【『最終報告書』から見るウィシュマさんの摂食状況について】
【『最終報告書』から見るウィシュマさんの摂食状況について】
8月10日に発表されたウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件の『最終報告書』で、ウィシュマさんが何を食べていたかが初めて一日単位で明らかになりました。
入管では、『被収容者処遇規則』の第26条で、一日の食事で、2200~3000㎉を被収容者に摂取させることが決められています(*)。
(*)被収容者処遇規則第26条:「被収容者に給与する糧食の一人一日当たりのエネルギーは、二千二百キロカロリー以上三千キロカロリー以下とする。」
しかし、最終報告書からは、実際にウィシュマさんが摂取していた食料は、その水準に全く届いていないことが明らかになりました。
以下、具体的に見ていきます。
2月1日
昼食 食べず
夕食 主食半分、副食4分の1
その他 砂糖、食パン、コーヒー、乳酸菌飲料、リンゴジュース
2月2日
昼食 副食を一口程度
夕食 副食を一口程度
その他 ジュース、牛乳、炭酸飲料、食パン(量は未記載)
2月3日
昼食 副食のパイナップルのみ
夕食 食べず
その他 水、オレンジジュース、砂糖
2月4日
三食とも全量食べず
OS1 ゼリータイプ6本=120㎉
2月5日
三食とも全量食べず
OS1 ゼリータイプ4本=80㎉
2月6日
朝食 パン少量
昼食 粥少量
夕食 粥少量
OS1 ゼリータイプ3本=60㎉
その他 清涼飲料水
2月7日
三食とも粥(昼食時は粥全量)
OS1 ゼリータイプ6本=120㎉
その他 ジャムを塗った食パン(量は未記載)
参考:食パン1枚約160㎉、ジャムでプラス30㎉
2月8日
三食とも粥を少量(昼食時は副食も食べた)
OS1 ゼリータイプ6本=120㎉
2月9日
昼食 食べず
夕食 粥を少量、副食の一部
OS1 ゼリータイプ2本=40㎉
2月10日
三食とも粥を少量
OS1 ゼリータイプ2本=40㎉
その他 牛乳
2月11日
三食とも全量食べず
OS1 500ml入りペットボトル2本=100㎉
その他 ポテトチップス、ビスケット(量は未記載)
(参考)カルビー「ポテトチップス うすしお」(60g)……336kcal
2月12日
朝食 粥(量は未記載)
昼食 粥、副食も食べた(量は未記載)
夕食 全量食べず
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 ポテトチップス、砂糖、コーヒー
2月13日
三食とも粥(量は未記載)、昼食の副食を一口
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 リンゴジュース、オレンジジュース、砂糖を混ぜた飲み物
(参考)Dole アップルジュース200ml 89㎉
2月14日
三食とも粥少量
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 砂糖を入れたコーヒー
2月15日
朝食 粥半分
昼食 食べず
夕食 自費購入したものを食べるので下げてほしいと食べず
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 バナナ、ロールパン、砂糖(量は未記載)
(参考)バナナ1本 約90㎉、バターロールパン1個 約95㎉
★2月15日の尿検査結果で「飢餓状態」が判明
2月16日
三食とも食べず
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 自費購入したゆで卵(量は未記載)=ゆで卵1個60gで90㎉2月17日 三食とも食べず
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 自費購入の清涼飲料水
★この日から「拒食者」として取り扱い開始(24日まで)
2月18日
三食とも食べず
OS1 500ml入りペットボトル2本=100㎉
その他 自費購入の清涼飲料水
2月19日
三食とも食べず
500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 自費購入のバナナ(量は未記載)、清涼飲料水
2月20日
三食とも食べず
OS1 500ml入りペットボトル3本=150㎉
その他 自費購入のゆで卵(量は未記載)、清涼飲料水
2月21日
三食とも食べず
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 清涼飲料水
2月22日
三食とも食べず
OS1 500ml入りペットボトル2本=100㎉
その他 自費購入のリンゴ(量は未記載)、清涼飲料水
2月23日
朝食、昼食 粥を少量ずつ(介助受けながら)
夕食 「何食べても出るからいらない」と全量食べず
OS1 500ml入りペットボトル2本=100㎉
その他 自費購入のリンゴ(量は未記載)、清涼飲料水
2月24日
三食とも、介助を受けて粥を数口ずつ
OS1 500ml入りペットボトル2本=100㎉
その他 自費購入の清涼飲料水
2月25日
三食とも、介助を受け、粥を数口ずつ
副食のフライドポテト(量は未記載)
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 自費購入のパウンドケーキ(量は未記載)、清涼飲料水
2月26日
三食とも、介助を受け、粥を数口ずつ
副食の人参、みかん、グリーンピース(量は未記載)
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 自費購入のリンゴ(量は未記載)、清涼飲料水
2月27日
昼食、夕食のかゆを数口
副食の春巻、ポテトサラダ、ミカン(量は未記載)
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 自費購入のリンゴ、清涼飲料水、コーヒー
★4時34分の血圧が83-46と異常値
2月28日
三食とも、介助を受け、粥を数口ずつ
副食のみかんやコロッケ等も食べた(量は未記載)
OS1 500ml入りペットボトル2本=100㎉
その他 自費購入の清涼飲料水、乳酸菌飲料
3月1日
朝食は粥を完食、昼食、夕食は少量ずつ。夕食では副食の三食豆も。
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 カフェオレ
★この時、看守が「鼻から牛乳や」と発言
3月2日
三食とも粥を少量。昼食では副食の人参も
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 自費購入のパウンドケーキ(量は未記載)、カフェオレ等
3月3日
朝食は粥を全量。昼食、夕食は粥少量
OS1 500ml入りペットボトル1本=50㎉
その他 自費購入のバナナ、カフェオレ等
3月4日
粥を少量
その他 ピーナッツバター、バナナ(口元に運んでもらって食べた)
★午前10時7分頃、血圧80-61
3月5日 (以下、最終報告書の記載)
〇午前7時52分頃:「看守勤務者が、A氏に対し、朝食やOS1等の飲料の摂取を促したが、A氏は、看守勤務者に対し、『ああ。』などと反応するのみで、摂取の意思を示さなかった。」
〇午前9時18分頃:「看守勤務者がA氏に何を食べたいかを尋ね、A氏が聞きとり困難な『アロ・・・』といった声を発したのに対し、看守勤務者の1人が『アロンアルファ』と聞き返すことがあった。」
〇午前10時41分頃:「A氏は、看守勤務者の介助(スプーンでかゆをすくってもらい、そのスプーンを口元に運んでもらう)を受けて、官給食の朝食のかゆ2口を食べた。またA氏は、OS1(このときに看守勤務者から手交、この日に手交したのはこの1本のみ)を看守勤務者に飲ませてもらい摂取した。A氏は、看守勤務者が口に入れたOS1をすぐに吐き出すこともあった。」
〇午後3時8分頃:「A氏は、背後の買い物かごと毛布でつくられた背もたれに寄りかかって座位の姿勢となったが、首が安定せず、看守勤務者1名がA氏の頭部を背後から支えた。その状態で、A氏は、看守勤務者の介助(スプーンでかゆをすくってもらい、そのスプーンを口元に運んでもらう)を受けて、官給食の昼食のかゆ10分の1程度を食べ、看守勤務者にOS1を飲ませてもらった。食事をしている際に、看守勤務者がA氏に声かけを繰り返したが、A氏が声を出すことはほとんどなく、反応もわずかであった。」
〇午後7時19分頃:「A氏は、看守勤務者2名の介助(スプーンでかゆをすくってもらい、そのスプーンを口元に運んでもらう)を受けて、かゆ(スプーン3口程度)および自費購入のピーナッツバター(スプーン1口程度)をOS1とともに摂取した。」
3月6日(土)
〇午前9時10分頃:「看守勤務者4名がA氏の居室に入室し、A氏に対し、朝食を食べるよう促したほか、A氏の下着を着替えさせるなどした。下着の着替えの際などに、A氏は、時折、『あー』などと声を上げることもあったものの、看守勤務者からの問いかけに明確に意思を示すことはなかった。」
*「なお、この際、看守勤務者が、A氏に対し、『ねえ、薬きまってる?』と述べたことがあった。
〇午前10時40分頃:「看守勤務者2名が、A氏の居室に入室し、朝食の摂取と処方薬の服用を促すなどした。その際、A氏は『あー』『うー』などと声を発することもあった程度で、ほとんど反応しなかった。」
〇午後零時56分頃:「看守勤務者は、A氏の昼食が全量未摂食で居室入口の食事班入口に置かれているのを見て、搬入口の外から室内のA氏に向かって食べるようにと促したが、A氏が反応を示さなかったため、昼食用食器を搬入口に残置した。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここから見えてくるのは、被収容者処遇規則第26条で一日あたり2200~3000㎉を採らなければならないと自ら決めておきながら、「三食とも食べず」が繰り返されるなど、まったくその水準に達していなかったという事実です。
経口補水液(OS1)や自費購入のバナナなどを食べていますが、量が未記載であり、到底必要なカロリーや栄養素をまかなえる量とは思えません。
2月15日に行われた尿検査で「飢餓状態」が明らかになっていますが、その後も、「三食とも食べず」が7日も続くなど、ますます「飢餓状態」が深刻化していることが推察されます。
さらに許せないのが、名古屋局がウィシュマさんを「拒食者」認定したことです(2月17日から2月24日まで)。
しかし、ウィシュマさんは医師の診断でも「逆流性食道炎」とされていましたし、自らも「食べたいけど吐いてしまうから食べられない」「だから点滴をしてほしい」と繰り返し入管側に求めていました。決して「拒食」していたわけではありません。
それなのに、「拒食者」認定したところに、ウィシュマさんの訴えに耳を貸さないで的外れな認定を繰り返していた入管側の実態が浮かび上がっていると思います。
なぜウィシュマさんは、これほどの「飢餓」に苦しまなければならなかったのか、引き続き追及していきます。
作成者 : fujinoyasufumi