入管法改正案の質疑が始まりました
- 会議録 -
○義家委員長 次に、藤野保史君。
○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
今日は、四人の参考人の皆様、本当に貴重な御意見をありがとうございます。
まず、四人の参考人全員にお聞きしたいと思うんですが、今回、法改正で、退去命令制度そして旅券発給申請命令制度が創設されまして、罰則もつくということなんですが、この制度をつくる理由がいわゆる送還忌避者への対応のためとされるんですが、しかし、送還の機能不全というのは本当に起きているのかというところをお聞きしたいと思うんです。
というのも、そもそも在留外国人というのは、もう二百九十万人に達して、九〇年代後半からすると百万人増えているわけですね。
その中で、二〇二〇年の出入国在留管理白書を見ますと、例えば不法残留者数というのは大きく減少していまして、九三年には三十万人いたんですけれども、二〇二〇年には八万人強まで減っています。在留外国人数に占める不法残留者の割合も、九五年は二二%あったんですけれども、二〇一九年は二・五%、十分の一になっています。送還だけで見ても、各年の退去強制令書発付件数と送還件数、これはほぼ同じで、九割以上の方は帰られているんですね。その帰っている帰り方も、実は、自費、自分で出国して、自費出国が九割以上に、九三%とか四%とか五%とかそんな感じであります。これは白書の数字であります。
濫用があることは私も否定はしないんですが、しかし、何か送還の機能不全というのは本当に起きているのか。これは皆さんどのようにお感じなんでしょうか。
○安冨参考人 お答えいたします。
一言で送還の機能不全というふうに評価するのはなかなか難しいと思います。いろいろな場面があると思います。そういう意味で、委員御指摘のような、数という意味でいうと、一見、送還の機能不全というふうに言えないんじゃないかというふうに評価されるのは理解できるところでございます。
しかし、もう少し細かくいろいろな場面を見てまいりますと、先ほども御質問にありましたけれども、国費送還はしなけりゃいけない、それからチャーター機も用意して国費送還をやらなきゃいけない、これに対する費用負担も大きいものがある、そういう場面もございます。これを送還の機能不全と言うかどうかは評価の問題ですから別ですが、ここに大きな負担がかかっているということは言えると思います。
一方で、今回の退去命令あるいは旅券の発給の命令、これに間接罰をつけております。この点は、むしろ御自身で、在留が認められない、本邦から退去しなければならないという立場にある方、この方々が自ら退去していただく、そうすることによって、費用的な面も含めて少し前進できるのではないかというような意図でございますので、そのように私は考えております。
○柳瀬参考人 お答えいたします。
私は、学者や法律家ではないので、厳密な法的な観点から申し上げることはできないんですけれども、送還しなくてはならない人を送還するという観点で考えますと、それは、しなければならない人は早く送還しなくてはならないと思うんですが、それは、本当の真の難民を早く救いたいという、それが一心でございます。
それから、先ほどの例えばチャーター機を利用してという件でございますけれども、ちょっと一言申し上げますと、一人一人を入管の職員がついて安全な国に送り返すというケースがありますけれども、チャーター機を利用しないで、個人個人の場合ですね。乗った途端に暴れてしまって飛行機から降ろされるとか、それから、そこでほかのお客様に失礼なことがあって降ろされてしまうとか、そういうことが度々起きたケースがあります。そこで、致し方なくチャーター機を利用してという、数人集まったので利用しているというケースがありますので、その方がほかの方にも迷惑をかけないし、様々なことを考えたことでそういうふうになったことと思っております。
以上です。
○市川参考人 今御指摘がありましたとおり、退去強制令書の発付件数と送還の件数を見ますと、それほど大きな食い違いというのはございません。そういう意味での機能不全はないのではないかということは言えると思います。
ただ、さはいいながらも、発付した退令と、退去強制令書とその年に送還した人が必ずしも一致するわけではなくて、何年か滞留している方といいますか、訴訟もしていないけれどもそのまま残ってしまっている方というのは、確かにいることは事実です。ただ、それを送還の機能不全とまで、そこまで言う必要があるかというところは、私は若干疑問を持っております。
それで、そういった人に対する手当てとして考えられることとしては、今回一つ法案の中にある、自主的に帰った場合には再入国の期間を短くしてあげましょう、こういうやり方を取る。それから、あと、IOMという国際移住機構が現に今、日本でやっておりますけれども、帰国のための準備をお手伝いして、送還で、何年も日本に暮らしていれば帰国すること自体にちゅうちょがあるので、向こうで暮らせるかどうか、帰国の環境をアドバイスしたり援助したりするというやり方で帰国を支援している。いろいろなやり方があるわけですね。
ですから、まずは、そういうソフトなやり方というか、罰則によるやり方ではない別のやり方でのアプローチというのをもっと検討するべきであろうというふうに思っております。そういう意味で、罰則というところまでやるのは行き過ぎではないかというのが私の考えでございます。
○児玉参考人 私も、機能不全というところまでには至っていないと思っております。
入管法上、強制送還は、本来、国費送還が原則でございます。むしろ、自費で出国する場合には許可を取らないといけない。そういう建前からしますと、国費がかかるのは法律が予定している当たり前の話であります。
そうはいっても、それで帰国を拒否する方はいらっしゃるわけですけれども、例えば、今、市川先生の方からIOMの話もありましたが、フランスの例ですと、フランスの場合は、なるべく自発的な帰国を促す、そのために旅費も渡し、帰った後に使えるようになるマネーカードにお金をチャージして帰国後使えるようにして、当面の費用を使えるようにして、それを渡して自分で帰ってもらうような促す制度があるというふうに聞いております。 それは、一見すると、そこまでやるのかということになるのかもしれませんけれども、トータルで見ると、チャーター機をチャーターしたりとか職員が付添いで行く場合よりもはるかに合理的になりますし、それは、本来この国にいてほしくない人を排除する、それは国家の作用として、国権の発動としてやるわけですから、それに国の費用がかかるのはやむを得ないことなのではないかと思います。
以上です。
○藤野委員 ありがとうございます。
専門部会、私も読ませていただいたんですけれども、この専門部会で、先ほど市川参考人が収容するかしないかの分かれ目とおっしゃった監理措置制度の前提として、仮放免の運用方針について繰り返し議論がされております。
今日持ってきたんですけれども、今の仮放免の運用というのは、こういうふうに真っ黒で全然見えないんですね。このことが専門委員からも指摘をされまして、例えば、第三回、二〇一九年十一月二十五日に宮崎真弁護士から、議論するに当たって、この仮放免運用方針、黒塗りの部分が多過ぎて判断できないのでお出しいただきたいという意見が出ていますし、第五回、二〇二〇年一月十六日には、論点整理として宮崎委員が、繰り返しになるが、仮放免運用方針の開示は議論の前提であり、現在マスキングがされたものが開示されているにすぎないと。第八回でも同じように、繰り返しの要請にもかかわらず開示されていない、仮放免に関する罰則を議論する以上、最低限の情報であり、かつこのように非開示したままで罰則規定を設けることはあり得ない、こういう意見が繰り返し表明されているんですね。
安冨参考人と、あと第五回に参加された児玉参考人にも、ちょっとこの点について、こういう議論のやり方そのものについてどのようにお感じになったんでしょうか。
○安冨参考人 お答えいたします。
確かに、仮放免の運用指針について、マスキングされている資料が専門部会に提出されたというのはそのとおりでございます。
仮放免の運用指針が全て開示されないと仮放免の在り方について議論ができないかというと、私は必ずしもそういうふうには思いませんでした。
したがいまして、今後の仮放免というものをどういう位置づけでやっていくのかという大きな議論として専門部会では取り上げたことなので、どこまで情報開示するかという話と、仮放免を今後どういうふうに整理していくのか、新たな収容代替措置との関連づけをどうするのか、位置づけをどうするのか、これについて、情報が全て開示されないと議論することができないというふうには認識しておりませんでした。
○児玉参考人 委員御指摘のとおりだと思います。
実は、先日いただいたこの黄色い資料にも仮放免運用指針が入っておりまして、さすがに国会の議論になりますので全て開示されているのかと思って拝見しましたら、三百ページに非公表、非公表と、黒塗りの部分が全て非公表となっています。現状の仮放免の運用の非常に重要な部分を占めるものを国会で審議していただくのに、議員の先生方に対してまでこれを非公表とするのは非常に不誠実なやり方ではないかと考えます。
実は、この不開示になった件に関しましては情報公開の裁判を起こしておりまして、一審が敗訴してしまいましたが、現在、控訴審で係属中です。
○藤野委員 実際、仮放免は、二〇一五年には三千六百六件あったんですが、二〇一九年には二千二百十七件まで減っているんですね。だから、減っているという事実があって、こういう真っ黒けの方針が出ているという下で、仮放免の運用の厳格化にどういう方針を出されたのかというのは大事な前提になるわけでして、どうもその前提となる立法事実や、今提案されている制度の前提となる資料そのものの分析が本当にされたのかなというのは大変疑問に感じております。
そして、児玉委員にお聞きしたいんですが、先ほど監理措置の話で、監理人についてのところが、私としては、今やはり信頼関係が基になっていると思うんですが、それがああやって義務が課される関係になると、支配、被支配の関係になるという指摘も資料にありました。この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○児玉参考人 おっしゃるとおりだと思います。
私も、仮放免の保証人を何人もやっております。本人を一刻も早く出したい、外に出してあげたいので、知り合いの方とか親族とかがいればそちらになってもらうんですけれども、どうしてもいないような場合には代理人の弁護士が保証人になることもございます。それは、何としてでも身体拘束から早く解放してほしい、そのために保証人が必要ならば自分がやろう、そういう関係性なわけです。
ところが、これが監理人の制度になってしまいますと、先ほど市川先生の方から話もありましたが、その人を監視しなくてはいけなくなってしまう。これはもう前提関係が崩れてしまいます。その報告をしなければ、あるいは虚偽の報告をしたら、自分自身が刑罰というか過料の制裁を加えられる可能性がある。これではとてもできません。ですが、監理人がつかないと外に出られないという前提だとすると、じゃ、逆に、入っている人のことを考えないで、おまえは監理人にならないのかという物すごい葛藤が生じる制度になっていると思います。
○藤野委員 ありがとうございます。
重ねて児玉参考人にお聞きしたいんですが、先ほどトレンドとしては不法残留は減っていると言ったんですが、今、政府は足下で増えているみたいなことを言うんですけれども、しかし、法務省の政策評価懇談会というのが今年の二月十六日にやられていまして、ここでインバウンドの関係というのも、政府がインバウンド政策を取っているということも指摘をされているんですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○児玉参考人 御質問ありがとうございます。
私の今日配付させていただいた資料の中の七番、資料七を御覧いただきたいんですが、こちらは議事録を一部取らせていただいています。十八ページと記載のあるところの下の方に出入国在留管理庁の回答がございます。 近年、不法残留者が増えた原因でございますけれども、私どもの見立てといたしましては、政府全体で観光立国実現に向けた取組が進められてきた結果、外国人入国者数が大幅に増加した、これが不法残留者数の増加に少なからず影響しているものと考えておりますという回答がされています。
もう一つ、後ろの方ですが、十八ページの下の方ですね。失礼しました。あとは、技能実習生が現場から耐え切れなくなって失踪してしまった、そういう人たちが不法残留の数に加わって増えているのではないかという質問に対しては、それは事実として存在する問題だというふうに理解してございますと回答されているのを承知しております。
○藤野委員 時間が参りましたので、終わりたいと思います。
しっかりと法案審議に生かしたいと思います。今日はありがとうございました。
作成者 : fujinoyasufumi