入管法改正案質疑
- 会議録 -
○義家委員長 次に、藤野保史君。
○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
私も、今の名古屋入管におけるスリランカ人女性の死亡事件、そして、TBSが報じた、外部病院から入管への診療情報提供書、これについてまずお聞きしたいと思います。
先ほど、寺田委員の質問への答弁で、松本次長は、患者が仮釈放を望んで、心身に不調を呈しているなら、仮釈放してあげれば、よくなることが期待できるという記載について、記載がございますと答弁をされました。
その上で、大臣にお聞きしたいんですが、これは、先ほど、なぜこの部分を記載しなかったのかというのに対して、次長は名誉やプライバシーという言い方をされたんですが、私はこれは成り立たないと思うんですね。というのは、この三行、仮放免するかどうかというのはプライバシーとは全く関係ない。そして、むしろ書かれている方は、この人は仮放免されるために病気になったんだと言わんばかりの記述なんですね。松本次長の言葉をかりて言えば名誉に関わるような言葉があえて書かれていて、仮放免というプライバシーとも関係ない部分が除かれているんです。 念のため指摘しておきますと、この中間報告そのものが、二ページにあるんですが、Aさん、Aのプライバシーに関する情報が含まれているが、国会での指摘もあり、報道でも通じて具体的説明が強く求められている、加えて、在日スリランカ大使館から詳しい結果の共有を求められている、こういったことも指摘しながら、Aのプライバシーに関する情報も含めて事実経過を明らかにすることが相当であるということで、在日スリランカ大使館の了承を得た上でこれを作ったと書いてあるんです。
ですから、プライバシーは全く理由にならない。むしろ、それを明らかにすることが、この方の名誉を回復していく上でも極めて重要なんです。なぜなら、中間報告にその名誉をおとしめるような表現があるからであります。 大臣、両者を比べてみますと、報告書の十四ページから十五ページがまさにこの部分なんですが、このいわゆる診療情報提供書では、いろいろ書いているんですけれども、TBSさんの報道でも、いわゆる、例えば、今私が申し上げたような、病気になることで仮釈放してもらいたいという思いから心因性の症状が生じているんじゃないかとか、この中心部分とか、あるいは、その後、クエチアピン一錠とかニトラゼパム一錠とか、これもそのまま中間報告に載っているんです。さらに、二週間後に再診察するという、この部分も中間報告には載っているんです。ですから、このいわゆる情報提供書の大部分は載っているんです、中間報告に。この最後の部分だけが載っていない。
ですから、大臣、これは、この部分をあえて隠蔽したということになるんじゃないですか。
○松本政府参考人 記載の在り方についての委員あるいは本日の御指摘は、非常に重く受け止めております。 ただ、中間報告の記載をあのような形にした理由は、従来申し上げているとおりでございます。名誉、プライバシーというところでございます。
○上川国務大臣 今、その記述がどのように中間報告に記載されていたのかということについては、委員が比較したとおりということでありますので、括弧で全ての字や項目が入っていないというのは事実だと思います。 それに対して、今説明を次長からされたところでありますが、どうしてそのような形で、例えば「例えば、」というようなところで記載をしたのかということについては、私も、今のような理由ということで考えるということには少し不十分な状況だったんじゃないかなというふうに思います。
全部のフルで入れるということそのものも一つの考え方だというふうに思いますし、特に、お医者さんが処方している部分については、これは極めて強いプライバシーでございますので、そのことについての扱いについてのためらいもあったかもしれませんけれども、今回は、その病状と適切な治療が行われてきたかということについての事実関係をしっかりと把握をし、そして、中間報告にまとめるということが趣旨ですので、その意味から、今、委員の御指摘についての考え方、そのことについてはやはりきちっと書くことが大事ではないかと私は思います。
○藤野委員 いや、書くことが大事ということであれば、これは極めて不十分なんですよ。
これを読みますと、この四日のその報告書を受けて、五日には仮放免を検討しているんです。報告書に五日から検討していると書いてあるんです。しかし、自分たちがやったかのように書いているんですよ。これが許せないところで、医師からこういう提案を受けて検討を始めましたというならまだしも、前日の六時に、「仮放免を検討することとし、」と。彼女ににおわせながら反応を見るみたいな、ちょっと、これは本当に許せないんですよね、この中間報告というのは。
もう一点お聞きしたいと思います。
今日の共同通信の、今日の十五時台の通信ですが、関係者への取材として、医師への診療依頼書で、管理局が詐病などの疑いがあると言及していたことも判明したと報道されております、共同通信で。これは事実ですか。
○松本政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の報道をちょっと把握しておりませんので、ちょっと正確にお答えすることはできません。
○藤野委員 確認していただきたいんですが、要するに、このTBSというか、この診療情報提供書と併せて、共同通信が報じているのは、入管から診療依頼書の中で詐病の疑いがこの人はあるよと言及していたというんですよ。これは重大でして、しかも、この丁病院の医師は初診なんです、初めてこの方を診る。初めて診るのに何でここまで、仮釈放してもらいたいから病気になったんだと書いたのかなと、私もこれを読んだときに、不思議なんですけれども、これで平仄が合うわけです。元々、入管から依頼したときに、詐病などの疑いがあるというふうにしているから、それに乗ったような報告が、報告というか、情報提供がされているということになるのではないかということなんですね。
この入管からの依頼書についても、中間報告には記載されておりません。これはなぜなのかということなんですね。大臣、これは結局、入管が描いているシナリオというのは、もうAさんが詐術だ、うそをついているということなんですね。このシナリオに合う記述のみ、この診療情報提供書からいただいたということじゃないのかと。それ以外はもう取らない、採用しないと。確かに、この情報提供書には、詐術だというふうにはまるような表現があるんです。ですから、それだけを採用して記載したということになる、そういう疑いが極めて強いと思うんですが、大臣、いかがでしょう。
○松本政府参考人 お答えいたします。
今の、現時点での調査で把握している限りという前提でございますが、この診療に当たりましては、入管庁の非常勤医師から、この外部の病院に対する診療情報提供書というものを提出しているところでございます。その内容としては、委員御指摘のような内容は含まれておりません。
○藤野委員 これは引き続き追及したいと思います。
委員長にお願いしたいと思います。
先ほどもありましたが、診療情報提供書に並んで、入管から外部病院に対する診療依頼書、この提出を求めます。
○義家委員長 ただいまの資料要求につきましては、理事会にて協議いたします。
○藤野委員 この問題は、この事件は、引き続き追及していきたいと思いますし、まさに今日、死因が投げ込まれたという、本当にこの扱い、私自身も許せません。これも含めて、引き続き追及したいと思います。
その上で、法案に入っていきたいと思うんですが、これは法務省に確認しますが、難民認定局に、二〇一〇年から二〇二〇年までの間で難民認定を受けた人数、そのうち、複数回目の難民申請において難民認定を受けた者の数、また、三回目の部分については、いただいた資料の部分をお読みいただきたい。
○松本政府参考人 お答えいたします。
平成二十二年から令和二年までの間に難民と認定した者の数は三百三人でございます。そのうち、二回目の難民認定手続において難民と認定した者の数は二十一人でございまして、三回目以上の難民認定手続において難民と認定した者はございません。
この二十一人には、二回目の難民不認定処分に係る取消し等訴訟における国の敗訴判決により難民不認定処分が取り消され、二回目の難民認定申請に対して難民と認定した者一名が含まれております。
なお、その者は、三回目の難民認定申請を行っていましたところ、二回目の申請に対して難民と認定したため、三回目の申請については取り下げられております。
○藤野委員 今、三回目の認定はないと言ったんですが、その後に言ったことが大事でして、配付資料の三を御覧いただければと思うんですが、これが入管庁からいただいた資料で、その一番下の米印のところですね。この一名については、敗訴判決により二回目の難民不認定処分が取り消され、二回目の難民認定申請に対して難民と認定したと。この人、三回目の難民申請も行っていたが、難民と認定されたので三回目は取り下げたという話なんですね。要するに、三回目を申請していたんです。
だから、カウントするときに、二回目のに、自分たちが負けて、敗訴して、二回目で認定せざるを得なかったから二回目であって、申請は三回なんです。二回の不認定処分を受けているんです。
重大なのは条文でして、今回の法案の六十一条の二の九の第四項ではどう書いているかというと、「二度にわたりこれらの申請を行い、いずれの申請についても第六十一条の二の四第五項第一号又は第二号のいずれかに該当することとなつたことがある者」と書いているんですね。
要するに、二度にわたって申請を行って、はしょりますけれども、要するに不認定処分を受けたことがある者なんです。
ですから、法務省、簡単に確認しますけれども、要するに、二回不認定処分を受けた者はこの条文に該当しますね。
○松本政府参考人 該当いたします。
○藤野委員 ですから、重大なんです、大臣。
二回の不認定処分を受けても、実際、この配付資料の三の令和二年のところにありますが、一人、難民認定を受けているんですね。日本の厳しい厳しい基準をくぐり抜けて、三回目で受けているんです、事実上、申請で。けれども、それまで二回この不認定処分を受けたことがあったら、この人ははじかれてしまう。
大臣、今回の法案というのは、こういう事実を踏まえれば、こういう人を切り捨てることになる不合理な制度設計になるんじゃないですか。
○上川国務大臣 本法律案でございますが、三回目の難民認定申請を行った者につきましては送還停止効の例外となるところでございます。難民認定申請によって原則送還は停止されないところではございますが、行政訴訟の提起と併せまして退去強制令書の執行停止の申立てを行い、裁判所によりまして執行停止決定がなされれば送還は停止されるところでございます。
また、本法律案におきましては、三回目以降の申請者でありましても、難民又は補完的保護対象者の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した場合につきましては送還を停止することとしているところでございます。 三回目以降の申請者につきましては、司法判断を受ける機会、また、なお慎重な判断を行う行政上の手続、これが保障されているということでございまして、三回目以降の申請者を送還停止効の例外とすることによって、不当な結果は生じないシステムとなっているところでございます。
○藤野委員 いや、これは生じるんですよ。
というのは、条文が、なった者というのであれば、まだ分からなくはない、不認定処分に。けれども、なったことがあるということになりますと、例えば令和二年で、二〇二〇年でやった人は、条文でいえば本則の方に入ってしまうわけですね。相当な資料とかいろいろおっしゃいましたけれども、条文のたてつけとして、まさにこういう人を切り捨てるというのは、私は本当に許されない。
今の制度でさえ、そもそも複数でいえば二十一人も政府が不認定にした人がいるんです。二百八十二人のうち二十一人ですから、一割に近いんですね。そうなってくると、先日のいわゆる政務官の主観で何か動くような話もありましたけれども、そういう不安定な制度の下でもやはり今回こうやって認定されているわけですけれども、そうした人たちがこぼれ落ちてしまう。これは本当に許されないと思います。
そして、もう一点お聞きしたいと思うんですが、今回の名古屋入管の事件でも、STARTなどの支援団体の皆さんがこの方を長年にわたって支援されております。全国で多くの支援者、支援団体の皆さんが活動されている。 配付資料の五をちょっと御紹介しているのは、今のコロナ禍でも、コロナの下での支援ということで一つ御紹介しているんですが、群馬県太田市のNPO法人、北関東医療相談会アミーゴスの活動なんですね。これはいろいろ、無料の、低額診療とかそういう医療アクセスなどを紹介するという活動をされてきているんですが、やはりこのコロナ禍で、外国人の生活を支えてきた知人とか家族が仕事がなくなって、家賃の滞納が増えているということなんですね。
この事務局長の長沢正隆さんに私もお話を直接お聞きしました。そうしますと、こうおっしゃっていたんですね。仮放免者の生活は同国人のコミュニティーが支えていた、同国人の方々は自分の残業代を仮放免者の支援に充てていたというんですね、残業代を。しかし、コロナの影響で、昨年四月以降ほとんどの外国人の残業が減り、仕事が減っていった。それまでは一人で暮らしていた彼らも、独り暮らしから二人、三人と住居をシェアするようになった。こういう状況の下、長沢さんたちは、いろいろな、無料の健診とかマスクの配布とか支援していたんですが、去年八月ぐらいから家賃の支援をずっとやられていて、もう四十件ぐらいやっているそうなんです。ですから、本当にこのコロナ禍でも大変な支援をされているなというふうに思いました。
大臣にお聞きしますが、こうした方は全国にたくさんいらっしゃるんですね。こうした方々の果たしている役割というのは大きなものがあると思うんですが、大臣も同じ認識でしょうか。
○上川国務大臣 我が国におきまして在留されている外国人の置かれた状況ということ、こうしたことに寄り添いながら、地方自治体を始めとして、また公益法人、またNPO法人などにおきまして、個別相談とかあるいは日本語の支援、また口座の開設等、また衣食住の世話など、様々な形で日常生活面での生活支援が行われているものと承知をしております。
法務省におきましても、多文化共生、これを推進する観点から、日本に住む外国人や支援団体等に向けまして、外国人生活支援ポータルサイトまた生活・就労のガイドブックなどで必要な情報発信を実施しているほか、FRESC、外国人在留支援センターでありますが、相談対応、また地方自治体の一元的相談窓口における相談実施に対しての支援を行っているところでございます。
また、出入国在留管理庁、日本弁護士連合会、それに難民支援団体のネットワーク組織でございますなんみんフォーラム、これはNPOでありますが、なんみんフォーラムの皆様との合意に基づきまして、相互に連携をして、空港におきまして難民として庇護を求めた外国人の住まいを確保するための取組、これは平成二十四年から実施をしているところでございます。
その意味で、いろいろな生活のひだの中で起こる課題や問題に対しまして、支援者の皆さん、支援団体の皆さんの寄り添い型の支援というのは極めて重要なものであるというふうに思っております。
○藤野委員 極めて重要という御答弁でした。
私も各地で支援者の皆さんにお会いしてきたんですが、先ほども出ましたけれども、二〇一九年の六月に長崎県の大村入管センターで、四十代のナイジェリア人男性が、ハンストの末、飢餓死に至った事件。私も、同年十一月に現地の収容施設も視察させていただいて、支援の方々にもお話を聞いたんです。
長崎インターナショナル教会というところがありまして、柚之原寛史牧師という方が、十五年以上にわたって、三千八百人以上の被収容者に面会し、支援をされてきたというお話もお聞きしました。
長崎というのはやはり教会が多くて、牧師さんとか信者の方がこういう支援を行っていらっしゃるということもお聞きしました。その方々は、自分たちのことを傾聴ボランティアとおっしゃるんですね。私の事務所にもファクスで貴重な声を届けていただいております。
傾聴ボランティアというのは東日本大震災で広く知られるようになったんですが、要するに、相手に寄り添う、話し手の話をそのまま受け入れて、自分の価値観と違っていても否定しない、分かち合っていく、傾聴するということで、これは、各自治体で大変、東京都も力を入れてホームページなどで支援しているんです。
大村入管に行ったとき、この傾聴ボランティアの一人のKさんという方が私に分厚いノートを見せてくださって、それには、収容者の国籍とかパスポート名、年齢、日本語ができるか、移送元、大村に入った日、四つのエリアがあるんですけれどもエリア、摂食拒否の有無、弁護士、仮放免、難民申請などの有無、家族や病気の状況、そして入国からの経緯と。これがもう、びっちり書かれているんですね、一人一人に。面会のたびに更新していく。で、あっ、この人にしばらく会っていないなと、それを見て次に会うとか。本当にすごい活動をされていました。 最近になって自分の住んでいる大村にそういう施設があるのを初めて知ったという女性の方は、何ができるだろうと考えて、収容所の中で読む本、読める本を届けたいという活動をされたというお話も、別の方ですけれども、お聞きをしました。
茨城県の牛久の入管センター、大臣も行かれたことがあるかもしれないんですが、私も視察しまして、いろんなお話を聞きました。今、FREEUSHIKUという若者の皆さんが、面接されて、その面接の記録を私に届けていただいたこともあります。それを基に質問したこともあります。
東京の品川入管でハンガーストライキが大規模に起きたときには、いろんな、首都圏移住者労働ユニオンとかクルドを知る会の皆さんなどから情報をいただきました。
本当にいろんな方がいろんな形で活動されているんですね。ここで紹介を到底できないんですけれども。 やはり、先ほど指摘がありましたけれども、国連などから非人道的だと批判されている日本の入管、出入国管理行政ですけれども、しかし、そうした官の在り方を全国の多様な多数の民の親身な支援で何とか辛うじて支えようと、努力が積み重ねられてきた。これが日本の入管の歴史だと思うんですね。ある意味、こうした民間支援の方々抜きにして日本の出入国管理なんというのは絶対に成り立たないと私は言えると思います。
とりわけ、今回創設される監理措置制度。これは、こうした支援者、支援団体、弁護士、この方々が監理人になるような、そうしたような協力がなければ成り立たない制度設計になっております。
問題は、その支援者、支援団体の皆さんが今回のこの監理措置制度をどのように考えているか。
先ほど大臣も御言及されましたなんみんフォーラム、これが今年三月から四月に行ったアンケート調査がありまして、これは貴重な生の声が寄せられているんです。今日、これを冊子として配ろうかなと思ったんですけれども、ちょっと多いのでやめておきましたが、私、紹介したいと思います。
ちなみに、大臣、これはお読みになられましたか、このなんみんフォーラム。
○上川国務大臣 全て目を通したわけではございませんけれども、一部拝見させていただきました。
○藤野委員 例えば、十五ページには、監理措置対象者の処遇についての懸念という質問がありまして、九〇%が、全ての監理措置対象者に対して就労が、働くことが許可されていないことということを挙げておりました、九割。
同じ九割が、住民登録や国民健康保険の加入の可否が不明瞭である。八八%が、対象者の生活保障について、国による予算措置が不明瞭である。監理措置中の住居がどのように確保されるのか不明瞭である、八七%。
自由意見のところでは、様々な制限をつけておきながら経済的負担は対象者や支援者任せとして、一方でコントロールだけ及ぼそうという制度は無責任である。権利制約に見合った補償が最低限必要である。こう指摘されております。もう一つ紹介しますと、就労を認める、国保に加入できるなどの措置や、居住場所への援助措置などがなければ、仮放免されても、野たれ死にしかねず、絵に描いた餅のような法律になります、こういう指摘もあるんです。
大臣、お聞きするんですが、要するに、監理制度によって収容施設外で生活できますよ、収容じゃないですよとおっしゃるんですが、現状では暮らしていけないという声はこのアンケートにもうあふれているんですね。ですから、制度設計として、確かに施設外での生活は認めますが、実際に生活できるかどうかは知りません、入管は知りませんと、こういう制度設計なんですが、これ、ちょっと余りにも無責任じゃないでしょうか。
○松本政府参考人 お答えいたします。
監理措置に付されて、社会内で生活しながら退去強制手続を受ける外国人は、適法に在留している外国人と同様、自ら又は家族、親族等の援助により生計等を維持すべきものと考えております。
その上で、退去強制令書発付前に監理措置に付された者につきましては、退去強制事由に該当する疑いはあるものの、我が国から退去させることがいまだ決定されたものではないため、生計の維持に必要な場合、許可を受けて報酬を受ける活動を行うことを可能としたものでございます。
他方、退去強制令書の発付を受けた者につきましては、行政手続上、我が国から退去させることが決定されたものである以上、就労を認めないこととしております。
ただ、委員御指摘のように、退去強制令書の発付前後を問わず、監理措置に付された者が社会内で生活するに当たりましては、監理人と、そしてこの監理措置に付された外国人を担当する出入国在留管理庁の職員が適切に連携することは極めて重要であると認識しております。
○藤野委員 全く中身がないんですね。 例えば、今回のスリランカ人女性は、八月二十日に収容令書が発付されて、翌日にもう退去令書ですよ。大体早いんです。それで、今お話があったように、退去令書の後は働けないんです、今回の制度。条文でそうなっている。もし、対象者が生きていくためにどうしても必要だからって働いたら、退令書発付後なら、もう義務違反で罰則の対象です。監理人にも、こうした人たちに対する監視義務とか届出義務が課されますから、それに違反したら罰則なんですね。
先ほど紹介した長沢さん、この方はこうおっしゃっているんですね。憲法が定める生存権を国に奪われた人たちだと。この国が助けない人の命を救うことが最優先だと思っていたが、これからは私たちの支援も共犯ということになりそうだというふうに述べているんですね。
こうした制度設計だから誰も手を挙げようとしていないんです。このアンケートに答えて、政府案の監理人を引き受けたいかという問いに対して、引き受けることができないというのが四六%、約半数なんです。引き受けたいとか引き受けたくないとかじゃなくて、引き受けることができない、両立しないと。そして、それを含めて、余り引き受けたくない、そして、引き受けたくない、できないというのを合わせると八九%なんですね。これ、もう私、衝撃を受けました。
大臣、先ほど、支援者や支援団体が果たしている役割は極めて重要だと答弁されました。しかし、その方々の九割が引き受けないと言っている。半分が、約半分が、引き受けることができないと言っているんです。今回の監理制度というのは、運用することができないんじゃないですか。
○上川国務大臣 先ほど来、支援団体の方々、また弁護士の皆様など、立場の重要性、そして果たしておられる役割というものは重要であるというふうに認識をしているところでございます。
被監理者が社会内で生活することを許容するという形で、新たな選択肢としてこの監理措置制度が導入されるという内容の今回の法案でありますが、円滑に運用するための監理人の役割、これにつきましては、十分に御理解をいただいた上で監理人になっていただけますように、丁寧に説明を尽くしてまいりたいというふうに考えております。
○藤野委員 これは、プロですから、この人たちは。ずっとやってこられた、その方々がこうおっしゃっているということなんですね。
私、更にもっと深刻だと思うのは、これは単に制度がワークしないとかいうことではなくて、民間の支援の在り方そのものを大きく変質させる、根本的に変質させるということであります。
このアンケートの中から紹介しますと、例えば五ページには、仮放免よりも更に悪い、入管の下請のように難民移住者を監視する役割を背負わされ、支援者が支配者になってしまう、こういう指摘があります。六ページにも、入管の下請よろしく難民移住者を監視する役目を負う。七ページにも、支援者が入管業務の下請のようになる。十一ページにも、支援団体を監理人として、入管当局の下請の監視役のようにしようとしている。二十一ページにも、入管行政の下請のように支援者が関わるようなたてつけ。二十二ページにも、私たちは入管当局の部下や下請の監視役ではない。要するに、下請になるということがるる言われるんですね。
ほかにもこういう指摘もあります。外国人を支援、応援する立場から、監視、管理する立場、イコール敵対する立場になる。仮に弁護人が監理人となれば利益相反の問題を生じることになる、従来からの支援者が入管の手先に成り下がりかねない制度、十九ページ。二十ページには、支援者らが入管庁の監督下に組み込まれる構造なので、これまでのような支援関係ではなく、支配関係になる懸念がある。当局が民間監理者を管理下に置く。こういう指摘がるるあるんですね。
私、先ほども言いましたけれども、余りにも非人道的な、国際社会からも非難される日本の出入国管理行政ですが、しかし、そうした官の在り方を民が親身な支援で何とか辛うじて支えようとしてきた、これが実態なわけです。ところが、この法案は、この民による支援の在り方を根本的に変えて、このアンケートに出てきているように、入管の下請、入管の手先、入管の監督下、そして敵対する立場、そういう立場に立たせるというんです、立たせるものなんです。
私、これは、日本における出入国管理における官と民の風景というのを大きく変えると思うんですね。根本から民の在り方を変えるものになる、この強い危機感がこのアンケートからひしひしと伝わってきます。
大臣、お聞きしますが、今回の法案は、民間の多様な取組を入管庁の管理下に置いて、出入国管理行政をますます政府による独断的、裁量的な制度にしてしまおう、収容施設の外にまで入管庁のそういう影響を及ぼそう、こういうことじゃないんですか。
○松本政府参考人 お答えいたします。
監理措置は、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれ等の程度を考慮して、監理人についていただくことによって、それらのおそれの軽減度合い等も考慮して、対象者を社会内で生活をさせようというものでございまして、その監理人の一定の届出義務等は必要なものと考えております。
ただ、委員御指摘のような対立関係ということは、入管としても考えておりません。むしろ、対象外国人を、その監理人とともに、その対象外国人を担当する警備官とは別の入管の職員が共に支援、助言等を行うというような枠組みの運用を想定しておるところでございます。
○藤野委員 終わりますけれども、要は、この法案は、大変制度としても悪いだけでなく、今頑張っていらっしゃる民間の支援をもゆがめる中身になっている、このことを指摘して、質問を終わります。
作成者 : fujinoyasufumi