りかかっていると。それにかわるものとして、フランスの実証炉、ASTRIDというのが、日本も計画に参加しようとしていたんですけれども、これも縮小、これも断念とも言われている。
ですから、委員長にお聞きしたいんですが、再処理工場の必要性がなくなっているわけで、今後、いわゆる詳細設計に当たる設計及び工事の計画の認可とか、あるいは使用前検査というのは予定され、要するに、更に審査は続くわけですけれども、しかし、もう核燃料サイクルは破綻して、必要性そのものがなくなった施設のさらなる審査に、これ以上、人と労力と金とをつぎ込むというのは私はやめるべきじゃないかと思うんですが、この点、どのようにお考えですか。
○ 更田政府特別補佐人 お答えをいたします。
当該施設が必要なものであるか必要なものでないか、これは原子力政策側、推進側の議論であります。
繰り返しお答えしておりますけれども、規制と推進というのはそれぞれ独立してあるべきであって、政策を左右する手段として規制を使ってはならないというふうに考えております。
○ 藤野委員 そもそも、いわゆる行政手続法では、「遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、」とは書いているんですけれども、それを実際どこまでやるのかというのは書かれていないわけですね。
ですから、やはり規制と推進の分離ということではなくて、そもそもこれは必要性がなくなっているわけですから、審査するべきじゃないと私は思います。
複合災害の検討など、やるべきことをやるべきであって、そういうことはやらずに、必要性が失われたものの審査にもう既に六年かけている。これはもう規制委員会の存在意義が問われる事態ですし、この再処理にかかるコストは最終的には電気料金に上乗せをされます。破綻したもののツケを国民に回すのは許されない。
破綻という事実を見詰めて、認めて、審査もやめるべきだということを主張して、質問を終わります。
会議録PDF
20200519_genshiryoku_Fujino_kaigiroku
タグ : 原発・自然エネルギー 作成者 : fujinoyasufumi