予算委員会 新型コロナウイルス対策と東京高検検事長定年延長問題
今日の予算委員会。
はじめに新型コロナウイルス対策。
クルーズ船から下船が始まり、乗客2名が亡くなる事態。
受け入れ先の愛知県岡崎市の医療センターがある地元で市民説明会があり、100席の会場に200人以上が参加。
しかし、配られた資料は一般的なビラ一枚だけ。不安の声が相次いだといいます。
市民の不安に寄り添った相談窓口の設置、必要な医療へのアクセスや人的支援の強化を求めました。
続いて、東京高検検事長の定年延長問題。
憲法、刑訴法の立法趣旨からしても、今回の定年延長が許されないことを暴露しました。
かつて「ミスター検察」と呼ばれ「秋霜烈日」という言葉の生みの親である伊藤栄樹元検事総長は「巨悪を眠らせるな、被害者とともに泣け、国民にウソをつくな」と部下に訓示しました。
巨悪による検察への政治介入を許すな!引き続き追及します!
- 会議録 -
○ 棚橋委員長 次に、藤野保史君。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
まず、新型コロナウイルス対策についてお聞きします。
本日、新たに日本人二名の方の死亡が明らかになりました。このお二方はダイヤモンド・プリンセス号の乗客で、ウイルスに感染し、入院して治療を受けていらっしゃった。大変残念ながら、お亡くなりになりました。心からお悔やみを申し上げたいと思います。
きのうから、このダイヤモンド・プリンセス号の乗客の下船が始まっております。滞在先として受入れを表明した愛知県岡崎市の藤田医科大岡崎医療センター、私も心から敬意を表したいと思いますけれども、十八日夜に、無症状で陽性だった二十四名の方とその家族八名、合計三十二名が収容をされております。
同大学の広報、プレスリリースによりますと、今後、数日に分けて最大百七十名を受け入れる予定だというふうに広報されております。
既に、三十二名の中から肺炎の症状があった方四名が県内の医療機関に緊急搬送されております。陽性反応があった人たちでありますので、この三十二名のうちから既に四名ということでありまして、今後百七十名を受け入れていくということになりますと、同じような事態が、近隣の医療機関に緊急搬送する、こういうことはあり得ると思うんです。というのも、同センターは医療行為が行えないという、検温とか血圧測定はできるんですけれども、それができないというところでありますので、そこのところを、今後あり得る事態というふうに思います。
ですから、転院先というのが今後必ず必要になると思うんですが、この転院先の確保、あるいは転院の状況等についてどのように把握をされているんでしょうか。
○ 加藤国務大臣 今御指摘ありました藤田医科大学岡崎医療センター、また愛知県岡崎市、また周辺の皆さん方には、大変な御理解をいただきながら今回のクルーズ船での無症状の病原体保有者の受入れをいただいておりますことに、改めて感謝を申し上げたいと思います。
ただ、今委員御指摘のように、これはまだ病院開設前ということでありますので、無症状の方であればこうしてお受けいただくわけでありますけれども、症状が出れば病院の方へ回さなければならない。
今回の中にも明らかなインフルエンザの方もおられたようでありますけれども、いずれにしても、周辺の病院体制との連携が必要だということで、愛知県とそれから私どもと連携をして、周辺の病院、医療体制、これをしっかり連携をして、引き続き、ここに無症状の病原体保有者の方、更に搬送させていただく中においても、病院において、そうした病気が発症したときにはどこでしっかり受けとめていただけるのか、仕組みをしっかりとつくらせていただきたいと思います。
○ 藤野委員 十八日の夜に初めて住民説明会が行われました。百席が用意されたけれども二百人以上が参加したと聞いております。受け入れる場所があってよかったという地元の声もありますが、突然の受入れでありますので、戸惑いの声も上がっております。
配付資料の一はその記事ではありますけれども、近くに、道を挟んで小学校もあったりするということであります。
この説明会で配付されましたのがこのビラ一枚だけでありまして、これは、マスク、買い占めなくても大丈夫とか書いてあるんですけれども、いわゆる一般的なビラだけなんですね、会場で配付されたのは。
私、そのときの議事録も読ませていただきました。議事録を読ませていただきますと、冒頭、厚労省の方がこうおっしゃっています。「皆様方の心配していることの半分以上は、危惧に終わると思います。」ここから始まるんですね。一時間の予定だったのが二時間以上やったんですが、結果どうだったかというと、こういう声が上がっている。小学二年生の娘が怖がっているが、住民目線での説明はなかったというんですね。センターから道を挟んで目の前に小学校があるわけですね。ですから、やはり不安になるのは当然だと思うんです。
そうした、まさに、住民目線に立った説明が、冒頭、皆さん方の心配していることの半分以上は危惧に終わるという、そこから始まったにもかかわらず、やはりこれは解消されておりません。それどころか、先ほど大西委員から紹介もありましたけれども、厚労省の担当者から、ゴジラでもない限り、道路を越えて学校まで届くようなくしゃみはあり得ないなどという発言まであったと言われております。
厚労大臣にお聞きしたいんですが、住民の不安、やはり突然のことでもあります、そして、これはこの岡崎市だけでなく、今後いろいろなところで考え得る、既にさまざまな地域、千葉の勝浦や和歌山でもあるわけですけれども、やはりそうした市民の不安をしっかり受けとめて対応していくことが重要じゃないか。
とりわけ、私、懸念しているのは、せっかく受け入れてくださった施設に対する差別といいますか、住民感情、さまざまであります。これはやはり厳重な警護の装備とかを見ますと、そうした思いに駆られるのは当然な面もあります。
ただ、やはりそうした思いをしっかり受けとめて対応していく、厚労省の担当者の方が何を発言するか、どういう説明をするか、それがそうした感情を助長するのか、それとも解消するのかにかかってくるわけですから、そうしたことをしっかり認識して対応していくという、その点についてお考えをお聞かせください。
○ 加藤国務大臣 今回の新型コロナウイルス、まだこれはどういうものなのかがわからない。それから、もう一つの課題は、これに対するワクチンとか、あるいはこれを治療するという方策も明らかになっていない、どちらかといえば対症方法によらざるを得ない。そうしたことも含めて、いろいろ住民の方が御不安を持つのは、これは当然のことだと思います。
そして、これは説明会でありますから、説明会は、そういった不安や心配に対して答えていくことによって御理解を深めていく、そういう場でなければならないというふうに思いますので、今の指摘、あるいは先ほどの大西委員からも御指摘をいただきました、全くそぐわない発言であり、説明であったということ、これは我々もしっかり反省をしながら、これから、また、この地域だけではなくて、実際の病院においてもいろいろ今回の方を受け入れていただいておりますから、いろいろな不安が周辺にもあることは十分承知しながら、そうした皆さんの理解を得るべく努力をしていきたいと思います。
○ 藤野委員 ぜひ、本当に住民の心配に寄り添った対応を求めたいと思います。
厚労大臣は退席いただいて結構でございます。
○ 棚橋委員長 厚生労働大臣におかれましては、御退席いただいて結構でございます。
○ 藤野委員 次に、東京高検の黒川検事長の定年延長問題についてお聞きします。
桜を見る会で、安倍総理自身への刑事告発が行われております。そして、元閣僚等に対する刑事訴追、家宅捜索、こういったことが行われている。まさにこうしたもとで起こったのが、今回の異例な定年延長であります。
この問題を考える上で、なぜ検察官には普通の公務員と異なる特別の定年の規定があるのか、なぜ検察官は特別な制度があるのかということを私は考える必要があると思うんです。
そこで、検察庁法の立法趣旨というものを、さまざまな法律の立法趣旨をちょっと検討したいと思うんです。
法務大臣にお聞きしますが、検察庁法というのが今回問題になっているわけですけれども、検察庁法の立法趣旨について、当時の国会で何と説明されているでしょうか。
○ 森国務大臣 検察庁法の法案提出当時の提案理由につきましては、当時の司法大臣が、「新憲法が司法権の独立につき深甚の考慮をいたしておりますことに鑑みますれば、狭義の意味の司法機関、すなわち裁判機関にあらざる検察機関は、これを裁判所と別個独立のものとすることを相当と思料いたしました結果、裁判所法とは別に、検察機関の組織を定めることといたしたのであります。」と説明しているものでございます。
○ 藤野委員 今御答弁いただいたように、当時の、当時というのは一九四七年三月十八日ですけれども、司法大臣が、要するに、新憲法が、今の憲法が司法権の独立につき深甚の考慮をしているんだと。つまり、司法権の独立の思想を一層鮮明にする、そのために検察庁法を提案するんだということなんですね。
もう一つ確認したいと思うんです。今度は事務方に教えていただきたいんですが、これも大臣ですかね、これも当時の大臣ですので。
刑事訴訟法改正案の提案理由、刑事訴訟法、これについては、当時、何と説明されているでしょうか。
○ 森国務大臣 昭和二十三年五月二十八日の衆議院司法委員会において、刑事訴訟法改正案の提案理由は、御指摘の点については、「新憲法は、各種の基本的人権の保障について、格別の注意を払つているのでありますが、なかんずく刑事手続に関しましては、わが国における従来の運用に鑑み、特に第三十一条以下数箇条を割いて、きわめて詳細な規定を設けているのであります。」「さらにまた新憲法は、第六章におきまして、司法権の独立を強化し、最高裁判所に違憲立法審査権や、規則制定権を与えるとともに、その構成にも、特別の配慮をいたしているのであります。そのため新たに裁判所法や検察庁法の制定が必要とされたのでありますが、この方面からも、現行刑事訴訟法には、幾多の改正が免かれないことになつたのであります。」などと説明されております。
○ 藤野委員 今のは配付資料の二と三、今のが三の方であります。まさに憲法の理念に基づいて検察庁法や刑事訴訟法がつくられたということが語られております。
例えば、今御答弁ありました刑事訴訟法の提案理由の中でこういうのがあるんですね。なかんずく刑事手続に関しましては、我が国における従来の運用に鑑みましてと。この我が国における従来の運用というのは何なのかということなんですね。
これは、戦前の刑事訴訟手続のもとで、治安維持法による弾圧、特高警察などによる人権侵害が相次いだ、時には拷問で命を落とすことまで起きた、こういう痛苦の歴史のことを指しているわけですね。我が国における従来の運用というのはそういうことであります。だからこそ、こういうことが二度と起きないようにするために、最高法規である憲法に、三十一条以下十条にわたって、極めて詳細な刑事手続における人権保障の規定がある。刑事手続の規定を十条も設けている憲法なんというのは恐らく日本だけだと思います。
憲法学の大家、泰斗である芦部信喜先生の本にはこう書いてあるんですね。日本国憲法は、三十一条以下において、諸外国の憲法に類を見ないほど詳細な規定を置いている、これは、明治憲法下での捜査官憲による人身の自由の過酷な制限を徹底的に排除するためである。
明治憲法下での捜査官憲による人身の自由の過酷な制限を徹底的に排除するために、最高法規である憲法にそうした条文が置かれている。そうしたことを受けて刑事訴訟法がつくられ、そして検察庁法がつくられているわけですね。私は、こうした由来というのが非常に重要だと思います。そうした憲法や刑事訴訟の手続を担う仕組みにつくられた検察庁法が今回問題になっているわけですね。
その上で、個々の条文についてもちょっと見たいと思うんですが、これは事務方で結構ですけれども、今回焦点の一つになっているのが、検察庁法三十二条の二の解釈だと思います。これは、国家公務員法が一九四七年に制定されたことを受けて、この国家公務員法と検察庁法の両者の関係を整理しないといけないね、こういう必要が出てきたために、その整理のために、既に検察庁法はあったんですが、三十二条の二というものが新設されました。
法務省にお聞きしますが、この三十二条の二の提案理由について、どう説明されていたでしょうか。
○ 川原政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の点につきましては、検察官は、刑事訴訟法により、唯一の公訴提起機関として規定せられております、したがって、検察官の職務執行の公正なりや否やは、直接刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすものであります、このような職責の特殊性に鑑み、従来検察官については、一般行政官と異なり、裁判官に準ずる身分の保障及び待遇を与えられたものでありますが、国家公務員法施行後といえども、この検察官の特殊性は何ら変わることなく、したがってその任免については、なお一般の国家公務員とは、おのずからその取扱いを異にすべきものであります、よって、本条は、国家公務員法附則第十三条の規定に基づき、検察庁法中、検察官の任免に関する規定を国家公務員の特例を定めたものとしたものでありますと説明されております。
○ 藤野委員 今答弁がありましたけれども、この答弁を読んで、強調されているのは、やはり検察官の職務の特殊性という言葉が複数出てくるわけであります。
例えば、検察官には、刑事訴訟法の二百四十七条で、唯一の公訴機関、もちろんここにもあるんですけれども、この答弁にも、刑事訴訟法により、唯一の公訴機関として規定されていると。まさに、こうした特殊性があるわけです。そして、この検察官の職務執行が公正に行われるか否かは、直接刑事裁判の結果にも大きな影響を及ぼす。時には政治家にも捜査、起訴を行うわけですね。公訴権を独占する公益の代表者とも言われております。公益の代表者なんです。
法務大臣にお聞きしますけれども、基本の基本なんですが、要するに、こうした、例えば刑訴法二百四十七条によって唯一の公訴提起機関とされている、直接刑事裁判に大きな影響を及ぼす、こういう検察官の公益の代表者としての特殊性は今も変わらないと思うんですが、基本的な認識をお答えください。
○ 森国務大臣 委員のおっしゃるとおりだと思います。
○ 藤野委員 今も変わらないということですね、特殊性が。ちょっとその辺をもう一回。
○ 森国務大臣 検察官は、司法権の行使と密接不可分な性質を持っておりますので、準司法的な役割を担うという意味では特殊性を持っております。一方、行政機関の一員であるという身分も持っておりますので、その両者を兼ね備えた特質を持っているというふうに理解しております。
○ 藤野委員 ミスター検察と呼ばれて、秋霜烈日という検察官の職責の厳しさをあらわす言葉の生みの親である伊藤栄樹元検事総長は、こう部下に訓示したと言われています。巨悪を眠らせるな、被害者とともに泣け、国民にうそをつくなと。
ですから、やはり検察官というのは非常に特殊な立場なんです。今大臣は行政機関の一般とおっしゃいましたけれども、戦前の痛苦の経験に基づいて世界に例のない憲法を具体化する。それはまさに公訴権を独占する、こうした特別な職責を担っているわけですね。ですから裁判官に準ずる身分保障も与えられているということであります。
そういう点では、先ほど紹介いただいた答弁の中でも、そういう検察官の職責の特殊性がある、だから、三十二条の二の中でも、国家公務員法施行後といえども、この検察官の特殊性は何ら変わることなく、したがってその任免については、なお一般の公務員とは、おのずからその取扱いを別にすべきものというふうにされているんです。おのずから違うんです。それはやはり、検察官の職責、非常に特殊な責務を担っているということだから、身分保障のあり方もおのずから違うわけです。
ですから、検察庁法と国公法の適用関係は極めて明瞭でありました。つまり、検察官に国公法の定年制度は適用されないということであります。検察官にはそうした確固とした解釈がずっと続いてきたわけですけれども、今回、これが変更された。これはいかに異常なことかということなんですね。
配付資料の五をごらんいただきたいと思うんですが、これは人事院総裁の書簡というものでありまして、一九七九年のものであります。
人事院総裁にお聞きしたいんですが、この書簡というのは、一九八一年の国公法改正に向けて、総理府から依頼を受け、その依頼を受けて人事院で検討したその結果をまとめたもの、そういう理解でよろしいですか。経過のみお答えください。中身は後で聞きます。
○ 松尾政府参考人 お答えいたします。
委員の御指摘どおりでございます。
○ 藤野委員 これ、見ていただきますと、黄色く塗っている、定年制度の内容というのがあると思うんです。ここを見ていただきますと、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)とありまして、(5)、(6)はいいんですが、(1)、(2)、(3)、(4)がポイントなんですね。(1)というのは適用範囲、(2)が定年、(3)が退職日、(4)が勤務延長及び再任用であります。これらが全部そろって定年制度なんですけれども、問題は、(1)の適用があって初めて(2)、(3)以下の話になるという話であります。
ただし、この書簡の赤線を引っ張っているところにありますように、適用範囲のところで、「ただし、」以下にありますように、検察官及び大学の教員については、既に検察庁法及び教育公務員特例法により、定年制度に関する規定が設けられているので、それらの規定によるものとするとされているわけであります。つまり、やはり人事院というのはこの(1)の適用がないという書簡をまとめているわけですね。適用がないんです。
ですから、適用がないんだから、(2)と(3)についても、もともとですけれども、独自の定めがある。(4)の適用もないわけです。これはもう当たり前のことだと思うんです。特例といった場合、問題になるのはこの(1)なんです。
ところが、今回、森大臣は、解釈か何かよくわかりませんが、この検察庁法が定める特例は、(1)じゃなくて、(2)、(3)だと言い出したんですね。違うんですよ。特例というのは(1)なんです。その(1)について、そこの「ただし、」に書いているように、検察官を外しましょうとなっている。まさに特例が書かれているわけであります。
これを(2)と(3)の話にして、(2)と(3)は検察庁法に確かに書いてあるけれども、(4)が書いていない。(4)は検察庁法にないから国公法を適用するんだと言い出したわけです。しかし、おかしいんです。(1)で、特例が、もう外すとなっているんですから、(4)の話まで行くはずがない。とんでもない解釈だと思います。
森大臣、何でこんな解釈を行ったんですか。
○ 森国務大臣 委員の御指摘どおり、勤務延長制度の導入当時、検察官には、勤務……(藤野委員「解釈について聞いています、当時は知っています」と呼ぶ)当時解釈されていたと承知をしておりますが、今回は、国家公務員の一般の定年の引上げに関する検討を行っていた中で、その検討の一環として、検察官についても検討を進める過程で、国家公務員法と検察庁法との関係を検討したところでございます。その中で、検察庁法を所管する法務省として、今御指摘なさいました特例というのが何かという解釈を、定年年齢と退職時期の二点であるように解釈しました。
また、先ほどおっしゃった趣旨の点ですけれども、勤務延長の制度について、準司法官であるというような御指摘がございましたが、この点についても、準司法官であるという面と、それから行政官であるという面がございますが、先ほどの身分保障でも、行政官という意味では懲戒処分も裁判官と違って適用されます。
そのような中で、この勤務延長の趣旨が検察官に及ぶかどうかということを検討したときに、公務遂行上必要な場合もあるのではないかと。一切、どんなときも延長できないということが、先ほど言った準司法官という身分ということとその関連性を検討した結果、勤務延長制度の趣旨は検察官にもひとしく及ぶというふうに解釈をしたところでございます。
○ 藤野委員 いやいや、先ほど大臣は検察官の職務の特殊性について答弁されましたけれども、職務の特殊性は変わらないわけですよ、特殊性は。変わらないのに定年制度だけ変えるというのが今回のあれなんですよ。変えられないんですよ。特殊性が変わらないんだから、定年制も変えられない。変えてはいけないんです。それを今回手をつけている。
ですから、もともと特例というのはこの(1)なんです。適用があるかどうかという範囲の話なんです。まさにこれが特例で、そこは外しましょうという話をしていて、(2)、(3)、(4)の話じゃないんです、特例というのは。それを今回、突然、(2)、(3)、(4)と言い出した。これは曲解以外の何物でもないというふうに思います。
書簡を出した人事院に聞きたいんですが、この書簡を出したいわゆる考え方、これは当時の議事録を読みますと、一年半ぐらいかけて鋭意検討された結果、こういう結論に達したというふうに伺っているんですが、人事院としてはもともとこういう書簡の解釈をしていたということでよろしいですね。もともとの方です、今じゃなくて。
○ 松尾政府参考人 お答え申し上げます。
詳細な検討過程は現時点では明らかではありませんけれども、検察官の定年年齢等につきましては、国家公務員法に定年制が導入される前から、身分関係の特例として定められていたという経緯等に鑑みまして、引き続き国家公務員の特例として取り扱うことが適当と判断したものと考えております。
○ 藤野委員 いや、かみ合っていないんですけれども。私は、皆さんが一年半もかけて、苦労を重ねて、当時の議事録を読むと、いろいろな論点も出てきているとわかります。そうやってできたのがこの書簡ですねということを単純に確認したかったわけであります。
ですから、これは、そういう、ある意味、人事院として、政府から独立した機関として、非常にやはり公務員にかかわる大事な問題だからちゃんと議論しなきゃいけないと。当時の議事録はこう書いてあるんですよ。人事院といたしましては、実は定年制度につきましては、一般職公務員のいろいろな問題について、我々人事院といたしましても、退職管理の一つの重要な形態としての定年制というものについては、従来から非常に大きな関心を持っておったことは事実でありまして、相当慎重に取り組みました結果、約一年半ぐらいだと思いますが、その期間に鋭意検討を重ねた結果、結論が得られましたと。当時の藤井総裁が国会でこう言って説明されているわけであります。だから、法務省はこれを乱暴にひっくり返したわけですね、こうやって検討されたものを。
ちょっと時間の関係で、法制局にもお聞きしたいんですが、かつて、一九七五年二月七日の当委員会、予算委員会で、行政府が勝手に法律の解釈を変えられるのかどうかと聞かれて、当時の内閣法制局長官は何と答弁していますか。
○ 近藤政府特別補佐人 お尋ねの、昭和五十年二月七日の衆議院の予算委員会で、当時、吉国さんが長官でございましたが、答弁は、「法律の解釈は、客観的に一義的に正しく確定せらるべきものでありまして、行政府がこれをみだりに変更することなどはあり得ないものでございます。」こうお答えしています。
○ 藤野委員 これがやはり内閣法制局の立場だなと私は思うんです。行政府が勝手に法律の解釈を変えられるのかと聞かれて、行政府がこれをみだりに変更することなどあり得ないと、極めて道理ある答弁だと思うんですね。
ところが、今回、配付資料の六を見ていただきますと、応接録というのが私の部屋に届けられたんですね。これは、勤務延長制度、国家公務員法第八十一条の三、検察官への適用についてというもので、その真ん中あたりに「標記の件名について、」とあると思うんですが、「別添のとおり、照会があったところ、意見がない旨回答した。」という非常にそっけない一文で終わっております。意見がないと。
内閣法制局にお聞きしたいんですが、意見がないというのはどういうことなのか、ちょっと御説明いただけますか。
○ 近藤政府特別補佐人 私ども、応接録のときに、大体こういう形で一文、二文の答えは言いますけれども、もちろん意見を求められるというのが私どもの所掌上の事務でございますから、意見があるかないかを言うというのが職務でございますので、通常こういう形でお答えをしております。
もともと、各法律の解釈が各所管の省庁において責任を持って日々やっておられるところでございまして、各省庁で疑義があるときに法制局に意見を求めてくるということでございますので、相手方の考え方が私どもとしても合理的であるというふうに理解し、おかしくないと思った場合には意見なしということで、通常、相手方から考え方が紙で示されますから、イエスかノーかを通常答えますので、意見なしということで了解ということでございます。
○ 藤野委員 やはり法の番人と言われるところであって、かつ、みだりに省庁が解釈を変えようとした場合に、それをやはりストップする責任があると思うわけです。ところが、今回、意見がないということであります。
法制局長官は、二月十七日の予算委員会でこう答弁されているんですね。法務省がこう考えたいというので了としたと答弁されているんですが、各省庁が考えたいと言えば、国会で答弁に縛られなくなるということになりますと、これはもうとんでもない話になってくるわけであります。
森大臣にお聞きしたいんですが、よく森大臣は、八一年のときに、当時の説明の第四項を挙げて御説明されるんですが、私は大臣の答弁を読んで、その第四項に関係する八十一条の六とか十八条の二とか、何かもう穴があくほど読んだんですけれども、さっぱりわかりません。あれがどうして検察官に定年の延長を認める根拠になるんですか。
○ 森国務大臣 当時の議事録の中に法制度が羅列してあるところの御指摘だと思いますけれども、それを全てパッケージとして検察官に定年制の適用がないというふうに、これまた別の、五日前の議事録でございますが、そちらから読み込んだということを御指摘を受けましたので、それに対する答弁として、それをもしパッケージであるとするならば、適用……(藤野委員「いや、私の質問は、何で根拠になるのかということなんです。パッケージとかそういうことじゃない」と呼ぶ)今それを御説明しているんですけれども、それが、もし定年制という意味が……
○ 棚橋委員長 どうぞ説明を続けてください。
○ 森国務大臣 はい。それが全てを指すということであれば、内閣総理大臣の総合調整機能が検察官に及んでいるということの説明がつきませんので、それでは、定年制の意味とは何だろうか、定年制について特例が設けられているという、その特例は何だろうかということを解釈をさせていただいた、今回その解釈をさせていただいたということを御説明申し上げたところでございます。
○ 藤野委員 全くお答えになっていないですね。
大臣の答弁の中で、国家公務員法八十一条の六、それなんだという答弁もあるんです。私、その八十一条の六も読んでみました。でも、主語はあくまで内閣総理大臣なんですね。何をやるかというと、必要な調整をやるというんです。当然ですよ、これ。検察官だって行政府の一員なんだし、それはいろいろ定年制度は省庁ごとにそれぞれありますから、調整をする、これは当たり前のことです。これが何で今回定年を延長する根拠になるのかさっぱりわかりません。一〇〇%、何か適用されたって、関係ないんですよ、これは。
十八条の二も引かれているんですが、これも、主語は内閣総理大臣、やることは必要な調整と言っています。これは全く私は根拠にならないと思うんですね。
それともう一つ、大臣がよくおっしゃるのは、慎重な検討の結果とおっしゃるんですけれども、これは恐らく、八十一条の三の規定を受けて人事院規則一一―八の七を認定されていると思うんですが、今回、黒川さんの場合、この七の何号に当たるんですか。
○ 森国務大臣 これは、勤務延長制度に関する解釈の変更ではなくて、個別の人事の方についての御指摘だというふうに理解をして御答弁申し上げますけれども、黒川検事長については、人事院規則一一―八第七条三号の、「業務の性質上、その職員の退職による担当者の交替が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずるとき。」に該当するものとして勤務延長させるところとしたものでございます。
○ 藤野委員 三号というお話でありました。
これは、いわゆる業務の特殊性という答弁も今ありましたけれども、一号は属人的な、どうしてもその人じゃないとできない、二号は勤務状況、例えば、離島であって簡単に補充できないとかそういうことで、三号が今おっしゃった業務の特殊性なんです。
ただ、この業務の特殊性を検察に当てはめるというのは、これは非常に私は問題だと思うんです。というのは、検察というのは検察一体の原則というのがあるわけですね。ほかの行政ももちろん一体で動きますから、そして、全国一律、ユニバーサルサービスの要請はあります。ただ、なぜこの検察のみ、検察同一体の原則といいますか、そういう一体の原則が求められるのか。これは、やはり検察が公訴権を独占する、こういう立場にあるからです。そして、起訴便宜主義もあって、起訴しないこともできるんです。こういう権限もある。こんな権限を持っているのは検察だけなんですね。
ですから、こういう巨大な権限を持っている検察が政府などの不当な干渉によって左右されれば、司法の独立は有名無実になる。そうしたこともあって、検察権の行使というのが均等になされるように、さまざまな、いろいろな条文があるわけですね。
ですから、検察というのは一体じゃないといけないんです。先日、他の党の委員が金太郎あめという言い方をしていましたけれども、そうじゃないといけないんです、起訴を独占しているから。全国どこでも、その人によって起訴する、起訴しないが変わってしまったら大変だから、検察というのは金太郎あめじゃないといけないんですよ。
だから、業務の特殊性なんということを強調しますと、この検察の一体性と大きく矛盾してくる。大臣、そう思いませんか。
○ 森国務大臣 検察官同一体の原則というのは、検察官が行政権の一部であることから、検察権行使の均斉と適正を図るため、上司の指揮監督に服させるというものであり、検察官同一体の原則は、一般の行政機関と同様、個々の職員が上司の指揮監督に服することなどは同様であると解釈をしております。
検察官は、その点において一般の行政機関の職員と異なるところはなく、検察官同一体の原則は検察官への……(発言する者あり)
○ 棚橋委員長 説明をきちんと聞いて。静かに。
○ 森国務大臣 勤務延長制度の適用と何ら矛盾するものではないと解しております。
○ 藤野委員 いや、私はほかの省庁とは違うと言っているんです。公訴を独占しているんです。公訴しないこともできるんです。こんなことは検察しかないんです。だから問題になるんです。それを、一番当てはめてはいけない業務の特殊性によって黒川さんを定年延長させている。これは制度をまさに没却するものですよ。濫用であります。
もう時間もあれですけれども、やはり、なぜこういうことが起きるのかということなんですね。もう法務省の答弁もめちゃくちゃだし、人事院は答弁を修正するし、内閣法制局も意見がない。このことをめぐって、法務省も人事院も、そして法制局もやるべきことをやっていないのはなぜなのか。やはり、これは安倍政権だと思うんですね。安倍政権が問題なんです。
これ、法務省、大臣が内閣法制局に依頼した、いいですかと相談したというのは一月十七日だと答弁されました。これがもし事実だとしますと、その前後に何があったか。
十月三十一日に河井前法務大臣が辞表を提出され、十一月八日には桜を見る会が大きな問題になり、十二月七日には東京地検特捜部があきもと衆議院議員の秘書の自宅から資料を押収する。十二月十九日には東京地検特捜部があきもと事務所などを家宅捜索をする。十二月二十五日にはあきもと衆議院議員が収賄罪で逮捕される。二十七日には広島地検が前法務大臣の捜査に着手する。一月十四日にはあきもと氏が収賄罪で再逮捕される。十五日には河井夫妻といいますか、両議員宅が家宅捜索を受けるんですね。これは十五日です。
今言ったことがずっと起きた中で法務省から内閣法制局への照会が行われ、人事院への相談が行われるということなんです。
ですから、そうした中で、今回、異様な人事が行われる。そして、それに対して何も、本来であれば、こういうときこそ人事院とか法制局の出番なんですよ。さっき言ったように、行政府がみだりに解釈しちゃいけない、そういう役割を果たす。にもかかわらず、その役割を果たそうとしない。それどころか、安倍政権の暴走に加担している。今回、検察のトップの人事にまで手をつけようとしている。これは絶対に許せません。
この問題は、まさに三権分立の根幹にかかわる問題であり、国会の存在意義も問われているということで、引き続き徹底的に真相を究明することを述べて、質問を終わります。
会議録PDF
20200220_yosaniinkai_Fujino_kaigiroku
質疑資料 PDF
20200220_yosaniinkai_Fujino_shiryo
しんぶん赤旗 2020年2月21日1面記事 PDF
しんぶん赤旗 2020年2月21日2面記事 PDF
しんぶん赤旗 2020年2月21日3面記事 PDF
作成者 : fujinoyasufumi