会社法改正案の審議がスタート
- 会議録 -
○ 松島委員長 質疑を続行いたします。藤野保史さん。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
早速質疑に入らせていただきます。
本法案は、株主提案権に新たな制限を加えようとしております。法案の三百四条二号では、いわゆる不当な目的の場合、例えば、自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的などの場合、あるいは第三号では、株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害されるおそれがある場合、会社は株主提案を拒絶できるということであります。
まず、法務省にお聞きします。
この三百四条などに該当するかどうかについて、どの機関が判断するんでしょうか。
○ 小出政府参考人 お答えいたします。
御指摘の第三百四条は、株主が株主総会の議場において議案を提案することができる旨を定めた規定でございます。
株主総会の議長は、適法かつ公正な審議により合理的な時間内に効率的に議事を進めるよう株主総会を運営する職責を果たすために、会社法三百十五条第一項に基づいて議事整理権を有しております。
株主が株主総会の議場において提案した議案が三百四条第一号から第四号までの場合に該当するかどうかについては、株主総会の議長が三百十五条一項の議事整理権に基づき判断することになるものと考えております。
○ 藤野委員 それでは、三百五条についてはどの機関が判断するんでしょうか。
○ 小出政府参考人 三百五条一項に基づく議案要領通知請求につきましては、三百四条の場合と異なりまして、株主が提出しようとする議案が同条第四項又は第六項の拒絶事由に該当するかどうかにつきましては、取締役会設置会社におきましては、取締役会が会社法二百九十八条第一項及び第四項に基づく株主総会の招集の決定の一環として、また、取締役会を設置していない会社においては、取締役が会社法第二百九十八条第一項に基づく株主総会の招集の決定の一環としてそれぞれ判断することになると考えております。
○ 藤野委員 今、取締役会等が判断するということでありました。
しかし、濫用に当たるかということと株主の権利行使というのをいわばはかりにかけて、濫用を理由に権利行使を制限するというのは、私は、そもそもこの株主提案権が会社法に導入された趣旨を没却するんじゃないかというふうに思うんですね。両者ははかりにかけるようなものじゃないと。一定の議論を経た上で、権利行使を優先しようということでまさにこの権利が新設されたわけであります。
法務省にお聞きしますが、一九八一年の国会でこの議論がされたと思います、導入されたと思うんですが、なぜこの株主提案権を導入するのか、国会ではどのように説明されていたでしょうか。
○ 小出政府参考人 お答えいたします。
株主提案権の制度は、昭和五十六年の商法改正によって、制度上、株主がみずからの意見を株主総会で訴えることができる権利を保障することにより、株主の疎外感を払拭し、経営者と株主との間又は株主相互間のコミュニケーションを図り、株式会社をより開かれたものにする目的で導入されたものでございます。
昭和五十六年五月二十一日の参議院法務委員会におきまして、当時の法務省民事局長は、株主提案権を導入する趣旨につきまして、「株主総会の形骸化ということが言われて久しいものがあるわけでありまして、これを何とかして生き生きとしたものにしたい、株主総会を、法律が期待しておりますそういう充実したものにしたいということを考えたわけであります。」と答弁しております。
○ 藤野委員 今御答弁いただいたところ、株主相互間のコミュニケーションという答弁もありました。
今御指摘のあった答弁をもうちょっと紹介しますと、当時の民事局長はこう答弁されているんですね。「自分の言い分、主張というものを会社に対して申し出て、そしてそれを総会の議題にしてもらうことができる。会社に対して自分の言い分をアピールする、あるいは他の株主に対して自分の主張を聞いてもらうということによりまして、会社との間のコミュニケーションを高めると申しましょうか、盛んにする、そして株主と会社の間の連帯感、ひいては信頼感というものを確保する方法として考えた」、こういう答弁がされております。
大臣にお聞きしますけれども、この答弁の趣旨というのは今も変わらない、こういう理解でよろしいでしょうか。
○ 森国務大臣 はい、その制度趣旨は今日においても変わらないものと認識しております。
○ 藤野委員 ですから、この一九八一年の議論というのは私は大事だと思っておりまして、何か自分の言い分をアピールするというだけではなくて、まさに会社と株主の対話ということで、他の株主とのコミュニケーションを高めるということも含むし、結局はそのことを通じて株主と会社の間の連帯感、ひいては信頼感を確保する方法として考えたということであります。
よく政府は濫用のおそれがあるというふうにおっしゃるんですね、この導入目的として、今回の法案の。ただ、この濫用のおそれというのは、一九八一年の当時も、実はもうさんざんといいますか、物すごく議論されて、ある意味、これは導入してはだめだとおっしゃる方々の最大の論拠の一つでございました。
それを全部を振り返る時間はないんですが、ちょっと一部振り返りたいと思うんです。実は、一九八一年と申し上げましたが、これは前段がありまして、もともとは一九七四年にも、当時はまだ商法でしたけれども、商法改正されております。ただ、それでは不十分だということで、その商法改正の際に、衆参の法務委員会、両方の法務委員会で附帯決議がなされているんですね。
こちらで紹介させていただきますと、衆議院の、当院の場合は、一九七三年の七月三日にこういう附帯決議がされております。「わが国の株式会社の現状にかんがみるとき、商法等に改正を要する問題が少くなく、今回の改正をもつてしてもその十分な実効をあげることは困難である。 よつて政府は、次の点について早急に検討すべきである。」といって、幾つか挙げる中に株主総会のあり方というもの、株主提案権は明示されておりませんが、株主総会のあり方とある。
参議院でも、紹介しますと、一九七四年、次の年の二月二十一日であります。附帯決議はこう言っているんですね。株主、従業員及び債権者の一層の保護を図り、あわせて企業の社会的責任を全うできるよう、株主総会云々かんぬんなどの改革を行うために、政府は、速やかに所要の法律案を準備して国会に提出すること、こういう附帯決議があるわけです。
法務省に確認したいんですが、この株主提案権の議論というのは、政府のみならず国会からの要請としても求められていた、これは間違いないですね。
○ 小出政府参考人 そのとおりだと承知しております。
○ 藤野委員 今紹介した両院の附帯決議は二年間にまたがっておりまして、当時の商法というのは一国会ですんなり通したのではなくて、七四年が参議院の附帯決議だとすると、一九八一年ですから、七年かかっているわけです。やはり、それだけかんかんがくがくの議論をして、この株主提案権をどうするかということも含めて議論をされていた。法制審にも照会されたり、各界にも意見照会されているんですが、この中でまさにその濫用ということがやはり何度も議論される。これは入れない方がいい、導入しない方がいいという人は必ずこの濫用の議論をするわけですね。
私も議事録を読ませていただきましたけれども、ちょっときょうは時間がないので、それをまとめた論文を配付資料の二で御紹介しております。これによりますと、こう書いております。
「このように、」というところで、結局、「委員は」というのは衆参の法務委員であります、「委員は総会屋等による株主提案権の濫用、個人株主の権利の減少のおそれ、株主提案権と単位株制度の法的アンバランス等を主張することで、株主提案権を認めることに大いに疑問を持っていた。」大いに疑問を持っていたというんですね。特に総会屋等による株主提案権の濫用といった考えが委員の意見の底流に存在していたと言うことができる、こういうふうに言っているんです。
その後が大事だと思うんですね。「政府は総会屋等による株主提案権の濫用のおそれよりもむしろ、株主提案権を少数株主権として認め、株主総会の形骸化の防止や株主の権利の強化を図ろうとすることに重点を置いていたということができる。」重点を置いていたというんですね。まさに、濫用というのが本当に議論されたんですが、やはり、それよりも、株主総会の形骸化を克服していくことが重要だという価値判断で提案権が認められた。その後にも書いていますけれども、結局、修正されていないんです、政府案は。そのまま通っているわけですね。
ですから、法務省にお聞きしますが、まさにこれが立法趣旨だ、だから、濫用と権利行使をはかりにかけて、何か濫用の場合は権利行使を制限してもいいなんというのは、もともとの何年もかけてきた国会の議論からしておかしいと思うんです。これは、大臣、いかがですか。
○ 宮崎大臣政務官 ちょっと先にお答えをさせていただきます。
委員御指摘のとおり、過去の国会における審議があったということは承知をしているところでありますし、立法の趣旨についても、例えば文献だけでなく教科書のようなものを読んでも、先生が指摘されたようなことの記載は当然あるわけであります。
ただ、今次、時代がだんだん移っていくことによって、いろいろな事例の集積もある。例えば、既にもう説明をさせていただいているところでありますけれども、非常に不適切な、株主総会における株主さんの、まさにこういうのを濫用的というんでしょうけれども、一人の株主によって膨大な数の議案が提案をされる。例えば百個の議案を提案したとか百十四個の議案を提案したというような、個別具体的な事例でもあったりして、そういうことが見られているという現実もございます。
それでまた、判例も出ているというようなこともございますので、これは御承知だと思いますけれども、平成二十七年の東京高裁の判例ですけれども、こういった事例もあるということも踏まえて今般の法改正に至っているということでございます。
○ 藤野委員 いや、私は濫用はないなんて言っていないんです。濫用はあるということは当然認識した上で、しかも、それをこの国会、この委員会を含めてさんざん議論した上で、濫用は確かにあるね、しかも、提案権なんというものをもし創設したら、それは更に悪化するんじゃないか、こういう懸念があったわけですよ。しかし、それを、議論の結果、それは濫用もあるし、事例もあるし、そのおそれがこの提案権を入れたら更に広がるかもしれないけれども、株主総会の活性化や少数株主の権利拡大という観点から、そちらの方が重点を置かれて、国会で修正もなくこの提案権が通った、実現したじゃないか、こういう提案なんです。
大臣、これは明確に重点は株主提案権の方にあるんじゃないですか。
○ 森国務大臣 委員の御意見は大変重要な御指摘だと思います。
委員のおっしゃるとおり、株主総会の活性化や少数株主の保護等に重点を置いたからこそ株主提案権が導入されたということでございまして、今回はその制度をなくすわけではなく、その制度があるという、その原則の上に立って、しかし、濫用はあるよねと議員も言ったとおり、濫用がこのところ見られてきた、そのことについてどのように考えていくかということが、ここまでの間に多様な角度からさまざまな御意見をいただいてきて、今回の法改正の措置がなされたというふうに理解しております。
○ 藤野委員 それは、立法趣旨で、株主提案権の重さというものに対する、大臣、やはりちょっと認識が違うんじゃないか。
濫用事例は民法の一般法でも規制できますし、議長の議場整理権もこのときに強化をされております。取締役会の権限というのも強化されているわけですね。ですから、本当に、濫用の事例というのはそうした各利害関係者が毅然と対応するということで当然乗り越えていこうということも含めて、この提案権が制定されているわけですね。
ですから、提案権をいじるなんというのはもともとの議論の到達点から全く違うし、ここは触れないで、ほかの部分で手当てするのが今までの会社法の到達点なわけであります。ですから、そこは株主提案権の重みというものをやはり本当にちょっと考えていただかないといけない。全く的外れなことをされていると思います。
具体的に、どのように株主提案権が行使されているかということを見ていきたいんですね。濫用とおっしゃっているのはごくごく一部だということであります。
配付資料の三を見ていただきますと、これは脱原発・東電株主運動に取り組んでいる皆さんからいただいた資料であります。きょうも傍聴にもお見えになっていただいております。配付資料の三はその一部なんですけれども、「私たちの議案にご賛同ください」という、いわゆる共同を広げようといいますか、そういう取組なんですね。ことしのものであります。
これを読んでいただくと、要するに、ことし日立が英国の原発計画から撤退したということを受けて、去年、私たち脱原発株主の提案議案の一つ、海外原子力関連企業への出資禁止、これは的を射た提案だったと思いますというふうに書いていると思うんです。そのとおりだと思うんですね。まさに経営にかかわる問題で、非常に重要な提起をされていた。
また、ここには載っていませんけれども、二〇〇七年の東京電力の株主総会では、議決権行使書面の閲覧を通じて自分たちの提案に賛同する株主を約八百人集められて、その結果、役員報酬の個別開示、個別に開示しろという提案については三三%もの高い賛同を得ることができております。
同じく役員報酬の個別開示の提案は、ことしの関電の、先ほどのは東電ですけれども、関電の株主総会でも提出され、ことしは四三・一%の賛同を得ているわけであります。
大臣、先ほど、立法当時の中島法務省民事局長の答弁、同じ御趣旨だとおっしゃいましたが、その答弁の中には、自分の言い分をアピールするだけでなく、「他の株主に対して自分の主張を聞いてもらうということによりまして、会社との間のコミュニケーションを高める」、これも趣旨だというふうにおっしゃいましたが、今のような実際のこういう活動はまさにこの法が期待する提案権の行使だと思うんですが、そのとおりでよろしいですか。
○ 森国務大臣 個別の事案に対してはお答えすることがなかなか難しいんですけれども、その上で、一般論として申し上げますと、正当な株主提案権の行使の場合は、これは認められる。つまり、今御指摘の、改正当時の事務方の答弁にのっとった正当な株主提案権の行使かどうかということが問題になりますので、客観的に判断して、当該提案が会社の経営を改善するなどの正当な株主提案権の行使であると認められる目的を有しているという場合には、専ら人を困惑させる目的とは認められず、当該提案を拒絶することはできないものと考えます。
○ 藤野委員 何か正当なものと濫用の事例を今一緒になっておっしゃったように思うんですが、私が聞いたのは、要するに、当時、他の株主に対して働きかけるということも、これは一般論で結構ですよ、他の株主に対して働きかけるということも正当な、要するに、まさに会社法が期待する議決権行使のあり方ですねということをお聞きしたんです。それだけ端的にお答えください。
○ 森国務大臣 先ほど御指摘の、成立時の議事録のとおりでございます。
○ 藤野委員 どれだけ権利行使するのに苦労されているかということも御紹介したいんですけれども、まず法務省にお聞きしたいんですが、八百人、先ほど賛同を集めたと言いましたが、これをやるために議決権行使書面を閲覧して、前の年、その株主の方がどういう議決権を行使されたかというのを調べる必要もあるわけですが、この議決権行使書面の閲覧について、大体どういう定めになっていて、大体どれぐらいの期間が認められるんでしょうか。端的にお願いします。
○ 小出政府参考人 お答えいたします。
議決権行使書面によって議決権を行使できる期間でございますけれども、書面による議決権行使、これは、議決権行使書面に必要な事項を記載して、法務省令で定めるときまでに議決権行使書面を株式会社に提出して行うものとされております。
そして、これを受けまして、会社法の施行規則では、当該期限を株主総会の日時の直前の営業時間の終了時とするか、あるいは、株主総会の日時以前のときであって、株主総会の招集通知を発した日から二週間を経過した日以後の特定のときをもって書面による議決権の行使期限とする旨定めたときは、その特定のときまでとしているところでございます。
○ 藤野委員 だから、大体二週間というのが一般的になってくるわけであります。二週間で、限られた期間でやるというのはなかなか大変なのであります。
しかも、三百十一条、現行法は何と書いてありますかといいますと、「株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、第一項の規定により提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写の請求をすることができる。」とあるんですね。
法務省にお聞きしますが、ここで言う謄写、謄写の請求というのは何なんでしょうか。
○ 小出政府参考人 お答えいたします。
一般に、株主が議決権行使書面の謄写を請求することができるということの意味は、会社は、株主に謄写のための場所を提供して謄写をさせ、その間、謄写を妨げてはならない義務を負うことを意味すると解されているものと承知しております。
○ 藤野委員 いや、私はこれを聞いてびっくりしたんですよ。謄写の請求とありますから、例えば、今の時代でいえば、コピーしてくださいと請求したら、請求することができると書いてありますから、それはもうコピーしてもらえるとか、あるいは、それが無理でもコピーはできるとか、費用負担の関係で、会社に費用負担が生じるなら自分でやりますよということであれば、謄写という場合、あるいは謄写の請求ができるという場合、そういうことができるのかなと思っていたんです。ところが、お聞きしますと、場所を提供して、謄写を妨げないというんです。一瞬、平安時代の話かなと私は思いました。
深刻なのは、私たちが聞いたところでは、この規定の解釈を盾に、企業側からコピーを拒否されるという例もあるらしいんですね。コピーしたらだめだと。どうするかといったら、手書きでやるわけですよ。手書きで写せと。
私はこれを聞いて思い出したのは、また思い出したんですけれども、何で毎回思い出すのか不思議なんですけれども、会社法で。失踪された技能実習生、聴取票、これは二千八百七十枚ありました。これは野党各議員が、五会派の議員が、当時、入れかわり立ちかわり取り組んでも、手書きしたら二週間かかったんです。わずか二千八百七十枚ですよ。株主というのは物すごい多いんですよ。それがどれほど大変な作業かというのは私はよくわかります。
大臣にお聞きするんですけれども、今の時代ですよ、たとえ謄写というのがかつてそういう、これはちょっと通告していないので感想でもいいですけれども、謄写を請求できる、こういう規定なら、解釈で、解釈の変更を検討するとか、やはり時代に合わせたものにする必要があると思うんですが、ちょっと率直な感想はいかがでしょうか。
○ 森国務大臣 今、藤野委員が御指摘なさったことについては、事務方にしっかり確認をさせて、その上でまたお答えしたいと思います。
○ 藤野委員 いや、確認というか、ああいう答弁で、それを盾に場所だけ貸すというのが実態なんです。これでは、ここでせっかく請求できると書いてある権利の実情が伴わないわけであります。ですから、これは確認ではなくて、事務方に指示していただいて、少なくともコピーは認めるというふうにしていただきたいというふうに思います。
そして、今のは現状の話なんです、この現状に加えまして、今回の改正案の三百十一条は、更にまた目的による制限が加わってくる。
これは法務省にお聞きしますが、何でこういう制限を加える必要があるんでしょうか。
○ 小出政府参考人 お答えいたします。
議決権行使書面につきましては、株主の住所等は法令の記載事項になっておりませんけれども、これが記載されていることがあるということでございまして、株主名簿の閲覧謄写請求権と平仄を合わせまして、議決権行使書面の閲覧、謄写を請求することができる要件をそろえたものでございます。
○ 藤野委員 いや、そこがよくわからないんですね。
名前等が含まれる、つまり、同質の情報が、百二十五条の株主名簿、名簿ですから、名簿閲覧請求権にあると。今回、三百十一条で、その権利行使のところに名前が入る場合もある、だから、同質だから、百二十五条にある目的の制限、目的の制限とは具体的には「業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で」などですね、三百四条と似ているんですけれども、こういう目的を加えるんだというんですけれども。
もともと、この法律、三百十一条が初めにできたときから、その権利行使書面に名前が含まれる場合があるというのは当然あったわけで、だから、同質の情報が含まれるから、百二十五条と同等に、三百十一条にも目的規定で制限をかけるんですというのであれば、もともとやっておけばいいじゃないですか、三百十一条に。何で今になって新たにやるんですか。
○ 小出政府参考人 お答えいたします。
議決権行使書面の閲覧謄写請求につきましては、株主名簿の閲覧謄写請求とは異なりまして、株主はその理由を明らかにする必要はなく、拒絶事由も明文で定められていなかったところでございます。
これは、先ほど申し上げましたとおり、株主名簿には株主の氏名又は名称及び住所を記載することとされているのに対しまして、議決権行使書面には株主の氏名又は名称及び行使できる議決権の数を記載することとされており、株主の住所は法令上の記載事項とされていないこと、また、いわゆる名簿屋に情報を売却するといった目的で閲覧謄写請求がされた場合には、権利濫用として、会社側は当該請求を拒絶することができると解されていたことによるものと考えられます。
しかしながら、議決権行使書面には、株主名簿と同様に、株主の住所等が記載されていることが多く、また、株主名簿の閲覧等の請求が拒絶された場合に、議決権行使書面の閲覧等の請求が濫用的にされている可能性があるという指摘、あるいは、株式会社の業務の遂行を妨げる目的など、正当な目的以外の目的で議決権行使書面の閲覧等の請求がされていることが疑われる事例があるという指摘がされるに至ったところでございます。
そのような事情がございまして、改正法案では、株主名簿の閲覧等の請求に関する拒絶事由と同様の事由に該当する場合には、議決権行使書面の閲覧等の請求を拒むことができるというふうにしているところでございます。
○ 藤野委員 そういう説明を受けたんですけれども、やはりよくわからないんですよ。そういう事態があるのなら、濫用ともおっしゃいましたけれども、やはりそういうのは別で、権利を制限することによって濫用を防ぐという発想そのものが株主提案権にはなじまないんです。濫用というのはあるという前提で、しかし提案権は保護するという明確な立法意思があるわけですね。ですから、それをまたここで、その権利行使の実質的な部分である書面閲覧をこれまた制限するというのは、そのもともとにある発想が私はおかしいというふうに思います。
時間の関係でちょっと最後になりますけれども、やはり、なぜ今になって株主の権利行使を制限するのか、合理的な説明というのがないわけです。
確かに、野村ホールディングスとかHOYAとかあるのは承知をしておりますけれども、立法事実と言えるようなものはないわけであります。結局、経営者にとって都合の悪い提案をなるだけ出さないようにしようという点にあるのではないか。ただ、逆に、それは結局、企業への不信を増幅して、健全な発展を脅かすと思うんです。
配付資料の四を見ていただきたいと思うんですけれども、これは一九八一年五月二十七日の参考人質疑で、神田秀樹法制審の部会長の師匠筋に当たる方だと思うんですけれども、竹内昭夫東大教授……
○ 伊藤(忠)委員長代理 藤野委員、質疑時間が終結しました。
○ 藤野委員 はい。わかりました。
では、一点だけ。
要するに、この参考人が指摘しているのは、真ん中あたりにあります、「わが国における経済社会というものを支えております企業のいわば姿勢を健全にし、国民、投資家大衆との間のコミュニケーションを太くする、国民の側から企業に対する不信の念をぬぐい去っていく一つの手段」、こういう指摘なんですね。
ですから、今、関電とか日産とか東芝とか、まさに不信の念が広がっているわけであります。取締役も社外取締役も監査役もその役割を発揮できないような事案がふえているわけですね。ですから、そういうときこそ、今の時代こそ株主との対話が必要だと思うんですが、大臣、この点だけお願いします。
○ 宮崎大臣政務官 簡潔にお答えいたします。
先ほど大臣もお答えいたしましたけれども、個別の事案にはという前提でお答えしましたけれども、一般論として考えれば、株主がその正当な株主提案権の行使としてやってきた場合に、それが、今いろいろな、さまざまな御指摘があったような、きちっとしたコミュニケーションがされるということを否定するものではないわけであります。
他方、また、時代の進展などに伴って、先ほど、もう繰り返しになり、言いませんけれども、そういった事情もあって、今回こういう法改正に至っているということも御理解いただければと思っております。
○ 藤野委員 引き続き審議することを述べて、質問を終わります。
作成者 : fujinoyasufumi